Dragon of the Sadness Vol.4

"Virta and the Prince of Lorasia" by Silhouette Sakura

「もっと強力な聖水を持って来い。大量にな」

ローレシアの王子が苛立たしげに命じると、ムーンブルクの使いは首を振った。

「無茶を仰りますな。我が国がいかに努めても作れる量はこれが精一杯です。サマルトリアに送るべき分もそちらに回しているのですぞ」

「そちらは新しい奴隷を得たというではないか。ロンダルキアの血を引く強大な術士を」

「ですから聖水の純度は十倍にも高まったはずです。量もかつての数倍に及びます。これ以上を求めるなら、ロンダルキアに侵攻し、新たな奴隷を克ち得ねばなりません。それはあなたのお役目ですぞ」

「ロンダルキアの併合は平和裡に行う…繰り返させるな。もういい行け」

魔道師が平伏してから退くと、ロトの直系は執務室を離れ、城の外れにある罪人の塔へと向かった。雪国の姫君が白い竜となって魔物を倒し、王子を救ったという筋書きは、市井にも宮廷にも受け入れられなかった。太后は親戚の死に憤りを隠さず、現王も諸侯も、邪恋に盲いた世継ぎを嗜めるばかりだった。だが内々には、虜囚として牢につなぐとして、助命はなった。初めに望んだ形ではなかったが、ロンダルキアの娘の全存在は掌中に入ったのだ。

塔の螺旋階段を降りて地下室に着く。呪文で守りを固めた鋼鉄の扉を開くと、恋人はそこにいた。鎖に繋がれ、目隠しと耳栓をされ、唇と秘裂、尿道と菊座にそれぞれ管をつながれて、細い四肢と不似合いに膨らんだ腹、たわわな乳房を揺らしている。胸の尖端には銀の輪飾りを通し、魔除けの鈴を吊るしてある。同じように耳にも、夜色の髪にさえも編み込んで、かすかに悶えるたびに涼やかな音をさせる。

「待たせたな」

優しく囁きかけて、五感の覆いを外してやる。半日ぶりに聞くのは夫の言葉。目にするのは夫の顔。嗅ぐのも触れるのも味わうのもただ一人だけ。ほかの刺激は殆どを取り除いてある。娘は貪るように恋人の存在を求めた。

「ぁっ…ぁっ…」

憎んでいても、恨んでいても、ただ一人しかすがる相手はいない。半竜の娘はよく耐えた。五日間。無感覚の獄に。だが六日目に音を上げ、死んだ騎士や捕えられた僧侶、父や母の名をままやきながら、王子にしがみついた。

主人は奴隷が聞きたくもない名を口にするたび、孤独という罰を与えながら、一つ一つ呼ぶのを禁じていった。思い出さえも認めず、覚えているのは伴侶だけになるよう、ムーンブルクの魔道師を呼んで術をかけさせもした。

「今度の聖水は特別純度が高い。お前の中の穢れも消え去るはずだ」

ヴィルタは答えようとして、嘔吐した。澄んだ水を。胃の腑が腫れ上がるまで、聖水を流し込んでおいたのだ。王子が嗤いながら陰唇や肛孔、尿道の管を抜くと、盛大な失禁と脱糞が始まる。といっても汚れはない。溢れるのはすべて聖水だ。

ただしめくれた粘膜はどれも爛れたように充血している。余りに高い純度の聖水は、半ば人間である姫君の身さえ灼くのだ。だが初めに泣き叫んでいた頃に比べれば、随分こらえるようになった。魔の部分が薄らぎつつある証だと、夫は独りで決め込んでいた。

「見なひでぇっ…見な…ぁああああっ」

まだ男の前で醜態を曝すことへの羞恥を保っているのが、何ともいじらしく、愛しかった。だが括約筋は意志と無関係に広がり、直腸にぎっしり詰め込まれた破邪の護符を零ししていく。

「お゛ほ゛ぉ゛ぉ゛っ!!」

膨らんだ腹を押すと、いよいよ排泄の勢いが強まる。白眼を剥きながら、痙攣しつつの御守りの数々をひり出していくようすに、王子はじっと魅入った。ややあって、蛙腹が元のすんなりした細さに戻っていく。

鎖を外してやると、奴隷はぐったりと倒れ込んできた。しばらく両腕のあいだに、柔らかい抱き心地を楽しんでから、聖なるナイフで家畜の刻印を居れた尻を叩いて、我に返らせる。

「始めろ」

ヴィルタはまた少しぐずついて渋ったが、目隠しをすると、とたんに怯えて王子の股間をまさぐり、剛直を咥え込んで奉仕に入る。喉の粘膜までを使う激しい口戯で、当然苦しいはずだが、主人は奴隷を片時も休ませようとしなかった。

「くっ…出すぞ…」

精を放つとすぐには飲み干させずに、口の中に溜めさせ、よく味わってから唾液とともに嚥下するよう強いる。一度目に命じた際は強い抵抗にあったが、折檻が利いたのか近頃は文句を言わない。

「うまいか…俺のものは…」

頬を強張らせて、すぐには答えようとはしない。

「云わねばもう餌をやらんぞ」

「…ぁっ…」

「どうした…」

「ぅっ…しいです…」

「聞こえぬ。はっきり答えろ」

「うぁっ…お、おいしいですっ…りゅ…竜便器のヴィルタはぁ…子種汁が大好物ですぅっ…どうか毎日飲ませてくださいませぇっ!!!」

やけっぱちに叫んでから、両の掌で顔をおおってさめざめと泣く。何故卑猥な台詞を口にできるのかが本人にも分からないのだ。王子は震える肩に腕を回してやりながら、耳打ちする。

「悩むなヴィルタ。忘れるんだ。お前は生まれた時から俺の奴隷だ。何も考えずに俺を歓ばせてだけいればいいのだ」

「違う…」

「ではほかに、お前は何ができる?裁縫か?」

半竜の娘はおずおずと首を横に振る。

「料理か?」

また首を振る。

「詩吟か?」

「それなら…」

「いやできない。できないんだお前には…分かるな」

奴隷の喉元にはまった銀の輪が真珠色の光を放つ。

「は…い」

「戦えもしない。政務の役にも立たん。ヴィルタ。お前は俺の性欲を処理する以外には何の価値もないのだ」

「違う…」

「そうなのだ」

「はい…」

「またがれ」

左右の肉襞と乳首、耳につけた魔除けの鈴を鳴らして、捕われの姫は王子の膝の上に脚を開き、長大な屹立に腰を降ろしていった。太幹が産道を広げる圧迫感に歯を鳴らしながら、夫と指を絡ませ、淫靡な舞いを始める。

鈴鳴りは相重なって響きの良さを増し、黒髪は宙に振り乱されて汗を散らす。後孔に残っていた聖水をだらしなく噴きながら、ヴィルタは何度も気をやり、度毎に双臀を抓られ、打ち据えられて、日に当たらぬ白い肌に紅葉を散らす。ローレシアの世継ぎが満足するころには、左右の尻はどちらも炙ったように臙脂に染まり、倍にも腫れていた。

「…んっ…ふぁっ!ひはぁっ…も…叩いちゃ…やっ…きぅっ」

「叩いて下さいだろう?」

主人が氷の眼で見つめると、再び首輪が輝き、奴隷はおののきながら望みと反対の嘆願をする。

「はひっ…ぁっ…ごめんなさ…もっとっ…お仕置きして下さい…ヴィルタにもっとぉっ…やっ…でも…っ…にゃぅっ!!…」

夫は妻を押し倒して、強引に突き上げた。石床に傷んだ双臀が擦れるのか切なげな喘ぎが漏れる。また劣情を誘われて、右の掌で釣鐘型の乳房を横から掴むと、揉み潰すようにしながら、さらに抽送を早める。

「ひぃっ!おっぱぃ…いたいよぉっ!…あぐっ…らめぇぇっ!!!…ちぎれちゃ…ぁっ!?」

攻め手は急に動きを止めると、また伴侶の耳元へ囁いた。

「だらしのない胸をしているお前が悪い」

ひっと息を呑んでから、娘はまた睫に涙を溜めてえずいた。

「ごめ…ごめんなさい…おっぱい大きくてごめんなさい…」

「ならば自分で罰を与えろ」

促されるまま、ヴィルタは両の手で肉鞠を鷲掴む。初めやわやわと揉んで叱咤を受け、すぐに仕込まれた通りめちゃくちゃに弄り回しながら、痛みをこらえ、上目遣いに王子を窺う。

「よくできた」

珍しく賞められて戸惑うロンダルキアの姫に、ローレシアの太子は褒美とばかり剛直を突き入れた。子宮にぶつかるような一打ちに、華奢な半身は弓なりになって、失禁しながら絶頂に達したようだった。ぐったりした人形の躰になおも腰を使ってから、二度目の射精を終えると、のろのろと引き抜いた。

疲れ切って眠りに落ちる妻を眺め降ろしながら、夫は満足げに息を吐く。だがやがて己の髪を掻き毟ると、軋んだ自嘲の笑みを迸らせた。


ローレシアの下町に不吉な噂が囁かれていた。深更、奴隷を伴った仮面の騎士が裏通りに現れると。不運にも出会した男は斬り殺され、女は両の眼を抉られるというのだ。

奴隷は常に銀の首輪を嵌めて、大きな胸を括り出し、背を隠さない鱗の胴着をまとうほかは、下穿き一枚もなく、艶やかに黒い茂みと秘裂を露にしている。ただし左右の肉襞に、それぞれ一列に穴をうがって輪飾りを連ね、ちょうど靴紐のように細い革帯を通し、互い違いに編み合わせて、奇妙な貞操帯と成していた。菊座には竜の尾を模した野太い張型を咥え、腹を浣腸で臨月の如く膨らませ、乳房と耳には魔除けの鈴を揺らしている。

騎士は丈高く、闇色の外套をなびかせ、長剣を携えていた。いつも人々が寝静まる頃、角灯を捧げ持つ半裸の娘を前に立たせ、鈴音を響かせながら、狭い小路をすり抜けていく。

今夜もまた二つの影が石畳に踊る。

行く先は精霊ルビスの教会。奴隷は角灯を置くと、四つ足をついて地面の紋章に口付けし、舌を這わす。ラダトームからロト三国にいたるまでを遍く支配する尊き教えに、完璧な服従を表しながら、自らの卑しい身分を表すように尾の生えた尻を高くもたげ、主に向かって淫らに振りたてる。精霊を崇める心と、騎士に捧げた体、ローレシアの婢には相応しい態度だった。革帯で縫った陰唇は蜜を滴らせ、信仰と肉欲に昂ぶりを示す。

騎士は平手で娘の内腿を打って細い悲鳴を上げさせると、再び明かりを持たせて進ませる。向かうのは建物の裏にある共同墓地。銘もかすれた玄武岩の碑のあいだを進んで、隅にある粗末な塚へ辿り着く。土を盛ったばかりの雑な作りだが、やけに大きな巌を載せてある。まるで屍が蘇るのを恐れ、特別の重しをしたかのようだ。

「ヴィルタ。覚えているか?お前が、あの汚らしい肉片を掻き集めて、どうしても葬れと迫ったのだぞ」

「…ぅ…ぁっ…だめ…分からな…」

妻とのあいだで、もう何回目かになる問答をしながら、ローレシアの世継ぎは歪んだ喜悦に唇の端をねじ曲げる。

「お陰でここに親族の棺を横たえようという者はいなくなった。噂は伝わるものだな。貧民どもでさえ、邪悪な魔物の眠る同じ土に家族を葬ろうとはせぬ。お前のわがままで、我が領土に闇の染みがついた」

「…申し訳…ありません…」

「清めねばならんな。やれ」

ヴィルタは素直に墓にまたがった。このところむっちりと肉付きのよくなった太股を開くと、巌の上に革で編んだ貞操帯を擦りつけ、以前よりだいぶ脂肪が乗った尻を突き出す。王子はすぐに張型の尾を掴むと、肛に埋まっていた珠数つなぎの香り玉を引き抜いていった。

「ふぁああ…」

奴隷は粘膜をごつい玩具に擦られながら、消化器官の蠕動に喘ぎ、絶えず腹を内側から掻き毟る苦しみからの解放を予感して、睫の端に恍惚の雫を溜める。しかし、支えを求める手が冷たい石の表面に触れたとたん、快楽とは別のおののきが背筋を這い登った。

「だめ…」

「何がだめだ。お前の内に貯えた聖水で、この穢れた塚を浄める。いつもの事ではないか」

「だめなの…これだけは…やっぱりだめ…」

半竜の娘は首を振った。ひどくいけない事のような気がする。どうしてなのか分からないが、魂の一部がひび入り、毀たれてしまうような、凄まじい悲しみが襲うのだ。

騎士は仮面の奥から、鷲の如き眼差しを奴隷の背に注ぐと、さらに珠数をたぐった。直腸を捲り返しながら、次々に大きな玉が現れては湯気を上げる。だんだんと直径を増して、奥に捻じ込まれていたものほど疣のついた魁偉な形になっているのが分かった。

とうとう子供の拳ほどもある責め具が、括約筋を一杯に開いて頭を出すと、ヴィルタはだらしなく顎を落とし、舌を突き出し、白目さえ剥いて、下品なよがり声をこぼす。広がりきった排泄口の縁からは、腸液と聖水の混ざった泡が溢れ、ぽたぽたと硬い巌に落ちた。あと少し引っ張るるだけで、決壊が始まるのは明らかだった。

「思い出させてやろう。下に眠っているのは、お前を救い出そうした故郷の騎士だ。お前は今から、俺を喜ばせるために、その上で腹の中にたまったものをぶちまけるのだ」

「いや…いやああああああ!!!!」

わずかな理性の閃きのあとで、絶望が漆黒の双眸を染めた。ロトの子孫は嗤いながら一気に残りの玩具を抜くと、竜王の末裔が忠臣の墓へ盛大に泄らすのを鑑賞した。

「ぅあ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛っっ!!どめ゛でぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛っ!!お゛ね゛がひ゛ぃ゛っ゛!!やだぁ゛ぁ゛っ!!あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ」

ロンダルキアの姫が逃れようとあがくのを、ローレシアの王子は肩を抑えつけ、死者への冒涜を強いた。ごつごつした墓石を、精霊に浄められた液体が洗って、積もった埃を落としていく。桶に何杯分もの聖水が、はじめは勢いよく噴射され、やがて細いせせらぎとなって止まる。

奴隷はぶるぶると痙攣しながら、犯してしまった禁忌の重みに嗚咽した。主はもう抵抗がないと察してから、力の抜けた肢体を離すと、巌の上にへたり込んだ裸身を眺め回し、輪飾りと革帯で縫い合わされた秘裂がしとどに濡れそぼっているのを認めた。

「ほう…家来の屍が埋まった場所で粗相をしながら果てたのか。呆れた淫売だな」

「うぅ…ぁあ…ぁああああ!!!!…許して…許して…私…私…」

「お前が、まだ本当に故郷を、死んだ仲間を思っているなら、耐えられたはずだがな」

「ひっ…」

「お前は裏切った。歓びを貪る方をとり、魔物にとっては毒にほかならない聖水を漏らしながら、ぶざまに達した」

「うぁ…ぁ?」

「今宵が初めてではないぞ。もう何度も繰り返している。気持ちよかったか?」

「ぁああっ…ぁっ…」

「答えろ」

首輪が蛋白石のような淡い光を放つ。ヴィルタは舌をもつれさせながら、仕込まれた台詞を述べ立てた。

「きもち、きもちよかったですぅ!!…うらぎりものの竜便器はぁっ、臣下の墓で粗相をいたしゅのが大好きですぅ!!…たくさん!たくさん出させて、いただき…ありがとうございます…」

「それを聞いたら死んだ騎士はどう思うだろうな?」

「っ!!…言わないでぇ…言わないでぇっ!!!」

「だがその男の名前すら思い出せないのだろう」

「う…ぅ…」

「お前のような女にもう故郷はない。その資格すらない。お前に残されたのは俺だけだ。俺だけがお前を許してやる」

「許して…下さる…」

ヴィルタは込み上げる安堵にむせび泣いた。夫は愛情のこもった手つきで聖水に濡れた双丘を撫ぜ、緩みきった菊座に三、四本の指をねじ入れて熱く蕩けるような肛肉を捏ねる。しなやかな半身が反り返って、左右の乳房のでたらめな揺れとともに、涼やかな鈴の音を響かせた。

「ふぎぃっ!!♪」

「許すだけでなく褒美をやろう」

「ふぁっ…♥」

「ねだってみせろ」

半竜の娘は嬉しげに頷くと、墓石に腹を乗せて脚を八の字に突っ張り、両腕で己の双臀を割り広げて、ぽっかり空いた洞を夜気に曝す。

「ヴィルタのけちゅまんごにぃ、ご褒美下さいませぇ!!」

仮面の騎士は、勃ち返った陽根を自由にすると、手間を掛けずに、ぶざまに開いた穴へ打ち込んだ。すぐにも窄まりは閉じて、雄のものをねじ切りそうなほど締め付ける。ドラゴンの血の賜だった。どれだけ拡げても、刻を置かずにきつさを取り戻すのだ。切り裂こうが、打ちのめそうが同じだ。輪飾りや針を使う際は、あらかじめ癒着を妨げるよう聖水で呪文でよく焼いておかねばならいほどだかった。

地上最強の種属が持つ底なしの生命。ローレシアの王子は時折、まぐわいの最中に先に困憊しそうになると、短刀でロンダルキアの王女の肌を刻み、血を啜った。すると全身に力が漲って、奴隷が失神を重ね、とうとう醒めなくなるまで凌辱に浸れるのだった。

「まったく…便器に向いた体だなっ…」

「ひんっ♪ありがとぉございますぅっ!!!…ぁ゛あ゛っ…しゅごぃ!!…けちゅまんごぉっ…けずられてるのぉっ!!」

夫がはらわたをかき回すたび、妻は腰をくねらせ、胸と耳に付いた小さな楽器を鳴らす。忠臣の眠る墓に、革紐で縛られた花芯をこすりつけ、黄色い小水をかけながら、排泄器官を掘り返される怖気にも似た官能の疼きに、甲高い嬌声を上げた。

王子が血を欲すると、素直にうなじを差し出す。男の性を処理する便器と強壮剤代わりに使われも、いや使われればこそ、幸福はいや増した。ほかに寄る辺とてない奴隷は、主の要求に応じるあいだだけ、存在価値を持つのだから。

竜の体液を飲んだ騎士は、いっそう激しく腰を使った。責めは延々と止まなかった。やがて娘は痙攣し、口の端から泡さえ吹いて、抽送に合わせて尻を振る余裕さえなくし、ほどんどされるがままになる。

ヴィルタは果てて、逝って、達して、狂って、壊れて、また果てる。神経は絶え間ない快楽の波に麻痺し、脳は真白に灼けつく。死ぬかもしれない、容赦を知らぬ逸物に突き殺されるかもしれないと思い、たまらない甘やかさに胸をときめかせる。めくるめく感覚だけが、まだ生ける世界とのつながりを証していた。

「ぁあっ!ぁっ!ぁっ!ああああああっ!!!!!」

本能のまま喚くだけで、気絶しそうなほどに快かった。雌竜は曲のない歌を謳って、被虐の愉楽に溺れた。もはや抗うところはなく、伴侶に命じられれれば、息も絶え絶えにどんな誓いでも述べた。名前を忘れた王国の継承権、顔を思い出せない父母や民草の将来、すべてを捧げると約束した。

ただ品格を貶めるためだけの契りもした。朝は秘具をしゃぶって起こし、昼は一糸まとわぬ姿で閨の習いに勤しみ、夕べには股を拡げて迎え、夜は臥所で遊妓のごとく舞うと。排泄はすべて夫の前で済ませ、特別に許された娼婦の衣装しかつけず、湯浴みの際は素肌を拭き布にして愛する人を洗う。いつもしている通りだが、意識の片隅にこびりついていたてらい、ためらいをかなぐり捨てて、一切を欣びとして受け容れる心ができたのだった。

天の涯が朱に変わるころ、ロンダルキアの世継ぎは後孔から白濁をひり出しながら、屈従と隷属の言葉を唇に載せて、混沌へ堕ちていった。


墓場での一夜のあと、半竜の娘は身籠った。へその周りが美しく膨らむにつれ、王子の躾も烈しさを失い、いたわりと気遣いが覗くようになった。依然として口と菊座を使った奉仕の回数は減らず、尻穴は出すよりも入れられる機会の方が多いほどだったが、独りで牢に閉じ込めたり、闇の町を裸で散策させたりといった仕置きはすっかりなくなった。

ヴィルタは夫にまめまめしく仕えた。家事の類は禁じられていたから、できるといえば性戯を除くと按摩や骨牌遊びの相手くらいだったが。また詩吟や奏楽は許されないものの、端唄を口遊むくらいならば大目にみられていた。卑猥な曲も教えられ、寝床では喜んで歌ったが、日のあるうちは素朴な童謡を好んだ。気難しい伴侶も止めようとはせず、じっと聴き入るのだった。

みづきのこはんに ぎんのふね

ゆらりゆらりと こぎだして

ぼうやのねむる みなぞこへ

「気が早いな。もう子守りを始めるつもりか」

「さぁ…どうでしょう…」

膝をそろえて座ったまま妻が微笑むと、胡坐をかいたローレシアの世継ぎは、腕を伸ばし、臍の出た裸の腹をそっと撫でた。冷やせば児に悪いと分かってはいたが、日に日に大きくなっていく胎を外から眺めるのは楽しかった。重い胴を揺すってぎこちなく媚態を作る仕草も愛しい。

「腹が減ったな」

手を拍つと、小間使いが盆を運んでくる。目の周りを布で覆った盲の童女で、手に持つ銀盤に塊のままの焼き肉と、葡萄酒を満たした陶器の甕が乗っていた。

「よし」

促されたヴィルタは、直に食べ物に噛りつき、細い顎からは想像もできない強さで欠片をちぎり取ると、よく咬み解してから、伴侶に口移しする。唾液と肉汁の混合を舌と舌でやりとりしながら、湿った音を立てて奇妙な接吻が始まる。

ロンダルキアの家畜姫は、朝餉や夕餉も淫ら事の一部として慣れつつあった。夫の指が潤んだ叢を掻き分け、蜜壺の縁を探ると、喘ぎつつも流されはせずに、親鳥が雛にするような餌やりを続ける。

麺麭、葡萄酒、肉。すべてを二人で共有し、互いの胃に収める。ロトの子孫にとって、竜王の血を引く娘とのこの交歓こそは、最も安らぐ一時だった。

「ぷはっ…ふ…食い意地の張ったやつ…」

「は…ぅ…申し訳…」

頬をそめてうつむく妻を抱き寄せて、唇の端についた食べかすを舐めとる。かつて国交再開を求めて訪れた勇敢な王女の面影はないが、従順な婢としてのヴィルタもまた、可憐で心楽しませる存在だった。

「典医は、そろそろ赤子も落ち着いた頃だと言っていた。また前の穴も使えるだろうな」

「ぁ…はい…嬉しゅうございます…」

「こちらはどうだ」

乳房を掴むと張っているのが分かる。半竜の娘は、恥ずかしげに微笑みながら、胸を貫く輪を外すと、膝立ちになって、伴侶の口元へ白く沁んだ胸の尖端を近づける。噴き出す母乳を舌で受け止めながら、ローレシアの世継ぎは目を細めた。

「なかなか良いようだな。これから毎朝、盃に絞って出せ」

「あ…はい」

ドラゴンの体液はどれも活力を高める効果がある。家畜姫には、一緒にとる食事のほかに特別な餌をとらせていた。ムーンブルクが調合した雌牛の乳房を膨らませる薬、白い滋液の出をよくする薬、味を甘くする薬などをふんだんに入れて。

勇者の直系は身内で膂力が爆けるように大きくなるのを感じた。もうあの悪魔の騎士と対決しても、決してひけをとらない。いや、一太刀のもとに倒せるだろう。

「血をもらうぞ」

「はい…」

手を拍つと、また盲の童女が現れ、盆に載せた清潔な匕首を差し出す。王子はヴィルタの乳房の付け根あたりに深く切り込みを入れる。

「うっ…」

蒼褪めながらも、奴隷は唇を咬んで呻きをこらえ、両腕を胸の下に入れて二つの肉鞠を支える。主人は、無惨な傷口を興味深げに覗き込んだ。ひょっとしたら乳首からと同じように白いものを零すのではないかと錯覚したが、溢れたのは真紅だった。寄せ上げた乳房の谷間に十分な量がたまるのを待ってから、唇を付けて飲み干す。肌についた滓まで綺麗に舐め取ると、舌先がみみずばれのような筋にあたる。先ほどの刃痕が塞がった跡だった。

「…卑しいヴィルタの血を飲んで頂き…ありがとうございます」

欠かさぬ感謝の台詞をのぼせて、娘は引き攣った笑みを浮かべる。まだ痛みの余韻が去らないのだろう。青年は口に残る鉄の味に舌鼓を打った。体の奥が熱を帯びている。早く獲物をずたずたにしたくてたまらない。盛りのついたドラゴンとはこういうものかといつも思う。

「ヴィルタ…股を開け」

「はい…」

奴隷は背を反らせると、膝を擦らせて両腿の間隔を広げた。主人は、しとどに濡れそぼった花弁に眺め入って、やおら腰を上げる。

しかし不意に、部屋の向こうで微かに鐘が鳴り、食後の娯しみに水を差した。帷の影からまた小間使いがするすると現れて告げる。

「国王陛下がお呼びです」

ローレシアの王子は嘆息すると、妻の助けを借りて衣服を直した。

「すぐに戻ってくる」

「待っています」

お預けを食らった切なさに語尾を震わせながらも、ヴィルタはけなげに応じる。王子は微かに汗ばんだ額に口付けすると、安逸をあとに、義務のもとへ向かう。

螺旋階段を登り、塔を出ると、殆ど駆けるような疾さで、本城へと急ぐ。

警備の兵の敬礼を振り切るようにして、父の執務室へと足を進める。寄ってくる文官の類は睨みつけて追い払う。面倒な取り次ぎなどはすべて省くのが倣いだった。

王家の紋章が入った樫の扉を叩きもせず押し開けると、さほど大きくもない部屋に一つだけある机を前に、この頃めっきり衰えたローレシアの君主がいた。

「…早かったな」

「ええ。ところで御用とは?」

「ふ…ここは戦場ではないのだぞ…少しは礼儀作法に気を使え」

苦笑する父王に、嫡男は冷めた眼差しを返す。

「それを言うために呼んだ訳ではありますまい?」

するとロト三国の盟主は、鷹揚な笑みを絶やさずに語句を継いだ。

「あれの仕上がりはどうだ…」

「あれとは?」

「竜だ。そなたの捕えた」

「妃ですか。変わりありません。世継ぎも順調に大きくなっているようです」

「…世継ぎとはな…あくまで言い張るつもりか…まぁよい。ムーンブルクの先王から手紙があった」

王子はかすかに身じろぎした。月の都の御隠居からの便りに、楽しい話があった試しはなかった。ロンダルキア征服にあたっては、あらゆる面で頼らざるをえない人物とはいえ、どうしてもあの蛇のような知恵が好きになれなかった。息子のシメオンは泰然とした性格を、死んだ娘は果断さと残忍さを受け継いでいたが、両方を併せ持つ翁は老獪という以上に底知れぬところがあった。

「何と?」

動揺を隠して訊く息子に、親は憂鬱げに答える。

「竜の馴致がいかほど進んだか見たいそうだ。贈った品々が役に立ったかどうかも知りたいとな」

「見たければ向こうが来るのが筋でしょう。ムーンブルクは枝国。三国の長上たるローレシアを召し出そうとは、身の程を弁えぬ…」

「…行って参れ…竜の処分については向こうに任せるのだ」

「何を…妃は身重ですぞ?」

「これは命令だ」

嫡男はきっと父王をねめつけ、すぐに視線を逸らした。己に似た顔に浮かぶ苦悩など見たくはなかった。ムーンブルクの先王と目の前の年寄りとではあまりに格が違いすぎる。建立から幾百年を経て、三国の地位は曖昧になりつつあった。いや、いずこの宮廷においても誰も彼もが陰では噂していた。世界の覇権を握る要は剣ではなく魔法。呪文を使えぬローレシアに未来はないと。

だからこそ。竜を操るべきなのだ。ロンダルキアの血を入れれば、十分にあの妖怪じみた月の都の御隠居に対抗できる。何度親族の説得を試みたか。拒否は伝統を重んじるが故の頑迷さだと思っていた。だがもしや、ムーンブルクの威勢を畏れての萎縮なのでは。

「父上…」

「ローレシア王の名において命じる。我が子よ、竜を伴って月の都に赴け」

「仰せ賜り、仰せ従います」

王子は火を呑む思いで抗弁を控えると、よそよそしい礼をして王の前を辞した。妻が待つ塔への道を辿る足取りは、ひどく重くなっていた。

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