昼下がり。
今日は家に俺と雛乃姉さんしかいない。
二人で居間でTVを見ていると
誰かがバタバタと慌ただしく廊下をやってくる。
はて・・・今頃誰だろうと思っていると
入ってきたのは親父だった。
なんだ?珍しいな、こんな時間に?
「どうされた、親父殿?何か忘れ物でも?」
「あー、いや、ちょっとな・・・
 その、高嶺はいないのか?」
「姉貴?出かけてるけど?」
「む、そうか・・・学校・・・は休みか。
 どこに行ったかな?いつ頃帰るかわかるか?」
「さあ・・・どこに行くとも聞いてなかったし」
「むう・・・さて、どうするかな・・・」
何か・・・親父の様子がアヤシイ。
「用事があるならケータイで呼べばいいじゃん」
「ああ、いや、あれだ、本人がいないならいいんだ、うん」
雛乃姉さんも怪訝な顔で親父を見ている。
「たかねが戻ったら、我かくうやが伝えてもよいのでは?」
「いや、ホントもういいから。
 ああ、ワシもう仕事あるから会社戻る・・・」
そわそわしながら親父が居間を出ていこうとする。
「親父殿」
・・・雛乃姉さんは大声を出したわけではない。
しかし、その声には有無を言わさぬ威厳があった。
どっちが親だかわからんな。
「・・・はい」
「親父殿の留守中、この柊家を預かるのは長女たる我の努め。
 隠し事をされてお出かけになられては困ります」
「う・・・まあ、いずれは話すわけだから、な。
 いや、実は、な・・・」


「お見合い〜!?」「タカが!?」「あう、びっくり」
夕食の席、皆が揃ったところで雛乃姉さんが重大発表。
みんなびっくり。
当の姉貴なんか、あんぐりと口を開けたまま固まっていた。
「そ・・・それで、お相手の方は?」
「うむ、親父殿の取引相手のご子息ということだ。
 お互い、家族のことを話しているうちに
 なんとなく成り行きでそういうことになってしまったらしい」
「娘の将来を、そんな成り行き任せにするとは・・・」
姉様も呆れ顔だ。
・・・ちなみに、この場に親父はいない。
仕事が忙しいからと言って、雛乃姉さんに下駄を預けてしまった。
つまりは逃げやがったわけだが、選択としては正しいな。
いたら袋叩きで晩飯はドッグフードだ。
「でもさー、年齢的な順番からいったら
 ひなのんか要芽姉がお見合いするもんじゃないの?」
何気ないねぇねぇの一言に、姉さんと姉様がピクリと身じろぎ。
まあ・・・確かに二人ともいわゆる適齢期を迎えてはいるわけだが。
話を変えよう。
「なんでまた姉貴なんだろうね?」
「・・・お相手がまだ若いからであろう?
 釣り合いそうなのはうみか、たかねか、せいぜいともえまでと
 親父殿も言っておったではないか」
しまった、火に油。姉さんも姉様も顔面をピクピクさせている・・・
「まあ、もう先方に高嶺の名前を出して、写真なども渡しているそうだから
 今さらどうしようもないがな。
 ところで・・・たかね?たかね?」
「さっきから動かなくなってるよ〜?」
「ふむぅ・・・せろり、呼び戻せ」
「あいよ〜・・・そぉ、れっと!」
「ゥギャッ!?・・・きゅう」
・・・呼び戻しすぎてまた別の所に行ってしまったようだった。


ともねえの介抱でようやっと姉貴が意識を取り戻す。
「あー・・・イタタタタ・・・何すんのよもう!
 頭パカパカ殴らないでよね!
 人類の至宝とも言えるこの頭脳が壊れたらどうすんのよ!」
「ツインテールが残ってれば大丈夫だよ〜。
 何かあっても、そこから再生できるんだよね〜」
「そんなわけないでしょ!」
「ええい、ちっとは静かにせい!
 ・・・で、どうなのだ、たかね?」
「どうって・・・何が?」
「見合いのことに決まっておるだろうが。
 受ける気はあるか?」
「ん・・・まだ、学生なんだし
 お見合いとか・・・その、早すぎると思う」
「別に結婚を前提にしたお見合いということではないらしい。
 あちらもまだお若いのでな。もそっと軽く考えてもよいぞ」
「でも・・・どんな人かわかんないし・・・」
「写真その他は、親父殿から預かっておる。見てみるか?」
途端にわっと集まる姉妹たち。
こういうところは、女の子っていうか・・・
「ちょ、資料とか写真はアタシが見るために・・・!」
「普通ね」「フツーだね」「うん・・・普通」「普通だよ〜?」
「だ〜か〜ら〜、アタシに見せてくれなきゃ・・・!」
肝心の姉貴は輪に入れないでいた。
「・・・若いわね」「若い若い」「ホント・・・若いんだ」「ヤングだね〜」
「あーもう!なんでアタシが見られないのよぅ!」
「ちょっと黙りなさい高嶺。今私たちが下調べしてあげてるんだから」
・・・ただの興味本位にしか見えません、姉様。
「・・・それでは、総評」
なんですかそれは。
「70点」「65点」「あう・・・80点?」「く〜や以外は0点だよ〜」
微妙だったり主観入りまくりな点数だった。


「もう、いいからアタシに見せてってば!」
写真とかもろもろを姉貴がひったくり・・・意外に真剣に見ている。
「・・・顔はまあ、普通ね」
「だから、そう言ったでしょ」
「って、何よコイツ、若いっていうよりガキじゃない!」
「それも言ったってば」
「ん〜・・・可もなく不可もない点数ってとこね・・・」
「あ、あははは・・・もうちょっといいんじゃない、かな」
結局、同じような意見だった。
「それで、どうだ、たかね?」
「う〜ん・・・なんかコイツ、つまんなさそう」
「そうか・・・なるべくなら親父殿の顔を立ててやりたいところだが
 どうしてもとイヤ、ということであればやむを得んな」
「そっか・・・お父様の取引先の関係者なんだっけ」
「いや、そのようなことは気にせずともよいがな」
「う〜ん・・・」
考え込む姉貴。
考えながらも、なぜか俺のことをチラチラ見てる。
「空也は・・・どう思う?」
「は?いいんじゃない?一回ぐらいお見合いしてみるのも」
「い・・・一回ぐらい、ってねえ!」
「気に入らなきゃ、適当なこと言ってその後会わなきゃいいんだし。
 姉貴、そういうの得意だろ?」
まあ・・・逆に向こうが気に入らない場合もあるわけだがな。
「あーあー、そうですか!
 ・・・いいわ、お見合いする!
 ひょーっとしたら、スッゴイいい男かもしんないもんね!」 
「さっき普通でツマンナイとか言ったじゃん」
「アンタみたいなバカイカよりはマシ!」
プンプンしながら、見合い相手の資料を持って
姉貴は部屋に戻っていった。
・・・何怒ってんだ?


「で・・・なんでゾロゾロアンタらまで付いてくるのよっ!」
お見合い当日。横浜プリンセスホテルの前まで来て
姉貴が急に怒り出す。
「いや、後学のために」
「本音を言えば、面白そうだからだよね〜」
雛乃姉さんがやれやれとため息をつく。
「お前たち、ついてくるのは勝手だが
 高嶺の邪魔はせんようにな。
 先様に失礼があってはならん」
「は〜い」
「それにしても・・瀬芦里姉さんが来てないのは意外ね」
「ああ、それなら・・・」
説明しようと思ったら遠くから呼び声が。
「お待たせーっ!いやー、近くにバイク置き場がなくってさあ」
「待ってないわよ!・・・ああ、もう・・・」
「もえも、もう少ししたら・・・ああ、来た来た、もえーこっちー!」
「と、巴姉さんまで!?何しに来たのよ!」
「妹が心配だからに決まってるにゃー」
嘘だ。絶対嘘だ。
「騒がしいわよ高嶺。
 お見合いの前なのだから少し落ち着きなさい」
「ヒッ!?か、要芽お姉様!?いつの間に!?」
「姉様。仕事はどうしたんですか?」
「切り上げたわ。こんな面白そうな・・・
 もとい、妹の大事な話、見届けるのが姉の努めでしょう?」
「そういうこと〜♪」
「なんで帆波さんと歩笑までいるのよ!っていうか、誰が教えたのよ!」
「アン、冷たい〜」
「私が、巴さんから聞いた」
「歩笑・・・巴姉さん・・・恨むわよ・・・」
結局、皆勢揃いしていた。
「それではよいか、皆の者?いざ、参るぞ!」


「あ〜・・・わかっていると思うが
 同席するのは付き添いの我だけだからな」
「は〜い」
「それでは、我らが先に待ち合わせの場所に入る。
 お前たちは少し後から入り
 目立たぬように離れているように。よいな?」
そういい残して、雛乃姉さんは姉貴を連れて
待ち合わせのラウンジに入っていった。
しかし目立つなと言われても・・・
いろいろなタイプの美女6人が固まってたら
どうしたって目立つわけで。
「あ〜・・・なんかドキドキしてきたにゃ〜♪」
「あ、あははは・・・」
「海・・・マイクはもう仕掛けたの?」
「うん、マイクだけじゃなくて
 小型カメラも仕込んでおいたから
 映像もバッチリだよ〜」
・・・技術の進歩って怖いな。
「そ、それって・・・犯罪にならないのかな」
「何言ってんの、もえ。妹を心配すればこそじゃない。
 家族の問題に法律は関係ないよっ」
そうかなー、少しはあると思うけどなー。
姉貴だけならともかく、相手は他人なんだしー。
「ま、仮に何かあっても私がいるから問題なし」
敏腕弁護士のお墨付きが出ちゃいました。
「ねー、そろそろ入ってもいいんじゃない?
 お腹も空いてきたし」
「そうね・・・時間的にはもういいでしょう。
 空也、まず姉さんたちのポジションと
 偵察向きの席を確認してきなさい」
偵察ですか・・・まあ、姉様には逆らえないしな。
「了解しました。空也、行きまーす」


(作者・Seena◆Rion/soCys氏[2005/10/07])


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