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寝室の大窓から射し込む清々しい朝日に出迎えられて、今日という1日がまた始まる。何というわけではないけれど、今朝はいつもより早く目が覚めた。隣を向けば、ダオスさんが調度品のように白く美しい寝顔を晒して寝具に包まっている。陽の光を浴びて眩しく煌めく金色の髪が、どうやらまだ夢の世界を楽しんでいるらしい彼の滑らかな輪郭の上を波打ちながら飾り立てていた。

「……いつ見ても、本当に綺麗な髪」

頭頂からふわりと優しい曲線を描いて流れ落ちる長い金髪は、手に取ると見かけ以上に繊細で柔らかい。そして角度を少し変えるだけで、まるでそれ自体が意思を持って光を放っているかのようにキラキラと輝くのだ。こんなに美しい髪なのだから、丁寧にアレンジして結い上げればきっとアセリアの名だたる大女優たちさえ息を呑むほど華やかな装いが完成するはずなのに、彼は自分の美貌には無頓着なのかいつも下ろしっぱなしのまま。まあ男性だし、なんて思いつつも気が付けば、私は彼の髪をひとつに束ねるように手に取って3つに分けて……そこに三つ編みが完成していた。

「ふふ……可愛い」

アルヴァニスタなんかの街に出ると、時折女の子たちが談笑しながら互いの髪を結い合う光景を目にすることがある。長く美しい髪を見るとつい飾り立てたくなってしまうのは、女性の(さが)なのかもしれない。ベッドサイドのテーブルに置いていたリボンで毛先を結い、編み目を緩く引き出せばアセリアで今流行りのスタイルがあっという間に完成だ。小さなお花を差し込み散らせば更に可愛く華やかになる……なんてつい呑気に楽しんでいたら。

「……随分とひとりで楽しんでいるようだな?」
「あっ……ダオスさん、おはよう、ございます……」

本当は最初から起きていたのか途中で起きたのか、思考する間も与えられず彼の逞しい腕に手を取られて、そのままぐいと上体がベッドに沈む。ニヤリと吊り上がった口角は、髪を弄られたことに対して怒りを示しているわけではなさそうなことに一先ず安心するものの。

「うむ、お前が結わえたこの編み姿も悪くはない。が……お前だけが楽しむのは私が面白くない」

沈み込んだ上体が今度は一方的に引き上げられて、はらりと無造作に肩へ垂れた私の髪が彼の手の中でひとつの束になる。そして予想外にも慣れた手付きでするすると毛先まで結われていくではないか。

「……私もこの程度ならば編めるのでな。どうだ?私と揃いというのは」
「ふふ、ダオスさんが良いのなら……私は喜んで」

私のその返答を聞いた彼が満足そうに目尻を弛ませる。これで今日もお前に悪い虫は付かぬな、なんて澄ました顔して独占欲を剥き出しにされるものだから、朝からドキリと胸が鳴ってしまった。というわけで、思いがけず今日は彼とお揃いの三つ編み姿で1日を過ごすことになったのだった。当然、街に出ても久しぶりに下品なナンパ男たちの邪魔を受けることなく快適に過ごせたことは言うまでもない。

---END---


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