+ Meteor +

もしザレイズ世界に夢主も具現化されていたら?というIFです。
2021年12月時点でダオスにクリスマスイベントはありません…
ザレイズ未プレイでもお話は楽しんでいただけるかと思いますが、
ザレイズオリキャラのマーク君が名前のみ出てきます。


**ティル・ナ・ノーグのクリスマス~招待状が届きました~**

私たちの拠点であるお城の外でも、ふわりふわりと雪が舞う季節がやってきた。アセリアと変わらない美しく繊細で、そして豪奢な枠に飾られた城の窓から自由に空を舞う雪を眺めていると、冬がやって来たんだ、ということを改めて実感させてくれる。そんな季節、城に珍しく小包と一通の手紙が届けられた。差出人は案の定マークさん。気が向いた時にしかアジトに顔を出さないダオスさんにも、こうして律儀に手紙を届けてくれるのだからありがたいものだ。

「"クリスマスパーティーを開くから、良かったら是非来てくれ。皆クリスマスの衣装を着るが、わざわざ探させるのも申し訳ないからこちらで手に入れたサンタの衣装を同封する。着てみてほしい"……ですって。ふふ、ダオスさんにこんな依頼をするなんて、マークさんは大胆ですね」

小包の中には文言通り、男性用のサンタクロース衣装が綺麗に畳まれて入れられていた。いつもと違う装いでパーティーだなんて、傍から見ればとても楽しそうだと思うけれど。

「ふん、宴などとくだらぬ。私は行かぬぞ。仮装など以ての外だ」

予想通りの反応は特段驚きもしない。彼は元々馴れ合いも好まないし、自らの目的を果たすのに他者の力は借りないと言い切っているのだから。彼の目的を理解し、情報があれば提供してくれるアジトの皆のことは彼なりに多少の情は抱いているのだろうけれど、あくまで判断基準は"大義を果たすために利用できるかどうか"なのだ。しかし、そうは言っても日頃からアジトの皆には何かと気にかけてもらっているし、折角のお誘いを無碍にするのはあまりにも心苦しかった。

「……では、私がご挨拶程度に彼らに差し入れをお届けしてもよろしいですか?アジトの方には私もいろいろお世話になりましたし、何かお礼くらいはしたいのです」
「お前の好きにするがよい、

彼はそう言って私の淹れたコーヒーをくっと飲み干すと早々と部屋を去ってゆく。彼のことだ、この後はいつものように術技の鍛錬でも行うのだろう。

「ふふ、ありがとうございます、ダオスさん」

一方私は彼の許可もいただいたことだし、後で早速街に出て差し入れの品を見繕ってこよう。受け取ってくれる人の笑顔を思い浮かべながらの買い物は、いつだって楽しくて大好きだ。

「パーティーには皆クリスマスの衣装を着る、か……私もたまにはとびきりイベントらしい格好でもしてみようかしら?」

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パーティー当日。
アジトの皆への差し入れは準備万端。それにクリスマスの衣装も、あれから他の大陸にも渡ってお気に入りの1着を見つけることができた。普段はいつ戦闘になっても対処できるように地味で動きやすい服装ばかりだけれど、今日だけは特別だ。折角のパーティーだもの、チューブトップは少し挑戦的でも、寒さ対策も兼ねて上からもこもこのファー付きケープを羽織れば肌の露出は少なくなる。スカートもやけに短いけれど、ガーターベルトで留めた太もも丈の黒いソックスに履き口に白いファーのついたクリスマスらしい赤のロングブーツを合わせればうんと大人っぽい雰囲気を醸し出せる、はず。ヘアスタイルもパーティーらしく煌めくアクセサリーも使ってアップスタイルにしてみたし、アジトの雰囲気を壊さない程度には華やかな装いができたと思う。

「うん、ばっちりね!」

全身鏡をつい何度も覗いてしまうくらいには、非日常の装いが楽しくって仕方がない。念の為に武器も忘れず装備。最後に指先の防寒も兼ねた、ワンピースやブーツとお揃いの色のグローブを嵌めれば完璧だ。出発前には彼にひと声掛けておこう。恐らく今日がパーティーの日であることさえ気付いていないだろうダオスさんは、いつものように城の最上階で故郷の姿を見守っていることだろうから。

「失礼します、ダオスさん。以前お話ししたパーティーが今日ありますから、私はこれから差し入れがてら少し顔を出してきますね。きっとすぐに戻ると思いますけれど」
「ああ、あの宴は今日だった……か……?」
「?」

私を捉える彼の青い目が僅かに丸くなる。そして無言のまま、私の姿を頭の先から爪先までじっくりと、それは物体を検分するように動かされる。

「……、その格好は」
「あら、皆さんクリスマスの衣装を着られるとお手紙にあったでしょう?私もたまには華やかな装いをしてみたかったので着てみたのです。この方が会場の雰囲気にも馴染むでしょうし」
「……そうか、しかし……うむ……」

あっさり送り出されると思いきや、何やら考え込んでいる様子のダオスさんに思わず面食らう。普段から飾り気のない格好ばかりしていたし、衣装が似合っていないのだろうかと不安な気持ちが胸をよぎる。

「もしかして、私、あまり似合っていないでしょうか……」
「いや、そうではない。実に……華やかで愛らしい装いだ。しかし……」
「……?」

何か言いたげなのに、彼にしてはハッキリとした物言いをしないことがひどく珍しい。そんなに言いにくいことなのか、しばらくまたしんと静まった時間が過ぎ去った後。

「うむ、気が変わった。私も宴に同行する。あのサンタの衣装とやらはまだあるか?」
「ええ、取っておいてありますけれど……」
「そうか、着替えてくるから少し待っていろ」
「ええっ!?」

突然の彼の同行宣言に、私は完全に虚を突かれてしまった。いったい何が、パーティーをくだらない宴と一蹴した彼の心を動かしたのだろう?わけも分からぬまま、けれど部屋の入口で棒立ちしているわけにもいかないので一先ず彼の着替えを手伝うことにする。届けられた衣装は見事に彼の体型にぴたりと合っていて、アジトの皆、もといマークさんの観察眼にまたも私は驚かされてしまうのだった。

「……ダオスさんはスタイルが良いので、どんな格好もお似合いで羨ましいです」
「……妙な装いは慣れぬが、仕方あるまい」
「こちらのサンタ帽を被れば完成ですよ」
「奇妙な形の帽子だな……」

"不本意ながら着せられている"感を隠しもしないところが如何にもダオスさんらしい。実は必ずしもクリスマスの装いをしなければならない、なんてお手紙にはどこにも書かれていなかったのだけれど、ろくに手紙を読みもしなかった彼は気付いていないのだ。でも、愛嬌あるサンタ衣装に身を包んだ彼の可愛らしい姿を堪能していたいから、このことは内緒にしておこう。

「ダオスさんも準備万端ですね。ではそろそろ出発しましょうか」

城の入口、差し入れの品物は既に馬車へ積み込んである。彼の準備さえ整えばいつでも出発できる状態になっていた。

「待て、
「……!?」

急に彼に呼び止められて振り向くと、視界が一瞬闇に閉ざされる。そして明るさを取り戻した時には、とても温かな橙色のマントが私の身体を優しく覆っていたのだった。

「……それを羽織っていろ。お前の美しい肌が他の者の目に触れるのは面白くない」

問答無用に彼のマントが私の胸の前で留められていく。けれどそれはいつものリングではなく可愛らしいリボンの形に結われて、決してパーティーの華やかな雰囲気は失われていない。それどころかうんと可愛らしくなっている気さえする。私は今更気付かされたのだ。彼が急にパーティーに同行すると言い出したのは、私の装いが普段よりずっと肌が出ているのを心配――或いは嫉妬――してのことだったのだと。

「……ありがとうございます」

彼の気持ちが嬉しくなると同時に、少しばかり申し訳なくもなってしまう。この衣装も可愛くて気に入っているけれど、次はもう少し控えめなものを選ぶことにしよう。すっかりマントで肌が隠れた私の姿に満足したのか、ダオスさんはひょいと馬車に乗り込むと私の手を取って隣に導いてくれた。

「では、出発しましょうね!」

彼が鞭を入れると、4頭の馬たちが軽快に走り出す。いざ、パーティー会場へ――

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「うーん、何だかんだで結構長居しちゃいましたね……!」

差し入れだけを届けて早々に帰路につくつもりが、アジトの皆に"折角だから少しだけ呑んでいけ"と誘われたが最後、結局断り切れずにずるずるとこんな夜分まで入り浸ってしまった。差し入れの品物はとても喜んでもらえたからとりあえずは良し、だろうか。特に酒類は、精霊の研究をしているという研究室メンバーが大好きだとかでうんと喜ばれた。今日は忙しかったようで研究室の皆さんにはお会いできなかったけれど、いつかご挨拶できたら嬉しい。サンタ衣装も、私がダオスさんのマントを羽織っていることには多くの人に驚かれたけれど、それも含めてよく似合っているとたくさん褒めてもらえた。

「……くだらぬが……悪くない宴だった」

アジトには私たちの居たアセリアとは全く異なる様々な世界から具現化された、私たちと同じような立場の人が集まっているとは以前から聞いていた。中にはダオスさんと同じように故郷の星と世界を守るために戦っている人もいて、そんな人とはダオスさんも話のウマが合っていたように見えた。あの印象的な長い銀髪に紅い瞳の方、お名前訊きそびれちゃったから今度お会いしたら訊ねてみよう。特徴的な赤い大きな剣を携えていたから、次も見間違えることはないだろう。

「それにしても、やはり私の危惧した通り……兵たちの目はお前の姿に釘付けになっておったぞ」
「え、そうでしたか?私は何も感じませんでしたが……」
「私が睨み返してやったからな」

ダオスさんはどうしても気に入らなかったらしいサンタ帽を真っ先に脱ぐと、ソファの上に放った。アジトには私なんかよりずっと綺麗で可愛らしい――中には羨ましいほどグラマラスなスタイルの――女の子がたくさんいるのだから、大方ダオスさんの勘違いだと思うのだけど……私のことをそんなに大切に想ってくれていることが嬉しくて、胸がきゅんと暖かくなる。

「……さて」
「……!?」

そのままサンタ衣装も着替えるのかと思いきや、ふいに優しく肩をとられて、背中が壁に留められる。頭の横にドンと腕を突かれて、口にせずとも"逃がさない"という意思がありありと伝わってくる。さっきまでなかなかお疲れの様子だったというのに、青い双眸はすっかり獰猛な雄の捕食者のよう。息遣いまで判るほどの至近距離から射抜かれて、全身が否応なくざわめく。胸の鼓動が強く、早く内側からどんどんと鳴り響いて止まない。

「私へのプレゼントはまだか?――」


---END---


Good!(お気に召されたら是非…!)

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