「ふっ。師である私に勝てると思ったの」
「あ、そっか」
「クール……」
さてと。夕食まで部屋で眠るとしましょう。
「ふふ、相変わらずやるのぅ」
!?
「姉さん…見てたんですか」
「おぉう、見ていたとも」
「姉さんは……覚えてくれていたんですね…」
「たわけ。忘れるはずは無かろう。あれは我にとっても大切な思い出だ」

暑気も過ぎ、風が涼しくなってきた頃。空也が妙な事を言ってきた。
「要芽姉さん、影絵……教えてくれない?」
「影絵?」
「うん。この前、やってくれたじゃない」
「あぁ……これ?」
「ぺんぎん(ガラパゴスぺんぎん)」
「わっ」
「アデリーぺんぎん」
「ちゃんと違う……」
「鶴岡八幡宮」
「細かいディティールまで完璧にっ!?」
「まぁ、こんなものね」


「すごいよ!ねえさん!さすがボクのお姉さん!絶好調である!」
「何なの…そのよくわからない褒め方は…」
「じゃあ、お願いしていいかな……?」
上目遣いに聞いてくる。
あ、ダメだ。
私はこの顔をされると弱い。
「わかったわ……今日はもうする事は無いし、教えてあげるわ」
「ありがとう!要芽姉さん!」
にぱっ。
クラっと来た。
こういう100万ドルの笑顔が標準装備だからタチが悪い。
私でも抱きしめたい衝動に駆られるんだから、普通の女の子だったら一発KOでしょうね。

………………………
「えーっと……こ、こうかな?」
「違うわ…小指を第二関節だけ曲げるのよ。第一関節は伸ばしたまま」
「あたっ、あたた……指、つったかも」
「普段から手を動かすのを疎かにしているからよ。いい機会だからついでに鍛えなさい」
「そんなぁ…」
あー、困った顔も可愛い。
少しだけ高嶺の気持ちが解った気がした。


「この指を右中指に合わせて……」
空也はずいぶん真剣だ。
「ところで空也…急に影絵を覚えたいなんて…どうしたの?」
「あ…うん…えっと…」
「言えない様な事?」
我ながらいじわるな聞き方だと思うけど。だってしょうがないじゃない。
好きな子の気を引くためとかだったらどうしてくれようか。
「その…雛乃姉さんに見せてあげようと思って……」
「姉さんに……?」
「うん、この前おみまいに行った時思ったんだ。雛乃姉さん…ずっと障子ばっかり見てたらつまらないかなーって……」
………
「で、ホラ。障子に何か映ったら楽しいでしょ?これなら横になりながらでも見られるし…」
…ああ、もぅこの子は。
ぎゅっ……
空也を抱き締める。
「えっ!?えっ!?」
「ありがとう…………空也」
「姉さん……泣いてるの?」
「……泣いてないわよ…」

(作者・愚弟氏[2004/07/15])


※1つ次 姉しよSS「影絵三部作・影絵劇場〜我が一撃はツインなり〜
※2つ次 姉しよSS「影絵三部作・エピローグ


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