『 遠い約束 』


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明るい光を背にして扉のところに恥ずかしそうに立っている小さな姿。
「シーク・イズミル・・・」
優しく囁いて、松葉杖を操って彼の許に向かってくる。その顔は羞恥と嬉しさに初々しく輝いて。
こつこつこつ・・・・。
立ち尽くすシーク・イズミルの前でキャロルは立ち止まった。二人はしばらく無言で見詰め合った。
やがて。
シーク・イズミルはおそるおそる目の前の娘の頬に触れた。
「本当にお前なのか、キャロル?お前が私のところに来てくれて・・・微笑みかけさえしてくれているのか?」
これは残酷な夢なのではないだろうかという思いと、胸が締め付けられるような幸せな予感がシークの体を震わせた。
「どうして・・・?」
キャロルは自分の頬に添えられて震える、大きな浅黒い手を自分の手で包み込んだ。
シーク・ラバルナに認められ、ムーラに付き添われて表宮殿に来るまでの間、シーク・イズミルにああも言おう、こうも言おうと考えていたのに実際には何もできない。
「どうして来た・・・?私を責めに来たのか?お前を騙した私を。(ああ、それでも良い!軽蔑にも値せぬ相手よと蔑まれ、無言で去られるよりは!)
それとも・・・行ってしまうのか?(お前に去られるのならば、出会うこともなく生涯、悪夢に縛られていたほうが良かった!)
何故、何も言わない?(何か言ってくれ、でなければ私は甘い夢を見てしまう!もしやお前は、と・・・)」
キャロルはそっとシークの震える手を撫ぜ、まっすぐに長身の男性の目を見詰めた。
「私は・・・あなたを愛しています、と言ったでしょう?だから・・・」
「あ・・・・・」
シーク・イズミルは目の前の小柄な身体を力任せに抱きしめた。目くるめくような驚きと喜びにもう何も考えられず、キャロル以外の世界の一切は消えうせた。

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「本当に・・・?本当に・・・?私はお前を手放さなくていいのか?お前は私を愛していると言ってくれるのか?卑怯者の私に・・・!」
「ええ、ええ・・・!私はあなたを選んだの、自分で考えて、自分の心のままに。私はあなたが私を選んでくれたのが嬉しいの。
・・・私はもう迷わない。許して、自分の心すら分からずにいたことを」
「ああ・・・キャロル!許してくれ、私を。お前を愛するがゆえにお前を苦しめた私を!一時とは言え、お前を諦めるために自分の心を偽ろうとした私を!
キャロル、キャロル・・・!もうお前を離しはしない!」
シーク・イズミルはキャロルの顔を上向けさせると、接吻した。大きな手は愛しげに華奢な身体をまさぐる。キャロルは身動きもできない。
その接吻と愛撫がさらに激しさと深さを増そうとしたまさにその時。
「シーク・イズミル。そのようにされてはシェイハがお苦しそうでございますよ。シェイハ・キャロル。そろそろお引き取りあそばせ。夜遅くまで殿方の所においでになってはご評判に傷がつきます」
部屋の片隅に静かに控えていたムーラだった。
キャロルは、はっとしてシークの腕を乱暴にはねのけた。真っ赤になって松葉杖に足をとられてよろめく彼女をムーラは優しく支えてやった。
「ようございましたね、キャロル様・・・。でもこれ以上はお許しできませぬよ」
キャロルにだけ聞こえる優しい囁き声。その声はようやく長い苦しみから開放された育て子への愛に潤んで。
一方、シーク・イズミルは不機嫌の極みだった。キャロルが乱暴に逃れたせいで松葉杖で向こう脛を思いきりぶたれてしまった。
「無粋だぞ、ムーラ!一体どういうつもりだ?」
「いつぞやシークは私にお命じになりました。婚儀を終えるその日まで、シェイハ・キャロルの御身に間違いが起こらぬように守るように、と。
シェイハをお守りいたしますのが私の役目でございます。先ほどシーク・ラバルナも同じことをお命じになりました」
「・・・シェイハ、と言ったか?ムーラ?」
「はい、シーク。つい先ほどシーク・ラバルナがキャロル様に称号をお許しになられました。日を改めて勅命として公布されましょう。おめでとうございます」

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「─では次のニュース。
先日のハイ・ジャック事件の最後の行方不明者であったミス・キャロル・リードの無事が確認されました。事件以来、実に3ヶ月ぶりのことです。
リード嬢は負傷により長く重態が続き、アル・シャハル王国内で治療を受けていました。
この件については、本人の健康状態と精神の安定を最優先するという医学上の立場から、報道は控えられていました。
事故に伴う直接の犠牲者の方々、ハイ・ジャック機追跡の空軍機威嚇射撃による不幸な出来事など暗い出来事の中で、絶望視されていた犠牲者の無事が確認されたことは喜ばしいことです。
アル・シャハル国営放送のインタビュー映像が入ってきておりますので、ご覧ください・・・」

画面は切り替わり、清潔な室内で車椅子に乗った華奢な少女が映った。キャロル・リードである。彼女はアラブ風の美しい衣装を着け、はにかんで目を伏せている。
事故の衝撃が未だ癒えないせいか、白い顔がやつれて少し神経質そうに見えるのも、青い瞳ばかりが目立つのも痛々しかったが、気品のある優しい顔立ちはなかなかテレビ映りが良い。
インタビュアーが問う。
「・・・キャロル・リードさんですね。あの恐ろしい事故の後、ずっと皆があなたの安否を気遣っていました」
「ありがとうございます。怪我をしておりまして長く意識がありませんでした。アル・シャハルの皆様にアメリカ人の私が本当に親切に治療していただいたおかげでこうして皆様にお礼とお詫びを申し上げることができます」
「お礼と・・・お詫びですか?」
「はい。お礼はもちろん治療をしていただいたことについてです。
お詫びというのは・・・あのハイ・ジャック機の追跡中に不幸な・・・事故があったことについてです。
私の国の軍隊だったと教わりました。私のようなものがお詫び、などと口にすることすら傲慢であるかもしれません。でも私に親切にしてくださった国の皆さんに申し上げたいのです・・・」

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インタビューはしばらく続いた。異国の少女の飾らない誠実な口調はアラブ諸国の人々の態度を軟化させてしまったことをニュースキャスターは最後に伝えた・・・。
「・・・ごらん頂きました映像はアル・シャハル国営放送のものでした。
リード嬢のインタビューの放映以後、アメリカに対するアラブ諸国の態度は相当軟化し、アル・シャハル政府は賠償問題についての話し合いに応じる態度を明らかにしました。
リード嬢にはインタビュー放映後、アル・シャハル内外からお見舞いの品が寄せられるという異例の事態となりましたが、リード嬢は全てを今回の事故の犠牲者に寄付したいと申し出たということです。
なお、リード嬢は医師の許可が出次第、帰国予定です・・・」
キャスターは言い終わると隣の席のアシスタントに、キャロル・リードの外交的センスはなかなかのものであり、これならば下手な遺恨は残るまいと賢しげなコメントを出した。
それは皮肉で冷徹な論説が身上のキャスターのいつもの「冴えた一言」であったはずなのに、視聴者から「事故にあった未成年の純真な心遣いを踏みにじる無神経な一言だ」として抗議が殺到したのである・・・。

アル・シャハル国営放送のインタビューはシーク・イズミルと彼の叔父達が仕組んだものだった。
厄介者の外国人、あるいはシーク・イズミルとの悲恋に泣く予定であった小娘は一転、シーク・ラバルナに認められシェイハの称号まで受けた。
アル・シャハルの大臣達は混乱した。
だが昔ながらのシークへの絶対的な忠誠心や、キャロルの実家でもあるリード・コンツェルンがアル・シャハルにもたらす莫大な利益、あるいは実の甥への愛情から彼らは方針を変換せざるをえなかったのである。

「お前の妻になる小娘・・・いやキャロル・リードはなかなか頭が良いらしいな。馬鹿では一国のシェイハはつとまらんから、まぁ安心した」
奥宮殿へ向かうシーク・イズミルを呼び止めたのはカリム石油担当大臣とケマル外務大臣、それにファイサル内務大臣の三人だった。
キャロルは相手の心を掴み、和ませる不思議な力を持っているらしかった。
あのインタビューの内容は事前に言い含められた無難な言葉ではない、キャロル自身の言葉であったがゆえに、結果として敵であった人々をも味方とした。
反キャロルの急先鋒だった大臣達の皮肉っぽい祝辞にイズミルは頬を緩め、キャロルの許へ急ぐのだった。

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「どうした?顔色が冴えないな。準備は進んでいるか?」
にぎやかに取り散らかされたキャロルの私室を訪れたシーク・イズミルは意外そうに問うた。
「あ・・・シーク。お帰りなさい。何でもないのよ。ちょっと考え事をしてしまって。だめね、何度もムーラに注意されているんだけれど・・・」
「色々と忙しなくございましたもの。お疲れなのでしょう。でもシェイハ、おめでたいご帰国なのですから準備は万全に・・・。あなた様は私達のシェイハとしてお国にお戻りになるのですから。
シークもご同道なさいますのに何がご心配なのでしょう?」
ムーラは苦笑しながら言った。
「無理もない・・・と言ってやらねばならぬのだろうな」
シークはソファの上から絹の長衣をどかして自分が座り込んだ。ムーラが他の侍女たちに目顔で指示して、散らかされた衣装や装身具類を手際良く片付けていく。
「お茶などお持ちいたしましょうほどに・・・」
侍女たちは出て行き、キャロルは婚約者たるシーク・イズミルと二人きりにされてしまった。
「どうした?お妃教育に疲れたかな・・・?」
キャロルの不安の原因はやはり、元は婚約者でもあった義兄ライアンとの再会にあるのだろうと思いながらイズミルはわざと別のことを問うた。
曖昧に頷くキャロルの横顔の艶かしさにイズミルは昼間だというのに男の欲望を感じた。幸い、邪魔なムーラはいない・・・。

「困ったな・・・。一国のシェイハとなるお前はもっともっと学ばねばならないというのに。言葉に文字、歴史、文化、産業に経済、外交、宮廷の典礼・・・。
勉強嫌いでは先々、苦労するぞ?」
「嫌いじゃないわ。先生方に色々なことを教わるのは楽しいの。本当よ!」
「ははは・・・。ムキになるな。そのように肌を赤く染めて」
シーク・イズミルがキャロルを膝の中に抱き寄せた拍子に、あけっぴろげなもう一人のイズミルの昂ぶりがキャロルに触れた。
キャロルは真っ赤になり、小さく息を吸い込むと乱暴にイズミルを押しのけた。
「おやおや、何と無礼な子供だろう?」
「わ、私は子供じゃないわ!今のはシークが悪いのっ!子供扱いしないで!」
シーク・イズミルの細められた目に好色な光が燈った。
「子供ではないと?そうかな?何も知らないくせに!・・・そうだな、今日はお前に新しいことを教えてやろう。私とお前の・・・子供と大人の違いを・・・」

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シーク・イズミルはその整った顔に、残酷な慈しみを湛えた無上の微笑を浮かべた。金茶色の瞳の輝きがキャロルの理性を縛り、甘い吐息と熱い手が身体の自由を奪ってしまう。
「私とお前は違う。私は大人の男で、お前はただの子供だ。女にもなっていない未熟な子供・・・」
キャロルは魅入られたようにシークの顔を見つめるが、それでも薔薇色の唇は図々しい進入を試みる男の舌を拒むように歯を食いしばっている。
「やだっ・・・!急にこんなの、いや。やめて・・・」
「やめない」
シークは舌先で歯をつつき、促すように敏感になっている唇を自分の舌でなぞった。
「覚えているだろう、前にもこんなことがあった。お前は私に熱烈な告白をしてくれたな。ライアンではないのに嫌ではないと・・・」
わざと憎い恋敵の名を口にすれば、びくっと震えるキャロルの身体。
「あれほど嬉しく思ったことはなかったな。お前は言っていたな、ライアン以外の男にキスされたのに嫌ではないと。
苛められっ子のように恐ろしそうに震えて、ライアンへの罪悪感でいっぱいの顔をしていたっけ・・・」
イズミルは唇を離さないままにキャロルに語り掛ける。男の唇の微妙な動きと熱い吐息が、キャロルの身体から力を奪っていってしまう。そんな頼りない身体をしっかりと支えるイズミルの強引で逞しい腕。
「お前は気づきもしないだろうが、あの時、お前は子供っぽく涙ぐみながら、でも無意識のうちに男の私を誘う女でもあった。私はお前を手に入れたいと思ったが、お前もまた私を誘った・・・」
「あ・・ああ・・・」
イズミルはすっかり脱力した身体を覆う絹の衣装の前ボタンを巧みにはずしてしまった。高価ではあるが野暮なほどに慎ましい下着に包まれた脹らみをそっと手で触れる。
「さぁ・・・脱線はほどほどにして授業に入らねば・・・」

87 Ψ(`▼´)Ψ
シークの手にキャロルの戦きが直接に伝わってくる。イズミルは自分の片膝を立て、そこにキャロルの小さな身体を凭れさせるようにして座らせた。
「女であるお前は私とは違う身体を持っている。まず一つめの箇所はここだな・・・」
下着を上に捲り上げ、まろやかな脹らみを露わにする。
あまりに白くて青みがかって見える肌の頂きは、ほんのりと薄紅に染まり男の視線を当てられただけでひとりでに震えて膨らんだ。
「女のそこは隆起し、柔らかな曲線を描く。男の胸とは違う」
そこでイズミルは逃れられぬようにしっかりと捕らえたキャロルの片手を自分の胸元に持っていった。衣装越しとはいえ、こんな状況で男の胸に触るのだからキャロルはもう口もきけない。
「・・・そして大人になりかけた女の胸のある部分は刺激にも・・・敏感になる。こんなふうに・・・」
軽くつま先で頂きの宝石を弾いていたぶれば、痛みとほとんど区別のつかない電撃のような刺激がキャロルの全身を駈け抜けた。
「あうっ・・・!」
びくん、とのけぞった拍子にキャロルの脚はシーク・イズミルを乱暴に蹴る仕儀となったが男はただ満足の笑みを浮かべただけだった。
「痛かったかな?怪我をさせてしまったのであろうか。・・・大丈夫だ、舐めておけば治る・・・」
シークは自分の唇を軽く舐めると、キャロルの胸に舌を這わせた。
「女の肌は滑らかだ。子供の肌も滑らかだが木目細かさがまるで違う。女の肌は柔らかに吸い付いてくる、男である私に・・・。そしてこの甘い匂いも女に特有のものだな。
キャロル、分かるか?だんだん強く匂ってくるお前の・・・香りが・・・」
恥ずかしい言葉でイズミルはキャロルを煽り、ゆっくりと衣装の裾に手を伸ばした・・・。

キャロルは魅入られたように金茶色の瞳を見つめるばかりだった。身体はもう自分のものではないようで、恥ずかしさから目を瞑ろうとしても叶わない。
(いや・・・恥ずかしい・・・こんなのはだめ・・・)
キャロルは小さく口を動かすのだけれど、漏れてくるのは吐息混じりの悩ましい声ばかり。のぼせ上がった頭の中ではもう何も考えられない。
シーク・イズミルはそんな恐ろしさと戸惑いの中にいるキャロルを心底愛しく思った。
(いや・・・だめ・・・いいえ・・・違う、もっと・・・・?)
キャロルは潤んだ瞳でイズミルを見つめ、弱弱しく頭を振った。誰にも見せたことのない場所を男の指が探ろうとしている。じきに無遠慮な視線がそこを焼き焦がすだろう。
(お願い、この感覚はあなたのせいなの?どうにかして欲しいの。自分でも、もう・・・分からない・・・)
「女は非力だ、男と違って・・・。柔らかくしなやかで・・・でも弱くはない。そのしなやかさで大の男を捉えて離さないでいることもできる。このなだらかな曲線を持った身体で、な」
キャロルは人形のように頭を縦に振った。
「ここが・・・男と女の一番違う箇所だ・・・」
イズミルは、はや潤みを感じさせる柔らかな箇所に指先を這わせながら言った。キャロルはもう抗いもしない。半開きの唇から仄見える小さな舌先にイズミルはいやがうえにも昂ぶった。
「私の・・・が、お前のここに入る。でも子供のお前のそこは私を受け入れられるだろうか・・・?」
衣装越しに自分自身をキャロルの小さな手の中に握らせながらイズミルは問うた。手に余るそれを握ったキャロルに今にも男は暴発しそうだった。
「確かめても・・・いだろう・・・?他ならぬ私が花嫁となる身体を改めるのだ」
優しい吐息でキャロルはイズミルに答えた。イズミルはキャロルをソファに深く座らせて、その細い足首をキャロルの手に握らせ、ゆっくりと膝頭を離していった・・・。

キャロルは荒く息をつきながら、自分の脚の間にあるシーク・イズミルの頭を眺めていた。
シークに促されるままに、あられもない格好を晒しているというのに心は妙に甘く痺れて強くそれを拒むこともできない。
(私・・・どうなるの?誰か来てしまったら?こんなこと恥ずかしい。怖くて気持ち悪い・・・)
それなのに。
「お前が嫌がることはしない。お前を見てもいいか?今ならばまだ・・・」
掠れた男の声にキャロルは許諾の印を見せ、下着が横にずらされるのを許した。
(怖い・・・怖い・・・でも逆らえない。身体が熱くて痒いみたいな疼くみたいな・・・。・・・ああ、シーク!)
「怖がらなくてもいいから。そんなに震えてくれるな。怖くはない。お前の身体・・・を確かめてやる・・・」
外気に晒されたそこは神経質に震えていた。頼りなく未熟なそこに、物慣れたはずのシーク・イズミルは無知な少年のような興奮を覚えた。
「何と小さくて・・・薄くて・・・頼りない・・・。脆い細工物のようだな・・・。愛らしい・・・それでいて私を狂わせる・・・淡い色の・・・・・。
男のものとはまるで違う・・・子供のままの・・・・私の・・・」
シークが切れ切れに呟く言葉が、吹きかけられる吐息が、キャロルの眠る薔薇を揺り起こす。
脚を痛いほどに開かされてもなお慎ましく閉じ合わさっていた花びらは自然に綻び、初めて甘く匂う蜜を浮かべた。襞の奥に厳重に包まれていたはずの真珠も震えながら顔を出す。
「美しい・・・な。お前は子供ではあるけれど、女の貌も持っていて私を、男を狂わせる・・・」
シーク・イズミルは恥ずかしさのあまり手で顔を覆ってしまったキャロルを慰めるように囁くと、慎重に指先で花びらを掻き分け、小さな小さな泉の入り口を改めた。
持ち主の意思とは全く無関係に妖しく蠢くそこには紛うことなき乙女の印・・・。
(今度こそ、お前の全ては私のものだ!)
シークは心の中で快哉を叫ぶと、いとおしげにキャロルの最も女性らしい部分に接吻した。

88 Ψ(`▼´)Ψ
「あっ、いやっ!」
びくんと震えるキャロルにイズミルは淫らに囁きかけた。
「静かに。まだ授業は終わっていない・・・。もう少し我慢してごらん。
ほら・・・見てごらん。ここが・・・男女の一番異なる所だ。深く窪んで・・・男を受け入れる所。そして・・・新しい命を産み出す所・・・。
普段は眠っているけれど一番、敏感な場所だ」
シークの指がキャロルの薔薇をいたぶるように弄った。蜜を花全体に塗りつけ、てらてらとした淫靡な光沢で目を楽しませる。
「ふふ・・・。男のものもそうだが、ここは嘘をつけないのだよ。ああ、恥ずかしがることはない。私は嬉しいのだから・・・お前がちゃんと女になる準備ができていると分かって」
キャロルは涙に曇る瞳でシークを見つめた。嫌がって抗って、その無体に怒るべきなのに出来そうになかった。
「こんなこと、しちゃいけないことなのに。私は・・・あなたに怒らなきゃなのに・・・こんなことは・・・嫌・・・・」
キャロル自身がその言葉の空虚さに気づいている。
「嫌・・・・なことなはずなのに・・・・?」
「私を愛していると言ってくれただろう?愛している相手にされるのなら、それは一概に嫌なこと、とは言えないものだ・・・」
シークは充分に潤んだある箇所に優しく自分の指を吸わせようとしたが、柔らかく甘い器官のそこだけは驚くほど頑なで、キャロルは苦痛の叫びをあげた。
シークは苦痛と快感に惑乱する少女の顔を満足そうに見下ろすと、今度は自分の器官を露わにした。
「お前ばかり恥ずかしい目に会わせては不公平・・・だな。見てごらん。これが男の器官だ・・・」
荒々しく怒張する成熟した器官をキャロルの白い手に無理やり握らせながら、シークは自分の無軌道振りに内心苦笑する思いだった。
(全く・・・・私が女に・・・しかも子供にここまで溺れるとは!)
おそらくはドアの外で中の乱れ振りを察したであろうムーラが、巧みにタイミングを計ってノックをしてくれなかったら「授業」はどこまでエスカレートしていたか分からない。

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「お待たせいたしました、お茶をお持ちいたしました」
ムーラは真っ赤にのぼせ上がったキャロルと、反対に子憎たらしいほどに落ち着き払った育て子を見て、威圧的に片眉をあげて見せた。
(シーク!全てはお見通しでございますよ!ご自分でシェイハを辱めるような真似をなさるとは何という呆れ果てたことでございましょう!)
「ああ、ムーラ。ご苦労」
イズミルはさすがに苦笑しながら乳母からお茶を受け取った。
「呆れ果てた方!」
ムーラはイズミルにだけ聞こえる声で厳しく言い捨てた。
「キャロル様、お茶をお召し上がりなさいませ」
「え、ええ・・・・」
キャロルは声も身体も震えてしまっている。その初々しい様子は男を喜ばせるけれど、この場合はムーラの怒りに油を注いだだけだった。
(全くシークのなさりようは!ご結婚の儀前にずいぶんときわどくお戯れのよう。シェイハもお逆らいにはなれなかったらしいけれど・・・。
せめてこの方がもう少しもの慣れて知らん顔がお出来になればねぇ。これでは何があったやら丸分かりではありませんか。せめてキスくらいはご存分にと思ったのが裏目に出た!)
ムーラは真っ赤になっているキャロルの様子を素早く改めた。
「どうなさいましたの?お顔が赤くて。お疲れなのかもしれませんね。今日はお湯を召して早くにお休みあそばして。・・・シークもお引取りあそばせよ」
「そうするかな。キャロル、もう当分私が教師役をしてやれることもないだろうが勉強は・・・怠けてるのではないぞ」
シークはくすくす笑いながら出ていった。

「全くシーク!今日のなさりようは何でございます?ご結婚までは指一本お触れにならぬと信じておりましたのに!異国から嫁いで来られるシェイハに悪い評判でもたてばお可愛そうではございませんか!」
キャロルが早くに寝かしつけられたその夜、シーク・イズミルは乳母から手厳しく糾弾されていた。だがイズミルは悪びれもせずこう言って乳母を呆れさせた。
「シェイハとなる娘が紛うことなき無垢の乙女だと私は全世界に証言できるぞ。私はシェイハの名誉をための証人なのだよ?あまり下世話な想像はするな」

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剣を掴む鷲のアル・シャハル王家の紋章が描かれた飛行機がワシントン空港に滑り込んだ。空港に待ち構えていたマスコミ関係者や、居合せた旅行客は好奇心剥き出しで、一般人は入れない特別スペースのほうを見つめた。
長く行方不明だった大財閥の一人娘が帰国する。それも一国の摂政王子の飛行機に同乗して!王子様に連れられたお姫様を出迎えるのは、お姫様の大金持ちの家族、それにこのアメリカの政府高官だ。
お姫様はひょっとして砂漠の国でシンデレラの切符を手に入れたのだろうか?
お姫様を好きになった砂漠の王子様は、求婚のためにアメリカに来たのだろうか?
もしアメリカ人が一国の王妃となるなら、それはグレース・ケリー以来の快挙だ。しかも今度は大財閥の令嬢、正真正銘のお姫様だ!
全く、キャロル・リード帰国のニュースは何か現代のお伽噺めいた魅力をもつものと考えられ、人々の注目の的となっていた。
とはいえ、それは野次馬のこと。
今回の帰国劇の当事者達は、出迎えられるほうも出迎えるほうも、それぞれのものおもいを胸に抱えていた・・・。

「さぁ・・・行こうか。疲れていないか?うん?」
シーク・イズミルは優しくキャロルの顔を覗き込んだ。
真っ白の民族衣装を着け、頭を覆うかぶり布は摂政王子の地位を物語る高価な額輪で留められている。これまた豪華な意匠のベルトには三日月型に反り返る短剣を手挟んで。
威風堂々たる姿にキャロルは我知らず頬を染めた。身体を調べられた‘あの日’以来、きわどく挑まれることはなかったけれど、シークの気配を感じるたびに身体が火照るのを止められない。
男の一挙手一投足に心ときめき、ずっと見つめていたいのだけれど恥ずかしくて目を逸らしてしまう・・・といったふうなキャロルは、まさにシーク・イズミルが望んだとおりである。
「大丈夫。ああ・・・やっと帰ってきたのね!」
キャロルは微笑むと立ちあがった。ようやく松葉杖も取れたが、裾の長い絹のスカートに足をとられそうになる。
「長い間、座っていたから身体も強張っているのだろう。支えてやろう」
シークは有無を言わせず、キャロルの肩を抱いた。
「さぁ・・・・。やっと私は約束どおりお前を家族に会わせてやれる。私の家族ともなるお前の家族に」

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