Nine nights of the elven slave Vol.7

影の国の地下宮殿は、闇の侍女で満ちていた。

薄緑の肌の半鬼、浅黒い膚の東夷、漆黒の肌の西戎、髪も目も体の大きさもさまざまな娘等。城中にあって古き種族、上妖精の言葉を学び、武芸と礼法、博物と伝承、数理と作文とを修め、やがて勤めを退くと、それぞれ郷里に帰って、政(まつりごと)と戦の司(つかさ)となる。

回廊や広間では静やかに足音も立てず歩むが、遠乗りや野点(のだて)、夜宴では大いに騒ぐ。

影の国の太守たる黒の繰り手が仕立てた黒と白のお仕着せをまとうが、それぞれ好みの意匠の狩衣や寝間着、水着に遊び着も持っている。容姿は異なれど颯爽としている。

皆が皆ではないが。

「あの子ったらまた転んで」

「本当に不器用」

巾箒(モップ)を抱えたまま転んで尻餅をついた侍女を、離れたところで同輩が眺めやる。半ばは呆れ、半ばは憐みを込めて。

丈はすらりと高いのだが胸も尻もはちきれんばかり大きく、いささかつり合いを保つのが難しそうな体つきだ。長く伸ばした前髪が瞼の下あたりまでを隠しているが、引き結んだ唇はかすかに震え、失態への恥じらいからか悔しさからか白い頬は色づいている。

「ここは私達が済ませておきましょう」

「あなたはおさがりなさい」

そう声をかけるものもいるが、年嵩の指南役が厳しく制する。

「なりません。闇の侍女が掃除をする意味をお忘れですか」

「いいえ。めっそうもない」

年下の乙女等はかしこまる。

「では言ってごらんなさい」

先輩の鋭い命令に後輩はただちに応じる。

「住居の清潔を保つのは命を永らえ、また戦に不利とならぬため。されど助けとなる浄めの魔法は常にあるとは限らず。武具と同じく掃除の道具の扱いにも長け、城攻めも城籠めも自在となるよう、建物の作りは隅々まで心得るべし」

「いかにも。故にこうして地下宮殿の一角から、あえて清めの呪文を退け、巾箒や払塵(はたき)を操る練習を欠かさぬのです。闇の侍女ひとりひとりがなさねばならぬ仕事。誰にも粗忽は許されませぬ」

指南役はじろりと座り込んだままの落ちこぼれの娘をねめつける。

「みずから任された分は必ず終えなさい。闇の女王に仕える誇りを忘れてはなりませぬ」

相手はびくりと首を竦めてから、小さく頷く。かくして一人を置いて、残りは別の間へと進んでゆく。ひそやかにささやきかわしながら。

「どうしていつもああなのかしら」

「つまみ食いばかりして肉置きが重くなりすぎるのでは」

「確かに。あの子からはいつも、もいだばかりの果実や、作りたての凝乳(クリーム)や、樽から出したばかりの貴腐酒の香りがする」

「蝶や蛾が寄ってきそうだこと。時々蜂の羽音に似た響きがしない?」

「澄んだ鈴の音じゃなくて?」

「解らない。あの子が…でも時々…あの子が丸ごとお菓子みたいな気がするけど」

「確かに。あの唇は、半鬼の果樹園で摂れる桜桃のよう」

「肌は小餐庁(プチレストラン)の綿花糖(マシュマロ)みたいでしょう」

「抱きしめたらふかふかして心地よいかしら」

「背は高いのに、いつも小鳥か栗鼠のように臆病で、庇ってあげたくなるけれど」

「叱りつけたくなる小頭(こがしら)の気持ちも解ります」

「くすくす…でも虐めてはいけません…あの…何という名前だったかしら」

「まあ忘れるなんて…でも…何という名前だったかしら」

ほかの皆がいなくなると、落ちこぼれの娘は、巾箒の硬い柄をたわわな胸の間に挟み込んだまま尖った顎をあげ、かそけく啼いてはわなないた。

列柱の間から足音もなく人影が進み出る。明りのもとにあらわれたのは暗い膚に尖り耳の美丈夫。並の男より高い背を持つが、豊かな乳房と縊れた胴、力強い腰にすらりとした四肢を持ち、やはり侍女のお仕着せをまとっているが、此の世のものならざる気配を帯び、周囲には虹色の薄絹がまるで雲か霞の如く浮かび漂う。切長の双眸は楽しげな輝きを宿し、整った造作も笑みに緩んでいた。

「ダリュ!ばっちりなのじゃ!こたびもとびきり可愛かったのじゃ」

「く…この…ひんっ」

ダリュと呼ばれた侍女は、半ば怒りの込もった答えを返そうとした途中で嬌声をこぼす。すぐに濃い貴腐酒の薫りが立ち上り、長い裳裾に染みが広がってゆくと、白磁の肌はいっそう朱を濃くする。

丈高く黒檀の膚を持つもう一人、淑やかな装いに似合わぬ驕慢さを備えた主人は、眼を細めると、素早くかがんでから、相手のお仕着せの襞のたっぷりとした裳裾をつまむ。

とっさにダリュは、引き攣れた指で布地が捲れぬよう抑えようとするが、暗い膚をした手が軽くたしなめるように打ち据えて払いのけると、ようしゃなく湿った布地をはぐった。

剥きだしになったのは丸々とよく脂肪の乗った臀肉。老いも衰えも知らぬ妖精の乙女の、みずみずしく張りのある肌は、渦巻く炎のような、はびこる蔓草のような紋様が隈なく覆い尽して、円かな双丘の奥には綺麗に刈り整えられた叢と、華奢な小鈴と飾り輪に縁どられた秘裂が覗く。大小二つの不浄の孔と、間にある仔産みの孔は、それぞれいっぱいに拡がって、宝石の柄のついた太さの異なる玩具を咥え込んでいる。

金(かね)でも陶(すえ)でも玻璃でもない艶やかな素材は、遥か異界から影の国の太守、黒の繰り手が持ち帰った樹脂。不可思議な魔法と工芸の絡み合いによって、まるで命あるかのごとく脈打ち、蠕動し、うねり、のたくり、回転し、無数の疣を生やしてはまたひっこめる。

「やや。からくりの強さが最大を超えておるのじゃ。黒の鍛え手の図面に過ちがあろうはずがなし…呪文をかけちがえたかや。まだまだ細かなところを調えねばならぬかや」

「止…め…」

「待っておれ。すぐ…いや違うのじゃ。ダリュ、ここは可愛く願う場面じゃ!」

無邪気に無慈悲な命令に、ダリュはいったんきつく唇を噛んだが、珠の汗を浮かばせ、紋様に燃える巨尻を震わせながら、片方の手で巾箒にすがりついたまま、もう片方の手でわななく指で裳裾を摘まんで持ち上げ、三本の玩具が蠢く下半身を晒して、裏返りしゃっくりのように途切れがちな声音で懇願する。

「ご主人…様…どうか…お許しを…ダリュは…壊れてしま…ひっ…ま…」

「ちゃんと言えておらぬのじゃ」

「ひっ…おね…がっ…もっ…」

「むう…解ったのじゃ」

主人が短く詠唱をすると、侍女の内部を容赦なく攪拌し続けていた魔法のからくりは止まった、かと思いきや前にも増した激しさで暴れ出した。

「きひぃぃっ!?」

婢(はしため)は耐えきれず、お仕着せごしにも解るたわわな乳房を突き出すようにしながら背をのけぞらせ、勢いよく三つの穴から玩具を放り出す。赤ん坊の握りこぶし程から木の実より小さなものまで、不ぞろいの大きさの数珠がそれぞれ艶やかな表面に凹凸を生滅させながら床で蛇の如くのたうつ。

「あ…ぉっ…」

続いて薄い白金に色づいた貴腐酒と、透き通った紅の完熟苺が間欠泉のように噴き出し、痙攣に合わせて馥郁たる香気を撒き散らす。

虚脱しているダリュに、黒の繰り手はしなやかに長い指で両頬を支えながらしゃがみこむ。

「完、璧、だったのじゃ!大成功じゃ!」

「ふぅっ…ふぅ…申し…訳…あり…ま…」

「?どうしたのじゃ?こなたの先祖、三代の黒の歌い手がそなたに躾けた通りの、綺麗な啼き声が出ておったではないか」

「おそう…じ…なの…に…よご…し…」

「そんなことかや?こなたの父様、六代の黒の料り手がダリュに仕込んだ下ごしらえのおかげで、少しも汚くないではないか…なれど気になるのなら」

影の国の太守が短い詠唱とともに長い指を振ると、どこからともなく、水母(くらげ)のように透き通った雑巾の群が宙を漂ってきて、酒精を蒸留したような芳香とともに一切を拭い去る。続いて淡い光を放つ海牛のような別の雑巾の群が地を這ってくると、玩具をいずこかへ運び去ってゆく。

「さ、戻って湯浴みをしたら、今宵の首尾を確かめるのじゃ」

主人は掃除用具ごと侍女を横抱きにすると、弾むような足取りで退く。地下宮殿を抜け、緑こぼれる谷に達する。

鋼鉄と玻璃と磁器でできた従者と、花と枝と葉と根と茎でできた召使があらわれ、ぐったりした婢のお仕着せを脱がせてから、すべてを片付けてゆく。

同じく裸身になった黒の繰り手は、浅黒いたわわな乳房と、くびれた腰、まどかな双臀、さらに太腿の間に第三の足のように主張する剛直を惜しげもなくあらわにし、純白の伴侶を抱き寄せて温泉と冷泉をかけ流した沐浴所に導く。

暗い膚の麗人は明るい肌の麗人を、色々な香草、香料の香りをつけた乳液と石鹸を使い分けて丹念に浄めると、内も外も隅々まで繊細に磨き上げる。

夜と昼、光と闇のような二人は温泉に漬かると、黒の繰り手はダリュを手前に抱き寄せ、たわわな胸毬を枕に貸してやる。

「疲れたかや」

「…すこし」

「ゆっくり休むのじゃ」

「…ご主人様…だ、ダリュは甘えとうございます」

「むむ。甘えるのじゃ」

ほっと息を吐いた妖精は湯の中でゆっくりと身を翻し、魔人のたわわな乳房を掴んでしばらく揉み心地を確かめてから、頬を押し当てて、おもむろに先端を口に咥える。

「んふふ。くすぐったいのじゃ」

母が産まれたばかりの娘に糧を与えるような格好のまま、主人は侍女の湯気に湿る艶やかな髪を機織に慣れた手で梳り、低く子守歌を口ずさむ。

常若の娘は目を細め、やがて長い睫毛を伏せると、尖り耳を垂らして女形の美丈夫の腕の中でうつらうつらする。

「のぼせぬうちに出るのじゃ」

しばらくして影の国の太守が伴侶を抱いて湯から上がる。そのまま沐浴所を離れようとするのを、しかし婢はおずおずと引き留める。

「ご主人様…先程の粗相の…お仕置きをいただいておりません…」

「むむ?前は折檻は苦手と申しておったのじゃ」

「その…だ、ダリュは…お仕置きをいただくと…堪えがきかぬので…」

「沐浴所ならよいのかや」

「閨よりは…」

「解ったのじゃ」

魔人は長く平らに切り出した熔岩盤の腰かけに座ると、膝の上に妖精を横たえて、丸々とした尻朶をひとなでする。

「では、掃除の途中に粗相をした侍女にお仕置きなのじゃ」

周囲に虹色の薄絹がおりて、二人の頭上に覆いかぶさるにたゆたった。

「悪い子ダリュじゃ。めっ、じゃ!」

小気味よい響きとともに掌が、柔肉を打ち据え、波打たせる。

「んっ…」

「へいきかや?」

「ふぁ…ぃ…」

「良い子じゃ。ではなく悪い子じゃ!めっ」

みるみる白磁の肌に真赤な楓葉に似た跡が重なってゆく。十数度敲いた後で、ダリュは掠れた喘ぎとともに恍惚の極みに達し、またしても股座から貴腐酒を太腿につたわせる。

「もー、だーりゅー」

「ぁっ…申し訳…ありませ…」

黒の繰り手は再び、透き通った水母と淡い光を帯びた海牛に似た動く掃除具を呼び寄せる。ついで石鹸の泡に包まって、滑らかな肌と肌を擦り合わせるようにして伴侶をあらためて洗い清めてやり、すんすんと鼻をならす相手の目元に接吻する。

「悪いのはそなたに粗相の癖をつけた、二代の黒の癒し手めじゃ」

「ダリュが…だらしないだけ…です」

「何を言う。折檻にこらえがきかぬ癖とて、四代の黒の鍛え手がつけたのじゃ」

「っ…ぅ…おっしゃらな…いで…くださ…」

「むぅ…なれど!こなたが、そなたに教えられたこともあるのじゃ。のうダリュ?」

うきうきとうながす主人に、侍女はまた頬を染めると、古代の豊穣の女神像の如く豊かな乳房を掬い上げるようにする。

「ご奉仕…いたします」

「やったのじゃ!ありがとなのじゃ!」

暗い膚の麗人は、乳房も双臀も泡に塗れたまま、再び熔岩盤腰掛けまで歩いてゆくと、くるりと優雅に反転して座り、すらりとした両脚を左右に大きく開いてから、少し顎を引き、指を伸ばして蠢かすと、伴侶を誘う。明るい肌の麗人は同じく石鹸や乳液をまといつかせたままふらふらと近づくと、股間にうずくまり、熟した水蜜桃のような胸毬で、半勃ちになった逞しく長大な剛直を挟み込み、やわやわと包んで泡とともに擦り上げる。

「くふ…ふ…ダリュにこの不思議の技を教えたのはこなたじゃ!こなたの手柄じゃ!」

影の国の太守がはしゃぎ、いずこの宮殿の寵姫も娼館の売れっ子もうらやむだろう、羚羊のような浅黒い脚を跳ね上げると、婢は一瞬恭順の仮面を捨て、暴れるな釘を刺すよう鋭い眼差しをねめ上げてから、いきなり巨根の尖端、禍々しい程えらの張った亀頭に唇をかぶせ、激しく吸い立てる。

「きゃんっ!?」

裏返った悲鳴を上げ、乳房を弾ませつつのけぞる黒の繰り手を、ダリュはかさにかかって乳房と口とで責め立てる。

「ひゃぅっ…ダリュ…らめっ…ゆっく…り…ふゅぅっ…」

「はむ…ふむ…むぅっ…♪」

今度や逆に身をくの字に折って逃げ腰になる主人の引き締まってしかし丸みを帯びた尻を、奴隷はのしかかるようにして抑えつけ、太幹をたわわな乳房で揉み潰し、雁首を艶やかな唇と舌と口腔の粘膜とで舐り抜いて、射精へ導いた。

「きぅうっ…」

長躯に似合わぬ少女のような呻きとともに魔人が達すると、妖精はすべての欲望を受け止めてから、淫らな音を立てて薄緋の唇から浅黒い陰茎を引き抜き、頤を開くと真珠の首飾りのような歯列と天鵞絨のような舌の間に溜まった白濁をさらした。

「はう…ぅっ…五代の…黒の渡り手めえ…こなたのダリュにこんな芸を…くぅ…可愛いのじゃ…飲み干して…よいのじゃ…」

許しを得た奴隷は唇を閉ざし、頬をふくらせてよく子種を味わってから喉を鳴らして嚥下すると、恍惚と吐息をこぼす。主人はわなわなと震えると、いきなり飛びつくようにして伴侶の柔肉を抱すくめた。

「かわいいのじゃ!かわいいのじゃ!もぉ!ダリュは何でそんなにかわいいのじゃ!」

「…ちょ…ええい!やめぬか!」

ダリュは侍女というより騎士にふさわしい剛力で黒の繰り手を引き剥がすと、きっと見つめる。

「ご、ごめんなさいなのじゃ…」

「っ…いえ、私こそ口が過ぎましたご主人様」

婢はよく躾の行き届いた雌らしく両脚を開き、股間に降りる細鎖を指でつまみ、大輪の花を思わす秘裂を左右に開くと、蜜を滴らせながら誘う。

「どうぞダリュを可愛がってくださいませ」

「が!る!絶対絶対可愛がるのじゃ!」

影の国の太守は、細蟹の指を蠢かし、ほとんど目に見えぬほど細い糸を紡ぎ出して獲物を絡めとり、掬い上げると、戸惑う相手を弾む網状の吊床に横たえ、覆いかぶさる。量感のある黒い乳房と白い乳房を潰し合わせながら、肉感あふれる唇でつつましやかな唇をついばみ、ついで固さを取り戻した陽根で陰唇に深々と穿ち、指と指を絡め合う。

蜘蛛が巣に捕えた胡蝶を齧るが如く、暗い膚の美丈夫は明るい膚のたおやめにむしゃぶりつき貫き、揺すぶり、嬲り抜いた。

宙に縫い止められた生贄は、麗しい怪物の打ち込みを躱せもせず、勢いをどこかに逃がせもせず、ただふくよかな双臀とくびれた胴の芯ですべてを受け止め、熟した瓜のような胸毬を揺すらせて、鎖と鈴を鳴らし、香煙をくゆらせ、酒と果をこぼしてはむせぶ。

最前までの媚態はもろくも破れ、繕った余裕はぼろくずのように失われ、ただただ半狂乱の喜悦に哭いては絶頂を繰り返し、胡蝶の羽ばたきほどにも短い間に意識を飛ばしてはまた蜘蛛の甘噛みのもたらす痛みに目覚め、降伏と解放を乞うた。

「も…これ…いじょ…っ」

「まだじゃ。もっと!もっと!可愛がるのじゃっ」

「らめ…こわれ…」

「壊れてもっ♪よいっ♪のじゃ♪!駄目なっ、ダリュ、見たいのじゃ♪」

「ひゃぅ…ぁっ…は…い…ごしゅ…りん…しゃまぁっ」

妖精は魔人のとめどない狂愛に心の芯まで頽れ、腐り、蕩け、甘く饐えた匂いを放ちながら、どこまでもどこまでも終わりなき被虐に深く溺れていった。

影の国の太守は執拗なほどに侍女を蹂躙すると、ぐったりと力の抜けた姿態を再び隅々まで洗い清め、香草と薫花で満たされた閨へ運ぶ。広々とした部屋には蜜蝋燭の灯が点り、窓からは赤い月が差し込む。

細蟹の指が手ずから紡ぎ、織り、染め、裁ち、縫った柔らかく浄やなおろしたての寝具に、さらにやわらかな肢体を寝かせると、隣にあぐらを掻いて宙に腕を伸ばす。応えて虹色の薄絹が、極光の如く虚空を泳ぎ、音と光とで過去のできごとの記録をおりなしてゆく。

やがて先程の宮殿で、お仕着せをまとった侍女が巾箒を抱いたまましゃがみこむ様子を克明にさまざまな角度から映し出す。

「はあ…まこと…ダリュは何をさせても可憐なのじゃ」

真に迫った幻の連なりを切り貼りし、より見場よく仕上げながら、黒の繰り手はまた股間の秘具を強張らせると、ようやくと失神から抜けだした婢は、朦朧としながらも奉仕すべきものを視界にとらえ、唇を開いて易々と被せる。

「良い子のダリュ。賢いダリュじゃ」

主人が褒めてやりながら長い腕で頭から丸まった背、円かな尻を撫でてやると、奴隷は睫毛を半ば伏せていっそう熱心に舌を使う。

「んっ…よい。ここへ来るのじゃ」

名残惜しそうにしながら、口淫を途中で止めさせると暗い膚の丈夫は、明るい膚の乙女を促して膝に跨らせ、再び深々と仔産みの穴を貫く。蜜壺は太杭をしっかりと咥え込み、きつく締めあげる。

「ふぁ…っう…」

「んふふ…二人で沢山可愛いダリュを見るのじゃ」

黒の繰り手は後ろからダリュの尖り耳を噛むと、五色の薄絹に合図して幻像を浮かばせる。

初めにあらわれたのは、まばゆい昼の陽射しが注ぐ、内海の砂浜で、細い糸のような水着をまとい、透明な毬を抱えて跳ねまわる奴隷。寄せては返す波に爪先を濡らして、子供のようにはしゃいだあと、はるか南の外洋から持ち込まれた椰子の巨木に手をつき、秘所をかたちばかり覆う布地をずらして、主人を誘う。

「っ…っ…恥ず…」

「ちっとも恥ずかしくないのじゃ、みんなみんな可愛いのじゃ」

景色が変わる。朝の光のもとで、花咲き乱れる緑野に四つん這いになった奴隷が登場する。ふかふかした作りものの白い猫の耳をつけ、肘まである白い擬毛の手袋と靴下をはめているが、尖端は肉球がついて、ものを掴んだりまっすぐ立つのは難しい。うねる毛むくじゃらの尾は双丘の間に消え、菊座をいっぱいに広げる玩具に繋がっている。胴は何も隠していない。

艶めかしい雌猫は、あまりに大きな乳房の重みに時折つり合いを崩しながらも、四つ足で俊敏に駆け、宙に舞う布でできた蝶を追っては一瞬のうちに口で咥え取ると、主人のもとへ運んで、両腕をつき、両脚を折り曲げて開いた蹲踞の姿勢で獲物を差し出すと、撫でてもらって喉を鳴らし、刈り整えた叢の間から貴腐酒をこぼす。

さらに新たな眺めに移る。四角い衿のついた上着に襞のたっぷりついた短裙、首に巾帯(スカーフ)を巻いた学生風のいでたちの奴隷が、黒玉を削り出した大板の前に立ち、白墨で天体の運行を示す複雑な数図式を記してゆく。主人の浅黒くしなやかな指が裳裾のあいだにもぐりこみ、吸い付くように柔らかな臀肉を揉むと、流麗な筆致が崩れ、振り返った面差しは怜悧さを失って、ただ接吻を求める。

「ん…こんな…っ…もう…どこ…まで……」

羞じらいも衒いもかなぐり捨てて演じた痴態の数々を、あらためて見聞きさせられた婢は、耐えかねて切なげに震える。影の国の太守は顎を掴んで横へねじ向けさせ、噛みつくような接吻を奪う。

「ダリュがどこへも行けなくなるまでじゃ。ここから離れられなくなるまでじゃ!」

しがみついてくる魔人に、妖精はわななく。

「キージャ」

けなげな子。応えるのは叶わぬほどに。

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