……………
そして、夕食後。
「おぉ、かなめ。どうした?」
「姉さん……お加減はいかがですか…?」
「うむ。今日はさほどでもない。明日は久しぶりに皆と一緒に食事が出来るかもしれん」
「よかった……それでですね、姉さん。具合がよろしいなら見て頂きたい物があるんですけれど…」
「ほう、何であるか?」
「ふふ…それは見てのお楽しみです……」
ぱちっ。
「……? 電気を消してどうするのだ?」
「障子の方を見てください」
「お?おぉ!蟹がおる」
「影絵であるか……風流よな…」
(高嶺、上手くやるのよ…)
(まかせてくださいっ、お姉様っ!)
「右の方の影は……猿か!
ん……?それにしては……あれは…触角か?」
(珍種のカマクラナイムネオオツインザルだからね〜仕方ないかも〜)
(勝手に新種認定すんなっ!)
「?たかねの声が聞こえた気がするが…」
(ヤバっ・・)
「キッ、キキィィィッー」
「おお、やはり猿か」
(ダメだなぁ、高嶺お姉ちゃん)
(アンタ、後で覚えときなさいよ……)
「蟹に…猿…そうか!猿蟹合戦か!」
「むかしむかしあるところに…かにとさるがすんでいました」
「ほう、かなめが朗読してくれるのだな」


「はやくめをだせ、ださぬとはさみでちょんぎるぞ」
(なんでアタシが柿の木との二役なのよっ!
コラッ!海っ!ハサミを持つなっ!)
「あおいかきのみをぶつけられてかにはおおけがをしてしまいました」
(ふっふっふっ……食らえや、イカっ!!)
(うわーん。姉貴、本気で痛いってぇ)
(く〜やに暴行っと。高嶺お姉ちゃん、後2ポイントでリーチ)
(かきかき)
「こんどは、はちがさるのおしりをちくんとさしました」
(うわっ!これ本物のハチじゃないのぉ!ギャーッ!)
(お、お姉ちゃん…大丈夫なの?アレ?)
(針抜いてあるから安全安全〜)
(なーんだ、それなら安心だね)
(でも、それとは別に毒があるかも)
(え!?)
(・ε・)
「さいごにやねからうすがどすんとおちてきました」
(やーっとわたしの出番!そりゃっ!タカ!くーらえー!)
(わっ、ちょっ!?死ぬ!それ絶対死ぬって!)
(頭骨錐揉脚!!)
(殺る気100%っ!?)
ごきりっ。
(ぐぁっ………)
「さるをたおしたいっこうはすえながくしあわせにくらしました」
(あ、討ち取ったり〜!)
…ぱちぱちぱちぱち。
雛乃姉さんの可愛い拍手が響く。
「うむうむ、見事であった。皆の者、大儀であった。飴を取らすぞ」
「ありがとうございます……姉さん」


「部屋から出られぬ我の為に……すまぬな…心から、嬉しく思うぞ」
「お礼なら……空也に言ってあげてください。これを考えたのはあの子ですから…」
「くうやが……これを……?」
「ええ…」
「ふっ……我は……果報者よな……こんなにいい家族に囲まれておる……」
「……姉さん……」
「あ……泣いて……?」
「よいのだ、かなめ。うれし涙だ。こういう物を止めるのは無粋であろう?」
「ふふっ……そうですね…」
(やーやー。感動のシーンだねぇ)
(雛乃姉さん……よかった…)
(うう〜、雛乃お姉ちゃんの為に頑張るく〜や、かっこいいけどちょっとジェラシ〜)
(あぅ……)<じーんとしている
(うぅ……この企画の発案者……お姉様じゃなくてイカだったなんて……絶対…後で…泣かす…)
ガクリ。
(柊高嶺、死亡確認!)
(死んでない、死んでない)
……………………

(作者・愚弟氏[2004/07/15])


※前 姉しよSS「影絵三部作・或る秋の日
※次 姉しよSS「影絵三部作・エピローグ


Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!