『 願い 』 51 Ψ(`▼´)Ψ 花弁の上に隠れている小さな核を唇で剥き、舌先で転がすと小さく浅い息を繰り返すキャロルに「…姫…私は…旅をする」「っ…ぁっ…た、旅を?」荒く息を吐きながら仰向けになると「…私の上にっ」「……で、出来ない」薄っすらと涙を浮かべ懇願するキャロルに「…それで、全て教えよう…さぁ」 薄物の衣装をたくし上げ、困惑しているキャロルの手を引っ張り促す----裾を持ち上げ跨がるが、そこから固まってしまったままのキャロルに、激しく熱を帯びた衝動に耐え切れなくなった男が花弁に自身を片手を沿えあてがうと、キャロルの腰を掴み自身へと沈めた。 「くっっ…」動きたい衝動をやり過ごし「…私は、そなたと共にエジプトへ向かう…その準備も…明日の夕刻には …整う…」言い終わると、腰を支え激しく揺すり突き上げる。 初めての行為の恥かしさの為か、あっけなく達したキャロルのぐらついた躰を支え「…早すぎるな…」組み敷き力ないキャロルの脚を両肩に乗せ動き始める…「ぁっ…っくっ」喘ぎ眉根を寄せるキャロルを見つめ「もっと、もっと…その顔が見たい…」---やがて自身を解き放った後も、最後の最後まで…自分の情熱を注ぎ込む様に腰を揺すっている--- --意識を失ってしまったキャロルに上掛けをかけ---鎧戸へ近づき静かに月を見上げていたが振り向きキャロルの寝顔に寂しく笑いかけ-----月灯りに誘われる様に部屋を後にした。 52 『ヒメ・・ヒメサマ・・・・』(誰?誰か呼んでいる・・・)躰を揺り起こされ、深い眠りから引き戻された。 ぼんやりと目を開けると、そこにムーラが立っていた。 「姫様…お休みの所を、申し訳ありませぬ」持っていた燈火を床に置き、深く深く頭を下げひざまずいた。 その手をあげさせようとして、ハッと自分の衣装の乱れを直しながら「…どうしたの?手を上げてください」行為の後に寝入った自分が恥かしい…(あっ王子が居ない?) 部屋を見渡し、王子の気配を探している視線にムーラが「王子は、居ません」寝台の横に正座しながらキャロルの疑問を見透かしていたかのように即答する。 「ですから、私が参ったのです」 「何も聞かず私に付いて来て頂けませんか?」「え?…」「姫様…私とて女です…」 「お辛いでしょうが…どんな狂気とも思える行動にも理由がある事を」 「付いて来ては…頂けませんか?」(王子の顔は他にもある事を知って頂きたい…) (付いて行かなければ後悔する気がする…) 「…はい」 「では、ご案内致します、これを」濃いベールをキャロルへ被せ、燈火を持ち先導していく。 -----ルカとの会話を思い出しながら、案内を続けていく----- 「私は、姫様の臣下でいよと、王子の命令ですから、私は動けません。ですから、ムーラ殿が姫様が知らない王子をお見せしてはいかがでしょうか?(…私は…王子の哀しみを知ってしまった…後は姫様に委ねるしか…) 最小限の灯りが付いているだけの、ひっそりとした佇まいの王子の隣に位置している宮殿に着くと大小の泉をぐるりと囲う様に造られた建物の一番小さな泉の一部の石を持ち上げると、ルカの言った通りに鍵が出てきた。城壁の傍まで来ると、深い垣根を掻き分けると小さな扉が現れた。 「ここよりは、お声を立てぬ様に」膝をついて扉の中に入る---- 53 洞窟の様な狭い通路を這う様に進む、先導しているムーラも燈火をかざしながら探る様にゆっくり進んで行く。 追いかける様に付いて行くキャロルは、(ムーラも、ここへ来るのは慣れてないみたいだわ…この先は一体何が…) 途中、通路の燭台に燈火の火を移しつつ進むと、どうにか立つ事が出来る小さな部屋に辿りついた。 辺りを見回すキャロル…目の前に階段がある以外は、衣装箱が三個ばかり置いてあるだけの殺風景の小さな部屋。 …(ここは?---何の為の部屋なの?ここに何があるの?)ムーラも辺りを油断なく確認すると、ついとキャロルの前に立ち 口に人差し指を立てて、深々と頭を下げ、燈火を床に置くと、今来た通路へと戻って行った。 一人きりになったキャロルは----燈火がパチッと火を弾く音さえも聞こえる静寂の中で 取り合えず衣装箱を調べてみようと近づく---と、声が聞こえてきた。 (…今の声は、上から?)----声のした階段を静かに上がると、天井部分に押し上げる木製の扉があった。 押し上げようと扉に手を触れる--- 「…ミタムン…私の事を愚かだと思うているだろうな」 (…王子の声だわ…)慌てて、扉を押し上げようと伸ばした手を引っ込め、そのまま階段に座り込み耳を傾けた。 「皮肉なものだな…お前の行方を探し…そこで…姫と初めて会ったのだった…」金属音と、ぶつかり合う小さな音 (お酒を飲んでいるのね…ここは…ミタムン王女の?) ここへ来る迄の通路にもさえ敷物が敷かれてあった事を思い出し、一体何の為に造られた部屋なのかと考えていると、 ドサリと音が聞こえた後に、ミシリッときしむ音が聞こえる。 (寝台?…ここは寝台の下にあるのね…)ようやく状況を把握した。 「お前が居たら…私を責めるか?それとも良い策を講じてくれたかな…」自嘲気味な笑い声--- 「…責めなら充分に受けている…姫の心に私は入り込めない--いくら躰を重ねてもね」 「…私の腕に抱く事が出来た喜びの後…それで全てが上手くいくとは考えてはいなかったが…」 途切れては、また紡いでゆく言葉に、キャロルはじっと聞き入っていた。 54 「私の本気の心も言葉さえも、受け入れてはくれない--私の気持ちを…王位継承権が欲しい為の偽りとしか 思ってはくれぬ…姫が私に心を与えてくれるならば…世継の地位さえ要らぬのに…」 ドクンとキャロルの心臓が脈打つ。 「愛している…愛している…」優しく語り掛ける声 「幾夜も夢の中でさえも求め続けたのか…焦がれて眠れぬ程に--焦がれ過ぎて狂ってしまったのかも知れぬな…」 「この耐え難い狂おしい想いは、抱き締めていても鎮まる事はない…」 「心から血を吐くほどに乞い願うものに…それに触れる事さえ叶わない、忘れる事も出来ない…そうして他の男の 腕の中で抱かれている事を思うと…そんな生きたままの地獄の中を這い回って来た---」 魂から絞り出した様な声は…キャロルの心に、辛く切なく刻印された。 「幾度抱いても、心は抱き締める事が出来ない…いっそ一つの体になれれば…心は…寒くはならないのか?」 「抱くたびに、心をも全て欲しくて堪らないのだ…得られない心を…」 「それでも…飽きる事も叶わず、焦がれて抱きしめずにはいられない…」 「ミタムン…お前も王に同じ想いを抱いたのか?…お前と姫の心を捉えて離さぬ程に…」 自分でも気付かない内にキャロルの、閉じた瞼からは涙が溢れていた、そして『変化』の正体も… …自分の足に視線を落とす、不器用な手当てが施されている。不器用な優しさ----- 違う--そうさせてしまったのは自分なのだと----- ただ蹂躙される為に傍にいるのだと---それを受け入れるべきが自分の罰 (気が付かなければ良かった…) 激しく抱かれた後、遠く霞む意識の中にシャラシャラと金属音と共に聞こえてた、意識の奥に語り掛けていた哀しげな声に それは夢だと思おうとしていたのに、 『姫愛している…憎まれても疎まれててもよい、傍に…傍にいてくれ』 その小さな呟きが切なく胸を締め付けていた事に--- 55 「ムーラ殿…姫様のご様子は」小さな戸口の前に佇んでいるムーラに投げかける声-- 「…何度注意しても、私を驚かす事が余程に好きなのですね…」言葉とは裏腹に来るのが分かっていたように静かに答えた。 「賊の処罰は済みましたか?」「ええ…王子の布令を待ちきれなく、押し寄せていた者達に紛れての襲撃でした。 将軍が集まった者達を一所に集め収拾が着きました…して…姫は?」 「…まだ…中におられますよ…」小さな扉を見つめていたムーラの視線がふいに天を仰ぐ----- 「…心の中まで見透かされそうな、冴えた月だこと---手が届きそうなのに届かかない」 月に手をかざすムーラに、誘われる様に仰ぎ見るルカ 「私は天を見る時には、道標を探る為のものでしたが…ただ眺めるというのも…悪くないですね」魅入られた如く月を仰ぐ---- 「ほほほ、まるで誰かを想ってい----?」いつもの様にからかいを含めた言葉を掛けるのを躊躇してしまう程に 月を愛しげに、身動きもせずに眺め続けているルカ---。 (ルカ…そなたも誰かに想いを---?) (月は皆に等しく、柔らかな光を注いでくれる。今は靜して待ちましょう)心の中でひっそりと呟き--- 「風が…出てきたようですね」襟口を押さえると、再び月を仰ぎ見る。 (…動けない---)扉を押し上げようと手を伸ばしては、戻すキャロル 自分をそこに留めて、動けなくしている、心の枷--- 「…父の目から逃さなければ…姫を利用させない…傍に---行かなければ…」---そのまま寝入ってしまったのだろう 肺に溜まっていた空気を大きく吐き出し、涙を拭うキャロル---- (とても哀しく…激しい愛し方…でも、それは私のせいだったのね…苦しめてゴメンナサイ…) 56 目も眩むばかりの幸せの中で、突然に手折られてしまった---メンフィスとの事--- 今もきっと自分を探し続けているに違いない…メンフィス… ヒッタイトに居ても、自分はまだエジプトの王妃であると言う事実… そして、イズミル王子…彼も心の底から自分を愛してくれていた事実に、父に背いて迄も私を守ってくれようとしている--- どうなるのかと甘んじてはいけなかったのだと…自分でどうしたいか---自分が目を背けていた事実にも受け止めなくては-- それが、どんな結果になろうとも、本気の心には本気でぶつからなければ---- 「エジプトに…エジプトに答えはある気がする…自分の心と正直に向き合おう---」身に付けていた、王の印と守り刀を固く握り締め 天井を見つめ深く頭を下げて…通路へと戻って行った。 その頃、エジプト王宮ではウナスがメンフィスの元へ伝令からの書状を持ち、伝えていた。 「王、やはりイズミル王子は生きていました。明日の夕方に商人を集め王子自ら品定めをすると布令を出しているとの事です」 「やはりな!!間者は?伝令は?抜かりないだろうな?」後ろに居たミヌーエを振り向き、厳しい声が飛ぶ。 「はい、王のご命令通りに、ヒッタイト全土に間者を放っております。国境の警備にも抜かりありません」 57 「あらあら、メンフィスは随分といきり立っているのね」扇で口元を隠しながら、アイシスが近寄ってきた。 「…姉上!ここには入らぬように言ってあったはずだが?」きつい目で睨み付けるメンフィス--- 「何を言うの?私はまだ、婚儀をあげた訳ではありませんよ、どこへ入ろうと、咎められる筈もないでしょう」 「ラガシュ王との婚儀を延期するなど、姉上はバビロニアの王妃になるのだ。国民への示しがつかないだろうに」 「まぁ…メンフィス!だからこそですよ。だからエジプトに戻ってきたのです」心配そうにメンフィスに縋りつくと 「キャロルが攫われたのは、元はと言えば私の婚儀に出席する為でしたもの。何かあれば婚儀どころではありませぬ」 涙を浮かべる嘆くアイシス--- 「何かなど…ある筈も無い。姉上もうよい、わかった」ミヌーエとウナスに目配せをして部屋を出て行った---- 「アリ!」楽しげな口元を扇で隠したアイシスに、影のように寄り添うアリが「ここに控えております、アイシス様」 「面白い事になってきたの」「はい!ラガシュ王が関わっての事なのでしょうか?」「ふふっ、まだラガシュ王の元へ知らせは入ってはおらぬが、そうでないとも言い切れぬと書状には書いてあったが…そんな事はどうでも良い」 「肝心な事はキャロルが居ないという事ではないかえ」声を潜め、楽しくて堪らないとばかりに笑うアイシス---- 「キャロルが居ないというだけで空気さえも芳しく感じる」大げさに息を吸い、パチンと扇を閉じた 「しかし、もう一人邪魔者が居る」険しい表情を浮かべると「カーフラ王女でございますね」「この私に『お姉さま』と媚びてくる」 「まぁ良い。いずれ…それよりもこの状況を楽しみたい」「アイシス様、お酒をお持ちしましょう」アリもアイシスの楽しげな 様子に心が浮き立ち、いそいそと酒の支度をしに行った---- 58 「姫様…お体が冷えたでしょう、湯殿に参られませ---」扉を開けると、待っていたムーラは何も問わない--- 掛ける言葉が見つからなず、黙って頷くと付いて行く。 途中で立ち止まり、ミタムン王女の宮殿を振り返り、先程の…小部屋と同じ様に、今度は宮殿に向かって深々と頭を下げるキャロル。 ミタムン王女が、既にこの世には居ないという事実を、知る目撃者として--- (ゴメンナサイ…本来なら王女として手厚く葬られる筈なのに…亡くなった日さえも知らせる事も出来ない私を…) (どうか…安らかに…)人知れずに、祈る事しか出来ない無力な自分--- (私が生を終える時まで、重い枷として背負い続け、せめて心を込めて祈り続けていきます---) 「あの…王子とミタムン王女はとても仲が良かったのですね…」意外な質問に、ムーラは、すぐに優しい笑顔を浮かべて 「はい…留守がちの王の代わりに…時に父親の様に厳しく諭されたりもしましたが、でも旅から戻られると、真っ先にミタムン 王女様への贈り物を自らお届けになり…その日は夜遅くまで笑い声が、この宮殿に響いていましたよ…」 懐かしみながらも、過去形で話すムーラ--- (あなたも…わかっている…のね) 「…姫様、申し訳ありませぬ、お風邪でも召しましたら大変です、急ぎましょう」「…はい…」王子の宮殿へ戻って行った 59 キャロルの脱いだ衣装を手に取り、あちこちに血が付着している事に痛ましげに見つめて--- (…姫君…どうか我が王子をご理解下さいませ----) ---湯殿から出てきたキャロルの、身支度を整えてゆくムーラが選んだ衣装は、今迄身に付けさせられていた物よりも子供っぽい衣装だった。「姫君…これはミタムン王女の為に誂えたものですが、今日は何故かこれを着ていただきたいと思ったのですが…お嫌でしょうか?」「…私が着てもいいの?」「今日は何故か王女の事ばかり思いだされます…姫君にこそ着て頂きたいのです」「…はい…」違和感を感じるキャロル----(姫様ではなく、姫君と…何故?) 「姫君は、まだ幼い姫の様にお可愛らしいですから…あぁ!衣装もよく、似合っておいでです」嬉しそうに微笑んでいる-- (私に…ミタムン王女を重ねている…)--(…いつかは王妃様と呼ばせて頂く日迄、ミタムン様と思い仕えさせて頂きます) それが、ムーラの願い--成就するまでの思いを込めた意味を持つ呼び方になった。 60 その日は、宮殿の大広間も人の熱気とざわめきに満ち溢れていた。 「王子、異国の者には特に油断は禁物ですじゃ、昨夜の賊の事もありますからの」将軍は影のように王子の傍に張り付いている 「わかっておる!心配致すな」と、王子の前には次から次へと色々な品物が出され並んでいる。 珍しい織物・他国の衣装・宝石・置物など、その中から気に入った物を選んでゆく王子--- 広間の横から目立たぬようにルカも、王子の身辺に気を配っていたが、商人の中に見知った顔を見つけると。 将軍を呼ぶように、顔見知りの侍女に言付けすると、目立たぬ様にひっそりと回廊で待つルカの元へ将軍がやってきた。 「ルカ、どうしたのじゃ?」「将軍、あそこにいる者を見てください」白いカーフィアを被ったハサン--- 「王子より、エジプトに行くと聞きました、あの者姫の信頼も厚く、エジプト兵士達にも知られており 王宮にも出入りする事が出来る者です…お役に立つと思います」 「何?あの者がか」「どうなさいますか?」 「ん…待っておれ、王子に伺ってみる事にしよう」と王子の元へと行き、すぐにルカの元に戻ってきた--- 「ルカ、王子よりの言付けだ、かの者は信頼はおけるのか?」「それはエジプト側にとってという意味ですか?」 「全てじゃ」「はい、少々風変わりではありますが…」「では、全てお前に一任すると申されていた…後は任せたぞ」 「はっ」(まずは、ハサンに近づかなくては…) ---その後、ハサンと似た衣装を身に付けたルカが、広間の人ごみに紛れてハサンに近づいて行き、声を掛ける。 「ハサン…声を出すな!」声を掛けた人物を確認する為に、隣を見たハサンが驚きの声をあげそうになるが… すぐに、持ってきた売り物を確認する商人の顔に戻り、「どうしてここに?ルカ…」「話があるんだ、ハサン」 「…何か…あったんだな」「…まずは、ここから出よう、話はそれからだ」「…わかった…」 「では、怪しまれない様に、ハサンが品物を見せ終わったら、私に付いて来てくれ」「わかったよ」 「私は、それ迄出来る限りの根回しをしておくから」言い終わると、目立たぬ様に広間から出ようとしたルカに「もし、そこのお人」女が声を掛けて来た----- |