+ Meteor +



**愛おしさは変わることなく**

私がこのダオスさんのお城で毎日行っている欠かせない仕事の1つ、それは入浴の準備だ。見たことのない石材――実際は石ですらないのかもしれない――で作られた浴室の床は磨けば磨くほど、王様に相応しい綺羅びやかな輝きを放ってくれる。細く美しい曲線を描いた眩い金色の脚が取り付けられている白いバスタブも柔らかな布でしっかりと擦って掃除しているから、指で表面をなぞればキュキュっと気持ちの良い音が鳴る。今日の浴室掃除もこれで完了だ。後は温かなお湯をこのバスタブにたっぷり溜めるだけ。溜め終わったら彼を呼びに行こう。

「あ、キャンドルに火をつけなきゃ」

その身に背負った使命を果たすべく日々邁進するダオスさんにも、せめて入浴の時間くらいはゆっくり疲れを癒やしてほしくて、先日アルヴァニスタの雑貨屋で素敵なアロマキャンドルを買ってきたのだ。マッチを擦って火を灯すと、気持ちを落ち着けてくれる小さな炎が優しく揺らめきながら、浴室が上品なお花の香りでゆっくりと満たされてゆく。この香り、ダオスさんも気に入ってくれるかな?

そうして軽く浴室内を整理整頓しながら、お湯が溜まるのを待つ。飾り棚の切り花は手入れもばっちり、濡れた身体を拭き上げるタオルはふわふわに乾いて籠に入れられている。壁面の大鏡は湯気で曇らないように毎日曇り止めの液体を塗りつけているから、いつだってはっきりとボディチェックできる。背の高いダオスさんでものびのびと肩までお湯に浸かれるように、このバスタブはかなり大きく広く作られているけれど、あれこれ細やかな作業をしていればそんな大きなバスタブにもあっという間にお湯が溜まり切った。あとはこのお湯が冷めないうちに、ダオスさんを呼んでお風呂に入ってもらおう。

「……、ここに居るか?」
「あら、ダオスさん?」

この時間ならきっと、彼は城の最上階で故郷の姿を見守っているはず……そんなことを考えていた矢先、思いがけず彼の方から浴室へやってきたものだから少し驚いてしまった。彼は生まれながら王族として暮らしていたためだろうか、身の回りのことは大概受け身だった。もちろん入浴も、いつも私が準備を終えてから彼を呼びに行くという流れが成立していたから、こうして彼の方が能動的にやってくることは稀なのだ。

「ちょうどお呼びしようと思っていたところです。お風呂のご用意が整いましたから、お湯が冷めないうちにお入りになってくださいね」
「……いつも助かるな、。しかしその格好は」
「えっ?」

今まで気にも留めていなかったことを指摘されて、改めて自分の格好を確認する。辛うじて尻を覆える程度の丈をしたワンピースは、普段着のインナーとして着用しているものだ。インナーだから生地はうんと薄手で、その下に身に着けた胸当ては形から色からはっきりと分かるほどに透けてしまっている。丈も短いから屈めば簡単に下穿きも見えてしまうだろう。ずっとひとりで作業していると、どうしても見栄えより実用性・利便性を重視してしまうものだ。

「随分と無防備な姿を晒すのだな?」
「服のまま浴室掃除をすると濡れてしまうものですから。ここは魔物たちも入って来られませんし、大丈夫でしょう?」

作業の途中でしまい忘れていたらしい、出しっぱなしの小物を引き出しに戻そうと腕を伸ばしたら、不意にその腕をダオスさんが掴んだ。

「確かに奴らは入ってこれまいが……私もまた男であるということを忘れたか?」

掴まれた腕から身体がぐるりと回されて、壁を背にして留められてしまう。彼は私なんかよりずっと背も高いし、武器も無しに素手で戦闘をこなせるだけの強い力もある。こうなれば私に逃げ場などないことを十分解しているからか、私を上から見下ろす彼の口角はニヤリと吊り上がっていた。彼の長くて美しい、けれど男らしくごつごつとした指がゆっくり近づいてきて、ワンピースの肩紐を片方、するりと落とした。

「ちょっと……待ってくださいなダオスさんっ!」

もう片方の紐が必死に私の身体を守ろうと踏ん張りをきかせているが、その頑張りに反して私は……これから訪れるであろう展開を予感して、早くも身体の中が勝手に、ざわざわと疼き始めることを止められなかった。

「そのっ、まだ……夕刻ですし……」
「……ふふ、何を期待している?」
「えっ?」

予想に反して、彼の手はそれ以上私に触れることなく彼がいつも身につけている優雅なマントの中に隠れてしまった。てっきりもう片方の紐も落としにくるに違いないと思い込んで、その後を勝手に想像して……あまりの恥ずかしさに顔面が燃えそうなくらい熱くなってくる。まるで私がすぐえっちなことを考えてしまうイヤらしい女みたいで……いや、それを指摘されても否定できない自分の思考がなお恥ずかしい。

「なっ……何でもありませんっ!」

私の腕を留める彼の手が離れると同時に私はサッと彼に背を向けた。彼に外された肩紐はまだ落ちたままだったけれど、そんなことよりとにかく1秒でも早く、今の情けない顔を隠したかった。

「お風呂っ……冷める前に入ってくださいなっ」

早く浴室を出ることばかり考えて、戻しかけの小物を力技でぐいぐい押し込むように引き出しの隙間にしまい込んでいたら、ふいに背後から熱いものが私を包んだ。

「……、からかったことは謝罪する。僅かに触れるだけでも素直に私を求めるお前が実に……愛らしくてな」

背中からギュッと抱き寄せられて、そのまますっぽりと彼の腕の中に身体が収まってしまう。色っぽい息遣いさえ判ってしまうほどの至近距離。そして彼の髪から、或いはマントから漂う大人の男の色気を帯びた香りが、必死に抑え込まれている私の情欲を再び揺さぶり起こしにかかる。

「……

幼子を振り向かせるように後ろから優しく顎先を捉えられ、導かれるまま顔を上げたら……刹那、唇が熱いもので塞がれた。

「ふっ、はぁっ……ダオスさ、んっ……」
「……全く、お前はどこまでも愛らしい」

離さないと言わんばかりに、私を抱き締める彼の腕はさっきより力強くなっている。澄まし顔の裏で、露出した肌から伝わる彼の体温はいつもよりもうんと高い。なんだ、彼だってそういう気分になっていたんだとわかって、くだらないけれどホッとするのと同時に、その可愛さが堪らなくなる。

「んっ……ふぅっ……」

もう一度確かめるように唇が重なって、甘い心地良さによって力の抜けた瞬間を見計らったように、彼の赤い舌がにゅっと侵入してきた。体温よりも更に熱く感じるそれに口内をじっくりと弄られ舌先を何度も絡め取られながら、ここから逃さないというように彼の手が私の上半身を愛でるように這い回る。単身私の身体を守り続けていたもう片方の肩紐は彼の手によってあっという間に肌の上を滑っていき、ワンピースは軽やかな布擦れの音を奏でながら足元へと落ちていった。そうして剥き出しとなった胸当ての中に、彼の大きくて熱の籠もった手が遠慮なく潜り込んでくる。

「……このような装い、まさか私以外の者に見せたなどということはあるまいな?」
「当然ですっ……誰にも見せるわけありませんわ」
「ならば安心だ。この愛くるしい姿は……私だけのものだ」
「ひッ、あっ」

胸当ての中に隠していた丸い膨らみが2つとも鷲掴みにされて、むにゅりと形が変えられる。女性特有の柔らかさを確かめるように堪能しながら、ダオスさんは器用に後ろから舌の先端で私の耳たぶをなぞりあげた。生々しい熱、外耳を反響するざらついた淫靡な音。彼にとことん愛欲を教え込まれた身体はもうそれだけで芯をゾクゾクと震わせてしまう。でも、そういえばまだ湯浴みもしていないのだ。今のままこれ以上先に進むのはさすがに憚られる。

「……あのっ、ダオスさん、まだ私、湯浴みもしてないですから……」
「何だ、ここは浴室だろう?」
「それはっ……そうですけど……」
「私は何も問題はないが、お前が気にすると言うなら……私が洗ってやろう」
「えっ?ちょっと、待っ……!」

胸当ての中に潜んでいた彼の手がようやく姿を現したかと思えば、私には選択の余地など与えられぬまま一方的に胸当ての留め具を外されて、両の乳房が彼の眼前に晒されてしまう。与えられた快感を素直に享受していた膨らみの頂は、既にツンと上を向いて勃ち上がってしまっていた。

、洗う前に」
「あッ、やんっ!」
「……うむ、この甘みと酸味が織り成す味が実に……良い」
「やだっ、まだ洗ってないのにっ」

お湯によって温められている浴室の清掃作業では少なからず汗をかいてしまう。それを流せないまま、あろうことか味見までされて……あまりの恥辱感に私の身体の芯がまた一段と締まってしまう。でも、そんな私の身体も美味しそうに頬張ってくれる彼の姿が嬉しくて、愛おしい。

「……このままだと私も濡れてしまうな。少し待っていろ」

ダオスさんは私の胸元を覆っていた胸当てを籠に放り込むと、手早く嵌めていた腕輪をするりと外し、チェスト上のシックなアクセサリートレイに乗せた。あの豪華な2枚重ねのマントさえ簡単に籠に入れてしまったけれど、酷い皺がつかないといい。普段着の黒いウェアもさらさらと手早く脱いでいく。黒地の隙間から覗く、一点の曇りもない白く透き通った艷やかな肌は女性も羨む美しさだ。

「私にも……お手伝いさせてくださいなっ」

脱ぎかけの服にそっと手をかけて、ゆっくりと開けてゆく。きめ細やかな白肌に包まれた肉体は、一転してどこも万遍なく、よく鍛え上げられていて硬い。いつものこの全身を厳重に守る服とマントを纏っている普段の彼は美しく、けれどどこか儚い中性的な印象を醸し出していると思うけれど、脱いだ彼は紛れもなく強い男だ。アセリアでここまで美しさと力強さの両方を兼ね備えた男性を、私はまだ見たことがない。

「本当に……ダオスさんはお綺麗です……」
「お前はいつもそれを言うのだな?」
「だって、本当にお美しいから……いつまでも見ていたいのですよ」

服を脱がすことを忘れないように、けれど靭やかな筋肉の凹凸を時間をかけて、指先で丁寧になぞる。くっきりと6つに割れた腹筋に触れていると、彼がこの肉体を得るまでにどれだけの鍛錬を積んだのかつい思いを馳せてしまう。そして素手だけでなく脚技も駆使して戦うだけあって、下半身もまたよく引き締まっているのだ。ブーツを脱がすと現れるこのスラリと締まった白く長い脚に息を呑まない者はいないだろう。

「うむ、では私にも美しいものを愛でる時間を与えてほしいものだな?この愛らしいを」
「んっ、はぁっ……ダオスさ、んッ……!」

彼も私も身を包むものはほぼ取り去られて、剥き出しとなった素肌と素肌で互いの体温を直に確かめ合いながら、再び求めるように唇を重ね合う。私の手首は彼に捕らえられ、逃げられないように身体は浴室の壁に押し付けられて……そのまま芯まで食べられてしまいそうだ。彼の熱い舌に口内をくまなく弄られるものだから、私もお返しに舌を入れようとすればすかさず先を絡ませられて、とても彼の側には辿り着けそうにない。深く味わうように時間をかける濃厚なキス。もうどちらのものかも分からない銀色の雫が、私の口の端からとろりと糸を引いて鎖骨へ落ちていった。

「んっ、ふぁっ、ぁ……」

彼の空いたもう片方の手に、胸の膨らみをぎゅっと掴まれては解すように揉みしだかれて、身体も心もじんわり温かく蕩けるような気持ちよさで満たされていく。最後まで私を包んでいた下穿きも、彼によって腰紐を解かれあっさりと籠へ放り込まれてしまった。そうして全てが晒された私の身体に、彼はいつも唇からたっぷりの熱を落としてくれる。

「以前つけた印が消えてしまったようだな?消えたのならば付け直すまでだが」
「んぅ、見えないところにしてくださいねっ……?」
「外から見えぬのでは印の意味が無かろう?むしろよく見える場所に刻みたいものだ。そうだな……ここなどどうだ?」

あくまで優しく、けれど抵抗はできない程度の力で頭を押さえられ、無防備になった首筋と鎖骨に彼が顔を埋める。刹那、ピリッとした甘い痛みが皮膚の上を走った。

「あっ……そこ隠せないのにっ……」

首筋にも鎖骨にも、消せない紅い花弁がいくつも散っている。私が普段着ている服では隠せない位置と解っていて、彼はわざとここに印を付けたのだ。私がこれを隠すためにどれだけ知恵を巡らせているか、そんな苦労など知らぬ存ぜぬと言った様子でダオスさんは自慢気にククッと嗤っている。でも、私が本気で嫌がっているわけじゃないことを彼はよく知っているのだ。こうして見えるところに彼の所有印をたくさん刻み付けられて、身も心も彼のものとなることで……私の中はもう、とろとろに蕩けてはしたない涎が今にも垂れてしまいそうなくらいに湿度を高めていた。

「……さて、身体を洗う泡を用意せねばな。、これではなく、お前が使っている瓶入りの石鹸を私に」

ひと息ついたところで、身体を洗う泡の用意を始めたダオスさんがいつもの石鹸を、これじゃないと言うように台に戻す。

「瓶入りの石鹸?……え、どうしてそれをご存知で……」
「以前、しまい忘れたままにしていただろう?」
「あっ……」

そして代わりに求めてきたのは、最近私が使い始めた別の石鹸だった。アルヴァニスタの小さな薬草屋で見つけたそれは、全身の肌だけでなく女性の大切なところも洗える優しい成分でできているのだ。引き出しから取り出した瓶を渡すと、これだこれだと頷いて彼はラベルに目を落とした。

「"女性の不快な匂いも優しく洗い落とす"……私を気にしてこのようなものを?」
「……汗ばむ季節になってきましたし。そんなにまじまじと見ないでくださいな、恥ずかしいですからっ……」

彼の目線が、瓶のラベルと私の身体をちらちらと往復する。交わりの最中、彼に嫌な思いをさせたくなくてこっそり使い始めたのだけど……それを知られてしまうと何だか一気にこっ恥ずかしくなってくる。元はと言えば置きっぱなしにしてしまった私が悪いのだけど。

「わっ、ちょっと、ダオスさんッ?」
、全く……お前はどこまでこの私を狂わせるのだ?お前のこの愛らしい身体に……不快なものなど何も無いというのに」

腕をぐいと引かれて、彼の厚い胸板の中へ強制的に飛び込む形で抱き留められる。ちょうど私の襟足が彼の鼻のそばに当たっていて、そのまますんすんと香りを確かめられてしまう。

「咲き誇る花のように爽やかで……だが甘さもある、私の愛する香りだ」

透き通った青い瞳を真っ直ぐこちらに向けて、彼が私の顔を覗き込む。彼の好きな香りであることにホッと安心しつつ、けれどやっぱり入浴前の身体の香りなんて確かめられるのは照れくさくて視線を逸らしたら、ふっと彼は笑みを溢して私の頬に啄むようなキスをひとつ、ふたつ。

「…さあ、泡はこれだけあれば足りるだろう。こうしてお前の身体に乗せて……」

いつの間にか、もこもこと豊かな泡が彼の抱える洗面ボウルいっぱいに出来上がっていた。肌に乗せると私が作る泡より遥かにキメも細やかで、質感ももっちりとしているのがわかる。繊細な魔術を操ることができる者は手先も器用なのだろうか?

「っ……!」
「まだ腕を洗っているだけだというのに……ふふ、その様子では身が持たぬぞ?」

彼の大きな手のひらいっぱいに掬われた泡を腕に乗せられて、そのまま優しく手先に向かって手のひらごと泡を滑らせていく。揉まれるような心地良さはまるでマッサージされているようで、日頃の疲れなど軽く吹っ飛んでしまいそう。指も1本1本を念入りにくるくると撫でられて、大好きな人に触れられればこんなところでも快感を享受できるのだということを身を以て知らされる。

「こちらも洗ってやらねばな?」

まるでケーキに生クリームを飾り付けるように、欲しがりな胸の先端に泡をちょこんとひとつずつ乗せられる。待ち切れない気持ちと照れくささで心臓がどくりと鼓動を刻む度、泡の天辺が小さくぷるりと揺れた。

「ぁっ……んっ……はぁっ……!」
「洗われているだけだというのに、漏れる吐息が随分と甘いな?」

大きく円を描くようにぐるりぐるりと胸に泡を行き渡らせたら、その泡を潤滑剤代わりにして、彼の手が私の胸を捏ねるようにじっくりと揉みしだく。どこが"洗うだけ"だというのだろう?予測のできないタイミングでふと先端を摘まれたり、手のひらで擦られたりするものだから、それがまた思わぬ快感となって腰をつい震わせてしまう。我慢できなくて彼の身体にぎゅっとしがみつくと、ふたりの肌の間にぬるりとした独特の気持ち良さが生まれた。

「あっ、ぁ……」
「こうして身体を擦り付ければ……温もりも相まって気持ち良かろう?」
「ぁぅっ、良い……ですっ……」

身体で身体を洗うようにぬるぬると擦り付け合いながら、皮膚の上を走るじんわりとした気持ち良さをふたりで分かち合う。さっきから私ばかり洗われていたから、お返しに彼の身体もたくさんの泡で綺麗にしよう。

「んっ……はぁっ……ダオスさんも、気持ち良い、ですか……?」
「……ふ……っ……上出来だッ」

彼の身体を抱き締めて、泡で滑りの良くなった肌の上を包むように身体全体を使って上下に擦ってみせる。押し当てた胸が彼の筋肉の凹凸に入り込む度に絶妙な刺激をもたらすのだ。そしてそれは彼も同じで、今や彼の引き締まった胸元にはふたつの小さな蕾がピンと存在を主張していた。

「……可愛らしいここ、綺麗に洗って差し上げますね」

痛みが無いようしっかりと指先に泡を纏わせて、彼の両胸を飾り立てている桃色の突起をつまみ洗う。城の中でも鍛錬を欠かさない彼は胸の筋肉も凝っているかもしれないから、全体を優しく解すように揉んでみよう。女性と違って男らしい硬い胸、筋肉の弾力が新鮮でつい時間をかけてマッサージしちゃったけれどちゃんと気持ちよくなってくれているみたいで、この世のものとは思えないくらいの圧倒的な色気を含んだ吐息を小さく漏らしながら腰がぴくりと震えている。

「……あら、こっちも私に洗ってほしいって……言ってるみたいですね?」
「う、ッ……!」

早く気付いて、と言わんばかりに先程から私の身体をつんつんと啄んでいるそれは、私が彼に触れれば触れるほど……大きく硬く、そして立派に反り勃ち上がるのだ。優しく握ってみれば、待ち切れないというように血管がどくどく波打っているのがわかる。

「ふふ、綺麗に洗って差し上げますからね。後ろの大切な袋も……ぷにぷにしてて感触が気持ち良いです」

さすがに泡まみれのまま舐め上げることはできないから、代わりに指先と手のひらで丹念に洗い上げる。膨れ上がったそそり勃ちの表面に浮かぶ複雑な凹凸模様をなぞるように指の腹で撫でれば、そこはぴくりと歓喜の震えで応えてくれた。先端のくびれは触れられると男の人もとっても気持ち良くなれるらしいから、たっぷりと時間をかけて回すように優しく洗ってみせる。珍しく眉間に皺を寄せて彼が腰を小刻みに震わせているのを見れば、声が漏れなくとも感じてくれていることは一目瞭然だ。

ッ……!」

内心"そろそろここで一度……"などと考えていた矢先、急に名を呼ばれたものだから見上げると、すっかり欲に蕩けきった青い瞳に射抜かれてしまった。いつもの凛として力強い意志を秘めた眼差しも男らしいけれど、色香溢れる今の潤んだ瞳もなかなか唆るものがある。涼しい顔で高度な術を難なく放つ王様にも、こうして快楽に溺れる雄の一面を持っているのだ。

「ゃん、まだ、洗う途中ですよっ」
「……次は私の番だ」

再び腕をとられ背中を壁に押し付けられて、私の逃げ場はどこにもなく、それはつまり……これから私は彼にされるがままになるのだ、ということを瞬時に理解する。私の膝の間に彼の長い脚を差し込まれれば、脚を閉じることさえ叶わなくなってしまった。

「……予想通り、愛らしい花弁が蜜塗れだな?」
「ぁ……だめッ……そこはっ……」

守るものが何もなくなり剥き出しになった秘裂を、豊かな泡を纏わせた彼の指がゆっくりとなぞる。溢れ出るはしたない涎と弾力のある泡が混ざり合って独特な滑りを生み、その摩擦がこの上ない快感となって私の下腹部を飲み込むように甘く痺れさせていく。

「洗ったところで際限なく垂れてくる……ふふ、何故だろうな?」
「そっ、それ、はっ……」

ダオスさんはこういう時とことん……意地悪だ。何故かなんて、訊かなくったって解ってるくせに。そもそも初めから答えさせる気も無いみたいで、ぷっくり膨らんで割れ目の間から少しばかり顔を覗かせているであろう核を指の腹で執拗に撫で回されてしまったら、ぴりぴりと迸る気持ち良さにもう答えを口にするどころじゃない。

「ぁ、あっ……も、だめッ……!」
「床が滑りやすくなっている……私の身体に掴まれ」

私のがくがく跳ねる腰を見て危なっかしく思ったのか、彼の逞しい腕に抱き寄せられて、ふたりの熱くなった身体が再び密着する。泡によるぬめりで不安定な足元を支えようと言われるがまま彼の熱い身体にしがみついて、私は与えられる快楽にひたすら身を震わせるしかなかった。

「ひッ、ぁ、い、イくっ……!」
「……相変わらず、果てる姿も……愛らしい」

彼に注がれる甘い毒が猛烈な勢いで脳天に回って、バチバチと火花が弾け飛ぶ。思考はぼんやりとしていたけれど、それでも彼の唇から私の耳に、頬に、それから私の唇にも、たっぷりの熱が落ちているのはわかった。まだ僅かに私の中に残っていた理性さえも、そうして彼は容易く剥きあげてしまうのだった。

「……、私もそろそろ限界だ。例の被せものは……」
「待って……そのままが良い。ダオスさんを直に……感じさせてくださいな」

避妊具を取り出そうとして引き出しの取っ手にかけられた彼の手を優しく掴んで戻す。薬はまだたくさんあるし、そんなことより今は……彼と私を隔てる被せものの僅か1ミリにも満たない極薄の壁さえも、私にはもどかしくて仕方がなかった。

「……良いのだな?」

ふっと眉を下げて笑う彼に、こくこくと私は夢中で頷いた。彼は優しいからいつだって私を気遣ってくれるし、誰よりも私を大切にしてくれる。心から愛されていると解るからこそ、私もできる限りの愛で応えたかった。そのままの方が彼だって断然気持ち良いはず。でも……本音を言えば、彼にも直に"私"を感じてほしかった、というのは自分勝手なのだろうか?

、壁を向いて手をつけ。そう……突き出た尻も丸く柔らかで良いな」
「んッ、あっ、大きい、のっ、中に入って、く、るッ……!」

命じられるがまま姿勢を取れば、後ろから巨大な質量の灼熱がめりめりと私の中の肉壁をかき分けて、ゆっくりと侵入してくる。どれだけあらかじめ豊かに湿らせていても、彼の圧倒的に大きなそれを迎え入れるには常にめいっぱい粘膜を拡げなければならないのだ。胴を串刺しにされてしまいそうなこの強烈な圧迫感もはじめは戸惑いこそしたけれど、今となっては私の全てを飲み込む莫大な幸福感を生み出してくれる。

「……直が良いとは、はようやく私の子を孕む気になってくれたようだな?」
「えっ?それ、はッ……ぁん!」

くくっと笑う彼の怒張に子宮口を甘く一突きされて、思わず甲高い声が浴室に響いてしまう。

「ふふ、孕めと言うとお前の中がうんと締まる……」
「んっ、はぁッ、ぁっ……!」
「私も民を率いる身ゆえ、近頃は我が宿願を果たした後のことをよく考えるのだ……お前と歩む未来のことを、な」

繋がったまま後ろから抱き締められて、蕩けるような甘い低音が私の鼓膜を絶え間なく震わせる。そうでなくったって、心から愛している人に"私との未来"なんて言われたら、それだけでお腹の中は止めどなくキュンと締まってしまうというのに。冗談ではないことを示すかのように、トントンと子宮の奥へと繋がる入り口をノックするように彼の雄々しい滾りは何度も繰り返し私を穿った。

「横の鏡を見るが良い、。繋がったところがよく……見えるだろう?」
「ぁッ……!」

彼の手に顎を取られて、半ば強制的に鏡を見せられる。丁寧に曇り止めの薬剤が塗り付けられ一片の曇りもない明瞭で大きな鏡。突き出した私の下腹部に彼の怒張が根本まですっぽり咥え込まれて、付け根は私がはしたなく垂れ流したのであろう透明な粘液がてらてらと光を反射している。写り込んだ人物が自分たちとは思えないほどの官能的な光景が、そこにはありありと写し出されていた。

「ゃっ、恥ずか、しッ……!」
「実に可憐で愛らしい姿だ、。こうすると余計にッ……!」
「ぁ、あッ、動いちゃ、だ、めぇッ……!」

律動を再開した結合部から、ぬちゃぬちゃと淫らな水音が響く。浴室という特殊な環境によって何重にも反響させられたその淫音に耳も犯され、彼も私も否応なく興奮を高められていく。極限まで拡げられた粘膜が彼に負けじと激しく収縮して、膨れ上がった彼の怒張を絞り上げた。真っ白に染まってゆく思考。もはや本能が彼を求めて離そうとしない。

「ぅぅ、ぁ……イ、くっ……!」
「ッ……!」

ふたりが昇り詰めるのに、さして時間は必要なかった。限界を迎えた彼の滾りがぶるぶると震えながら、私の中にこれでもかと言うくらいの欲望を吐き出す。解き放たれた甘い熱は私の中を隅々までくまなく侵食し飲み込んでゆく。そうして私の中は今日もまた、彼のもたらす甘美なる悦びで満たされていくのだった。


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「身体を冷やしてはならぬ、しっかり肩まで浸かるのだ」
「ぅ、ぁ、はぃ……」

ふわふわとした意識のまま彼に抱えれられて、気付けば一緒にバスタブに浸かっていた。このバスタブ、元から大きいからこうしてふたりで入っても驚くほどゆったりできる。背中を預けて彼の上に乗るような形になっていたら、空いていた彼の逞しい腕が私の腰をギュッと抱き寄せた。

……こうしてお前を抱いていると、いつになく身体が温まる気がするな」
「ふふ、そうですか……?でも……私も同じです」

私を抱き締める彼の腕を更に抱えるように、私もまた腕を添える。溜めたお湯の温度はいつもと同じはずなのに、高温の蒸し風呂と水風呂を何往復もした時のような、身体の奥底まで熱がしっかり行き届いているような温かさを感じるのだ。きっとそれは――こうして彼と愛を確かめ合って、心もたっぷりの深い愛に満たされているからなのだろう。

「ならば今後は……湯浴みも共にするのが良いな?」
「良いのですか?でも……さすがにたくさん汗をかいた日は恥ずかしいです」
「ふっ、お前の汗の匂いなど気にならぬと言っただろう?どんなお前でも愛おしいものに変わりはない。香りや姿形など時間と共に容易く変化するものだ。この、今は靭やかに締まったお前の腹も」

私を抱き締めていた彼の両手に、おもむろに下腹部を撫でられる。その中ではまだ、彼が放った雄の本能がどろどろと私を塗り潰している最中だった。

「……数ヶ月の月日が経てば、大きく膨らんでいるかもしらぬだろう?」


---END---


Good!(お気に召されたら是非…!)

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