リローデッド編へ

　貨物列車から降りたネオは、屋台などが並ぶ町の中に出て、３人のエージェントから逃げ回る。
　銃によってすいかが破裂したりする中、プレイヤーはあるモノを見つけることになる。それは………
　ネオがこれから入る扉の方向に矢印が向いており、矢印の上に「ＮＥＯ」と書かれているというものだった。よく見ると「ＮＥＯＮ」という店の看板が一文字消えてＮＥＯになっている。

　そしてネオは例の３０３号室で死んで甦り、エージェント３人組の撃った弾を止めて見せる。エージェント・スミスを破壊する場面がステージ化されており、彼の部下ブラウンとジョーンズとも戦う事になる。

　戦いの後、「人々に本当の世界を見せる」と宣言し飛び立つネオ。しかし画面がスーッと引き、ネオを監視するアーキテクトのモニターと、アーキテクトの手が映る。こんな絵は…とりあえずＤＶＤ（古いほう、ＢＯＸセット両方）には無かった。
　こんな興醒めといえば興醒めな絵を採用したのはどういう訳か…ゲーム全体を通してみると「全ては設計者の手の内だよーん」というのがストーリーの骨格では絶対になく、従ってこんな絵を入れる必然性も無い。
　思うにコレは、所謂「次回へ続く！」というやつではあるまいか。リローデッド以降の話は決してただの後付ではなく、物語として第１作と繋がっていて意義もあるものだと言いたい…。どうだろうか。
　そして物語はリローデッド編へ。

　モーフィアスによるナレーションが流れ、映画「リローデッド」の設定を活かしたオリジナル話から始まる。映画「リローデッド」より数ヶ月前。何人ものマトリックスの真実に気づいた人々が、ネオによってエージェントの襲撃から助け出される。このへんの短編集の様な展開がまた興味深い。

　例えば、怪しいクラブに監禁された東洋系の？女がいる。問題は舞台となるクラブ。
　パーティーが終わった後でガラガラになっているから判り難いが、よく見ると「レボリューションズ」に出てきたクラブ・ヘルそのものである事に気が付く。何故先回りしてここで出したのか。
　女を其処から出してやろうとすると、猟犬の様な男達がネオに襲い掛かる。男どものボスが大問題で、ロングベストを羽織ったその姿、嫌なことに「ザイオンで演説をぶつモーフィアス」を思い起こさせるのだ。コイツは見た目より弱い。
　なんだこれは。モーフィアスを悪意に解釈したようなこの悪役。ゲームを総合して見ると、このゲームにモーフィアスを揶揄する意図は無いようなのだが…？

　レボリューションズが出来てしまった後に出されたブツ「アルティメット・コレクション」からの引用で恐縮だが…。「マトリックス・レボリューションズ・リビジテッド」に、このクラブは「ザイオンのエロダンスシーンと対になる、暗い側面」という様な裏話があった。
　その事と今回のいわば「悪しきモーフィアス」の事は奇妙に交錯する。ザイオンの宴の音頭をとったモーフィアスは人々の開放を望み、クラブ・ヘルを見張る今回のハゲは逆にあんなエロ地獄の中に繋ぎ止めんとする。
　監督自らの希望が大いに反映された（何故かく思ったかは後述）この作品でもクラブ・ヘルがザイオンダンスシーンと対になる物として出て来ている、と考えるとクラブ・ヘルの意義は「アルティメット」の言い分どおりで良いことになろう。

　ここのクロークや、後のメロビンジアンのシャトーから通じるステージに天井を歩くエグザイルが出る。ゲームに出てくる彼等はそう目茶目茶弱い訳ではない（映画「マトリックス・レボリューションズ」と違ってね）ので、天井歩きを素直に怖いと思えた。
　そういえば彼等はヴァンパイアというキャラクターだった。蝙蝠のように天井にぶら下がり、蝙蝠のように狡い彼等。うーむ、しっくりくる。彼らが空を飛び回るのはネオの様に目覚めて自由だからではなく、狡くひらりひらりと立ち回る性格だという意味かも。そんなふうに想像の翼をはためかせたわたしだ。このゲーム版を楽しんだお陰で、わたしは改めて映画に於ける死霊の盆踊りシーンを素直に観る事が出来、映画版の逆さ吊りどもの中に「ガスマスク＆黒いコート」で蝙蝠そっくりに為っているヤツが居る事に気付く事が出来た。
　このゲーム版が無かったら、あんな演出でサラサラーと流れてしまったクラブ・ヘルの事など真面目に考える気は起きなかったろう。今回はココをじっくりと観察できるようになっていて本当に良かった。

　別の話では、ネオの事を「俺が殺したはずだ」と思っている元警官がいる。
　「俺が殺した」？映画でもこのゲームでも、ネオが一度死んだのはエージェント・スミスに撃たれたためだが…。
　この元警官を助け出すミッションを切っ掛けにネオが数々の新技を習得したり、この場面のみに登場するエージェント「ホワイト」が存在したりし、強調されている。どういうわけか？ ■