It`s a big mistake!











「ったく、なんで3人揃って風邪引くかねぇ」
体温計を見て、ティーダは呆れた顔を浮かべた。
「39度2分。わかった?ちゃんと寝てろよ」
ボサボサの髪をひとつにまとめてバンダナのかわりに濡れタオルを乗っけてやる。
「アタマいてぇ・・・っ」
ジェクトは苦しそうに息を吐き出した。



朝起きると自分以外誰も起きていなくて。
いつも飯を作っているアーロンも、お茶を飲んでいるブラスカもいない。
ジェクトがいないのはいつもの事だけど。
不審に思ったティーダが2階のジェクトの部屋をあけると。

オヤジ3人が裸で寝てた。

ジェクトを真ん中に川の字に、狭いベッドにぎゅうぎゅうになって裸で・・・
「なっ・・・なっ・・・」
「んー・・・・・・。・・・・あっ!」
ムクッと寝ぼけ眼で起き上がったブラスカはティーダを確認したとたん、びっくりして飛び上がった。
「ティ、ティーダ君!な、なんでっ!!」
「ブラスカさんこそ、なんでオヤジの部屋に!!!」
ティーダのアタマの中は大パニック。2人の大声に残りの2人もモゾモゾと起き上がってきた。
寒くなっているのにも関わらず、3人は裸で寝ていたせいでくしゃみしまくりで。
顔も赤い。特にジェクトが。
とりあえず言い訳は後で聞くとして、3人の額に代わる代わる手を当てれば、案の定熱い。
「やっぱなあ。この時期に裸で寝てりゃ風邪引くっての」
適当に服を着せ、各自の部屋に戻らせ、先程から熱を測っては濡れタオルをもっていっているのだ。
おかげでティーダは今日の練習を休む羽目になった。





「ブラスカさん、調子はどう?」
ブラスカの部屋に入ると、暖房が効いていてもくもくする。
ベッドでふとんを何重にもかぶっているブラスカの顔色はジェクト同様赤く、だるそうな表情を
浮かべていた。ティーダは持ってきた濡れタオルをブラスカの額に乗せた。
「ありがとう・・・」
「いいッスよ。気にしないでください」
ブラスカはこんな時でも微笑みを絶やさない。
「ジェクトは・・・?」
「すごい熱。9度出てる」
「そうか・・・悪い事したな・・・」
「そうッスよ。何してたんスか?」
ティーダにもある程度の予測はついていたけど。
だって、服を着せたジェクトの体中には情事の跡がそこら中に残っていたから。
「風邪が治ったらゆっくり話すよ」
ごほごほ咳き込んだブラスカに詳しく問いただすのは可哀想だ。
ティーダは薬をおいた後、アーロンの部屋へと移動した。

「アーロン、大丈夫?」
「・・・大丈夫じゃない・・・」
アーロンもふとんを何枚も被っていた。
「なんだよ、せっかく薬持ってきてあげたのに」
ティーダはサイドテーブルに薬を置くと熱をはかった。
「・・・38度5分か・・・。皆何したらこんなに熱が出たんだか・・・」
チラッとアーロンを見てみると気まずそうな顔をしている。
「ともかく、ちゃんと寝てろよ?次はお粥でも作ってくるからさ」
「すまんな・・・」
「いいって。じゃあね」
全員の様子は見た。あとは昼にお粥作って持っていくだけだ。
ティーダはとりあえず自分の部屋に戻ることにした。



「ふう・・・・」
自分のベッドに寝転がって。ティーダは電気をつけていないせいで灰色にみえる天井を眺めた。
「オヤジ・・・」
今朝みた光景がティーダの中でフラッシュバックした。
自分より焼けた、健康的な体に浮かび上がる、紅い跡。
きっと、今日がはじめてじゃない。
思い起こせば不自然な事はいくらでもあった。
自分と同じくらいブリッツ狂のジェクトが練習をサボった事もしょっちゅう。自己練にいっているかと
思えばずっと家でぐーたらしてたり。だるいだのなんだのいって。
朝だって、ザナルカンドにいた頃はずっと早かったはずだ。
一緒に暮らし始めてから、遅くなった。
ただのぐーたらになったのかと思ってたのに。
夜さんざん犯って、朝起きれないってわけか・・・。
そういえば、ジェクトが遅くおきてもティーダ以外は遅い。なんて言っていなかった。
3人の、暗黙の了解――――――
「なにそれ・・・ひどいじゃん。俺仲間はずれ・・・」
違う。ティーダが嫌なのは、ジェクトが他の男に抱かれていたという事実。
「俺じゃ・・・勝ち目ないのかな」
ティーダの想い人。ジェクト。
父親・・・男・・・不道徳なのなんて百も承知。
そんなのが頭を過ぎらない程、ティーダの、ジェクトへの想いは強かった。
はじめは・・・・嫌いだった。
母を取られたと思っていた。
あの男がいる限り、母は自分を見てくれない。
死んだと聞いて、安心した自分がいた。でも、母は弱り果てて、結局自分を構う事なく他界した。
許せなかった。いなくなってもなお、母を心を占めたジェクトが。
ブリッツ選手として頭角を表し始めたときも、日々の生活もすべて比較されてきた。
ティーダの中の父の印象はどんどん悪くなっていった。
だけど・・・スピラにきて、シンと化したジェクトを見た時、救ってやりたいと思った。
10年振りにみた父の背中はとても小さく見えた。
殺したくなかった。なんで自分が・・・。でも、スピラを救いたかった。
でも、それはジェクトの死を意味する事。
倒れた父を抱き締めた時、瞳が合った。
記憶の中の燃えるような紅い瞳は光を失い、今にも閉じそうな瞳。それなのに
泣いた自分に優しく微笑んだあの顔。
好きだと思った。大好きだと思った。本当に、ジェクトの息子でよかったと思った。
それが親に対する愛情から恋愛に対する愛情に変わったあとも。
なのに・・・
「・・・クソオヤジ・・・」






台所に立つのは久しぶりだったが、まだまだ腕は落ちてはいなかった。
3人分のお粥を作り、ティーダはそれを器に盛りブラスカの部屋へと向かう。
「ブラスカさん、起きてる?」
返事はない。ベッドに近づくと、苦しそうだがどうやら眠っているようだ。
仕方なしにアーロンの部屋へ向かうが、アーロンもまた寝息を立てていて、
はあとため息をつくと、ジェクトの部屋へと向かった。
「オヤジ、起きてる?」
「おう」
ジェクトはどうやらおきているようだった。
「まだ頭痛い?」
「ああ・・・さっきよりは痛くねえけど」
「お粥、持ってきたよ?体起こせる?」
「ああ、ありがとな」
素直に言われてティーダはびっくりした。
「自分で食べれる?」
「たりめーだ」
「食べさせてあげる」
「いいって。はずい」
「いいから!はい、あーん」
「・・・っ、仕方ねえな」
ジェクトは渋々口を開いた。
粥が流し込まれると、その味にジェクトは懐かしさを覚えた。
「おめー、料理はアーロンに習ったのか?」
「うん。俺が熱出した時とかもこうして作ってもらったッス」
「そっか・・・」
共に旅をしていた頃、ジェクトやブラスカが熱を出した時に作ってくれたのと同じ味。
ジェクトはちょっぴり幸せな気分になった。
もちろん、ティーダはそんなジェクトの様子をいち早く察知して。
「はい薬。・・・ねえ、3人同時に風邪引くなんて、一体何があったんスか?」
ティーダが聞くと、ジェクトは薬を飲むために口に含んだ水をブッと盛大にふきだした。
「汚いなあ・・・」
「お、おめえ、いきなり何っ!!」
顔を紅くして口ごもる彼に、ティーダは遠慮なく喉に出かかった言葉を口にした。
「アーロン達とえっちしたんでしょ?」
「・・・・・・っ」
さらに紅くなるジェクトの反応を肯定と受け取るとティーダはため息をついた。
「だってさ、オヤジの体にさ、跡・・・いっぱい・・・」
体をまさぐり跡を確認するとジェクトは顔を紅くしたまま頭を掻いた。
「・・・悪ぃな、こんな父親でよ・・・」
「・・・別に・・・そんな事思ってないし・・・。オヤジさ、アーロンとブラスカさんの事・・・好きなの?」
恐る恐る聞く。うん、といって欲しくない。
だが、ジェクトからはティーダが一番聞きたくない言葉が出た。
「・・・ああ。少なくとも抱かれたいと思うくらい・・・好きだ・・・」
絶望感に体を覆われる。
「そうなんだ、お、俺、アーロン達にもお粥持っていかなきゃ・・・」
これ以上ジェクトと顔をあわせていられない。涙を必死に押さえて、また来るね、と
それだけ発すると部屋を出た。
途端、視界がぼやけた。
「うっ・・・うっ・・・」
出てくる涙を拭いもせず、ティーダは泣き続けた。
ジェクトには好きな人がいる。
それは自分ではなく、自分を育ててくれた人と、自分が一度は好きになった人の父親。
かなうはずがない。いや、そんな人達から奪えるわけがない。
戦わずして敗北だ。ティーダは顔をこすりながら台所へ向かった。
頑張って、いつもの自分らしくしないとジェクトはきっと気にしてしまう。
自分の想いは心の中にしまっておこう・・・。そうすれば丸く収まる。
だから・・・明日からは普通に接しよう。







ティーダの気配が消えるのを確認すると、ジェクトははあっとため息をついた。
「泣かせちまったか・・・」
軽蔑・・・されたか・・・。
「それでも、仕方ねぇ・・・よな・・・。俺の本心、あいつにだけは知られたくねェ・・・」
ティーダの作った粥の残り粒を指先でひろう。
「俺がアイツを好きだなんて・・・・・・な・・・」







「なあ、俺どうしよう」
夜も更けた頃、アーロンと仲良く酒盛りしているブラスカの部屋に入り込んだジェクトは
息子への想いをぶちまけていた。
「あなたもしつこい人ですね。一発かまして好きだと言えばいいって何回言わせるんです」
尊敬する大召喚士の口から出るとは思いもしない何回目かの発言にもアーロンは慣れた
らしく、前のようにコップを落としはしなかった。
「んな事して嫌われたりなんかしたら元も子もねぇぜ」
「お前は元から嫌われているだろうが」
「んな事ねえって。昨日なんか俺様ににこにこの笑顔向けやがってよぉ」
スピラにいた時もそして今もジェクトはティーダティーダとうるさかった。
ティーダはジェクトが想像していたよりも立派に、男らしく成長していたようで。
「それであなたは何をしに来たんですか」
ブラスカはふうとため息をつくとジェクトを抱き寄せた。
「淋しさを紛らわすために、また抱かれに来たんですか」
「あ、やっぱわかる?」
にぃ、と笑うジェクトに、ブラスカはさらにため息をはく。
「・・・仕方ないですね。今日は2人がかりで犯してあげますよ。ね、アーロン」
「俺は別に・・・」
「いいぜ・・・来いよ・・・」
欲情したジェクトの色香を目の前にして、アーロンもため息をついて、ジェクトに乗る。
「そうこなくっちゃな」
「黙れ」
ジェクトの口を口でふさぐ。
舌を差し出すとジェクトは自分からそれに絡み付いてくる。
ジェクトとアーロンは体の相性が良いらしく、2人の体は早々に熱を帯びてくる。
「・・・ん・・・」
唇の角度をかえる度に零れる声に気を良くし、アーロンはジェクトの胸をまさぐりはじめた。
「アーロンに独り占めはさせないよ・・・」
ブラスカはジェクトの下半身に手をかけ、服の上から形を帯び始めているそれに触れる。
「あ・・・・」








「ま、最低な父親だと思われるほうがマシか・・・」
ジェクトは静かに瞳を閉じた。




眩しい感じに目を開けると、窓から太陽の光が差し込んでいた。
「半日以上ねてたのか?」
慌てて顔をおこそうとして、布団の端でつぶれている存在に気付いた。
「ティーダ?」
金色の髪がジェクトの動きでふわふわと揺れていた。
少し痛んだ毛先をつまむと、ジェクトの顔に自然と笑みが浮かぶ。
「ほんと、でかくなったもんだ・・・・・・」
きっと夜通し看病してくれていたんだろう。
ティーダの手には濡れタオルが握られていた。
「寝てんのか・・・」
まだ幼さの残る寝顔はとても可愛くて。
「大好きだぜ、ティーダ」
身を起こしその額にキスをする。
昨日は9度以上の熱があったが、今日は幾分か動きやすい。
「かぁー、腹減ったなあ」
何か作ろうと台所へ向かおうとすると、何かにつかまれている気がして。
振り向くと、ティーダの左手がジェクトのパジャマを握っていた。
ジェクトはそれをやさしくはなし、ティーダを抱き、ベッドに寝かせた。
「よっこらせ・・・だいぶ重たくなったな」
すやすやと眠る息子にもう一度キスをすると、ティーダの唇が微かに動いた。
「・・・ォ・・・・・ジ・・・・好き・・・」
ティーダの寝言にジェクトは驚愕とした。
好き・・・・・・・・・・・・誰が・・・・?
聞き取れなかったせいで、ジェクトは混乱した。
ティーダに好きなやつがいる・・・?
寝言でいうほど好きなやつが。
ガンガンと頭がいたいのは風邪を引いているだけではなかった。
「・・・そら、そーだな、俺様の息子で・・・こんなイイ男なんだし、好きなヤツの一人や二人
くらい・・・いるか・・・」
目尻が熱くなるのを必死に耐えて、ジェクトは部屋を飛び出した。




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