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Short short log -06-

アセリアの料理は口に合わぬ、なんて彼は言うけれど、それでも極たまに彼のカーラーン舌にヒットするメニューが存在することを、私は知っている。

「うむ、この、中にチーズが入れられたハンバーグは実に美味だ。このソースを上から惜しみなくかけると更に良い」

さすが王族、上品な手付きでナイフとフォークを操りながらハンバーグを一口大に切り出すダオスさん。中に惜しみなく入れられた黄金色のチーズがとろりと切り口から溢れ出す。最初のひと口はソース無しでまずチーズと肉の旨味を味わい、ふた口めからはデミグラスソースをたっぷり纏わせて口に入れるのが、彼のいつもの食べ方だ。ソースは足りなくならないようにとやや多めに添えてはいるものの、味までうんと濃くなりそうな彼の豪快なかけっぷりにはいつも驚かされる。

「ダオスさんは本当にチーズinハンバーグがお気に召されたんですね」
「ああ、それにこの添え物のジャガイモ揚げも見事だ。しかし塩が足りぬ……もっとかけられないだろうか?」
「……それ以上かけたら血圧が高くなって健康を害しますよ?」

味と未来の健康とを脳内で天秤にかけたらしいダオスさんは、ソルトボトルに伸ばしかけた手を惜しそうに戻す。そうして食事を再開した彼は、今回もあっという間に皿を平らげてしまうのだった。

「ふ、今日の夕食も美味であったぞ、
「ご満足いただけたなら嬉しいですわ」
「次は、あの、トマト風味の米を薄焼きの卵を巻いた……」

エリュシオンでは馴染みがなくメニュー名が出てこないのか、珍しく困惑した表情を浮かべて彼がうんうんと唸っている。とはいえ先のヒントのおかげで、私にはすぐ彼の求めるものは解った。

「……オムライスでしょうか?」
「うむ、それだ」

うん、やっぱり。いつもの喜怒哀楽が読めない端正な顔をかすかに綻ばせて満足そうに頷く彼があまりにも可愛いものだから、私もつい顔が緩んでしまう。気に入ったメニューがハンバーグにフライドポテト、それにオムライスだなんて、生まれた星は違えども世の男性の好みというのは変わらないものなのだろうか。

「いいですよ、明日の夕食はオムライスにしましょうね」

生まれた時からずっと王族として暮らしてきたのなら、今より遥かに質の良い豪華な食事を日々口にしていたはず。けれどだからこそ、こんな庶民的な料理も彼にとって新鮮に映るのかもしれない……なんて勝手に想像しながら、頭の中で必要な食材と食糧庫の在庫を照らし合わせる。そういえば最近アルヴァニスタに美味しいケチャップの専門店が出来たと聞いたし、この機会に覗いてみようかな?

コトン、という小さな音と共にダオスさんが席を立つ。ダイニングルームを後にする彼の逞しい広い背中にのしかかっている、他の者には決して見せることのない重い使命を思うと、せめて食事の時くらいは癒やしの時間であってほしいと願わずには居られないのだ。その為ならば、この腕惜しむことなく振るってみせようではないか。


---END---


さすがにアセリアの全ての食事が口に合わない、ということは無いと思うので
夢主がいろいろ食べさせてみたところ
如何にも男の子が好みそうなメニューがヒットした、とかだったら可愛すぎる…

Good!(お気に召されたら是非…!)

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