東野 暁 女装調教(違います)

Presented by 水晶少年

キヨちゃ…あの、あんまり見ないで…ね?
 ガーターと黒ストッキング(挨拶)。あの、鼻血で画面を汚さないように、ティッシュをマシンの横に常備ですね。えーと多分。くまねこ様はこういう萌えイラストを使って帽子の血圧を上げることにより、遠まわしな暗殺を狙っているのだと想いました。ああもう、ブルマ暁たんの捲り上げた体操着から覗く胸…スク水暁たんのオナゴっぽい肩甲骨。滴る水!恵さんはマニアックだなぁ(ぇ)





















ご注意

 あのぉ、これより下はドエロでして、多分男女を問わず、成人であろうとも特殊な嗜好の方以外は覗かれない方が宜しいかと申しておきます。

 いやまぁ本家サイトでは大体こんな話ばかり書いているのですが。ホムケンファンの方、キヨファンの方、暁ファンの方が卒倒するような内容ですので、ごめんなさいごめんなさい。版権でここまで酷いの書いたの初めてなんです。本当なんです。天に居ましますあおやぎ先生ごめんなさい。

 少ないと思いますがやおいを期待される方、すいません。女性が絡んでます。えーと逆れいぷ、っていうのを期待される方、すいません。筋肉の在る子ががっつんがっつん同級生の男の子に犯されちゃう内容です。

 さらに心苦しい話ではありますがスカ描写が入ります。っていうかメイン。色んなハードルをクリアして、それでも尚、カワイソウな帽子男の頭の中を診断してやるか、という心の広い方だけが目を通して見て下さい。人様のプレゼントになんでこんな文章をつけたかというと、小説の棚に入れるのが恐くてできなかったという、大変迷惑な理由です。






















「…とか、普段からしているのか」

「しねぇよ…」

 静かに交される質問と回答。シャンデリアの光に包まれた応接間で、詰襟姿の少年が二人、紅茶を啜りながらのんびりと話し合っている。チーク製のずっしりした卓上に、数枚のプリントアウトが広げられ、赤いインクで無数の書き込みがされている。茶碗の受皿は、邪魔にならぬよう端に追いやられ、真中に鎮座しているのは代数の教科書と問題集。試験前の勉強会といった風情だ。

「意外だな」

「何がだよっ」

 ノートがニスのかかった木目へ叩き付けられ、片方が引き攣った怒りとも笑いともつかない顔をして立ち上がる。鮮やかに染めた黄金の髪が、天井の照明を受けて炎のように煌いた。いかにも中学生らしい大仰な振舞だったが、不思議と人を惹き付ける所がある。

 相方は座ったまま、含み笑いを漏らすと、茶碗を傾けて口を湿してから、同じく立ち上がる。

「別に、ただキャプテンを任された以上は、レギュラー同士の親密さを知っておきたいと思ってな」

「…い、いいけどよ…穂村がそういう奴だとは思わなかったぜ」

 黒く染め残した眉の間に、拳が宛てられ、疲労の滲んだ溜息が漏れる。深々とした呼吸が、肺を大きく上下させると、肩から首筋にかけて、細い鋼索を寄り合わせたような筋肉の動きが、厚いフェルトの布地を通して見て取れる。全国二位を誇る鷹鳥第一中学バスケットボール部の、フォワードを務める肢体だ。

 キャプテンと名乗った少年は、連れの仕草に頬を綻ばせると、外に撥ねた襟足を揺すり、切れ長の瞳に穏やかな輝きを湛えたまま、緩やかな足取りで傍らへ歩み寄った。

「フッ…じゃあ城戸は俺をどういう奴だと思ってキャプテンに推したんだ?」

「え、あー…」

 やんわりと弄うような微笑みを向けられ、城戸は困ったように眉を下げた。部屋を見回して、改めて言葉を失う。壁に掛かった油絵や、隅に置かれた磁器。子供の頃誰しも思い描くお屋敷の定番だ。元より生れついての金持ちの頭の中なんて想像も出来ないが、少なくとも授業の復習をしながら下ネタを飛ばすといった子供っぽい行為は、余りにも似つかわしくない気がした。

「城戸…お前最近…というより、前に俺の家へ来てから変に遠慮していないか」

「は?そ、そんなことはねーよ」

 打ち消しつつも、すぐ耳元で囁く紅い唇から、首を捩って離れる。穂村はちょっと眉を寄せると、同級生の鎖骨のあたりを掴んで、ぐいと正面を向かせた。

「羽深は、この家を見ても態度なんか変えなかったけどな。お前は違うんだな」

「…っ!…あいつの話なんて関係無いだろ」

「あるさ。羽深は、俺がどんな家に住んで、どんな下らない話をしようが、戸惑ったり、つまずいたりしなかった。演技だったのかもしれないが、チームメイトにはそういう関係が大事だろう」

 前置きもなしに、きつい話題に切り込まれて、城戸の面差しも厳しくなる。敢えて手を振り払いはせず、強い凝視だけを返すと、相手は瞬きもせず受け止めた。やがて沈黙が、水を吸い込む砂のように、感情の昂ぶりを鎮めていく。

「羽深みたいにヘラヘラしろってのか」

「そこまでは頼まないさ。だが、もうちょっと和やかになれ。特に東野絡みでは少し過敏だぞ。下級生の前で、三年生同士が噛み合わなければ示しがつかないし、他校にも甘く見られる」

 金髪の少年は、歯噛みして目を逸らした。

「解ったよ…けどな、あいつらの前でそういう下ネタはすんな…」

「いや、話題が何だろうと関係ない。俺の言葉は全て受け容れてもらう。これから先、皆の前で城戸をどう扱うかは状況によって変わるし、東野についても同じだ」

 冷然と放たれた、キャプテンとしての命令に、フォワードは強くたじろいだ。勿論、試されているのは解った。彼とて、抑揚を欠いた声の裏に篭る必死さに気付かない程、鈍くはなかった。本来、練習と試合を通じて培う筈の約束ごとを、口頭で伝えようとしているのだ。馬鹿げた遣り方だが納得しない訳にはいかなかった。

 穂村と二年間共にやってきた仲間は、古馴染だった羽深を含め、もう誰も残っていないのだ。別離と裏切りの記憶が甦ると、城戸の胸で黒い霧が渦巻き、伏せておくべき疑念をつい形にしてしまう。

「だったら、こっちもレギュラーとして後腐れのないように訊くけどな。お前だって、羽深や今野が抜けたの、本当はどう思ってんだ…暁とか、Fの奴等を今でも恨ん…」

 苦笑が漏れる。と、張り詰めた空気を破って、振子時計が四時を告げる鐘を打ち、金属の響きを彼方此方に跳ね返らせた。口付けを始めようとする恋人達のように額を寄せ合ったまま、二人はじっと時報が鳴り終わるのを待った。

 ややあって室内に凪が戻ると、屋敷の若き主は、途切れた問いを補うように返事をした。

「恨むとしたら城戸。お前をじゃないか」

「なん…」

 問い返そうとする少年の唇を人差し指で封じると、もう片方の手を擡げて金髪の後ろに差し入れ、獣をあやすようにして軽く梳る。

「おい…」

「キャプテンには逆らわないんだろう…まあそのまま聞け。羽深はオールラウンダーだが、オフェンスもディフェンスも基本はドリブルでこなす。シューティング・ガードの俺では、どちらでも肩を並べる"コンビ"にはなれない…だから、お前が入って、正直ほっとしてたんだ」

「そっ…うかよ、だけどな、俺には…」

「ああ、東野が居た。ニ中の頃はドリブルだけの素人だったかもしれないが、うちに入って僅か数ヶ月で、お前と同じ全国レベルのフォワードに化けた。傍から見てもお似合いだったよ。俺が里見監督でも躊躇わずコンビとして使ったろう」

 まるで大根の品定めをする主婦のように仲間の特徴を挙げていく穂村。城戸は指で髪を玩ばれているのより、酷く明け透けな評価に動揺して、頬を紅潮させたまましゃちこばっていた。

「監督は、部員一人一人の気持なんてどうでも良かったんだろうな。自分が正しいと思ったら、迷わず方針を変え、元Fだろうとベンチに入れた。素直に"システム"を信じてた山崎は傷ついたと思う…」

「ちっ、ガキだな…」

 毒づいた次の瞬間、城戸は足払いをかけられ、長椅子の上に倒されていた。慌てて身を起そうとするのを、上から圧し掛かった穂村が阻む。体格が同じだと、仰向けにされた挙句腰に乗られてしまっては、同い年の重量を跳ね除けるのは難しい。喧嘩の経験もある金髪のフォワードは不利を承知していたから、もがく代わりに、荒々しい調子で怒鳴った。

「ってめぇ、やる気かよ!?」

「大声を出すな、鼓膜が破れる。やはり城戸は、口先だけで約束して貰っても駄目なようだな」

「いいからどけ!」

「城戸、ガキは俺もお前も同じだ。羽深や山崎だけじゃない。俺達はつまらないプライドと自意識だらけで、そのためならチームをばらばらにしたって構わないとさえ思ってる…」

「さっきからごちゃごちゃと…殴るぞ…っ…んっ!?」

 ほっそりした貴族めいた少年の指が、日に焼けた同級生の首筋に絡み、呼吸を塞ぐ。だが、泰然とした顔付きには憤りの影は伺えず、ただ仄かな哀しみだけが浮んでいた。

「ぅっ…がっ…ぉっ!…」

「捨ててくれ。それを。鷹鳥一中が全国で優勝するには、一つになれるチームが必要なんだ…俺には、里見さんのようなカリスマはない…だから、俺なりの遣り方で努力するしかない…んだ」

 たっぷり五秒はかかって城戸が白目を剥くと、絞首の力が緩む。といきなり、黒い袖をはためかせながら、腕が振り上げられ、掌が虎の鉤爪のように空を引き裂くと、穂村を弾き飛ばした。

「ほ…、がっ、むらぁ…おまぇ…ひゅぅっ、おかし…ぞ…」

 激しく息を乱しながらも、金髪の少年は何とか長椅子から立とうとした。酸欠にふらつく頭と、笑った膝を意志だけで支えると、ぼんやり霞む視界の隅に、蹲った友人の姿を捉える。打ち所が悪かったのか、片手で頭を抑えている彼に、手を差し伸べようと前屈みになった所で、いきなり項に衝撃を感じ、ぐらりと床へ崩れ落ちた。

 穂村はこめかみをさすりながら振り返ると、メイド服をまとった若い女が、鋭い手刀を決めた姿勢のまま、にっこりして会釈をした。

「坊ちゃま。こういった仕事は、私にお任せ下さいと」

「ああ、助かったよ恵さん…はは、チームメイト一人心服させられないなんて、キャプテン失格だな」

 失神した同級生の側に寄って、淡く微笑むと、開いたままの瞼を閉じてやる。

「城戸。お前には悪いが、大会まで間が無い。身体で覚えて貰うぞ。俺は里見さんとの約束を裏切る訳には行かないんだ。お前の言う通り、ガキだからな…」










 戦後に建てられた屋敷の地下にも、時たま、戦前からの壕が繋がっていたりする。家財を空襲から守る為に、土蔵の底を深く掘り、一昔前に丁度アメリカで流行った核シェルターのように、中で暮せるように設備を整えてあるのだ。最も有名な例は名高い帝国陸軍の地下司令部であるが、穂村家位の富豪であれば、大きさは及ばずとも、かつて焼夷弾を避けようと庶民が潜り込んだ穴倉よりは立派な作りの隠処を拵えられた。

 東京の胎内に残された、こうした秘密の空間は、時代が降っても、様々な用途に使われた。脱税、密輸、証拠の隠蔽。勿論父祖が直接後ろ暗い真似に手を染めたとは聞いていないが、穂村健一にとっては、有用な場所だった。

「東野…待たせたな…少し手間取ってしまった」

「んっ…あ、穂村くんっ…ふゃっ、あんっ」

 くぐもった機械音と、水晶を震わすような細い声。白熱電球の黄ばんだ明りの下で、サテンと棉が衣擦れをさせる。白金の鎖が幾つも揺れ、雨に濡れた蜘蛛糸の如く耀い、光の粒を弾いた。

 環の連なりを濡らすのは、けれど、清い水ではなく、粘り気を帯びた体液。舌を縛る鎖は涎が塗され、尻朶の間に入った鎖は腸液を帯び、可愛らしく勃った幼茎に巻きつく鎖は先走りにそぼる。手足十本の指と踝から太腿、手首から肩までを這う銀の蛇は、びっしょりと汗に滑り、しなやかな四肢に震えが走る度、生き物のように蠢いた。

「体調は悪くなっていないか」

「ぁあっ、おねがっ…も…出させ…」

 懇願しているのは、十九世紀の風俗小説にでも出てきそうな、古めかしい家政婦の衣裳を纏った少女。いや、大きく割り裂かれた両腿の間には、慎ましやかながら男性の印が在る。とすると少年なのだろうが、涙の跡の乾いた頬はふっくらと丸みを帯び、なだらかな曲線を描く双臀はどこかしら、童貞の若者が夜な夜な睡みの内に抱くような、夢の少女の趣があった。

 けれど、穢れを知らなそうな大きな瞳は、身を蝕む絶え間ない責苦に焦点を失い、鎖に縛られた舌を動かして解放を求めている。

「おなかが、くるしくてっ…あそこも…ふっ、もぅ…やっ…はわぅあぁぁぁっ!」

 穂村がポケットから小さな機械を取り出して操作すると、裸の腰がスカートの中で踊り、前後左右に出鱈目な軌道を描く。長い指が首輪から延びる鎖を掴んで引き摺り挙げると、囚われの少年は咽びながら、水鳥のように優美な喉を反らせた。

「東野が…こんなに忍耐力がないと思わなかった…城戸の為に校庭三百周は走れても、俺の為には我慢できないのか」

「ぁっ…ぁっ…ごめ…んっなさ…で、もっ…ひぐぅっ…」

「東野、解ってくれないか。夏までの間に、城戸よりも俺に気持を捧げるようにならないと」

 口付けをしながら、綾取りをするように鎖を動かし、菊座を塞いでいた張型を抜いてやる。派手な水音を立てて、少年の腹を膨らませていたものが床に溢れる。汚れはない。卓球のボール程の大きさの香り玉が十数個と、すぐりの蜜を水で割って、少しリキュールを加えた混ぜ物。

 柔らかな馨に包まれながら、東野は偽りの排泄に恍惚と喉を鳴らし、根元を縛められた未熟な性器を、心臓の鼓動に合わせて反り返らせた。穂村は耳に舌を入れ、中耳近くまで舐って、敏感になった神経を擽ってやる。

「忘れないでくれ、俺をキャプテンに選んだのは東野だと…」

「ひぅっ…きゃぅうっ…ぅぁっふ…」

「返事を」

「あ…はぃ…んぅっ!!?」

 ようやく収縮し始めた肛孔に指を捻じ込まれ、女装の少年は激しく痙攣する。穂村は両手の人差し指と中指、計四本使って易々と弛緩した括約筋を押し広げると、内側の粘膜が冷たい外気に曝されるようにわざと暫く閉じさせなかった。

「城戸と俺どちらが大事か、なんて聞くつもりはない。羽深と俺も小学生からの昔から付き合いだから、幼馴染がどんなものか想像はできる。だが、今だけは無理にでも変えざる得ないんだ」

 腸液を捏ねながら、奥へ奥へと指を進め、外向きに裏返すように引っ張ると、東野はぼろぼろ泣きながら自由にならない手足で主人にしがみつこうとする。其を優しく、だが断固として制し、独りで立ったまま耐えるように仕向けながら、少年は先を続けた。

「二人で完結した世界は、チーム全体では逆に不協和音になる…」

「ひぃっぁ…違、僕…も、キヨちゃ…も…」

 ああ、華奢な少女のような同級生には、どれだけ狂わされても、決して崩れない金剛石のような核がある。人が其処にぶつかると、あらゆる言葉や行為が己に跳ね返り、魂を貫かれてしまう。昨年の間ずっと部員の観察を続けていた穂村には、繰り返し同じ瞬間を目にしていた。

「解ってる。だがそれはお前達の本能なんだ。どんなに気を付けていても、海老原や羽深にははっきり伝わってしまう…正直俺だって、毎日我慢するのは疲れる」

 やっと秘部を解すのを止めると、鎖を引っ張って両腕を一纏めに高く吊し上げる。馬や犬に合図をするように尻朶を打つと、小さなメイドはのろのろと八の字に脚を開き、腰を突き出した。バスケの反復練習のように、叩き方の角度や力によって、特定の格好を取るよう調教を施した成果だった。初めはプライドから抵抗し、次いで仕置き恐さに嫌々従い、最後はご褒美欲しさに進んで行なう。人も他の動物と変わらないのだと、穂村は書物から学んでいた。

「さ、東野」

「ぅぁっ、穂村くん、して…お願い…します…」

 吶々とした台詞とは裏腹に、肉の詰った双丘は欲しくて堪らないようにくねり、中心の蕾は期待に震え、閉じたり開いたりを繰り返す。年若い主人は、鼠蹊部の疼きを感じ取りながらも、空欠伸を一つして、気のなさそうにジッパーを降ろした。

「羽深まで本気になったのも解る気がするな…東野を…嫌うのは難しい…」

「ふぇっ?…あの……ね…っ…穂村く…ん、はや…くっ、ぁ…」

「ああ、すまない…」

 腰を進めると柔襞は抵抗無く異物を受け容れる。素直に歓喜の鳴き声を上げる。温かく快い感触、普段は恵さんに開発を任せている性か、酷使によってやや緩くなってしまっているが、項を噛むとすぐ初めての時のように強く締め付けてくれる。

 ただ、難を言えば余りに煩い。馴致の最中は溺れ具合を計る目安になったのだが。本来静けさを好む穂村は、ひっきりなしに嬌声を零す東野の口腔に指を捻じ込んで、己の腸液を舐め取らせた。

 舌に絡む鎖を引っ張り、残った手で腰を抱きながら、今にも折れそうな肩口へ愛しげに息を吹きかけ、ふと我に返る。不味いな。チームの和を保つ筈のキャプテンが本気になってしまっては、城戸にも東野本人にも申し訳が立たない。

「東野、もう少し、抑えてくれ…っ」

「ひぁっ、むり…っ、こし、とまんなっ…ぅあっ」

 仕方なく、前を縛る鎖をまさぐると、素早く解いてやる。固くなってもまだ雛菊のようなそれは、忽ち大量の欲望を吐き出して、小さな肢体の勢いは衰えた。別に趣味で射精を封じたのではなく、ちょっとした訓練だけで、余りに早く気をやってしまう東野の体力を心配して付けただけなのだが。

「はぁっ…はぁっ…はぁっ…おわり…ね?」

「動かなくて良いぞ…しばらくは、此方が動く」

「ひっ…やっ…」

 恐怖に歪む天使の容貌。だが連日、主人に尽すためだけに躾られた身体は、深く抉ってやるだけで降伏の兆を顕す。小さな分身がスカートを点いて再び勃ち上がり、粘膜を削り取るような抽送に合わせ、嬉しそうに飛び跳ねる。

「はは、東野は…正直だな…」

「やだ…も、だ…っ…ぅっわああ!」

 駄々をこねないでくれ。十四年というもの、覚えた試しのない凶暴さが、掌中に収めた少年を壊してしまえと駆り立てる。お前は、人から善い面も引き出すが、時に、悪い面も目覚めさせてしまうな。

「ひぁっ…あがぁっ!ふぁっ、ひぐぅっ…やだ…キヨちゃ…」

「城戸になら…もうすぐ会える…さ」

 安心させるように呟いて、直腸の奥へと熱い白濁液を注ぎ込む。腹を灼かれ、汚濁の禁忌に震える表情。しかし、悲嘆と媚態と、官能と屈辱の重なり合った音色は、もう不思議と煩さを感じさせず、むしろいつまでも聞いていたいと、不埒な考えさえ起させた。戯けた逸脱を振り払うと、ゆっくり陰茎を引き抜く。中身が滴るのに任せながら、ゆっくりズボンを直し、鎖を解いて、東野を抱きとめる。

「…もうすぐ…な」










―キヨちゃん、起きて、朝だよ―

 ああ、後十分だけな。

―もう練習、始まるんだよ―

 解ってるよ。

―起きないと、お仕置きされるよ―

 はぁ、誰に?

「私にです」

 内蔵のよじれるような苦痛があって、城戸清春は目を覚ました。特大の蜂が飛び回っているような掠れた羽音が、三半規管を乱暴に揺さぶり、腰を襲う不快と相俟って、あっという間に眠気を払っていく。太腿から下は、寒さに鳥肌が立っていた。だが状況を確かめようとしても辺りは暗黒に包まれたままで、臓腑を蝕む振動だけがどんどん増していく。

「っげ、気持わ…」

「失礼」

 表面の凸凹した球形のものが舌に当たり、言葉を封じ込める。外そうとして首を振り、叫びを上げたが、膝小僧や足の甲に唾の雫がぶつかっただけだった。どころか、口を閉じようとしても顎が固定されており、だらだらと涎が止まらない。

「お気を付け下さい。ユニフォームが汚れます。それから剃刀の手元が狂いますので、暴れないように。最後に、喋ろうとしても無駄ですので」

 意味が全く解らなかったが、臍の下に冷たい感触があって、つい動きが止まる。何やら嫌な予感がするが、依然として何も見えないので、確かめ様がない。どうやら、肘掛け椅子に座らされているらしい。トイレに行きたくなる圧迫感があり、振動が、尻に挿れられた機械から伝わるのが解った。

「状況はお解りですか…目隠しを取って差し上げる訳には行きませんが、代りに私がお教えしましょう。今城戸さんは、新人メイドとして剃毛を済ませている所です。ほら、動かないで」

 金髪の少年は、ぐっと喉を詰らせた。テイモウという単語は聞き慣れなかったが、取り敢えず面白がっている口調だけは察知できた。苦痛を意識の隅に追いやって、更に言葉を拾おうと耳を澄ませていると、剃刀の刃が茂みを削ぎ落としていく音が聞こえた。

「ふふ、意外に体毛薄いんですね。東野さんが滑らかだったのにも驚きましたけど…でも此処だけはやっぱり…あ、金じゃないんですね、そう…少し残して置きましょう」

 本人には知りようが無かったが、清春は耳まで茹で蛸になっていた。露骨に遊ばれているのが解ったし、女の声の何かが、彼の羞恥を煽った。やがて、剃刀の刃が引くと、今度は何か湿った感触があって、華奢な指が股間全体を撫で摩った。茂みのあった場所だけでなく、陰嚢や蟻の門渡りまで何かが塗り広げられ、掌でふんわりと包み込まれ、揉みしだかれる。

「身体の他の所はお目覚めになる前に済ませて置きました。けれど此処は、男性には一番大切な所ですし」

「ぅううっ!うごむっ…ばふぉぉっ!」

「あらあら、元気ですね…そんなつもりでは無かったのですけど…ほら、涎が飛びますよ。黙って」

 声が震えているのは、滑稽な光景に吹き出したいのを抑えているからなのだろう。尖った爪が、情けなくも勃起した剛直の先を、悪戯っぽく弾いた。清春は罠に嵌った狼のような唸りを放つと、下半身をぐずぐずに溶かそうとする肛内の機械と戦い、烈火の如く猛り狂った。

 遺憾にも、状況を改善する助けにはならなかった。作業は淡々と続けられた。剃刀の当てられた場所に、いきなり、熱い蒸しタオルが押し当てられる。少年は身をくの字に折って腰を引こうとしたが、女は、膝の肉を強く抓って動きを止めると、いきり立った器官を揉み解し、奇妙な拷問を続けた。

「はい、毛根まで綺麗に取れました…残りは三角形に揃えて、髪と同じ色に染めましょう。きっと城戸さんにお似合いになりますよ」

 何だ。何を喋っているんだ一体。ことここに至って清春はようやく相手の正体に気付いた。家政婦だ。確か、穂村が恵さんと呼んでいた。穂村の奴もおかしいと思っていたが、家政婦までおかしいとは。というか穂村がおかしいのは、この家政婦の影響じゃないのか。しかも、暁がどうといってなかったか。

 焦燥に駆られた少年は、プラスチック製の猿轡を砕かんばかりに噛み締めながら、手首足首を拘束する革製のベルトから抜け出ようと、四肢に力を篭めた。

「すいません。城戸さんは少し荒っぽい方なので、用心に付けさせて貰いました。私の手製ですが、中学生に外せるほどやわではありません」

「むっげぇ!!!!」

 とうとう我慢しきれなくなったのか、ぷっと笑いが漏れる。こっちが必死になるほど、傍からすれば阿呆らしく見えるらしい。だが構っていられない。筋肉を限界まで緊張させて、枷を壊そうと足掻く。

「東野さんは、もうちょっと大人しかったのですけど。貴方のようなじゃじゃ馬さんを一人前のメイドにするのは、骨が折れそうですね…先に少し、ご褒美が必要かしら」

 熱く濡れた何かが、鈴口の当りを掠めると、抵抗は止まった。急所に対する接触は、常に男を無防備にする。湿った音がして、亀頭の周りが指とは別のものに愛撫され、雁首の裏を擽られる。と、記憶が感覚の意味を告げた。

「んぐぅっ!んむっ…んっ…むっ…んっ…」

「ちゅろっ…東野さんよりは大人の味です、ね…もう暴れないのですか?結構現金な子…」

「んぅっ…ふっ…」

 覚えている。ニ中へ入る前、暁と、こっそり親の目を躱して耽ったいたずら。小さな舌が懸命になって、自分のものを、アイスキャンデーでも舐めるみたいに拙く舐めていた。恥かしさと気持ち良さでまともに幼馴染の方を見られず、ずっと、十分以上も床を睨んでいたっけ。だが恵の愛撫は暁とは比較にならない巧みさで、絶頂を迎えるまで数分と掛からなかった。

 あの時は幼い顔全部にかけてしまったけれど、彼女には残らず口に含まれてしまった。以前映画から抜け出してきたような格好で後輩達に洋菓子を給仕していた、大人しげな美女が、実は恐ろしく男の相手に慣れているという落差が、罪深い射精を余計混乱に満ちた悪夢へと作り変えた。

 やっと秘具が解放されると、今度は頤を抑えられ、猿轡の穴から喉に絡む汁を流し込まれる。何をされているか想像がついて、首をもぎ離そうとするが、しっかりと首を抱かれて、抵抗できない。顎の先に豊かな乳房が押し付けられるのを感じながら、幾度も吐き出そうと繰り返した後、とうとう己の精を飲み干した。

「素質はお有りですね。私は口を漱いで参りますので、どうかそのまま…」

「むふぉっ?んっぐっぐぅっ!」

「ああ、おトイレですか…ご安心下さい…後できちんとお世話しますから。素直になって頂けるまで」

 足音が遠ざかっていく。残されたのは、絶えず菊座を押し広げる憎たらしい機械だけ。床に涎を零しながら、清春は目隠しの舌で瞼を閉じた。家政婦が言い当てたように、腹腔内は酸が満たされているいるように疼き、鉈で腸を寸断されるが如き痛みが、定期的な波となって襲ってくる。

 幾ら猿轡を齧っても、指を折り曲げても、そう長く耐えられそうになかった。同時に、漏らしてしまおうにも、機械が邪魔でままならない。金髪の少年は、成す術のないまま異常な感覚に翻弄され続けるしかなかった。

 四十分程が過ぎたろうか、いや、四分、四十秒だろうか、とうとう沈黙する努力も限界を越え、機械の振動に合せて喘ぎを漏らし始める。まるで、抱かれている時の暁が出すような、弱々しく、淫らがましい声。厭わしさに身震いしながらも、只管、狂ってしまいそうな時間をやり過す為に鳴く。

 いつ戻るのだろうか。家政婦が側に居なければ、自由になる機会は訪れない。穂村をぶん殴って目を覚まさせるにしても、このままでは駄目だ。不意に、今の姿を穂村に見られるのを想像して、吐気で胃がおかしくなりそうになった。冗談ではない。スカートを穿かされているらしいのに。

 だが一時間経っても彼女は帰ってこない。一時間、一時間にはまだ余裕があるか。でも、排泄の欲求はもう理性を振り切っている。絶叫しそうになって、がちがちとまた手足をもがかせる。

「素敵な百面相ですね。いつも東野さん以外には、不機嫌そうな顔ばかりしていると伺いましたが」

 いきなり話し掛けられた驚きで、清春の背が伸び上がった。恵はとっくに戻って来て、ずっと彼を観察していたらしい。悔しさに気が遠くなりそうな位だったが、安堵の方が更に強かった。

「おトイレ、済ませたいですか?首を縦に振るか、横に振るかして下さいな」

「むぐぅ…」

 当然縦に振る。すると手が伸びて、少年の引き締まった臀部を揉み始める。

「むぅっ!んぅうっ!ふぁふぇっ…ひゃふっ…んひぃっ」

「我慢なさらないで、バケツがあります。辛いでしょう、全部出しておしまいなさい。さ、スカートを捲りますから」

 裸の尻を乗せていた椅子の板が外され、機械を咥え込んだ窄まりが宙に曝される。少年は、家政婦の指が蠢く栓を引き抜くのを、悔し涙と、幾許かの諦観と共に受け入れた。白い火花が頭の芯で散り、誤魔化そうにも誤魔化しきれない安堵の波が、神経を震わせる。

 激しくバケツを叩く音があって、ようやく腸を掻き毟る圧迫感が消えた。覚悟していた悪臭は殆ど鼻をつかず、開ききった穴の周囲をひんやりした脱脂綿が拭き取ると、ゴム手袋に覆われた指が、内側に入り込んで粘膜を引っ掻き、刺激し、残滓を掘り出す。忌わしい作業の間、彼女が一言も発しなかったのがせめてもの救いで、清春は奇妙にも感謝の念さえ抱いた。

 だが、後始末が終ると、いきなりさっきより太い機械で栓をされ、しかも前より激しい振動で責められた。不意を突かれ、裏切られたような恨みから、咆哮を放つと、また楽しげな笑いが答える。

「メイドは、主人の為に、綺麗好きでなくては」

「んがぁっ!がぉっ」

「次は薬液の量を増やしておきましょう…余り外聞のよい話ではありませんけど。必要な事です。まぁまぁ、こんなに脂汗を掻いて、東野さんはもっと我慢強かったですよ…」

「むぎぃっ!うがっ、うがっ」

 多分、生涯で一番間抜けな脅しだったが、少年は罵るのを止めなかった。穂村が暁に手を出すつもりなら、絶対に許さない。殴るだけじゃなくて半殺しだ。そう言っているつもりだった。

「顔を真赤にして、お猿さんみたいですよ。でも男の子は元気なのが一番ですからね…」

 ぽんと、励ますように肩を叩かれる。完全に馬鹿にされていた。腹がすっきりしたお陰で、強気になっていた清春は、額に青筋を立てながら、肩を左右に捩って手を振り払った。しかしすぐ凍りつく。肩を叩いたのは、単にからかう為ではなく、新たな拷問の合図だった。機械の尖端から熱湯が溢れ、たった空になったばかりの体内を侵し始めたのだ。

「ほぎゃぁあああっ!」

「…ふふ、リアクションが面白い子。大丈夫ですよ。整腸剤入りの浣腸液です。温度も四十度ですから、健康に悪くはありません。さ、私は片付けをします。液は腹圧が一定になれば止まりますので」

「あぅ、あぅぁっ…ぐっ」

「そうそう、頑張って、その調子ですよ。念の為、床を汚さないようにしましょう」

 紙の擦れる音がして、筋肉質の太腿に何かが押し当てられる。襁褓だと悟るだけの余裕は今の清春にはなかった。いつもは凛々しい両目をぐるぐるにしながら、唯だらしのない呻きを垂れ流す。

「気の強い子ほど、攻められると弱いんですけど…城戸さんは手強そうですね…困ったわ」

 聊かも困っていなそうな囁きがあってから、再び気配が離れていった。忽ち、孤独の恐怖がぶり返し、メイド服を着せられた金髪の少年は、仔犬にも似た心細げな悲鳴を迸らせる。

「大丈夫、戻ってまいりますわ。そう、すぐ…」

 家政婦の嘲るような、慰めるような約束と、扉の閉じる響きだけが、今の彼を支配する全てだった。











 家政婦は、数え切れない位襁褓を取換え、度毎に液の量と機械の太さは増していった。やがて、六つに割れた腹筋が撓む程薬を注がれても、鷹鳥一中のヒーローは喚かなくなった。屈辱的な行為よりも、独りで残される方が耐えられなかったからだ。

 だから、予告通り彼女が少年の剃り残した茂みを脱色し、鮮やかな金髪に染める間も、側に居て貰えるという心強さが屈辱に優っていた。嘲弄めいた内容であっても語りかければ歓迎し、逆に何も言ってくれないと不安になった。清春は、残酷な世話係が去ってから戻るまでの刻を心拍で計ろうとさえした。定かでないが、恵が清春を放置する時間が徐々に長くなっている気がしたのだ。

 最初は六千回、次は七千二百回、次は九千回。時々違えるので、常に正確という訳ではなかったが、確かに責苦に耐える期間が延びている。いつまで我慢すればいいのか見当もつかない。子供じみた不安が彼から持前の気丈さを奪い、恐慌の淵へと追いやろうとしていた。

「東野さんが、さっきお家に電話して、今日は二人とも此方に泊まっていくと…宜しいですね」

 打ちひしがれたように頷く。暁が近くに居るというのはどういう意味だろうか。朦朧とした頭はもう考えを巧くまとめられなかった。恵は、虜囚の汗を拭き終えると、ポカリスウェットのゼリーを猿轡の穴越しに給餌してやりながら、尚も短く語りかける。

「会いたいですか?」

「んむっ…むがむがっ…」

 首を振る。とんでもない。こんな格好を暁に見られるなんて。

「では坊ちゃまには…?」

「むがぁっ!!」

 ふざけるな。自由になったら会って半殺しではなく全殺しにしてやりたいが、こちらが縛られた状態で、向こうに勝ち誇られるなんて願い下げだった。

 大体、文句があればバスケでも喧嘩でも買うというのに、卑怯な手段を摂ったのが許せない。キャプテンになって何が不満だというのだ。清春にも、面倒くさいから押し付けたという疚しさはあったが、此処まで念の入った仕返しをされるような覚えは無い。

 あいつは、本気でこんな方法でチームを纏めていけると思っているのか。

「坊ちゃまが決心されて本当に良かった。私も、幼い頃から帝王学をお教えした甲斐がありました」

 ていお…何?

「ふふ、坊ちゃまが沢山のメイドを従え、日本の頂点に登られる日を、恵は心待ちにしておりますの」

 如何に美貌で有能であろうとも、頭の螺子が一本外れてるだけで、人は恐ろしい怪物になる。なんとなく、テンガロンハットの青年や、タイトスカートの女性の姿が脳裏を掠めて、ああ、結局俺達の周囲って、まともな大人が少ないんだよなと、少年はげんなりした。

「では城戸さん。私は夕食の買い物がありますので」

「んむっ!」

「坊ちゃまにも東野さんにも会いたくないと仰るのでしたら、お独りで我慢して頂くしかありません…」

 独り、独りは嫌だ。メイド少年は、骨の芯まで冷えるような心細さに、直腸を掻き回すテニスボール大のアナルビーズを食い締め、切なげに身をくねらせて煩悶した。

「困ります。おねだりされても、私も仕事ですから」

 恵は、指先で屹立した肉刀の切先をこじると、細い棒を取って尿道に押し込んだ。棒は、先端を捻るとバイブレーター同様振動を始め、萎えるのを許さなくする。

「これで粗相の心配もありませんから、心配そうな顔を為さらないで下さい」

「ぅあああっ!!」

 動作も、発言も、排泄も、射精すら封じられ、視覚を奪われたまま、少年は少女の衣裳に包まれたまま、若獅子のような痩躯を揺すった。

 非情な静寂。少年は、音の無い闇から逃れようと、残った矜持をかなぐり捨て、精神を傷めつける元凶である筈の、惨めな官能をむしろ率先して貪る。けれど淋しさは蛇の毒にも似て、瞬きする内にも血管を駆け巡り、肛孔や陰茎、肌の衣擦れが齎す、浅ましい肉の悦びさえ容易く凌駕した。

 脈によって刻を計る努力さえ結局、絶望の味付けに過ぎなかった。洟と涙を抑えきれず、今日まで築き上げて来た己を放棄し、一つの名を呼んだ。

 暁。

 斯くも心は弱いのだろうか。ほんの今朝まで瑕を知らなかった剛毅な魂が、抗う力を奪われて無明に捨て置かれるだけで、守るべき人を救い主として求めてしまう程に。

 答えはない。

 最後の意地を、仮借なき時の長針と短針が、ずたずたに刻んでいく。胸裡で、暁、暁、暁と、守護の呪文のように友を求めながら、肋の奥で早鐘を打つ心臓に鎮まれ、鎮まれと命じる。

 答えはない。

 潮のように喪失の痛みが押寄せ、金髪の少年は慟哭した。まるで命より大切な幼馴染に、永遠に会えなくなったかのような錯覚が、世界を藍に染める。

 答えはない。

 終りもないのだろうか。もう認めざるを得なかった。穂村の遣り口は、彼の弱点を直撃し、豪胆な気性を打ち砕いた。誰にも触れられず、話し掛けられず、全てを封じられたまま捨て置かれるのは辛かった。丁度それは、人との繋がりを糸としていた凧が、突然それを絶ち切られ、日常という青空から暗黒の奈落へ吸い込まれていくのと同じだった。

 ずっと比翼の鳥と寄添っていた清春は、孤独に免疫がなかった。

 今や鷹鳥一中のエースは、空想と現実の、あらゆる存在に懇願した。もう誰でもいい。触って欲しい。話し掛けて欲しい。放って置かないで欲しい。温かい腕で抱いてくれるなら、どんな化物でも魂を捧げる。

 答えはない。

 啜り泣き、やがて涙も枯れ、自分が何者なのかも、何故此処に居るのかも忘れ、ただ機械が与えてくれる止め処ない快感だけが、生きている証だった。少しでも慰めとなる悦楽を搾り出そうと、腰を揺すり、前と後ろが滅茶苦茶にされるのを感じて、恍惚の喘ぎを漏らす。けれどそれすら演技に過ぎない。本当に欲しいのは、血の通った何か、心を持った誰かだったから。

 穂村。そうそもの始めは穂村だった。穂村がおかしなことを言い出して。

 たちまち他は隅に押しやられ、頭が穂村の顔で一杯になる。あいつが馬鹿なのか、あいつの気持を拒んだ俺が馬鹿なのか。どちらでも良い。独りにしないでくれ。俺から世界を奪わないでくれ。 

「城戸…?」

 どこかで声がする。幻聴だろうか。世界にまだ俺のほかに生きている人がいるのだろうか。

「すまないな。恵さん、卵が足りなくてスーパーまで買い出しに行ったらしくて。…こういう状態で放って置かれても困るんだが…」

 卵?スーパー?何が?目隠しが外される。視界にあれほど飢え、求めていた光が満ち溢れる。歪んだ視界に、待ち望んでいた人の顔が映った。俺は泣いているんだろうか。

 猿轡が取り除かれ、縺れた舌が自由になる。だが言葉が見付からない。手械や足枷が外されてからやっと、意識が世界の形を捉え直し、穂村以外の存在を認める。花瓶、洋画、白いカーテンのついた窓と、チーク材の卓。部屋。失神したのと同じ場所だ。

「穂村…」

 震えながら救い主を抱き締める。口付けを求められても、嫌悪は感じなかった。差し込まれる舌は柔らかで、流し込まれる唾は美味だった。もっともっとと親鳥から餌を啄む雛のように唇を動かし、とうとう押し退けられる。ものほしげに身をよじる少年メイドを、年の変わらぬ主人は優しく窘めた。

「落ち着け城戸…俺は消えたりしない…まず、その格好は不便だろう。さぁ立って」

 手を引かれて洗面所へ導かれる。長い廊下を渡る間、何度も崩れ落ちそうになるのを支えられ、清春は少し赤面した。やっと目指す場所に辿りつくと、貯水タンクを抱くように命じられ、尿道を傷つけぬよう、丁寧に棒を引き抜かれる。握った掌に力が込もる。用を足す姿を見られても、ずっと手を繋いでいられるのが嬉しかった。膀胱が空になると便座に腰掛けさせられ、M字に股を開いた格好で、ひくつく肛孔からアナルビーズを抜かれる。

「はぅっ…んっ」

「力むな…ほら、出て来たぞ」

 珠の一つ一つが、入り口を擦る度、薄桃の腸壁が捲れ、薄められた粘液が糸を引きながら、便器を水盤へ落ちていった。清春は我知らず吐息して、主人の肩に指を食い込ませる。反応を楽しんでいるのか、穂村は時間を掛けて玩具を摘出すると、弛緩した括約筋から透明な水が滝のように流れ出るのを、幾許か罪悪感の篭った目つきで眺めた。

「凄いな…」

「っ…」

「泣くなよ…」

 涙腺が開ききってしまったように、滂沱の泪を溢れさせる同級生。穂村は、恵さん、流石にやりすぎじゃないかと心中で呟き、袖で涙を拭いながら、額に接吻の雨を降らせて、惨めさを和らげてやる。

「すこし休むか?二階の客間にベッドの用意をして…」

「…やめろ…もう…」

 独りにするなと、訴えたかったのだろう。混乱し、幼児のような表情を向けて来る相手に、少年は肩を竦め、そっと控えめな勝利の笑みを浮かべた。

「解った」










 発条が軋み、寝台を支えるステンレスの脚さえ歪めようとする。仰向けになった穂村の上で、金髪の少年は膂力の一切を蕩尽しながら、さかりのついた獣のように腰を振っていた。

 隆々とした陽茎の根元を、襞飾りのついた輪止めがきつく締め付けている。太腿を隠すのにさえ短すぎるスカートが派手に翻ると、女物の下着で飾られた雄の証が見る者の目を射る。再び射精を禁じられたにも係らず、少年メイドは満足そうに見えた。五感の閉塞という牢獄から解放された後で、健康な十五才の肉体はあらゆる刺激を存分に享受していたのだ。

 目は、愛しい主人の顔に注がれ、手は、スカートの裾を広げながら、指の先で恥らうように布地を揉みしだき、直接触れるのを許されない性器でさえも、空気が表を撫ぜるのを愉しむが如くひくひくと動いている。

「…っ、城戸…ベッドがっ…壊れっ…んっ…」

「はっ、はっ、ああっ、うあ゛ぁっ…あぉっ!!」

 さかりのついた牝獣の叫びと共に、能う限りに強く締め付ける。バスケットボール以外では、暁を抱くのににさえ抑えがちにしている精力を、今は躊躇いもなく駆使して、下の口で肉棒を美味しそうに咥え込み、中を蹂躙されるのが嬉しくて溜まらぬ態で、締まった双臀に輪を描かせる。最前、黄金に染められたばかりの叢は汗に煌き、濃い麝香の匂いを立ち昇らせていた。

 箍の外れた城戸は東野より淫乱だった。正直、二回戦の相手には手強すぎるかもしれないと、穂村は独りごちた。それでも、両手で固く身の詰った尻朶を鷲掴み、押し倒すと、主導権を取り戻す。キャプテンが先に息を上げては本末転倒だ。

「ふぅっ、ひゅぁあっ!あぉおっ!!」

「ええい…ちょっと待て…」

 待てとかいう問題でないのは解っていたが、頭がずきずきして、直には行為に移れなかったのだ。地下で東野の泣き顔に溺れて、余計な体力を消耗したのかもしれない。恵さんは沢山のメイドを従えてこそ真の当主と言っていたが、だったら穂村家の当主が代々早死になのも解る気がする。

 己と体格の変わらない性妾を犯すのは、嵐と戯れているようなものだった。油断すると頬や背に爪を立てて掻き毟ってくる。焦点を失った瞳は、マタタビを嗅いだ猫もかくやという剣呑さで、口付けを奪う度に舌を噛み切ろうとする。

 蟷螂の雌に関する逸話が頭を過り、余りぞっとしなかった。試合では、コートを疾走するのに慣れた長い両脚が、二本の鎌のように穂村の腰を掻き寄せ、更に奥へ突きこんでくれるようにせがむ。

「ぐっ…」

 多分、男から犯されるなど初めての経験なのだろうが、清春は苦しみの涙を流しながらも、尻を振るのを止めなかった。東野が摘んだばかりの果実を使った若い葡萄酒なら、城戸は情欲だけを蒸留した、舌を焼く火酒だ。しかし実のところ、穂村は左程アルコールに強い訳ではなかった。

「…っ、っ、もう…」

 音を上げたのは主が先だった。これでは立場が違う。だが、絶頂を先延ばしにするのは不可能だ。すれ枯らしの娼婦さえ凌ぐような、臈たけた媚態。誰に学んだ訳でもなく、ただ本能の命じるまま其を捧げる少年に対して、理性は役に立たなかった。

「はぁっ!!ああっ、あぐぅっ!!」

 ベッドのクッションを噛んで、精を放たれる歓びに喘ぐ金髪のメイド。可愛らしいという感情を抱くのは、変だろうか。もう少し、己のものとなったしなやかな筋肉の躍動を感じていたくて、穂村は繋がったまま倒れ込んだ。声変わりを済ませたばかりの、掠れた喘ぎが快く耳を打つ。

「だが、疲れる」

 正直、毎日は身が持たない気がする。チームの為とは言え、底無しの二人を相手にするのはちょっと荷が重過ぎる。そもそも恵さんの発案に押し切られて碌な目に会ったことなどないのだが。

「ふぁっ…ぅっ」

 溜息に首筋の敏感な箇所を擽られたのか、飼い慣らされた山猫がまた切なげに哭く。メイド服の下で胸板が鞴のように上下している。腿に指を這わせると面白いほど反応する。悪くは無い、悪くは無いがしかし…

「試合がなければの話だな」

 ようやく接合を解いて、城戸をベッドに横たえる。

「東野」

 呼ぶと、近くからごそごそと物音が聞こえる。言う事の聞かない脚を無理に動かして衣裳箪笥の方で行き、戸を開け放つ。がらんとした収納の奥には、小柄なメイドが蹲り、スカートの前裾を咥えて、拙く肛孔と幼茎を弄っていた。見下ろすと、虚ろな眼差しが返って来る。根元には、城戸と同じように襞飾りのついた輪止めが付けてある。達することが出来ないまま自慰に耽り、理性の糸が切れてしまったのだろう。

「あはっ…ほむら…くんっ…あんっ…」

「城戸に会わせてやる」

 手を引っ張ったが、腰が馬鹿になった為なのか、だるそうにぶら提がるばかりで立とうとしない。哀れではあったが、怠慢だ。仕方なく、お仕置きとして勃った若芽を踏みつけ、器用に親指と人差し指の間へ挟み込むと、緊く捻り上げる。すると東野は、火がついたように泣きながら、彼の足に齧りついた。もう少し重みを加えると、声を失って両腕で膝にまとわりつき、嫌々をして恩赦を求めた。尤も、ちらりとスカートの端から覗く尻は、盛大に腸液を垂れ流し、正反対の本音を吐露していたが。

「仕方ないな」

 抱き上げると、苦労しながらベッドまで運ぶ。度重なる被虐で、すっかり子供返りした黒髪のメイドは、蕩けきった眼差しを宙へ投げながら、赤ん坊のように親指を咥えた。

「東野、城戸を気付かせてやれ」

「ぁっ…キヨちゃっ!わっ、あっ」

 幼馴染の存在を視界に捉えた途端、女装の少年はいきなり弾かれたように飛び退ると、別人のようにスカートの前と後ろを抑える。何故今更恥じらうのかという以前に、犯し尽くした筈の彼にまだ体力が残っていたという事実が、穂村の頭を痛くさせた。

「あかつ…き…」

 東野の声だけで魔法が解けたように、城戸も我に返り、むくりと身を起した。此方も、予想できた話ではあるが、まだ闊達なようだった。

「はぅ、違うの。キヨちゃんあのね、これはね…あれ…キヨちゃん女の子の格好」

「ばっ…穂村てめぇぇっっ…!!!!!」

「鼻血出てるぞ」

 やれやれ。鷹鳥一中バスケ部のキャプテンは、呆れた表情を隠すように逸らしながら、ポケットからハンカチを取り出す。すっかり呪縛の解けたらしいパワーフォワードは、可憐なスモールフォワードの纏ったエプロンドレスから、無理に視線を引き剥がし、引ったくるようにしてそれを受け取った。

「ぶ、ぶっ殺す!!」

「キヨちゃんだめ!」

 がしっとメイドがメイドにしがみ付く。もう勝手にしてくれと笑いたくなる。あれだけ込入った計画を立てたのに、結局この二人の関係は打ち破れないのか。明日からまた練習でいちゃつかれる訳だ。島は苛立つだろうし、三上は世話焼きにてんてこまいになり、赤坂は島の気を引くので練習に手がつかない。成二はやきもきして和を乱し、牧野はまた変な誤解をノートに書き留め、指示の来ない他の一年はまごつくばかりだ。つまる所滅茶苦茶。

 里見さん。俺のやり方は、強引で、えげつなくて、間違ってましたか。でも他にどうしてみようも…。

 ぶつぶつと弁解を呟きながら、頭を抱える。

「ぁっ…?」

 素っ頓狂な声。振り返ると、城戸のスカートの前が再び持ち上がっている。暁もまた、ぺたんと尻餅をついていた。試みに腕を伸ばすと、暁は躊躇いもせず、城戸は歯を食い縛りながらも、磁石に惹かれるようにして、手の甲に接吻する。差し招くと、二人のメイドは操り人形のように側へ擦り寄った。

「おいで」

 後は囁くだけで充分だった。四つの手が争うように穂村のズボンを弄り、ジッパーを開いて、肉棒にむしゃぶりつく。右から城戸が、左から東野が、ご馳走にありついた猫のように舌を鳴らしながら、卑猥な音を立てて先走りを啜り、互いに舌を絡ませた。双つの尻が擡げられ、スカートを揺すりながら、妖しく輪を描き、ぶつかり合う。

「成功のようですね」

 目を上げると、彼の家政婦が嫣然と微笑んでいる。恵は、メイドたちの背後に立ち、蛇のようにくねる二本の太い張型を、それぞれ白濁の泡を噴き零す菊座にあてがって、一息に押し込むと、ぴしゃりと尻朶を叩いてしっかり咥え込ませた。くっきり紅葉の跡を残しながらも、快感にぶるぶると震える二対の臀肉。女は作品の出来栄えを満足げに眺めてから、ベッドの横へ回り込むと、主人の傍らに腰掛けて、目配せをする。

「新人メイド達には、坊ちゃまの為にたっぷり歌って貰いましょう」

「ふぁあっ…!あひぃっぅっ、きゃぅっ」

「ぃぎぃ、お゛ぁぅっ、ふぁおう…!!」

 艶やかな輪唱。二匹の仔猫。二乗の快楽。二人を仕込んだ彼女から、労うように頬を撫でられ、穂村は苦笑した。

「不安定だけど…調教の成果はあったみたいだね…んっ…」

「勿論です。もっと私を信頼下さって結構ですよ、坊ちゃまは」

「でもさ…一つ…だけ、もしかして…俺は…毎日二人の…相手を…」

 ひょっとすると、他の道もあるんじゃないかと、底薄とない期待を込めて尋ねる教え子に、師匠は断固として肯んぜず、座右の銘を持って答えた。

「With great power, there must also come great responsibility. です。坊ちゃまが憧れの人に追い付きたかったら、この位の努力は当然です…」










 鷹鳥一中バスケ部は春大会でまずは優勝の栄誉を飾った。エース東野暁、彼を支える天才フォワード城戸清春、そして本大会で3Pシューターとして其名を轟かせたキャプテン穂村健一。全国レベルと呼ぶに遜色ない三年生に加え、層は薄いながらも、一癖も二癖も在る下級生陣の活躍は、相次ぐ引き抜きによる影響を全く感じさせなかった。

 評価されたのは、昨年までベンチ入りすら危うかった穂村健一の総大将としての器だった。高校バスケットボール界でも、一年生PG里見光彦を得て全国制覇を成し遂げた千之台を筆頭に、多くの名門校が、新生鷹鳥一中を残り物の集団とする判断を翻し、改めて食指を伸ばし始めた。

 だが、そうした大人の思惑など、重要ではない。何よりバスケを始めたばかりの中学一年生たちにとって、三人の最上級生による見事な連携プレイや、コートで見せる信頼関係は、印象深かった。時には、個人技とコンビネーションでキャプテンを上回ると目される城戸と東野が、普段軽口を交す間から一転して、穂村を司令塔として結束する様は、チームに安定感を与えた。優れた閃きを垣間見せるとは言え、まだ経験の浅い二年生PG赤坂純を良くフォローする結果にも繋がったのである。

「かっこいいよなぁ穂村部長」

「うん。どうやったらあんな風になれんのかな。やっぱ生まれつきかなぁ…」

「違うね。お前ら、穂村くんは、人知れず苦労してるんだよ。月曜はいつも目の下に隈とか出来てるだろ。あれって日曜に練習の計画を練ってるからさ…俺たち下級生のことを考えてくれるのが兄ちゃ…あいつと違う所で…」

「いや、誰も羽深の兄さんの話は聞いてないし」

「そうそう、なんですぐ兄さんの話になるんだろうね羽深って」

「ブラコン?」

「うぇっ…ち、違…」

 其れは兎も角。部長が日曜ともなると、人知れず苦労しているのは確かだった。試合のない午後は、穂村家の寝室には、二人のメイドが現れ、事実上監督と部長の兼任という激務に草臥れた当主を癒す為、競い合うような熱烈な奉仕を始める。

「はむっ…んっ…ぷはっ、キヨちゃん…ぁっ…ずるい…僕にも、ちょうだい…」

「暁…んっ…だって…さっき…飲んだのに…」

「二人とも、すまないが明日もあるから…」

「メイドさんモードになると、坊ちゃまの言葉は余り通じなくなるようですね」

「…恵さん…やっぱり何かが間違ってる気が…」

「さぁ坊ちゃま。夏の全国優勝目指して頑張りましょう。恵も応援していますから」

 もしかして、一番楽しいのは、この人なのかなと、穂村家の跡取息子は、うら若い家政婦の美貌に胡乱な眼差しを向けた。取り敢えず、来年は家を出よう。なんか、恵さんと一緒だと、その内善意で殺されそうだから。 

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