試合当日。俺たちは竜鳴館のグラウンドに集合した。
男子はユニフォームに着替え、女子が着替え終わるのを待つだけだった。
「それにしてもおせーな。なあスバル」
「女の子はおめかしに時間かかるからな」
野球のユニフォームなんて着慣れないだろうし。俺も少し違和感がある。
「オラ少しワクワクしてきたべ」
「ん? 何でだ?」
イガグリはよく分からない事を言った。
「まぁ、対馬。後になればわかるべ」
「はあ?」
「おい、お前ら。荷物運ぶのを手伝……」
荷物を抱えた村田が固まっている。
「なんだよ村田。何固まって……うおぉっ!!」
フカヒレが叫んだ。
スバルはヒューと口笛を吹く。俺もそっちの方向を見てみたら――
女子一同は皆、野球のユニフォームに着替えていた。それは当たり前なのだが。
イガグリが言いたかったのはこういうことか。
「パワー計測!!」
フカヒレはメガネのフチをぐいっと押した。
「何!? まだ上昇していくだと!」
何の数値が上がってるんだ?
パリーン!
フカヒレのメガネが割れた!
「計測不能だ! 旧式ではダメだ!」
何を計っていたんだろう?
「体操着もいいけどこっちはこっちで……ハアハア」
変態が1名。村田も何気に顔が赤くなっていたりする。
女子が野球のユニフォームを着ている姿は何とも言い難い魅力があった。
(カニを除いて)うちの女子はスタイルが良いから、なんとも言えない色気があった。


エリカは勿論、乙女さん、椰子、佐藤さんはみんなボンキュボン!みたいな感じだった。
気のせいかサイズ小さいと思った。俺たちは少しブカブカだが。
それにしても監督である祈先生のユニフォーム姿はものすごい。
ユニフォームのボタンが飛びそうになってるし、胸もお尻もかなり強調されている。
「うーん、窮屈ですわ」
「うへへ……、ハアハア」
「おい小僧、我輩の突きをくらわせてやろう」
スコココ!!
「いだいッ! スミマセン! いやらしい目で見ません!」
フカヒレは土永さんに頭を突かれまくっていた。
その後、グラウンドで準備運動、キャッチボール等をし、俺たちはマイクロバスへ乗り込んだ。

……

野球場に到着し、俺たちはマイクロバスから降りた。まだ相手は到着していなかった。
「うわ〜。でけ〜」
カニが声を上げた。確かに野球場は広い。初めて来たが、こんなに大きいとは知らなかった。
電光掲示版まである。聞いたところによると、使用料は半々で出しているらしい。
「さあ、シートノックを始めるべ!」
イガグリが声を上げ、俺たちは守備についてノックを始めた。

……

そしてシートノック終了。
「ねえ、乙女さん。いつもより調子悪くない?」
気のせいかそんな感じがした。
「うっ! レオ、あのな……今日はいつもの力は出ないんだ」
とはいっても俺たちの中では一番言い動きしてるけど。
「どうして……ごべぷしっ!!」


俺はエリカから脳天チョップを喰らった。
「ちょっと! 乙女さんも女の子なのよ! ちょっとは気を使いなさい!」
え……? ということは…。
「あ〜! わかった! せ……ブギャッ!?」
そして数分間気を失った。目覚めたころには相手チームがやっと到着した。
俺たちと入れ替わってノックを開始。
やはり本職だけあって動きはこちらより断然いい。
相手スタンドにはベンチから外れた選手達がゾロゾロいた。ざっと30人ぐらいか。
一方、俺たちのスタンドには誰もいなかったりする。練習試合だからこんなものか。

相手チームのノックも終わり、ベンチに待機。
その間にエリカはメンバー票を提出しにベンチ裏へ向かった。

その頃、相手ベンチでは――
「なんか竜鳴館の奴ら、女子が沢山いないか?」
「全員マネージャー……ってわけじゃないよな。ユニフォーム着てるし」
「女子選手がいる部もあるけどな。にしてもおかしい」
「気のせいだ。気のせい」

そして電光掲示板にスターティングメンバーが――

1 伊達   8
2 蟹沢   4
3 霧夜   1
4 鉄    9
5 椰子   7
6 村西   6
7 ナイト  2
8 イガグリ 5
9 フカヒレ 3



「おい! 僕は 村 田 だ!」
「イガグリは本名じゃねえべ!」
「シャークじゃないのかよ!」
フカヒレ、突っ込むところ違う。
「ナイトって……ひどい」
「いじめはありません」
メンバー票書いたのは先生か!

一方、陸堂学園ベンチでは―――

「7番から9番、ペンネームじゃねえか!!」
「あいつら、ナメてるな」
「コールドにしてやる!」
「ふざけやがって!!」

そして、両チーム整列。

「おいおい、女の子が野球やんのかよ? 随分人数にこまってますなぁ(かわいい子多いなあ)」
((((( う っ せ ー ハ ゲ ! ! )))))
「おー? あんた、陸堂の野球部だったんだ?」
「お前は、伊達!? なんで野球を……」
「ほぅ? 伊達、こいつを知ってるのか? 私もこの前、制裁を加えてだな…」
「鉄!!? お前もなんで……?」
スバルと乙女さんは相手にガンをつけていた。

竜鳴館は後攻なのでみんなは守備についた。エリカは投球練習開始した。
 パン
 パン
「おい、あいつらの先発、女だぜ?」
「女にしてはスピード速いじゃん? 120km/hってところか」


「打ち頃の球だな。にしても可愛いな。ハーフかな?」
そしてプレイボール。
『1番セカンド……』
おっ、ウグイス嬢付きなんだ。
「おーい、手加減してやれよ――?」
相手ベンチから野次が飛んできた。そして大笑いする相手ベンチ。
エリカを見ると、笑顔で返してきた。そして、振りかぶって――
 ズバ――ン!!!
い、痛えぇ…
「……へ?」
「ス、ストライク!」
野次を飛ばした相手ベンチは1球で静かになった。そしてそのまま3球三振に打ち取った。
そして三者連続三振をとり、俺たちは一斉に盛り上がった。
「おっしゃ! いける! 勝てる!」
カニのものすごいはしゃぎ様。俺たちの攻撃が始まる。
「おい、ホントに女かよ? 男より速えぞ…」
「助っ人集めたって聞いたけど、本職より強いんじゃねえか…?」
「140km/h以上出てたよな……伸びが特にすごい…」
『1番センター、伊達君』
スバルは打席に入って大きく構えた。
そして――
 カキーン!
 パスッ
強烈なショートライナー。コースが悪かった。
『2番セカンド、蟹沢君』
「おっしゃ〜! 太平洋を越えて中国までかっ飛ばしてやる!」
「地球1周させるのかな?」
佐藤さんは俺に質問してきた。
「単にバカなだけっしょ」


 カキン!
 パン!
カニはピッチャー真正面のライナーだった。
そして、エリカの番だ。
『3番ピッチャー、霧夜君』
心なしか相手ピッチャーの顔色が悪かった。
エリカは1球目は見逃してストライク。そして2球目――
 カキーン!
打球は左中間を抜けて2ベース。得点のチャンス! エリカはガッツポーズ。次はあの人。
『4番ライト、鉄君』
乙女さんはサムライのようなたたずまいで打席に入った。
初球――
 カッキィ――ン!
乙女さんはフルスイングで、ジャストミート。そしてレフトスタンドへ。
「ヒュー♪ さすがね。乙女センパイ」
2点先制。かなり有利だ。まだ初回だけど勝てるような気がした。
いつもより力が出ないとは言っても相変わらず無茶苦茶な人だ。
「まあ相手は控えピッチャーみたいだけどね」
エリカはそんな事を言った。
「こっちを見くびって控えを出したみたいだけど、逆襲にあったわね」
「マジかよ。控えとはいっても結構速いぜ? エースはどんな球投げんだよ……」
フカヒレは少しビビッたようだ。
そのピッチャーの背番号は14だった。
「さあね。交代する前にできるだけ点を取っとかなきゃいけないわ」
5番の椰子はバットにかすりもせず三振に終わって、カニにバカにされてた。

2回表、フカヒレのエラーで1人ランナーを出したが、変化球と直球をコンビネーションさせ、ノーヒットに抑えた。
そして2回裏の攻撃。
『6番ショート、村西君』


「僕は村田だ!! フン、絶対に打ってやるさ」
……
「ストライク、バッターアウト!」
「何か言ったか?」
「う、うるさい」
こいつがダメだったから俺が出ないと。
『7番キャッチャー、ナイト君』
「……なんでよそに来てナイト呼ばわりされなきゃなんないんだ…」
……
「アウト!」
俺はショートゴロ。
「対馬、ドンマイだべ。ふっ、やっぱりオラがやらねばならねえべ」
「頼むぜ? 現役なんだからよ?」
「任せるべ!」
『8番サード、イガグリ君』
(ピッチャーの座は奪われたから打ってポイント稼ぐべ!)
 カキン!
 パン!
イガグリはセンターライナーでアウト。三者凡退になってしまった。

3回表も相手はエリカの球に手が出ず、ノーヒットで抑えた。
3回裏、スバルとエリカをランナーに置いて乙女さんのフェンス直撃の
タイムリー3ベースで2点追加しスコアを4−0とした。椰子は三振に終り、チェンジ。

マウンドに向かったエリカは手をじっと見ていた。
ケガしたかと思ったがいつもと変わらない表情だった。
4回に入り、試合を不利と感じたか陸堂学園は代打攻勢に出た。おそらくレギュラー総入れ替えだろう。
「レギュラーに代わったところで!」
エリカは初球外角低めに直球を投げた。いいコースだ!


 カ――ン!
「え!?」
右バッターの見事な流し打ちでライト前に転がった。初ヒットを許してしまった。
その後、バントで二塁にランナーを置いたが、カニや乙女さん、スバルに助けられ無得点に抑えた。
エリカのボールはコントロールが甘くなっていた。まさか、
「エリカ、ちょっと手を見せて」
「ちょっ、レオ!」
「やっぱり、手に豆が出来てたんだ」
「ホントだ、エリー、大丈夫なの?」
「大丈夫よよっぴー。全然平気よ」
「無理だったら交代しろよ」
「ええ、わかったわ」
マウンドでは背番号1のエースが投球練習をしていた。
相手は全員メンバーを入れ替えたみたいだ。
そして試合再開。
初球――
 ギュン!
「うわっ」
村田はカーブに翻弄され、空振り。かなり曲がってたんですけど。
そして6,7,8番と三者連続三振。なんか俺たちいいところが無いな。
速さはエリカに劣るが、変化球のキレが半端じゃなかった。
縦横自由自在の変化は俺たちのバットにかすらせなかった。俺も全く手がでなかった。
相手ベンチでは――
「あれほど”いい練習相手”はいないだろう。関東大会に向けての前哨戦だ。相手は女だと思うな!」
「オオ―――!!」
相手ベンチは相当気合が入ってるみたいだ。相手は本気だ。一筋縄ではいかないだろう。
俺は何か嫌な予感がしてならなかった。



次回予告

ついにレギュラーを総動員した陸堂学園が竜鳴館に襲い掛かった!
序盤はリードしたものの、ジリジリと追い詰められる!

「おいおい、ケンカしてる場合じゃねーだろ?」

「わかったわ。バックはみんなに任せるわ!」

ボロボロになりながらも懸命に喰らいつく!

「んな―――!!」

「オラに任せるべ!!」

「馬鹿者! 気合で捕れ! この根性無しが!」

限界を超えた戦い―――

「私には無理だよぅ!」

「行 か せ る か ! !」

「くそっ! 俺の活躍に黄色い声が上がってないだと!? かくなれば…!」

「ほう? なかなか漢らしいな。ならば、私も全力でそれに向かっていこうではないか!」

果たして勝負の末に何を見るのか!? 

最終回「つよきすBaseballers・飛翔編」乞うご期待!!


(作者・TAC氏[2006/08/20])


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