乙「レオ。朝だ起きろ」
レ「ん・・・おあよ・・・・・」
乙「ろれつがまわっていないな。昨日は何時に就寝した」
パシャッ!
勢いよくカーテンを開ける乙女さん。・・・くあ、眩しいぜ。
しょぼしょぼした眼を擦りながら、俺はゆっくりと身を起こす。
レ「ん〜…フカヒレと遅くまで話しこんでたから。昨日寝たのは3時くらいかな」
ふぁぁぁ…。あくびが止まらない。めちゃくちゃ眠い…。
ぼやけた目で乙女さんを見てみると、何か呆れた表情をしていた。
乙「馬鹿者。それはもう昨日とは言わないぞ。…まあいい。
とにかく登校の支度をしろ。その後に顔を洗って、歯を磨いて」
相変わらず乙女さんはお姉さんぶり≠発揮してくれる。
最初の頃は慌ただしいものではあったけど、今ではもう慣れた。

乙「では私は先に行く。レオ、二度寝などしないようにな」
背筋をビシッ!と伸ばし、パリッとした制服を着こなした乙女さんが、
そう言い残して先に登校した。う〜ん、俺が女だったら惚れてるね。間違いない!
とりあえずオニギリを食べよう。
レ「・・・・・・おっ、たらこバター」


朝飯後、戸締まりをして外に出る。
いつも通りにきぬの家に。
レ「おはようございます」
マダム「レオちゃんいつもすまないねぇ」
レ「見捨てるわけにもいきませんよ」
マダム「良かったら嫁にもらってくれない、アレ?」
レ「広辞苑と大技林を間違えるようなアホな娘ですけど嫁には欲しいです」
マダム「そうよねぇ。私がオトコでも絶対イヤだもん」

レオ&マダム『・・・・・・あれ?』


玄関へと入り、二階へと上がる。
マダムがキャーキャー喜んでたような気がするが、今は無視。
きぬの部屋は・・・あそこだ。
なんの躊躇も無く開ける。
ガチャッ、
レ「おーいきぬ、もう朝―――」
蟹「―――」
俺は言葉を止めてしまう。きぬは動きを止めてしまう。
そう、きぬは今、着替え中であった。
白と黄色のラインが入ったブラとパンティー。
小柄な身体に綺麗な肌色、そこにうっすらと差すカーテンの隙間から漏れた太陽の光。
表情は赤く、ただ俺だけを見つめている。
か、可愛い・・・。


蟹「あ・・・の・・・」
レ「―――へ?」
ベッドに放ってあったトレーナーを慌てて胸の前まで持ってきて、
精一杯全身を隠そうとするきぬ。なんか・・・なんか初々しい。
うあぁぁぁ、可愛すぎる!
蟹「き、着替えたいので、そと、でてくれませんか?」
レ「え?―――はっ!!?」
ことここにいたり、ようやく俺は気がついた。
そうだきぬ記憶が・・・・・・!!ついいつものノリで・・・!!!
レ「ごご、ごごごごめん!!」
高速で回れ右、すぐさま部屋を出て、階段を下り、玄関まで行き、外に出た。
レ「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
ダッシュでここまで来たから、息が上がっちまった・・・。
マダム「あらレオちゃん、どうしたの息を切らせて」
外で掃き掃除していたマダムが不思議そうな表情をして話し掛けてくる。
レ「はぁ、はぁ、いえ、ちょっと・・・」
いくらマダムが相手とはいえ、こんなこと言えないッス。
マダム「レオちゃんがアレのとこいって、大体5分・・・なるほど」
不意にマダムが頬に片手を当てて、はふぅ、とため息をつき、
マダム「だめよぉレオちゃん。5分ぽっちじゃオンナは満足しないわよ?」
レ「あんたいったいなに想像してんですか・・・・・!!」


気まずい。超気まずい。
あれから俺は、きぬが登校の支度を終えるまで外で待っていた。
10分くらいしてからだろうか。きぬが支度を終え外に出てきたのは。
行きましょう、とただ一言だけ言い、先に歩きはじめるきぬ。慌てて追う俺。
背後からヒューヒューと冷やかすマダムの声がしたような気がするが、無視。
で、今俺達は竜鳴館へと向かっている。

蟹「なにも外まで行かなくてもよかったんですよ?」
無言で歩いていた俺達だったが、自宅が見えなくなったところで
きぬが話し掛けてくれた。
レ「いや、あー・・・勢いで外まででちゃってさ」
蟹「そうですか。あー、さっきの事は全部忘れて下さい。いいですね?」
レ「ぅ、ご、ごめんなさい・・・」
そういって、会話が止まる。
再び無言の時間が続くのかと思ったが、
蟹「いつも、対馬さんがわたしをおこしにくるんですか?」
レ「うん。ま、それが俺の日課になってるしね」
蟹「そうですか・・・それじゃ、わたしは朝が弱いんですね」
レ「うん。いつもはまだ寝てる時間帯なんだ」
蟹「いつもは、ですか。・・・・・・いつものわたしなんて知りません」
レ「え?・・・あっ、ごめん・・・」
蟹「・・・もう、朝から謝ってばかりですね対馬君は」
クスクスと笑い、今のは謝らなくてもいいとこですよ、といってくれるきぬ。
蟹「せっかくの機会ですから。少し教えてもらえませんか?わたしのこと」
レ「きぬのこと?」
蟹「はい。知りたいんです、わたしのことを。学園のことや友人のこと。それと」
そう言ってから、柔らかい笑みを浮かべ、
蟹「アナタのことも。私達恋人同士なんですよね?」
まっすぐにこっちを見つめてくる。
レ「あ、ああ!!」
竜鳴館にまでの登校時間は短い。
だけど、沢山のことを俺達は話した。


竜鳴館。2―C。
朝教室に着くと、ものすごい騒ぎになっていた。
なにかあったのかと思ったが、すぐに原因が分かる。

(ほら、やっぱカニっち記憶が)
(ウソ、マヂデ・・・・・!)
(お前いってこいよ)

レ「おいフカヒレ。ちょっと来い」
フカヒレ「なんだよー俺はなにも悪いことしてねーぞー」
どうしてこいつが珍しく朝早くいるのかが瞬時にして判明した。
とりあえず襟首つかんで廊下へと連れ出す。

レ「さ、説明しろ」
フカヒレ「うっわアバウト。一体何を説明しろと」
レ「尖った拳とねりちゃぎ、好きなほうを選べ」
フカヒレ「わかったわかったってば!」


レ「一体クラスの連中になんて話したんだ?」
フカヒレ「クラスの連中にはカニが記憶喪失になった、とだけしか言ってねー」
レ「そうか」
フカヒレ「いつも通りに接してやってくれ、とも言ったっけ。・・・まずかったか?」
レ「いや、助かるよ。サンキュ、フカヒレ」
フカヒレ「何のこれしき。・・・とは言うものの」
横目で、ちらっ、と教室を見るフカヒレ。
フカヒレ「さすがにいつも通りって訳にもいかねーわな」
レ「・・・そうだな」
俺も教室を見てみる。
クラスメイト達は、まるで腫れ物でも扱うかのような態度だった。
今のきぬにどう対応していいか分からないみたいだ。
フカヒレ「レオ。俺はどんなことがあってもお前の味方だ。
けどな、最後の最後でカニの傍にいてやれるのはお前だけなんだぜ」
レ「――分かってる」
フカヒレ「きっちり守ってやんなよ。でなきゃ寝取られEND直行だぜ?」
レ「最後に不吉なことを言うなタコスが!!」


一時間目の休み時間、珍しい男が俺のところにやってきた。
村「蟹沢が記憶喪失になったって?」
2―A、村田だ。
レ「なんだ、もうそっちまで話しが行き渡ってるのか?」
村「ああ。お前はよく知らないだろうが、2学年のなかでは蟹沢は人気があってな」
レ「そういやフカヒレがそんなこと言ってたっけ」
村「なんだ知っていたのか。ならば、今の評判は知っているか?」
レ「・・・今の?」
朝見たかぎりじゃ、何か皆ぎくしゃくしてたけど・・・・・。
村「・・・こればかりは知らなかったか。まあ無理もないな。同クラスに
彼氏、つまりお前がいるのならば、噂も入ってこないだろう」
・・・?悪い噂でもたっているのだろうか。

村「今の蟹沢だが・・・姫に優るとも劣らないほどに人気がある」


レ「・・・・・・へ?な、なして??」
村「童顔・小柄に加えて、今時珍しい清純な性格。人気がでない訳がない」
近くで聞いていたフカヒレが「嘘だろぉ・・・」と呟く。いや俺も同じ気持ちです。
しかし村田は冷静に否定する。
村「嘘ではない。ここのクラスに情報が来ないよう徹底されているだけだ
・・・気をつけるようにな。今のお前には、敵が多すぎる」
フカヒレ「つーことはあれか?寝取られENDフラグ発生済み??」
レ「ライトニングプラズマァァァァァ!!!!!」

シュピ!シュピピピピ!!!(←高速で空間が切れる音)

フカヒレ「ちょ、お前それやりすgくぁswでfrtgyふじこlp・・・うわらば!!」
村「な、何という速さだ・・・僕のガトリングガンの比ではない!?」


レ「サンキュー村田、それを教えてくれて」
何事もなかったように話しを戻す俺。
村田は冷や汗らしきものを垂らしつつ、
村「いや、いいんだ。
お前達のバカップルぶりは見ていて呆れるばかりだが、
無ければ無いで、寂しいものがある。・・・難儀なものだな」
そう言ってから、一度だけため息をつき、
村「人の恋人をとろう等という輩は、正直気に食わない。
微力ながら僕もお前に手を貸そう。露払い程度には役立つはずだ」
レ「いや、助かることには助かるんだけど・・・いいのか?」
俺がそういうと、村田は体育会系らしい爽やかな笑顔を浮かべ、
村「問題無い。胸糞悪い連中を第三者として見ているよりも、
そういった連中をぶちのめす当事者の一人としていたほうがいい。
それが僕の出した結論だ」
レ「・・・サンキュウ。今、すっげえ嬉しい」
ちょっと感動。いや、かなりかもしれない。
レ「これからよろしく頼むよ、村田洋太・・・」
村「洋平だ!!!」
かなり本気で怒った。


(作者・479氏[2005/09/22])


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