あのポーズだ!
三部作最後にして最大の乱闘。アンダーソン君とスミスは、蛮カラが出てくる漫画さながらに土砂降りの中で殴り合う。
彼らは大通りから空中へ飛びあがり、宙に浮いた二人は互いにバックを取ろうとしてジャイロの如くぐるぐる回転し、挙句廃ビルに突っ込んで闘いの舞台は屋内に移る。
スミスがアンダーソン君に嫌味たらしく語りかけると、アンダーソン君はなにくそと体勢を立て直し、そして不可思議なポーズを取る。
これは単なる妙な構えではない。第一作で、アンダーソン君が「マトリックス内での闘い方」をだんだん覚えてきた時に取ったポーズのデジャビュ(再現)だ。さらにいえば、
エージェント・スミスと対峙していたアンダーソン君が、俺は強いと信じ始めたあの時のデジャビュ(再現)だ!
今、このデジャビュは、たいした意味も無いファンサービス用の場面だと思われている。
レボ劇中でアンダーソン君は、暗にスミスの存在原因はお前だ、お前が死ねば全て丸く収まると言われていた。デウス・エクス・マキナの質問に答えて「失敗は無い」と言いきったのも、
自分が勝っても負けてもスミスは消えると判っていたから、という展開であった。何とむなしいはなしか。
こんな状況の中、かなり勝ちに行く気でいる様にしか見えないあの挑発ポーズとそのときの表情は、何処か合わない。
アンダーソン君は、自殺することなくスミスを倒すことも可能だったのではないか。そんな風に思っている。
後述するが、時を止めて攻撃しているシーンがあるはずだったのだ。アンダーソン君は、コンピュータの作り出した世界の完全に外にいた筈だったのだ。彼の力は機械の親分を脅かしかねないものになる筈だった。
そんな彼が話をつけたら、出来あがった映画のケースのように不平等感をもたらす「契約」には見えなかったろう。
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