「ええ、はい、特に何も・・・ええ、元気です、はい。
 代わりましょうか?・・・そうですか。
 はい・・・え?はい・・・はい・・・」
生徒会の用事で姫に呼び出され
家に戻ってみると乙女さんが何事か電話で話していた。
乙女さんが電話で長話ってのも珍しいな。
相手は誰なんだろう。
「はい・・・レオのほうには・・・
 え、私が、ですか!?あ・・・はい、来てましたが・・・
 ちょ、ちょっと待ってください!」
乙女さんが何か慌てて、受話器から顔を話して俺に呼びかける。
「レオ、今朝叔父さんから郵便物が届いていたんだが
 テーブルの上の・・・そう、それだ」
「ああ、これ?まだ開けてないけど・・・」
乙女さんが受け取ったのだろう。大きめの封筒がテーブルの上にあった。
宛名が俺と乙女さんになっている。
一人で勝手に開けるのはどうかと思って開けずに待っていたらしい。
しかし、なんだ?電話の相手って・・・オヤジか?
「ちょっと貸してくれ・・・はい、お待たせしました。
 はい・・・あの・・・本当に私が・・・?
 はい・・・わかり、ました・・・」
郵便を受け取った乙女さんは
何か戸惑いながらもオヤジとの電話を続けている。
「それでは・・・でも、もしレオが嫌がったら・・・
 そうですか・・・はい・・・あの・・・
 あ、もしもし!?もしもーし!?・・・はぁ・・・」
電話は切れてしまったようだ。
乙女さんが受話器を置いてため息をつく。
「オヤジから?」
「うむ・・・レオにちょっと頼みがあったらしい」
「だったら、なんだって俺に代わらないんだろ?」
「レオに、見合いをして欲しいということだ」


・・・はい?
「叔父さんの仕事の取引先の社長さんの娘らしい。
 何か家族の話から、いつの間にかそんな流れになって
 見合いでもさせようということになったのだそうだ」
「ちょ・・・ちょっと待ってよ!
 俺まだそんな見合いするような年じゃないよ!?」
「私もそう思うのだが・・・
 まあ、結婚を前提にするようなお見合いではないので
 気楽にいけ、と叔父さんは言っていた」
「いや、普通お見合いってそういうもんじゃないのでは?」
「叔父さんの言葉を借りるなら
 ガールフレンドを紹介してもらう、程度に考えておけ。
 ということだ」
むう・・・自分の息子なのに他人事のように。
けどまあ・・・そういうことなら気は楽かな。
「とにかく、この封筒に先方の娘さんの写真とか入っているらしい。
 ・・・見て・・・みるか?」
そうだな・・・
テンションに流されないことをモットーにしている俺としては
お見合いから始まる恋愛ってのもいいんじゃなかろうか。
「とりあえず、見るだけ見てみるよ」
「む・・・そうか」
手を差し出すが・・・乙女さんが封筒を渡してくれない。
「乙女さん、封筒。部屋で見るから」
「そうか?」
部屋に戻るが・・・
「なんでついてくるの?」
「私も一緒に見てやる」
「いや、お見合いするの俺だから」
「何を言う!その・・・あれだ・・・
 姉として、私も見合い相手を吟味するに決まっているだろう!」
・・・そんなコワイ顔しなくても。


部屋に戻って封筒を開ける。
まずは写真からかな。
「あ、結構美人」
「そうか?・・・なんだか子供っぽい感じもするぞ」
言われてみれば・・・やや貧弱か、胸とか。
綺麗、というよりは可愛い、という感じだな。
「・・・ずいぶん熱心に見るんだな」
「そりゃまあ・・・」
さらに写真を見ていると・・・
「ウィース!」
ヤバ!カニが来やがった。
「蟹沢・・・窓から入ってくるのはやめろと言ってるだろう」
「ヘヘヘ、やっぱこのほうが早いしさ〜。
 んで、二人で何見てんの?」
あわわわわ・・・見合いをするなんてバレたら何言われるか。
急いで写真とか隠さねば・・・!
「ああ、レオの見合い相手の写真を、ちょっとな」
ぐあ!なんでいきなりバラしちまうんだよ乙女さん!
それもよりによってカニに!
「え・・・ミアイアイテって何だ?食い物か?」
・・・カニのバカさ加減に感謝。
しかし、親切な乙女さんの説明が続く。
「お見合いだ、お見合い。
 『本日はお日柄もよろしく』とかいうやつだな」
「ええっ!?乙女さんお見合いするの!?」
「私ではない、レオだ」
「 ぬ ぅ あ ぁ に ぃ 〜 〜 っ ! ?」
「うわ、いきなりデケェ声出すんじゃねえ!」
「こっ・・・このヘタレが・・・見合い・・・」
うつむいてブルブル震えるカニ。お前・・・?
「・・・プッ」
笑いこらえてたんかい!


「ぎゃははははははははは!」
笑い転げるカニ。なんかムカツク!
「テメ、俺が見合いするのがそんなにオカシイかよ!」
「オカ、オカシイって!ヒヒハハハハハ!
 オメーなんだ、行き遅れそうで今から焦ってんのか?
 ・・・プッ・・・ぶはははははは!」
くそう、俺がお見合いしたらそんなにおかしいか!?
・・・おかしいのかな。
「おーおー、なんだなんだ、やけに楽しそうだな」
「あれ、乙女さんも一緒?なーんかムカつくなー」
くそぅ、スバルとフカヒレまで来やがった。
「オメーラ聞いちくりー!レオのヤツ・・・おみ・・・プッ!
 ダ、ダメだははははは!は、腹痛ぇー!」
「なんだよオメー、一人で楽しんでズリーぞ!」
「なんだかな・・・で、なんなんすか乙女さん?」
ああ、言わないでいいです乙女さん!っていうか言わないでこれ以上!
しかし、必死に見つめる俺の懇願の視線に気づいていないのか
・・・または無視したのか、淡々と乙女さんがまた説明を。
「実は、レオがお見合いすることになってな。
 その相手の写真とか見ていたのだ」
「・・・は?」「レオが・・・お見合い?」
ああ、言っちゃいましたね。
「マジ・・・?」
「私は嘘は言わん。
 お前たちも見てみるか?相手の写真」
「ちょ、乙女さん!コイツらにまで見せる必要は・・・!」
「見せて見せて見せてー!」「俺も俺も!」「やれやれ・・・」
止める間もなく資料にかぶりつく幼馴染みども。
「くっ・・・俺だってまだよく見てないのに!」
「ならば一緒に見ればよかろう?」
なんでこんな皆で見なきゃなんないんだよ!
受けるかどうか決めるのは俺なのに!


「お、美人!」「オメーにゃ勿体ないかもな、坊主」
「け、たいしたことないじゃん」「何か作った笑い方だな。不自然だ」
評価まっぷたつ。
「おお、スゲー頭いいんだなこの人!」「ホントだ。レベル高ぇーな」
「ただのガリ勉クンなんじゃね?」「姫ほどでもなかろう?」
また評価まっぷたつ。
「お、年上か。いいねえ」「ああ・・・そそるな」
「私だって年上だぞ?」「ババアじゃん」「待て蟹沢。それでは私が・・・」
さらにまっぷたつ。一部仲間割れあり。
「総合評価で75点かな。胸がちょっとマイナス」
「辛いなフカヒレ。80点はいいんじゃねえか?」
「0てーん。ま、ヘタレにはお似合いかもしんねーけど?」
「0点は可哀想だろう。60点」
「・・・評価バラけすぎて参考にならないんですけど」
「・・・まあ決めるのはお前だからな。
 で、どうするんだレオ?
 断るなら、私から叔父さんに頼んでおくが」
「へっ、無駄無駄。どーせコイツのことだから
 受けたところで当日になって
 ビビって逃げ出すのがオチだね」
「ああ、それはありそうだな」
「見合いじゃレオのテンションもあがりそうにないからな」
ムカ。言いたい放題言いやがって・・・
「受けるよ乙女さん。
 だって美人だし頭いいしお姉さんだし!
 きっと素敵な人に違いないね!」
「お前・・・なんかムキになっていないか?」
「や、やめとけってレオ!オメーのほうが相手にされねーよ」
「そんなの、やってみなきゃわかんないだろ。
 あー、お見合い楽しみだなー!」
「・・・変なところでテンション上がっちまったな。
 さてさて、どうなることやら・・・」


「乙女さん」
「なんだ、レオ?」
「見合いをするのは俺です。乙女さんはその付き添いです」
「そうだな」
「じゃあ・・・コイツらぁ一体なんなの!?」
横浜プリンセスホテル、1Fラウンジ・かえで。
少し早めに待ち合わせ場所についたはずの俺たちを待っていたのは
幼馴染みども3人プラス生徒会執行部やら2ーCの連中やら・・・
「私が知るか。言っておくが、私は別に誰にも喋っていないぞ?」
「俺も別に言ってないぜ?」「俺もだ」
じゃあ誰だよ。
「ボクだって、マナにしか言ってないよ?」
ぐあ。よりによって・・・
「このオバカ!浦賀さんに言っちゃったら
 皆に喋っちゃうのわかりそうなもんだろが!?」
「え、喋ったらアカンかったん?
 けど、ウチかてよっぴー経由で、クラスの連絡網に流しただけやで?」
「私もネ、連絡網で情報が回てきたノネ。
 回てきたラ、次の人回さないとイケナイ思たのネ」
その調子で、もうクラス全員に知れ渡ってるのね・・・
「・・・椰子はなんで来てるんだ」
「お姫様から聞きました。
 ヒマでしたし、センパイの情けない顔が見られるというので(ニヤリ)」
「・・・祈先生まで・・・」
「担任教師として、当然の行動ですわ〜」
「真面目な佐藤さんまでが・・・佐藤さん?」
「・・・すから・・・して・・・ぬから・・・」
佐藤さんは何かうつろな目でブツブツつぶやいていて・・・怖い。
「あー、よっぴーは昨日あたりからダークよっぴーだから」
なんだそれは。
「あー・・・お前たち、そろそろ約束の時間だ。
 邪魔にならぬよう、少し離れてくれ」


係りの人に案内されて予約の席へ。
少し遅れて関係者の団体がゾロゾロ・・・
まあ、離れて座ったからいいか。
あそこなら会話までは聞こえないだろう。
「気になるのか、レオ?」
「え・・・そりゃまあ。邪魔されたら困るでしょ?」
「ああ、その心配はないらしいぞ。
 姫が高性能なマイクなどを用意したので
 近づかなくても筒抜けだと言っていたからな」
乱入でもされた方がマシだ・・・
これで下手なことは言えなくなってしまった。 
「そう固くなるな。そろそろお相手が見えるころだぞ。
 気合いを入れていけ、気合いを!」
固くなってるというよりはウンザリしているんだけど。
ああ、思えば変な意地を張って
あのときテンションに流されたのが失敗だった。
ため息をつく。
と、俺の手の上に乙女さんの手が重ねられた。
「しっかりしろ。悪いようにはならないさ。
 ありのままのお前でいい。
 それでお前は・・・その・・・十分に魅力的だ」
「・・・乙女さん・・・」
「なんだ?」
「・・・今のも、マイクを通して聞かれてると思うんですが」
「あ!い、いや、今のはレオを元気づけるために
 普段から思っていることを言ったまでで
 べ、別に深い意味はないんだぞ!?」
泥沼だった。
なんか俺と乙女さんがお見合いしてるみたいだ・・・
うわ、そう思ったら何だか急に恥ずかしくなってきた!
「乙女さん・・・」
「シッ!・・・相手の方が見えたようだ」


(作者・Seena◆Rion/soCys氏[2005/10/07])


※関連 姉しよSS「Boy meets Girl」」
※次  クロスオーバーSS「Boy meets Girl,Girl meets Boy.


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