金髪メイドさん

 穂村家の朝は一杯のモーニングティーから始まる。

 その日も、若き当主はボーンチャイナのティーカップを片手に、英字紙ガーディアンの政治時評を流し読みながら、イギリス自由党の復権はアメリカ民主党の動向と、その経済政策、引いては日本市場にどのような影響を与えるかについて黙考していた。

 セイロンから直送したウバの葉の香りが、眠りから覚めたばかりの脳を刺激し、ブレックファストの時間を、豊かなものにしてくれた。純白のクロスがかかったテーブルには、口淋しい時に摘めるよう、家政婦の恵さんがつけてくれたマロングラッセが、菓子皿に載っている。

 「もう秋か」

 誰に向けるともなくそう呟いて、赤みがかった琥珀の薬湯で唇を湿すと、堅苦しい国際記事の内容は急に色褪せ、遠く過ぎ去った暑い日々の記憶が甦る。先輩と共にコートを疾ったあの時間。汗の匂いとバッシュの軋み、ユニフォームの擦れ。勝利と敗北。届かなかった頂点の栄光。

 「ふっ…なつかしいな」

 「来年もあんだろが…」

 瞼を伏せ、憂愁に浸りきる少年に、庭先で落葉を掃いていた金髪の娘がツッコミを入れる。健一は微笑んで頷くと、暖かいカップを掌に包んだまま席を離れ、窓辺に歩み寄った。

 「おはよう城戸…早くから掃除とは感心だな」

 「てめぇが奉仕しろつったんだろ」

 清楚なお仕着せを台無しにするひどい言葉遣い。おまけに歯を剥き出して怒るとあっては、女だか男だか解らないが、喋る度に息づく胸は、エプロン越しにもかなり大きさがあるのが解る。

 穂村家の御曹司は鼻から息を吐き、また紅茶を一啜りしして云った。

 「城戸に期待してるのはこういう奉仕じゃないが」

 同い年とは思えぬ落ち着いた佇まいに、幾分圧されながらも、少女は尚食い下がる。

 「じゃーどういうんだよ。いいからもう帰らせろよ。女子バスへの嫌がらせなら充分だろ…」

 「…嫌がらせ?良く思い出せよ。これは嫌がらせなんかじゃないぜ…それはともかく、土日はずっと居る約束だぞ」

 「ふざ…」

 「…また、前の立場に戻りたいのか。俺が黙っていても、お前がそういう態度を続けると、松波先生にばれるぞ」

 「くっ…」

 箒が黄ばんだ芝生に叩きつけられる。肩怒らせて踵を返すメイドに、主人はわざとらしい溜息を漏らし、室内に向き直って、テレビの前まで行くと、カップを置き、リモコンをとってスイッチを入れた。

 「夏休み合宿の録画は…これだっかな」

 画面が明るくなると、サイドスピーカーが大音量で少女の荒らいだ喘ぎを再生し始める。途端、立ち去りかけていた城戸が凍り付き、スカートを翻しながらくるりと反転した。凛々しい面差しを、般若の如く歪め、平然とボリュームを調整している同級生に跳びかかる。

 だが穂村は僅かに上体を逸らせただけで拳を躱し、逆に手首を掴んで背に捻り上げると、おとなしくしてろと耳に囁いて、いきなり鎖骨のあたりに口付けた。

 「ふぁっ…ぐっ…てめぇえっ!!」

 「ほら、始まるぞ」

 電気屋で買えば百万以上はしそうな、六十インチのプラズマ・ディスプレイに、ひどく安っぽい体育倉庫の中が映る。薄暗い室内にバッテリーライトが点ると、埃っぽい床にうずくまった、ふくよかな裸身を、淡く照らし出した。

 十三、四だろうか。まだ子供らしさが残る顔立ちに、不思議な程肉付きの良い肢体。ロリコンなら涎を垂らして喜びそうなミスマッチ。艶のある黒髪は天辺をまとめて、房に立てている。ただ、あちこち痣や擦り傷だらけで、胸に捺し付けられたタバコの火の痕や、脇腹にナイフで刻まれだらしいFUCKという落書きが、痛々しい。虚ろな双眸を空に向けながら、たわわな乳房を放り出し、丁度トイレで用を足す時のような大股開きの姿勢で、カメラの前に全身を晒している。

 両胸の尖端はピアスが通され、それぞれに細い糸が結んであった。糸はピンと張った状態で、大きなプラカードを吊っている。つややかなプラスチック板の面に、太字ではっきり、C-21、東野暁とあるのが読めた。

 喉には、大型犬用の首輪が嵌められ、リードまで繋いであったが、反対側の端はフレームを割って外へ消えている。周囲から男子生徒の下卑たせせら嗤いや、嘲りの声が漏れ聞こえる以上、独りでいる訳では無いのだろう

 "はーい、スマイルー、じこしょうかいしてー"

 少女は命ぜられるまま壊れた微笑を浮かべると、両手に拳を作り、犬がするようなチンチンのポーズをとる。

 "にねんしぃぐみ、にじゅういちばん、ひがしのあかつきですっ、ぶかつはじょしばす、エフぐるーぷです…"

 どこからか唾が吐きかけられ、頬にあたったが、哀れな被写体は、反応するだけの理性も持っていないようだった。カメラマンは、こいついっちゃってるよと、楽しげなコメントをして、先を続けた。

 "で、いつもなにしてんのか言ってみ"

 "あ、はい。エフは、Fxxxのりゃくです。男バスのエーやビーのひとのおせわをするのがしごとです"

 "それじゃわかんねーだろ。またオシオキされてぇの?"

 尻上りになった罵りに、暁はびくっと首を竦め、ぶんぶんと左右に頭を振った。

 "じゃーいいな。ちゃんと、はっきりな"

 ”ふぇ…あっ、おしりと……ん…に…お…ん……を、いれてもらいますっ…はぅぅっ…こ、これ…"

 まるまっこい指が、恥かしそうに左の内股を差し示した。滑らかな肌の上に、油性マーカーで直接「正」という漢字が五個、書かれている。

 "それなにぃ?"

 ”き、きょう、お…ん……に…いれてもらったかずです、それで、これ…”

 反対の股にも、同じ「正」が四個と、二画足りないできそこないの「正」が一個、記されていた。

 "これは、おしりにいれてもらったかずです…ぼくが、エフではいちばんおおいです。つぎがみかみさん、そのつぎはあかさかさん、そしてしまさんです…"

 口にさせられている台詞の何かに耐え切れなくなったのか、幼げな女子バス部員は、房毛と共に項垂れると、乳房を隠すように両肘の間を狭め、しゃがみ込んでプラカードを床につける。

 "けっ、今更何恥かしがってんだよ。なんで、いちばんノルマ多いのか言ってみろ"

 "それは…システムにさからったからです。ぼくがリーダーだったから、いちばんバツをうけます"

 "Fはな、俺等のトイレなんだよっ、調子に乗りやがって。てめぇといっしょにニ中から来た、城戸とかいう女も、トイレなんかかばったから同じ目にあったんだぜぇ。わかってんのか疫病神さんよぉ"

 ギャハハと、品のない笑いが重なって起る。

 まるでハイエナの巣だ。

 テレビの前の少年は、うんざりしたように外撥ねの髪を揺らして、自ら映像を切った。屑共め。

 三年とはいえ知性の欠片も感じられない彼等を先輩と呼ぶつもりはなかった。敬愛するキャプテンが、許容しているのでなければ、即座に穂村家の力で一中から追い払っている所だ。とはいえ、君主たるものは、清濁併せ飲む器がなくてはならない。あんな補欠でも使い道はあるのだろう。

 少なくとも、あの映像には、気の強い少女一人の心を折るだけの効果はあった。見ると、気丈な顔立ちは、幾筋もの熱い白銀の筋に覆われ、薄い唇は寒さに凍えでもしたように細かに震えている。

 「城戸、泣いてるのか?」

 「ったい許さねぇ…オレの暁をっ…ぶっ殺してやる…なめんじゃねぇ…なめんじゃねぇっ!」

 「そういえば、東野とお前は幼馴染だったよな。だからか」

 訊ねながら、すとスカートを捲ってやると、黒の花模様を透かしたレース地の下着が現れる。きめ細かな絹布は、ぐっしょりと湿って、床に滴が落ちるまでになっていた。

 「なっ…ぁっ」

 「自分とあの子を重ねてたのか…お前も、随分おもちゃにされたから…」

 「ちげっ…くっ、見るんじゃねぇっ…見るなっ…離せよっ」

 薄く笑った穂村は、金の鬣を汗ばませるメイドを抱きとめたまま、耳朶へ息を吹きつける。噛んだり舐ったりといった悪戯を続ける間、指はドレスの裾襞を集め、端を摘むと、ゆっくりエプロンの胸の辺りまで引き上げた。

 「じゃぁまさか、お前もあそこに加わって東野をおもちゃにしたいと想ってたのか?」

 「なっ!!!!?」

 お仕着せの中で、少女の背が強張る。どくんと、心臓の鳴る音まで聞こえそうだった。薄布一枚で隠された秘所に指で触れると、先程より蜜の量が増えている。

 「図星か。なんとなくそんな気はしてたが。女同士で、というのは信じられなくてな」

 「ぁっ…うっせぇ、だま、れ…ひぁっ…」

 「いつも冷静なお前が、あいつのことになると我を忘れる…」

 「あか、暁を……」

 「約束は守るよ。大会が終わって、三年は引退だ。監督も里見さんと一緒に辞めるって噂だしな。"システム"は終わりにする…俺の代で…だから、城戸」

 「くっ…あっ…」

 「東野のためなら、幾らでも頑張れる、だろ?」

 肌さえ焼け付かせるような眼差しで、心蕩かすような声音で、楽器を奏でるのに慣れた指で、氷の如き美貌を備えた彼の愛しい人形を愛撫する。スカートの裾を口元に近づけ、真珠の歯に咥えさせると、下着を降ろして、山吹に染められた茂みを露にした。そぼつ汁を掬い上げ、唇まで運ぶと、舌で舐め取ってみる。

 城戸の味がした。

 「朝から、大変だな」

 三角形に切り揃えられ、むらなく染め抜かれた陰毛の下で、柔襞を押し広げ、頭を出した醜い筒型の機械。前と後ろをともに、深々と貫き、目覚めを待っている。

 「よく平気なふりが出来る。つくづく、芯が強いな」

 お前が男なら、いいチームメイトになれてたよ。

 「ふっ…こうしてると羽深の怒り顔が目に浮ぶ」

 「くっ…んっ…」

 スカートを咥えたまま顔を背けるメイド。気に入らない。親友との仲違いを覚悟で奪い取ったのに、まだ心は向こうにあるとは。穂村は腕を解くと、二、三歩後退り、リモコンをスカートの尻に向けた。

 蠕動音が始まり、少女は布地を挟んだ歯を食い縛り、海老反りになったまま、膝を就くと、狂ったように腰を振り始めた。質の剛い短髪が、朝日に煌いて、獅子か虎か、なにか罠に嵌った美しい猛獣のような凄絶な絵を作り上げた。

 「あいつにも抱かれたのか?」

 涙を溜めながら、しかし鋭さを失わぬ蒼い瞳が、きっと否定の色を浮かべて睨み返す。同い年の主人は冷たい笑いを浮かべ、リモコンを真っ暗なテレビに向けた。

 "キヨと僕って、んっ、ほんと、さっ、相性ばっちり…だよねっ"

 夕暮れの音楽室。規定外の場所。システムの認めていない逢瀬。エプロンとドレスを体操着とブルマに変えたメイドは、主人以外の誰かの膝に顔を埋めて、口淫に耽っていた。

 校則無視で髪を染めながら、運動でも勉強でも他の追随を許さない女子のナンバーワンが、浅ましい格好で、しかも自ら望んで、男子の性欲を処理している。

 "また…うまくなったんじゃない?…僕もう出そ…今日はぜんぶ飲んでね、前みたいに、こぼしちゃ…はっ、だっ…んっ…"

 画面が暗転する。

 「嘘吐きだな、城戸」

 穏かな表情で呪詛を紡ぐ、鷹鳥一中バスケ部の次期エース。盗撮されていたと気付き、憤りと恥に狂わんばかりの少女。

 「ふぐぅ…!!」

 「羽深には渡さない…次のキャプテンは俺だから」

 幼馴染は、救ってやる。だから、恋人の方は諦めろ。そういうことだ。

 緊く噛み締められ、わななく細顎。家事万端をこなせるよう、丈夫に作られた棉生地が、破れ目が出来る程強く伸びる。金髪の奴隷は、「最強」モードのバイブに直腸と膣を掻き回され、愛液で水溜りを作りながら、繰り返し絶頂を迎えた。

 強靭な自制心が、とうとう終わりのない責めに砕かれる。少女がうつぶせに倒れると、ドレスの喪裾が扇のように広がって、腰の辺りを艶めかしい双丘の形に盛上げた。

 穂村は、両足を開いて椅子に座り、背凭れに顎を載せたまま、美麗な玩具が幾度か痙攣し、断続して呻く様を、飽かず眺め入る。

 「もう十分ばかり休憩したら、浮気の罰だ」

 激しい戦慄に襲われたメイドは、さっと頭を擡げかけたが、子宮まで響くような振動に息を止め、喘ぎながら、ぐったりとくずおれた。腸液と愛液を吸い込んだ黒いスカートは重く湿って、べったりと肌に張り付き、臀肉が震える度に、淫らさを煽り立てる。

 少年は苦笑して呟いた。

 「今のお前には、ご褒美かもしれないけどな」










 掠れたアルトの悲鳴と、無情な泡音。だだ広い風呂場に嬌声とも苦悶ともつかぬ喘ぎが跳ね返り、鞭打の響きが重なる。金髪の少女が、スカートをたくしあげ、浴槽の端を支えに両脚を八の字に開いて、蚯蚓腫れの浮いた太腿を主人に突き出している。

 「も、む…り…ぁっ…」

 何時間こうしているだろうか。白い焔のように眩かった気丈さは、とうに喪われ、瞳孔の開ききった両目は苦しみに涙を溢れさせ、喉はただ苦しみから逃れたい余りに、精一杯の媚びを含んだ声をほとばしらせる。

 「出したいのか?だったら教えられた通りにしろよ」

 「ごしゅじん、さ…ま、キヨのおしり…から…くっ…ちくしょぉっ!」

 屈従の筈の台詞は、途中から悪罵に変わる。じゃじゃ馬の扱いにつくづく窮した穂村は、透明な管を流れる高濃度浣腸液の、調整弁を少し開いて、腹腔に注ぐ量をふやした。

 「ひぁああっ!!抜けぇ、抜けよぉっ…やぁっ…うっぐ…ぅっ…」

 「まずは言葉遣いを直してからだ」

 こんな醜態を晒すのでは、東野を輪姦していた連中と変わらない。調教というのはもっとスマートにいくと想っていたが。旧家の後継ぎとして大抵のことをこなしてきたつもりだったが、人独り奴隷に堕とすという作業が斯様な難儀を伴うのだとは、初めて知った。

 いつも難なく馴致を終える家政婦兼教育係の恵さんには、今更ながら感服せずにはいられない。少年は、「当主として絶対必要」と持たされた鞭を、掌に打ち付けながら、思索に沈んだ。膠着した状況の解決策を探さなくては、必ずあるはずだ。諦めてはいけない。恵みさんならどうするだろう。そうだ。ちょっと飴を舐めさせてみよう。

 「…お前がきちんとできたら、監督に頼んで、東野もメイドとして一緒にいさせてやるよ。もう体育倉庫で仕事しなくてすむようにな」

 「…っ…あか…つき…と?んぐぅっ…!!」

 歩み寄ると、鞭を顎の下に差し入れ、上向かせる。

 「ああ、まずは言葉遣いからだ。さぁ、もう一回やってみろ。物覚えはいいはずだろう?」

 女子バスの試合で見る度、どんどん巧くなってた。一人専用の奴隷を持つなら、ずっとお前にしようと決めていたんだ。そこまで語るつもりはなかったが、確信はあった。城戸には素質があると。

 「ごしゅ…くっ…あかつき…」

 「違う」

 鞭を振るって、引き締まった尻肉の間、秘裂を直接痛め付けると、衝撃で管がずれ、浣腸液の流れが変わる。のびやかな四肢が、電流が走り抜けでもしたかのように激しく痙攣し、脂汗と涙に滑った顔は殆ど白目をむきかけ、唇は泡を吹く。それでもまだ玲瓏とした趣を失わない。

 たいした性根だった。見込んだだけは在るが、正直殺してやりたくもなる。

 「もう一回だ」

 「ごしゅじん…さま、キヨのおしりの…なかみ…ださせてください…おねがいします…」

 「出来たじゃないか」

 なるたけ優しく撫でてやる。逆らったら罰、従ったら誉める。古典的な手段だが、どんな硬質な心の持主でも、時間さえかければ必ず落とせる。という話だ。

 「さ、もう大丈夫だ」

 いいながら、ゴム手袋に指を通すと、アナルプラグをくわえ込んだ菊座を擽って緊張を和らげ、ずるっと栓を引き出す。たちまち壊れた水道の蛇口のように大量の浣腸液が逆流する。

 「うぁああああ゛っ!!あ゛っ…ひぐぁあああっ…」

 勢い良く噴出す内容物は完全に透明で、汚物の匂いもしない。六回目ともなれば当然か。脱肛気味に広がった後孔を指で触診すると、傷がついていないのを確かめ、虚脱状態のメイドに囁きかける。

 「さぁ次だ」

 「ぁっ…?…え?」

 「一回で間違えずに、言えるようになるまでだ。次は二百ミリくらい増やすぞ」

 「そんな…っ」

 やれやれと溜息をついて、穂村は恵さん直伝の鞭をゴムを嵌めた掌に打ちつけた。

 「口答えか?頼むから素直にしてくれないか。疲れる」

 「だったら…」

 「なんだ?」

 「っ…んっ…ごしゅじんさま、キヨのおしりに、かんちょうしてくだ、さいっ…っら…れで、いいんだろ…なっ?」

 「ああ、上出来だ」

 褒美に秘裂に収まった機械を稼働させると、たちまち金髪のメイドは恍惚の喘ぎを漏らした。あれだけ嫌がっていた道具責めだが、今は浣腸の苦痛を和らげる拠り所として受け容れているらしい。膝を震わせながら、自ら肛孔を開き、薄桃に色づく粘膜を晒しながら、どうぞ入れて下さいと懇願する。

 アナルプラグを押し込み、管をつなぎ直して、流入速度を先程の倍に設定する。折角従順さを示したのに、惨い遣り方で裏切られ、少女は言葉にならぬ叫びを放ったが、少年はそこに、微かな被虐の官能が混じっているのを聞き逃さなかった。

 「少し、なれてきたか?」

 「ひっ、ぁっ…」

 「安心しろ。誰でもそうなる(らしい)。お前の脳が肛門期に退行しているだけだ…それともまだ辛いなら…」

 云い終えるまでもなく、唇がキスを求めて来る。初めて抱いた時、拒まれたのと同じ唇だろうか。どちらでも構わない。甘く、瑞々しかった。舌を差し入れて、唾液を絡め、面白半分に軽く先を咬んで、千切られるのではという恐怖を植え付けてやる。視界の隅で、女子にしては逞し過ぎる位の腹筋が、いびつに撓んででいくのが見えた。

 「ぷはっ…城戸」

 「んぁっ…ぁっ…」

 「可愛いぞ」

 バルブを全開にして、のたうつメイドを見下ろしながら、穂村は恍惚と瞼を閉じた。










 汚れた服の着替えは幾らでもあったから、一通りのノルマを終えた後、元の清楚な小間使いのいでたちに装わせるのは簡単だった。スポンジで、膨らんだ腹をこすって、あちこち綺麗になるまで洗っている間、城戸は幼児に還ったかの如く、しがみついて離れなかった。

 おかげで己も身繕いを直す破目になった穂村は、幾分不機嫌にシャツの袖を引っ張りながら、お仕着せをまとった金髪メイドの様子を確かめた。あんなしけっぽい場所で何時間も粘ったのだし、多少は効果があってしかるべきだと想ったのだ。

 箒を与えられた少女は、杖代わりに柄にしがみつくようにしながら、絶えず襲いくる偽りの便意に蒼褪め、掠れた喘ぎを漏らしている。正確な判断はできないが、幾らかしおらしくなったろうか。

 「掃除でもなんでも、好きなようにしてくれ」

 「…なっ…むり…だ…」

 「慣れておかないと辛いぞ。明日から毎日それで学校だ」

 「ぁっ…!?」

 「その位ペナルティつけておかないと、また浮気しそうだからな…」

 「うわ…きっ…て…おまえが…かってに…ひぁあっ」

 口答えを矯めるように、膣に収まったままの張型が振動を増す。年若い主人は朦朧と宙を仰ぐ奴隷を抱き寄せ、贅肉のない体躯で、そこだけ太鼓のように膨らんだ腹を撫ぜると、きっぱりと宣告した。

 「俺が抱くとき以外抜くなよ…前も後ろも…」

 「はっ…止め…止めて…」

 「慣れろ」

 「いやぁっ、無理、無理だぁっ…無理だったら…あぅっ…」

 「俺が助けてやる」

 接吻をして、気を逸らさせる。段々と、城戸から望むようになるだろう。羽深に、そうしていたように。

 「ほら、ちゃんと持てよ…掃除するんだろ?」

 「あっ…もっ…」

 「終わったら、またしてやる」

 どんと背を押すと、ふらつき、倒れ込みそうになりながら、メイドはそれでも箒を引き摺って歩きつづける。とても掃除とはいえない。もうどこに向かっているのか、何をしようとしてるのかすら定かでない夢遊病のような有様だ。下着を穿かせていないので、また床にぽたぽたと愛液が零れる。綺麗にする所か逆に汚してるぞ注意しかけて、しばらく放って置くことにした。

 居間に戻ると、午後の陽射しが斜めにソファやテーブルに差し込んで、濃い陰影を投掛けていた。さて、しばらく暇だ。何をしようか。

 ふと思い立って、鼻歌混じりに階段を昇ると、ピアノ室のドアを開けた。優秀なハウスキーパーによって、埃一つ残らないよう清めれた防音材の床を踏んで、黒い楽器の側に歩いていくと、蓋を跳ね上げ、ひさしぶりに鍵盤に触れる。

 椅子に腰掛けた穂村は、赴くままに、シューベルトの冬の旅路を弾き始めた。最近は部の引継ぎが忙しくて、流石に感覚が鈍っていたが、最初の楽章を繰り返している内、運指に滑らかさが戻ってくる。

 黒白を叩く間は、疲れも感じず、意識は、もやもやもなくすっきり澄み渡った。演奏の腕は、良くもないが悪くでもない。人に聴かせた経験は、小さい頃の発表会を覗けば、祖父母と恵さん、それに羽深相手だけだったから、まともな評価も受けていないし、自信が有る訳でもなかったが。

 羽深。

 少年は手を止めて、じっと何も置かれていない楽譜台を見詰めた。急にピアノを弾きたくなったのはあいつのせいだろうか。そういえば、この頃は家にも遊びにこなくなった。

 「…仕方ないか」

 背後で扉が開いて、虚ろな瞳をした城戸が入って来る。一足毎に震え、立っているのがやっとの様子だった。あちこちさ迷った挙句、曇った意識は漸く、苦境を救ってくれるのが、同い年の主人しかいないという結論を導き出したのだろう。

 「どうしたんだ」

 「ほむら…おれ…もう…しんじゃっ…ら…たすっ…けっ…」

 「仕方ない…ピアノは湿気に弱いんだけどな…ほら、ここに手をつけ」

 鍵盤に掌を降ろさせ、不協和音を響かせながら、さっきと同じ姿勢で腰を突き出すよう仕向け、蜜壷に突き刺された機械を引きずり出し、下へ置く。粘液がぼたぼたとフローリングへ滴り落ちた。ここも掃除だ。城戸は仕事を増やすのが好きらしい。

 「あきぃっ…そっちじゃな…ぃひいっ!!?」 

 「静かにしてろ、ほら」

 またスカートを咥えさせ、声を殺させると、たぷんたぷんと浣腸液でいっぱいになった少女の腹を揺すって具合を確かめてから、ジッパーを緩めて、いきりたった剛直を取り出す。

 「覚えてるか?」

 「んっぐ…んっ…」

 金髪メイドは、紅い襞を爪で広げて、嫣然と主人を誘った。貫くとすぐに締め付けが来る。あれだけ太いもので拡張しているのにまだ緩む気配もない。

 「んっ…んひっ…ふっ…ぁっ…きぅっ…」

 後背位で腰を打ち付け、貯水タンクと化した消化器官を揺すってやると、少女は指を折り曲げ、鍵盤を掻き毟って得体の知れぬ音色を奏でた。涎と涙とが着替えたばかりのドレスに染み込み、すっかり硬くなっていた穂村の性器は、十分ばかりする内に限界を迎える。

 「出すぞ?あれ、終わったばかりだから大丈夫だろ?」

 「んぅっ…んっ…」

 何故そんなことまで知られているのか、もはや犯される側は、全てどうでも良いようだった。決して訪れぬ解放を待ちながら、潮を噴き零し、ただ恍惚と熱い精液の迸りを受け止める。身重のような下腹を抱え、ピアノから滑り落ちるメイドを、細く、しかし力強い手が捉えて、振向かせた。

 「まだだ…さぁ」

 「ぁっ…ぁっ…」

 唇がスカートを離すと、差し出された逸物を咥えて、喉奥まで受け容れる。穂村は、音楽室の羽深と城戸の姿を脳裏に浮ばせ、歓びとも哀しみともつかないような、引き攣った表情を浮かべた。










 週明け登校した城戸清香は、少し様子がおかしかった。普段の快活な物腰が見られず、走ったり、友達と叩き合ったりといった、どちらかといえば男っぽい仕草がなくなり、得意の体育も見学し、給食を殆ど摂らなくなった。とはいえ、身体の調子が悪い、という説明で納得できる程度の異常だし、クラスメートは誰も気にも留めなかった。

 だが恋人をもって自ら任じる羽深真だけは、放課後、体育館裏で落ち合った後、奇妙なよそよそしさに気付いて、べたつく合間にも、どこか不安そうな色を隠さないでいた。

 「キヨ?なんか不機嫌じゃない?」

 「…別に…」

 「ふーん。あのさ。お腹減ってない?給食全然食わなかったって、ねぇ。甘い物とか食べに行こうよ。駅前に新しいクレープ屋ができてさー」

 「そう…」

 普段の勝気さはどこへやら、ぼうっと空の彼方を見たままの少女に、人懐こい同級生も流石に閉口して、側を離れた。

 「のり悪いなっ」

 「甘い物…食べるか…」

 「うん?行く気になった訳…?」

 「ここで食おうぜ」

 そういって、虚ろな笑いを浮かべた城戸は、いきなりスカートを捲って、ぽっこり膨らんだ白い腹部を恋人の前に晒した。下着をつけていない恥部には、昨日より更に太い機械が捻じ込まれ、静かに振動している。

 「キッ…」

 「おどろくなよ…お前も、体育倉庫で見慣れてるだろ…」

 「なっ、だってキヨはFじゃなっ…」

 「へっ…ばか…っ、なぁ羽深、俺、もうだめなんだ…」

 「な、何いってんの?それよりお腹」

 「穂村がごしゅじんさまなんだ…だからもうお前とはダメ…な、甘い物やるよ」

 震える手が、菊座を塞いでいた栓を抜き取ると、直腸粘膜を引っ繰り返して、くっつきあったキャンディが排泄される。チョコレートソースと、カスタードクリーム、クッキー、腹いっぱいに詰め込まれた甘味が次々、黒土に落ちて汚れる。

 十本の長い指が、弛緩しきった括約筋を広げ、ピンクの粘膜をおしげもなく外気にさらした。空っぽになった下の口はまだ出したりないとでもいうように、とろみのついた糖汁の糸を幾筋も地面に垂らす。金髪の奴隷は、両脚の間にどっさり菓子の山を作ると、ぶるっと身を震わせ、解放の喜悦に啼いた。

 「きっ…」

 「好きなのどうぞ…?ほんとは、ごしゅじんさまのおやつなんだ…お前にやったら…またおしおきだ…こんど、どの位つめてもらえんのか…楽しみ…んっ…」

 奥に残っていたヌガーの欠片を落として、頬を染めると、淫具に犯されたままの秘裂をスカートで隠し、アナルプラグを拾い上げて、ポケットにしまう。

 「じゃあな…」

 傍らを通り抜けざま囁かれた別れの挨拶だけは、愛する者から引き離される、少女自身のものだったかもしれない。だが少年は、平板な声音の裏に潜む響きをはっきり聞き取れないまま、ふらふらと立ち去っていく後姿を、ただ惚けたように見送るだけだった。










   

 穂村家の朝は一杯のモーニングティーから始まる。

 その日も、若き当主はボーンチャイナの英字紙ガーディアンの政治時評を流し読みながら、シン・フェイン党の武力闘争路線復活は、EU加盟国としてのアイルランドの地位にどのような影響を及ぼすかについて黙考していた。ただしいつもほどの真剣さは無かった。

 純白のクロスがかかったテーブルには、小間使いのお仕着せを纏った少女が、M字に開脚した姿勢でしゃがみ込み、蜜壷に詰めて熱い内に運んできた紅茶を、こぼさぬようボーンチャイナのカップに注いでいる。セイロンから直送したルフナの、芳しい匂いが昇る中、褐色に窄んだ菊座の栓が抜かれ、直腸に満たされていたミルクがカップの中味を混濁させた。

 上手にお茶の用意を終えると、大股開きの格好のまま、ティーカップをソーサーに載せて差し出す。

 「ほむ…ごしゅじんさま…」

 「ああ、ありがとう砂糖を」

 「いくつだよ…ですか」

 「二つ」

 少女は、シュガーポットから白と茶色のサイコロをとって口に含む。御曹司は、カップをとると、お茶を一啜りして、味を誉め、唇を奪って、唾液に溶かされた砂糖を味わった。城戸の奉仕は、眠りから覚めたばかりの脳を刺激し、ブレックファストの時間を、豊かなものにしてくれる。

 調教を始めてから丸一年たった今は、すっかりメイドらしさを身に付けて、かつての飼い慣らされない獣のような野性味はすっかり抜け落ちている。少し淋しくはあった。だが、テーブルに乗って、秘所を恥かしげもなく晒したまま、うっとりと全能の支配者を拝む同級生の痴態は、追憶を補って余りある収穫だった。

 「…昨日、仙之台の推薦入試が決まった」

 「へぇ、良かったじゃね…えですわ」

 「ああ、お前の第1志望は鷹鳥高校だったよな?」

 「ぉ…んっ…はい」

 「あの話は蹴っておいた。卒業したら、高校進学はしないで、すぐ家のメイド修行にはいってくれ。留守の間淋しいだろうけど、恵さんに色々教わることもあるから…」

 「ちょっと待てっ…」

 「文句があるのか?」

 「ないです…けど…」

 「両親には俺から説得に行くつもりだ。それに東野も卒業したらすぐ結婚するらしいぞ」

 「あ…のやろ…」

 ギラッと、昔日を思わせる鋭い目付きになって、怒りを露にする城戸に、穂村はくすっと微笑みかけ、しなやかな肢体を膝へ抱き下ろすと、裸の尻を掴んで、落ち着けというように揉みほぐす。

 一年前から運動時間を減らさせ、代って週末毎にマッサージを受けた腿肉は、軽く押すだけで、柔らかく吸い付くようだった。余った指を開発済みの後孔に指を埋めながら、そっと黄金の鬣を掻いてやると、すぐ昂ぶった喘ぎが溢れる。

 「んっ…ぁっ…やっ…ちくしょ…約束が違うじゃねぇかよ、ごしゅじんさまてめぇっ」

 「結局言葉遣いは直そうとしても無駄みたいだな…まあいいが。ちゃんとシステムは終わりにしただろう。まさか東野が鵜飼とくっつくとは想わなかったよ…」

 というか、あの先生に、誰の子だか解らない赤ん坊を認知するだけの根性があったことの方が驚きなんだが。

 「うう…んっ…はっ…暁ぃ」

 「ま、仕方ないだろ。そうだ、俺達も作るか。俺が仙之台行ってる間、子育てしてれば退屈しないぞ」

 「ふざ…」

 「金髪碧眼になるか試してみたいと想ってたんだよ♪」

 横抱きにしてソファに降ろすと、自分のベルトを緩めて用意を済ませる。城戸は着衣のままでもできるので、五秒とかからない。やがて、少年のリズミカルな呼吸と、少女の甲高い喜悦の歌が重なって、居間に広がる。

 穂村家の朝を告げた一杯のモーニングティーは、静かに冷えてゆきながら、いつ果てるとも無い主人とメイドの睦み合いを、無言で、やや呆れたように見守っていた。

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