『 ヒッタイト道中記 』

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真っ直ぐな王子の視線に戸惑いながら、キャロルは上目遣いで見上げる。
「あの・・・王子、ここは・・・?」
王子は静かに微笑む。
「・・・ここは私の宮殿・・・私の寝室。今後、そなたが私の胸で眠る処ぞ」
そう言っただけであるのに、キャロルの頬が花を散らしたように上気する。
視線を逸らしてキャロルが問う。
「・・・じゃ、今ハットウシャに?
あ・・・わたし肩を刺されて・・・それから・・・?」
「そうだ、幕舎で賊に斬り付けられ手負いになったそなたを連れて参った。意識無く・・・熱にうなされるそなたを・・・私がどれ程に案じたか!!まったく、生きた心地がしなかったぞ」
王子はキャロルの頬に手を沿え、真剣な眼差しで見据えた。
荒々しくキャロルを組み敷いて唇を心のままに奪いたいところであるが、王子は努めてそっと唇を重ね合わせるだけに留めた。
「王子・・・心配させてごめんなさい。でも、でも・・・わたし王子を守りたかったの。だって、わたし・・・!」
王子は首を横に振って、キャロルの言葉を制した。
「・・・よいか、姫!よく聞くのだ。私と共に過ごせば、あのように刺客や賊に襲われる事も今後ままあるや知れぬ。ヒッタイトの世継として生を受けた我が身、それを避けては通れぬのだ。ゆえに、私は自身とそなたを護る術を心得ておる。例え私にどれほど危機が迫ろうと、戦う事を知らぬそなたが出て来てはならぬ!絶対にだ!よいか、私がそなたを護るのだ!!・・・二度とあのような無茶な真似をするでないぞ!そなたに何かあらば、私はっ・・・!!」

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言い終わらぬうちに、王子はキャロルに覆いかぶさるようにして抱きしめた。
「くそうっ・・・そなたを力の限りに抱きしめたいが、それもままならぬ。口づけさえも思うままにできぬとは・・・!」
キャロルは叱り付けるような王子の態度に、どれ程深く愛されているかを思い知らされ、幸せを噛みしめながら王子の熱い胸に頬をすり寄せた。
(大好きよ・・・王子)
「して、わかったのか?!姫よ」
「ん・・・心配させたのは悪いと思うわ。王子に心配させるような事はしないようにする。だけど、やっぱり王子が危なかったら助けに行っちゃうと思うわ」
王子は一瞬キャロルを睨みつけたが、すぐにそれは愛しさ混じりの苦笑に変わった。
王子とて、キャロルにそのように想われて嬉して仕方がないのだから。
「ふふ・・・ははは・・・!まったく、まったくそなたは手に負えぬわ!ならば私を心配させぬよう、早く回復いたすよう努める事ぞ。そなたとの婚儀を私は心待ちにしておる。婚儀はそなたの身体が戻り次第、挙行いたそう」
キャロルは王子の言葉に何度も頷いた。
王子が優しく額に口づけし、その手がゆるやかに髪を撫でる。
キャロルは再び夢の中へとまどろみ始めた。

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戦後処理や帰国後のあらゆる諸事に慌しい中、王子は政務を驚くべき的確さと迅速さでこなし、臣下の者を唸らす一方でキャロルとの婚儀の準備もぬかりなく進めていた。
そして時間を捻出してはキャロルの許へと通った。
王子はムーラやルカでさえ目を疑う程の甲斐甲斐しさでキャロルの看護をし、キャロルへの寵愛ぶりは王宮での尽きぬ話題となった。
しかもキャロルを気遣う王子はムーラやルカ、そして極側近の侍女や侍医にしかキャロルを会わせない為、この寵姫の噂は王宮を駆け巡った。
その甲斐あってキャロルの容態は日に日に良くなり、そしてまたキャロルが回復してゆく様は何よりも王子を喜ばせた。

執務を終えルカ宮殿へ戻る途中、王子は中庭を見ながらふと足を止めた。
美しく手を入れられた花々に彩られた広い中庭の一角に更に樹木で囲われた小さな庭園がある。
初夏の青葉が見た目にも爽やかである。
この庭園の木陰は一人になって静かに書を読むのに最適で、王子の最も気に入りの場所のひとつであった。
「姫をこの庭園に連れて参りたいものぞ・・・実によくできた庭であるな」
背後にいたルカに言った。
「そうですね。花がお好きな姫の事、さぞお気に召されるでしょうね」
王子は突然に何かが閃いたように両手を打ち合わせ、少年のような輝かしい笑みをその顔に浮かべた。
ルカは意表を突かれ、しばし王子らしからぬその表情を見つめていた。
(王子もこのようなお顔をされる事があるのだ)
いつも澄ました印象の強い王子だけに、とても嬉しい気分にさせられる。
「良い事を思いついたのだ!ルカ、そなたに頼みたい事がある」
「はっ、何でございましょう?」
王子は勿体ぶってルカの耳元に顔を寄せると、小声で耳打ちした。
まるで重大な指令を下すかのように声をひそめて話すが、王子の声はいかにも楽しげであった。
真顔で聞いていたルカの表情もみるみるうちに今にも笑い出しそうな笑顔に変わる。
「かしこまりました、王子!ならば今すぐ手配にかかりますゆえ、どうぞお待ちを!」
「・・・ふ、頼んだぞ」
満足そうに王子が片手を上げ足取りも軽くキャロルの許へ去るのを見送ると、ルカは早々に馬を引いて王子の命を果たすべく出立した。

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負傷したキャロルを王宮に連れ戻ってより、王子はキャロルを自室の寝台に寝かせていた。
勿論、他に幾らでも部屋を用意することはできるのだが、あえてそうしていた。
執務を終え馴染んだ自分の部屋にもどれば自分の寝台にキャロルがいるという事が、王子にはたまらなく幸せであった。
すっきりと整頓され整ってはいるものの、男の部屋らしく無駄に飾り立てる物など置かれておらず殺風景とも言える。
天井に届きそうな大きな書庫には膨大な書物や巻物、剣や弓など武具の数々・・・そして続き部屋には大きな寝台が置かれているだけの以外に素朴な部屋。
しかしキャロルがそこにいるというだけで、なんと甘く華やいだ空気が部屋中に満ちることか。
(この部屋も少し姫に似つかわしく改めねばならぬかな・・・)
王子の口許が自然と緩んだ。

王子は寝室に入ると、寝具の上に流れるキャロルの黄金の髪を見つけて微笑んだ。
小さな白い顔は長い髪に埋もれるように、安らかな寝息を立てている。
ムーラからキャロルの様子を静かに聞きだすと、薬湯を用意するように命じた。

寝台の脇の椅子に腰を下ろすと王子は身をかがめて、眠るキャロルに優しく口づけした。
キャロルが怪我人であるのはよくよく分かっているはずなのだが、王子は身体がざわざわと熱くなるのを抑え切れない。
一度キャロルの身体を味わっただけに、あの感触が事あるごとに艶かしくよみがえり王子を苛んだ。
軽く口づけるだけのつもりであったのに唇はキャロルから離れがたく、それどころか更に熱を帯びてきてしまう。
キャロルの瞼がゆっくりと上がり、碧い瞳が開く。
「・・・王子?」
「おっと、起こしてしまったか。・・・具合はどうか?」
王子の幾分上気した瞳はキャロルを捉え、唇はなおも額に頬に耳元に口づけを与え続ける。
「もうほとんど痛みはなくなったわ。先生も傷は割ときれいに治るんじゃないかって言ってくれたの」
「そうか・・・。
どれ、傷を見せてみよ」
王子の指がキャロルの夜着の肩紐をほどいて胸元をはだけさせ、肩の白布を取り払う。
長く器用な指が肌の上を滑るのを、キャロルはドキドキしながら見守っていた。

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「うむ・・・化膿もせずに上手く塞がったな。時間はかかるであろうが、傷跡も薄れてまいるであろう」
王子は平静を努めて落ち着いた表情でそう言って包帯を巻きなおしてやったが、傷口のすぐ下に盛り上がる白い膨らみの谷間が気になって仕方がない。
それを覆い隠す薄絹の夜着をもっと引き下げて、柔らかな膨らみに触れてみたい。
しかし、キャロルの身体を案じる理性が何とか衝動を抑えていた。

「もう私大丈夫よ、毎日毎日寝てばかりじゃ身体がなまってしまうわ。そろそろ寝台から出たいんだけど・・・まだダメ?」
「ならぬ!」
容赦ない王子の声の響きにキャロルは眉根をしかめた。
「大丈夫よ。だってもう痛くないもの、宮殿の中を歩く位いいでしょ?こんなにじっとしてたら、かえって悪くなっちゃう」
「どれほど出血したと思っておるのだ?危うく命を落とすところだったのだぞ!!侍医の許可がでるまで、いましばらく大人しく養生しておるのだな。今日も書を読んでやるではないか・・・それとも退屈か?」
王子に軽く睨みつけられて、キャロルは慌てて首を横に振った。
「ううん、王子がこのお城の事やヒッタイトの歴史を色々教えてくれるのは楽しいわ。とても興味があるのよ。だからこの目で見たくて見たくて仕方がないの!」
興味に目を輝かすキャロルを見ると元気を取り戻したのが嬉しい反面、もっと縛り付けておきたいという激しい独占欲に駆り立てられる。
キャロルをこのままずっと何処にもやらず誰にも会わせず、部屋の中に閉じ込めておければどれ程いいだろう、と王子は何度も考えた。
―――そう、寝台の中で自分の帰りだけを待たせて、他の何も考えさせず―――

76 Ψ(`▼´)Ψ
「ねぇ、王子。部屋の外に行きたいわ・・・もうウズウズしてるの!」
おもむろにキャロルが上体を起こそうとしたので、肩紐を解かれていた夜着はしどけなくキャロルの腰元へ落ちた。
果実のように初々しい二つの膨らみが王子の眼前で弾むように揺れ、まだ柔らかに眠る薔薇色の頂きが王子を誘う。
突然の事に王子はカッとなり、思わず理性も忘れてキャロルの乳房に触れてしまった。
「きゃぁ!」
王子に触れられて初めてキャロルは胸元をさらしていた事に気づき、両手で隠そうとしたが遅かった。
それより早く王子は白い胸に顔を埋めるように、キャロルの身体を抱いていた。
「・・・何がウズウズだ!私がどれほどそなたの身を案じ、自分を抑えていると思っている?!」
王子は苦しさを吐き出すように言い、胸の頂きを唇に含んだ。
息を呑むようなキャロルの吐息と共に、小さな頂きは王子の口中で舌に転がされるとあっという間に固くなった。
キャロルの反応に煽られるように、王子の自身も更に固く強張っていった。
「外へ出せだと?・・・ならぬな!出してなどやらぬ。そなたを存分に愛し尽くすまで・・・外になど出してなどやるものか!」
王子はこのままキャロルを押し倒して、身体で組み敷いてやりたいのを何とか自制しようとするが、股間にそそり立つものが、どうしてもキャロルの中に押し入りたいと悲願する。
しかし今キャロルを求めれば、とても穏やかに抱いてやれる自信はない。
初めての夜以上に激しくしてしまうに違いない。
(ならぬ、しかし・・・欲しい・・・欲しい・・・今すぐ欲しい!)
眉根を深く寄せて堅く目を閉じた王子の官能的で苦しげな表情に、キャロルは胸に熱い痛みを覚えた。
王子に抱かれた時と同じ熱い疼きがよみがえる。
「王子・・・好き・・・愛してる」
理性と欲情のはざまで葛藤に苦しむ王子を、キャロルの一言があっさり狂わせる。
キャロルが王子の胸に身を預けるように寄りかかってくると、もはや王子はこれ以上自分を抑える事など出来なかった。

77 Ψ(`▼´)Ψ
「この・・・!!」
王子は苦々しく唇を噛んで睨みつけると同時にキャロルを寝台に倒し、白い身体に纏わりつく衣を手馴れた手付きで引き裂くように剥ぎ取った。
「いやっ・・・!」
キャロルは突然の王子の激しい振る舞いに恐れ慄いた。
白昼の明るい光のもとに全裸をさらされ、キャロルは恥ずかしさに身を捩り、上掛けを身体に巻きつけて身体を隠した。
「何を申す・・・そなたが悪い」
王子は脇の椅子に座ったまま、上掛けの隙間を縫って手を入れるとキャロルは身体を堅くして王子から逃れようとした。
しかし王子の力強い手は容赦なくキャロルの身体を撫でるようにまさぐった。
上掛けの下で、大きな手のひらが膝から太ももを這い上がり、足の付け根に触れる。
「あっ・・・」
キャロルの花びらのような唇から可憐な声が漏れると、ニヤリと魅惑的な笑みをキャロルに向けた。
指が優しく淡い草むらを撫でまわし、そして淫らな動きで掻き乱す。
「あ・・・やめて・・・いや」
「・・・そうかな?」
そう言うと王子は草むらの下の亀裂を指で広げ、触れた。
蜜の溢れる花弁の中に王子の長い指が沈む。
王子の自身で貫かれる程の圧迫感は無いが、器用に動く指先で胎内を内側から愛撫されると、不思議な戦慄が背筋を走った。
「んん・・・!!」
そして花びらから抜き取られた王子の指が、一番敏感なキャロルの真珠を探り当てた。

――その時。
「お薬湯をお持ち致しました。遅くなり申し訳ございませぬ」
ムーラが盆に薬湯を載せて寝室に入ってきた。

78
「あら、もうお目覚めでございましたか?」
いつもどおりの何気ない気遣いを見せながらムーラはキャロルに尋ねた。
キャロルの身体は上掛けで覆われているので、キャロルの身体が一糸纏わぬ裸体である事や王子がキャロルの秘所に愛撫を施していようとは、ムーラには知る由もない。
王子はムーラの入室にも全く動じず、涼しい顔をしたままキャロルを愛しむ手を止めようともしない。
キャロルはこの時ばかりは、王子の愛撫を恨めしいと思った。
しかし声に出して「やめて」と言う訳にもいかない。
「おお、ムーラ。薬湯をここに持ってまいれ、後で私が飲ませよう」
「はい。姫君、ご気分はいかがでございますか?」
ムーラが寝台に近づいてくるので、キャロルはすがる様な目で王子に懇願した。
しかし王子はキャロルの反応を楽しんでいるかのように、さらに指先は真珠の上で舞うように円を描く。
「・・・・・・!!」
今のキャロルにはムーラの問いに答えるなど、とても出来ない事だった。
唇を開けば、とたんに喉の奥から悩ましい声を上げてしまっただろう。
「あら、お顔が赤うございますわ。また熱が上がられたのではないでしょうね?」
キャロルは必死で顔を横に振る。
ムーラの言葉にあわせるように、王子はキャロルを覗き込んだ。
「姫・・・どうした?・・・熱でもあるのか?」
わざとらしく心配そうに、もう一方の手をキャロルの額にのせて熱を見るふりをする。
もうキャロルは弾ける寸前までに昂ぶっていた。
王子の指が真珠を摘まみ上げ、2本の指でこねる様に強烈な刺激を与える。
キャロルは寝台の奥の壁側へ顔を向けて、息を殺して甘い責め苦に耐えた。
白い喉が震えて小さく痙攣し始めている。
キャロルの限界を悟った王子はムーラに向き直り、いつもどおりの口調で言いつけた。
「ムーラ、姫に何か果物でも持って参れ。少し熱があるのかも知れぬ」
「・・・かしこまりました」

79 Ψ(`▼´)Ψ
そう言ってムーラが背中を向けると、王子の指はいよいよ激しくキャロルの絶頂を煽って真珠を擦り立てる。
(あっ・・・もうだめ!)
ムーラが部屋を下がるとほぼ同時にキャロルは身体をわななかせて昇天した。
甘い泣き声が唇から漏れそうになったが、すんでの所で王子の唇に封じ込められ押し殺された。
キャロルは肩を上下させて荒い呼吸を繰り返し、時おりむせるように咳き込んだ。
ぐったりと脱力したキャロルの背中を王子は優しくさすってやった。
(やはり・・・まだ体力が戻っておらぬか)
王子は少し可哀相な事をしたと反省しつつも、冗談めいた口調でキャロルをからかった。
「・・・よくぞ耐えたな、褒めてつかわすぞ」
キャロルは涙をいっぱいに溜めた碧い瞳で王子を振り返り睨んだ。
「ひどい・・・ひどいわ!王子!!」
王子の腕を力任せに叩いた。
しかしその力は、まだまだ弱々しい。
「私をいつも悩ませる罰ぞ・・・心して受けよ」
クスクスと王子は可笑しそうに笑った。
しかしキャロルは涙をポロポロと溢して、泣き始めてしまった。
さすがに王子は少しうろたえて、キャロルの顔を覗き込んだ。
キャロルの身体をそっと抱きしめ、涙を唇で拭ってやると、キャロルの濡れた頬に自分の頬を擦り付けた。
「ふふ・・・すまぬ、姫よ。そなたが愛しくて堪らぬゆえ・・・苛めてみたくもなるのだ。許せよ」
優しくあやしてみるが、キャロルはまだ腕の中で脹れたままだ。
しかし幾らキャロルが拗ねて脹れてみせても、王子は愛しさをいや増しに募らせるだけである。
勿論キャロルの笑顔が一番好ましいのであるが、キャロルが怒ったり泣いたりするのをなだめて慰めるのもまた王子にとっては悦びであった。
「そう怒るな。そんな可愛い顔で睨まれると、また苛めたくなるかも知れぬぞ」
キャロルは王子相手に怒ってみてもあまり意味が無い事を悟り、呆れたように言った。
「もう!あんな事する王子は嫌いよ!」
唇を尖らせてそっぽを向くキャロルの頭をそっと撫でると、包み込むように抱きしめた。
「・・・わかった、わかった。そうだな・・・よし!では、近いうちに・・・そなたにこの城を案内してやろう。ハットウシャの市街へも連れて参ろうぞ」

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王子の腕の中のキャロルがパッと顔を上げた。
「本当?」
「おお・・・嘘を申して何とする」
キャロルの白い顔に華やかな笑顔が広がる。
「嬉しい! ・・・早く行きたいわ!」
「まず、身体を回復させてからだ」
「ん・・・わかったわ」
珍しく素直にキャロルが折れた。
王子はキャロルの顎に手を添え自分に向かせると、悩ましい琥珀色の瞳で見つめた。
「そして・・・今日の続きを終えてからだ。今日はそなたの身体を案じて仕方なく断念いたすが・・・もう待たされるのは懲り懲りだ、今後は・・・欲しいときに何度でもそなたを私のものにする!」
そう言い放つ王子の身体はとても熱っぽくて、キャロルの胸をドキドキさせる。
王子と結ばれたあの夜を思い出せば、キャロルだとて熱い吐息を漏らさずにはいられない。
王子は脱ぎ捨てられたキャロルの夜着を手繰り寄せた。
(抱こうと思うていたに、衣を着せてやらねばならぬとは・・・何と不本意な!)
心の中で愚痴をこぼしながらも優しい手付きでキャロルに夜着を着せてやり、寝台に寝かしつけた。

「さぁ、疲れたであろう。薬湯を飲んでしばらく眠るがよい。側に付いていてやろう」
「だめよ、王子。ムーラが果物を持ってきてくれるのに」
薬湯の入った杯を受け取ると、キャロルは可愛らしく王子を睨んだ。
「・・・そうであったな!」

ちょうどその時にムーラが果物を持って入って来た。
「姫君!無理に起き上がってはいけませぬ。それにまぁ、何ですか。まだお薬湯をお飲みになられていないのですか?!」
ムーラの心配をよそに、二人は目を合わせて苦笑いするのであった。

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