Nine nights of the elven slave Vol.6

玻璃の大皿に妊婦がひとり載っている。

綺麗に櫛を通した長髪を後ろにやって、飾り輪を連ねた尖り耳を垂らし、ふっくらした尻を冷たく透き通った器の底につけたまま、首を上向かせた格好。両手で重たげな半身を支えつつ、たわわに実った胸毬から白蜜を滴らせ、緋色の先端を貫く輪飾りと細鎖を濡らしている。

満月のように膨らんだ腹には紋様が脈打ち、臍には大粒の金剛石が煌めく。手首や足首、喉首にはまった精緻な象嵌入りの環からは淡い香煙がたなびき、陶磁の肌に浮かぶ汗は、不思議にも貴腐の酒だった。

不意に黒檀の色をした大きな手がぬっと伸びて、象牙の色をした双丘の片方を鷲掴むと、肉質を確かめるように握り、揺すり、抓り、叩く。

「ぁっ…」

孕み女がかそけき喘ぎをこぼすと、縦にも横にも幅のある巨漢が、覆いかぶさってくる。暗い膚のところどころに鱗を散らせた顔いっぱいに笑みを浮かべて。

「だいぶやわこくなっただ」

「うむ…」

「食べごろだど。ええだか」

「存分に…食らえ…」

大兵の青年、影の国随一の料理人たる黒の料り手は莞爾とすると竜の如く焔の息吹でみずからの両手と口を清めてから、みずから仕上げた生きた佳肴と接吻を交わしてから、耳まで裂ける獰猛なあぎとを開き、育ちきった瓜(うり)の如く瑞々しく豊満な乳房にかじりつく。

素肌に牙が食い込む感触に、妊婦はおののきつつも逆らわず、すべてを差し出す。怪物じみた雄は、たおやな雌の一番軟らかな部分を隅々まで楽しみ、本当にそのまま引きちぎってしまうのではないかという勢いで、幾度も荒々しく甘噛みして円形の歯型を無数に刻む

かと思えば飾り輪の貫く乳頭を、鋸歯の間に挟んでくすぐり、長虫の如く二つに割れた舌で捉えて転がし、本来は赤子のためにあるはずの糧をあふれさせ、喉を鳴らして呑む。

尋常ならざる責苦に、しかし身重の乙女はたやすく絶頂に達した。随喜の涙をこぼしつつ、唇を半開きにして啼き、餌食になる喜び、貪りの的となる恍惚にむせぶ。

「ほんとにやわこくなっただ。薬酒さ呑ませながら毎日よく揉んだ甲斐さあっただ」

「…ひぅ…んっ…」

巨漢はほのかに花の香りがついた乳で口元を汚しつつ、満足して離れると、再び清めの火で身を焼いてから、再び口付けし、舌をうねらせて獲物の歯列をなぞり頬の粘膜をこする。

他方で剛腕を伴侶の股座に差し入れ、太く長い指を蜜壺に入れて料理のできばえを確かめるように掻き混ぜ、あっさりとまた達させる。さらには人差し指を尿(ゆばり)の通る道へとねじ入れる。

あまりに異様な玩弄に、エルフの料理はたわわに実った胸と腹をゆすらせてわななく。しかし歴代の主人が丹念に馴らし寛げてきた排泄の穴は、内側まで燃える蔦とも焔ともつかぬ紋様に輝き、たやすく侵入を許すと、快楽さえ覚えるのだった。ごつい指は、しかしうわべに似合わぬ繊細さで、しばらく敏感きわまる場所で戯れてからするりと抜ける。たちまち勢いよく小水が噴くが、すべてが馥郁(ふくいく)と薫る葡萄を醸した甘露となって、大皿に浅くたまってゆく。

にんまりした巨漢は位置を変え、今度は髪の間から爆ぜる雷で穢れを払ってから、今度は妊婦の双臀を掴んでやすやすと持ち上げると、麺麭(ぱん)生地のように力強く捏ねて、苦悶と甘鳴のいりまじった息吹を引きずり出す。

真白い肌に真赤な握り痕のくっきりとついた尻朶の谷間をなぞり、肛孔にたどりつくと、ぽってりと肉づきのよい縁を繊細になぞってから中へ潜り込ませてゆく。並外れた寸法の掌は五指を花の蕾のように窄めつつ、縦に割れた菊座に沈み込んでゆく。するとどうした訳か、端から瑞々しい緋色の果汁が潤滑油のようにあふれて甘くさわやかな香りをただよわせる。

とうとうすっぽりと手首まで腹に収めた孕み女は歯を、悪寒に似た感覚にかちかちと鳴らす。すると大兵の青年はよしよしと腫れた臀肉を撫ぜてやりながら、命じる。

「力入れてくんろ」

「ぅっ…んっ…」

エルフの奴隷は主人の腕をきつく締めあげてみせる。

「いてぇだか?」

「あぐ…こごち…よ…ぃっ…」

「んだか。腸(はら)ん中全部、紋様さ回っとるだな。おまけに真綿(まわた)の紐みてえにやわこく捉えて、オラの骨さ軋むほどの強さにも緩みもねえど。薄焼菓子ちゃんさどこもかしこも極上にしあがっただ」

「んっ♪」

あけっぴろげな笑みとともに怪物じみた雄が述べる、常軌を逸した賞賛に、しかし雌は歯を食いしばり、長い睫に涙をためたつつも、誇らしげにつんと鼻を上げてから肛孔をまた絞ってみせる。

「いたずらだか?」

黒の料り手がたしなめるように皿の上の双臀を打擲すると、生きた佳肴はかそけき嬌声とともに首をのけぞらせ、半ば白眼を剥きつつ、胸から乳を、股から貴腐の酒を漏らし、唇からは花蜜の香りをあふれさせる。

巨漢は崩れ落ちそうになる妊婦の腕を掴んで支えつつ、はらわたをまさぐるのは止めない。身重の体の内側から裏側から膨らみきった子宮に触れてそっとさする。

「ぁ…かっ…そんにゃ…とこかりゃ…あかひゃん…にゃでるにゃぁっ…♪」

「元気な子だど。また薄焼菓子ちゃんの腹さ蹴っとるだ」

「しょうやって…おまひぇがおこしゅかりゃぁっ…んぅうっ!?♪」

未だ産まれ来ぬ子がはしゃぐと、身重の奴隷はまた随喜の涙をこぼしつつ絶頂と失禁を繰り返す。

「おめさ…胎(はら)ん中も紋様回っとるだか」

「ふひぃっ…んっ…」

「外より回るの早かっただか?いつからだ?」

「はぐぅ…ぅっ…」

「済まねえども教えてけれ。オラの大事な料理のことだど」

大兵の青年は、応えあぐねる孕み女の腕を離すと、紅蕾につながる鎖を軽くひっぱってうながす。

「きひぃっ!?♪…言ぅう…言ぅかりゃぁっ!…あぐ…しゃんにんめぇ!…しゃんにんめ…宿した…ときかりゃぁあ!!…子が…はらにいる…あいだ…っ!…ずっと…ここちよぐ…でぇっ…産む…ときっ…はぁ…いつもっ…くるい…そうにな…っ…」

「んだか。よう堪(こら)えとるだ。薄焼菓子ちゃんさ絹みてえにしなやかだと思ったども、芯さ金剛石より硬ぇだ」

「んむっ…んっ…♪」

怪物じみた雄は雌のはらわたを中から愛撫していた腕を、ようやくゆっくりと引き抜く。薄桃の粘膜が捲(めく)れると、寛(くつろ)ぎきった穴から、半ば透き通った苺が幾粒も零れ出て、鋼より丈夫な硝子細工の器にたまる。

「ふぅ…ふぅ…きょうは…もぉ…おわり…だな…っ?」

「これからだども」

「っ…!?あかごがっ…」

「じょうぶな子だで大事ねえだ」

黒の料り手は生きた佳肴の腰を抱え、尻朶の間に顔を埋めて菊座に舌を捻じ込むと、奥で育ち実り続ける半ば透明な赤い果をすすり出して貪る。

「ひぃぁあっ!!?」

魔性の料理人がしてのけた想像を絶する行いに、妖精の活け作りは裏返った悲鳴をこぼしながら、胸と腹を揺らしてもがき、また官能の窮みに達し、皿にたまる貴腐の酒の嵩を増してゆく。

巨漢は、孕み女の三つの孔をそれぞれ心ゆくまで味わってからやっと痙攣する餌食を解放してやった。

「ぁっ…かっ…」

「うまかっただ」

続いてみずからの伴侶が産み出した糧をすべて腹に収めると、ぐったりと伏す身重の体を抱え上げ、大皿に向け頤(おとがい)を開き、三度焔の息吹を吐いて清める。

花と葉に囲まれた食卓を離れて大股に歩き、沐浴の泉にたどりつく。あふれた清水がせせらぎとなって流れ出るあたりに降りて、主人はまるで野菜か果実でも洗うかのような慣れた手つきで奴隷を綺麗にし、顎を掴んでまた接吻を奪う。

「ふむぅ…ん…」

舌と舌をからませるかたちでの気つけに、妊婦は虚脱から抜け出る。

「まだ…するのか…」

「んだ。オラ、薄焼菓子ちゃんのうまそうな腹さよく見てえだ」

「っ…まったく…」

巨漢が大の字に寝そべると、孕み女は苦労して腰を浮かせ、すでに腹を鼓つほどに硬くなった屹立を掴んで真銀鍍金を施した輪飾りの縁取る秘裂にあてがう。

「この…無駄に…大きく育って…」

「済まねえだ」

黒の料り手が鎖を引くと、生きた佳肴は尻餅をつくようにして剛直を根元まで咥えてしまう。無数の鈴がまた涼やかに響く。

「ひああ!?」

「踊ってけれ。薄焼菓子ちゃん。腹の子も喜んどるだ」

「ぁぅ…ぁっ…」

中と外から同時に無邪気で容赦のない嬲りに遭いながら、妊婦は満月のように丸くなった胴と、地のあらゆる恵みを蓄えたかのような乳房を揺すり、美酒の汗を珠と散らして弾み跳ねる。

かつて歌と曲を愛した別の主人が仕込んだ通り、奴隷は胤を宿した腹を見せつけるようにし、つながったまま妖しく舞う。男女の両手の黒い指と白い指が絡んで握り合い、さらに二人の結び目を増やす。

「薄焼菓子ちゃ…オラの前では…っもう堪えんでええだっ」

「ひゃいっ!…ごしゅりん…しゃまぁ♪ごしゅりんしゃまぁっ!!♪」

果実と美酒と乳蜜を撒き散らしながら、料理と化した妖精は身重を忘れ狂い乱れる。幾度も幾度も気をやっては、魔人のゆすぶりにまた意識を取り戻し、めくるめく歓びの渦に落ち込む。

咆哮とともに巨漢が欲望の迸りを放ったあと、妊婦はのけぞって涙をこぼし、口元には至福の笑みをひらめかせた。

荒淫が終わった後、もう習わしになっているように雌は雄の股のあいだに鼻先を埋め、半ば硬さを失った太幹を咥え込んでねぶる。

「ええ子だ」

いつの頃からか言いつけずともするようになった行いだが、主人は奴隷の髪を梳りながら忘れず労う。

飼い主に芸のできを誉めてもらい褒美を貰った忠犬の如く、孕み女は得意げに切れ長の双眸を煌めかせて上目遣いをする。胸や股につながる鎖がまた動いて鈴が鳴り、臍のあたりで金剛石が瞬き、全身を覆う紋様はまた燃え立つと、手首や足首、喉首にはまった環は麝香に似て獣じみた濃い匂いを漂わせる。

「ちょこっとええだか」

黒の料り手は奉仕を休ませると、生きた佳肴の肉置き豊かにしてなおすらりとした片脚を掴んで持ち上げ、裏をうかがう。

「おめさ、ここにも紋様が回っとるだ。快楽(けらく)のまじないが働いて歩くのもつれぇでねか」

「…んっ……」

「喉や鼻にも回っとるなら、水飲むだけ、息するだけでもだか」

「…すこし…」

「赤子さ産むとなるとどんだけ大変だか」

「…あまり…気遣いばかり…するな…」

「すまねえだ」

大小、黒白の雄雌は寄り添って抱き合う。

「またいっぱい食わせてくんろ」

「…ああ…存分に食らえ…」

奴隷はもう血肉を差し出すほか、何も与えてやれないから。主人が失った一切、逃れたいと願って叶わなかった一切を、もういかようにもしてやれないから。

「ダウバ」

優しき子。貪り食らったものにさえ。

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