+ Meteor +

『千の夜さえ生ぬるい』のその後的なお話です。
実際のハマム(ハンマーム)は健全な公衆浴場ですのでこんなことできません(笑)

相変わらずレイズでのダオスのアラビアン衣装実装を記念して
イラストだけから妄想を膨らませた結果。何でも許せる方向けです。


**刻印は灼熱を帯びて**

「今ならこちらの貸し切り蒸し風呂付きのお部屋をご案内できますが、如何なさいますか?」

砂漠の長旅では連日の野宿続きで、疲れていないと言えば嘘になる。簡易な水浴びや衣類の交換は行っていたものの、それでも髪も服も砂にまみれてじゃりじゃりのパサパサだ。可能なら今すぐにでもひとっ風呂浴びて、心身をすっきりさせてしまいたかった。横を向けば、判断はお前に任せる、という表情で見つめられるし、この際私は一泊だけと我儘を聞いてもらうことにした。

「その部屋でお願いします」
「かしこまりました。それではこちらがお部屋の鍵になります。簡単にご説明ですが……」

受付嬢の案内によると今夜泊まる部屋は敷地の奥にあるようで、吹き抜けの中庭を望める想像以上に長い回廊を私たちはせっせと歩いていた。この地域の建物ではどこも噴水を備え美しく手入れの施された中庭が造られており、その場所が住民だけでなくご近所や来訪者との憩いの場にもなっていると聞く。私の生まれ育った地域でも、大きな都として栄えているアルヴァニスタでもこのような構造の住居は見たことがなく、旅を終えてもなお目に映る風景全てが私の目には新鮮で異国の風情を感じさせた。

「ごめんなさい、私の我儘を聞いていただいて」
「人間の身体は脆い。それに私も砂を浴びて少々心地が悪いからな。今夜くらい身体を休めるのも良かろう」

ようやく辿り着いた部屋の中は、この地域の至るところで香った濃厚な乳香の香りで満たされていた。とにかく今は一秒でも早く身を清めたかったが、部屋に入った途端パタパタとマントやストールを外し始めるダオスさんもそれは同じだったようだ。普段は完全防備かと思うほど肌の露出を控える彼が、これほどあっさりと召し物を脱いでしまう姿は初めて見たと思う。

「お風呂はダオスさんがお先に入ってくださいね」
「……そうか」

一瞬、返答に戸惑ったような間を感じたが気のせいだろう。さすがに見た目麗しい王様を差し置いて自分が一番風呂になんて入るわけにはいかない。

「女性はいろいろ準備もあるもので」

そう言ってしまえば、彼だって従うほかないだろう。私は綺麗に畳まれ部屋に置かれていたバスタオルと、身体を洗う硬布を持って脱衣所まで彼を連れて行く。故郷のエリュシオンでも、侍従たちにこんな風にお風呂に連れられていたのだろうかと思うと何だか可愛くて仕方がない。

「私のことは気にせずゆっくりなさってくださいね」
「……では、そうさせてもらうとしよう」
「何か困ったことがあれば呼んでくださいな」

蒼い瞳がちらと私の姿を捉えたが、何か考え事でもしているのかすぐにその視線は部屋のどこかへと飛んでいった。彼を無事浴室に送り届けた後は脱衣所の扉を閉めて、私もいそいそと準備に戻った。

「申し訳ありません。お渡ししたいものがあって」

突然のノックと共に、宿の女将さんが眉を下げた顔で現れたのはそれから数十分が経った頃だった。

「お風呂に入れていただく香花なんです。せっかくうちに泊まっていってくださるし、蒸し風呂に持ち込むと本当にいい香りになるものですから是非使っていただきたくて……」

手渡された編みかごにはぎっしりと詰まった香花。うっとりするような妖艶な麝香の香りを漂わせていたそれをありがたく受け取ったはいいものの、既に蒸し風呂には先客がいるし、かと言って自分ひとりで使うのも気が引ける。せっかくの香花なら、彼にも楽しんでほしい。……彼は興味ないかもしれないけれど。

モタモタしていたら彼が蒸し風呂からあがってしまう。けれど今身につけている砂まみれのローブで風呂場には行きたくない。とりあえず下着の上に、間に合わせの部屋着用薄手ワンピースを着て、私は急いで風呂場へ向かった。

「……ダオスさん、少し扉を開けてもいいですか?」

王様の入浴中だ。勝手に扉を開けるなど言語道断なのでまずはお伺いを立ててみるが、可否の返答より先にがちゃりと浴室側から扉が開かれるのは予想外だった。

「……何かあったか?

出てきた彼は腰にタオルを巻き、ちょうど蒸気で温まっていたところだったのか全身にはうっすらと水滴を纏わせている。既に洗髪は済ませているのか、普段は動くたびにふわふわと柔らかく揺れる金色の長髪は水を含んで束になり、耳の高さで結い上げられていた。そういえば、彼が髪を結っている姿を見たのも初めてだ。

「あの、これ、宿の女将さんから蒸し風呂で使う香花をいただいたんです。ダオスさんにも楽しんでいただきたくて……持ってきました」

水も滴るいい男、とはまさに彼のためにある言葉なのだろう。いつもの数十倍、いや数百倍の圧倒的な色香を前にして、私の心臓は初めて恋をした子どものように高鳴りを抑えられない。

「……どう使えば良いのだ?」
「浴室中央の……掛け湯槽に入れるんだそうです」

少し失礼しますね、と一声かけて王様使用中の浴室にお邪魔する。浴室を目いっぱい満たす熱い蒸気が、私の乾いた肌を潤すように包み込む。彼と目を合わせたらきっといつまでも見惚れてしまいそうだ。そんな失礼なことはできないので、なるべく目を合わせないように下を向いて一直線に掛け湯槽へ向かう。籠の中で咲く可憐な花たちを一気に注ぎ入れると、浴室の中にムード満点な大人の色艶溢れる香りがふわりと広がっていく。

「……お邪魔してごめんなさい。私はこれ、でッ」

浴室の外へ出ようとする私の身体が動きを止めたのは、籠を持つ手を掴まれたからだ。次の瞬間、湯浴みで熱くなったダオスさんの腕が私を後ろから抱き止めた。

「……、出ていくのか?」

妖艶な色気の中に、どこか淋しさを孕んだ声色。ぐいと身体が抱き締められる。

「……王子と侍従のよう、と言ったのはお前だったな?ならば命ずる。このまま私と湯浴みせよ」

捕まえたらこちらのものと言わんばかりに、先程の切なげな雰囲気を掻き消してダオスさんはぴしゃりと言い放つ。確かに旅の途中そんなことを口にした覚えはあるけれど、今それを引っ張り出すなんて、ずるい。

「……嫌か?」

命令と言っておきながら、あくまで私の気持ちを尊重してくれる優しさは如何にも彼らしい。正直に言えば、一緒に湯浴みしたい。けれど、こんな明るい場所で素の身体を晒すなんて恥ずかしすぎる。返答に考えあぐねていたら、ブルーの瞳が切なげにこちらを見ているのだから尚更悩ましい。

「嫌とかそんなのは無いですッ……そう言っていただけるのは嬉しいんです……でも、こんなに明るいところで肌を晒すのが、恥ずかしくて……」

この蒸し風呂――この地域ではハマムと呼ばれているらしい――は天井に採光用の天窓が設けられており、昼間は降り注ぐ日差しによって外と変わらないほど内部も明るく照らされているのだ。彼のように白く柔らかいキメ細やかな肌、息を飲むほど美しいプロポーションの持ち主なら遠慮なく脱げるだろうが、残念ながら私はそのどちらも持ち合わせてはいない。今まで肌を重ねる時も薄暗い場所を選んでいただけに、自分の身体が眩い陽光の下に晒されることで彼を落胆させてしまわないか、それが気掛かりだった。

「タオルを取ってきますから、少しだけ待って……」
「待たぬ。隠したところで今にこうなるのだ……意味無かろう?」

ダオスさんの長い指が、ワンピースの肩紐をすっと下ろす。支えを失った薄布が、足元にぱさりと落ちていく。そのまま指先が私の首筋から肩にかけてのラインをなぞる度、ゾクゾク走る甘い快感はさらなる大波の予感を含ませて、私の背中を小刻みに震わせる。力の抜けた手から、からん、と乾いた音を立てて編みかごが滑り落ちた。

「んっ……」

彼の手によって私の胸元を覆う黒布がぐいと上に押し退けると、露わになった胸の膨らみの柔らかさを確かめるようにその手で何度も揉みしだかれる。男性から見れば決して豊満とは言えない大きさだろうに、熱のこもった手のひらで愛情を注ぐように丹念に捏ねられるとそれだけで身体はうっとり蕩けてしまいそうになる。

「……これほど先端を尖らせて、欲しがりだな?」
「んぁっ!?」

もっともっとと快感を求めて、いつの間にかその身を硬くさせていた敏感な胸の頂をいじめるように、彼の指がきゅっと強く摘む。やわやわと揉まれる気持ち良さから一転して胸を駆け抜けるびりりとした刺激に、私の背中は簡単に仰け反ってしまう。少しの痛みさえ今の私には甘美な気持ちよさとなって、喉の奥から甘い喘ぎが漏れてしまうのを止められない。

「この布は邪魔だ。……こちらもな」

上に押し上げられ、既に役目を果たせなくなった胸当ての留め具をダオスさんが片手で難なく外すと、ワンピース同様その哀れな布地は石造りの床へと放られた。続いてその白い指が伸びるのは腰に留まった細紐。まるで贈り物にかけられたリボンを解くようにゆっくりと引かれればシュルシュルと音をあげて、私の下腹部を隠していた小さな黒いレース布ごと容易く取り去られてしまう。

「もっとよく私に見せよ……お前の全てを」

ぐるりと彼の腕に回されるまま、一糸纏わぬ姿が彼の眼前に晒される。私に拒否権は与えられていないようで、恥ずかしい部分を隠そうにも、細身だが程よい筋肉で引き締まった彼の腕で押さえつけられるとそれも叶わない。ちょうど天窓からの日光が私の身体だけを照らす角度で入り込んでいることまで、彼の計算通りだとしたら恐ろしい。明るい場所で、じっくりと時間をかけて舐めるように裸体を見られる羞恥。耳から頬から、身体の芯までもがかあっと熱を帯びていく。

「美しくて、愛らしい……」
「ぁんっ!」

尚も硬直をやめない胸の先端部分を、彼の赤い舌が甘味を頬張るようにちゅるりと音を立てて舐め上げる。彼の口の中は存外熱く、敏感になった山頂はその熱だけでも十分な気持ち良さを享受していたが、更に舌先でコロコロ転がされたかと思えば、次の瞬間には歯を立てて甘噛みされてもう堪らない。片方の胸は口で、もう片方の胸は手指で。同時に、かつ立て続けに与えられる快楽に溜息が止めどなく漏れて、身体の芯が何度も何度もきゅん、と締まる。

「……少し場所を変えるとしようか」

言われるがままダオスさんに背中と膝を抱きかかえられて、腰が降りたのは浴室の一角に備え付けられた施術台。そういえば、料金を支払えば専門の施術師による垢擦りや泡マッサージのサービスを受けられると受付嬢が言っていたことを今更ながら思い出す。私たちは単純に湯浴みと休息が目的だったから、その手の有料サービス案内はほとんど聞き流していたのだった。そんな施術台は大人ひとりがゆったり横になれるだけの広さがあり"そういうこと"をするにはうってつけだった。本来用途とは違う、しかもいかがわしい目的でこの台を使うことに若干の申し訳なさを感じつつも、先程の愛撫の余韻がしっかり残っているせいで私の身体は次なる快感を求めてじんじんと疼きを増していた。

「……、もっとお前が欲しい」

手首を掴まれ、施術台に優しく押し倒される。天窓からの光は浴室のあちこちを反射して、ダオスさんの引き締まった身体をも柔らかく照らしていた。決して筋肉質というわけではないが、体術使いらしい無駄な贅肉のない身体。肌は一目見ただけでも白く滑らかであるとわかる。どんなお手入れをしたらこんなに綺麗な身体になるのか、女性としても気になる程の美しさだ。

「ふふ、愛らしい顔も身体もよく見える……」

私を真上から見下ろす蒼い瞳はありありと色欲を滲ませて、私を真っ直ぐ捉えて片時も離そうとはしない。指先で耳朶から輪郭をゆっくりとなぞられ、顎先をくいと持ち上げられると、形のいい唇が熱を纏って私の口を塞ぐ。

「んんっ……んふぅ」

彼の熱い舌が私の唇を割って中に入ってくる。互いの舌先を何度も絡ませ合い、口の中でひとつになっては、また彼に口内をくまなく愛撫される。味わうように何度も角度を変えて侵入してくる舌を受け止めて今度は私からちゅう、と吸ってみると、お返しのように唇を甘噛みされてまたも私の中はきゅっと締まってしまった。

「……ここはもう待ち切れないようだな?」

濃厚なキスの最中に身体のラインを愛撫していた彼の腕が、私の太腿を持ち上げぐっと押し開く。有無を言わさず、隠すものを取り去られて剥き出しになっていた秘部が彼の眼前に容易く晒される。

「やっ……見ないでッ……」

ここまでの愛撫で、蕩けきった身体の内側からはしたないものがどくどくと溢れ出ているのは自分でも解っていた。それなのに、明るい光に照らされながらそんな欲しがりな秘部をまじまじと見られるのだ。恥辱感に身体が震えて……そしてそれさえも、今の私には甘美な快感に変わってしまう。

「これほど正直に私を欲しがって……褒美をくれてやろう」
「んッ!?あぁッ!!そこはだめぇ!!」

器用に蠢く生温かい彼の舌と口に、ちゅる、と敏感な実を吸い上げられる。電撃のような強烈な快感に背中を跳ね上がり、酸素を求めてぱくぱくと口が開く。そんな私の反応を見て味を占めたのか、続け様に二度三度と溶けてしまいそうな甘い責め苦に膝を閉じようとすれば、彼の腕は容赦なく太腿を押さえつけて、逃げることを許してはくれない。

「……ふふ、褒美は気に召したようだな?

息も絶え絶えな私を見て、彼は大層満足なようだ。しかし再び私の秘部に似つかわしくないその端正な顔を沈めると、くちゅくちゅと淫靡な音を立てて愛撫を再開する。双丘の中心をなぞるように舐め上げ、身体の芯へと続く道の入口にちゅっと舌先を挿れられると、もっと奥まで欲しくなってつい腰が浮いてしまう。焦らすような快感に、頭の中は一気に彼で支配されていく。

「んぁッ!もうだめッ!!」
「……余程ここが堪らないとみた。先程より膨らみも増している……」
「そんなッ……言わない、で……」

彼は本当に私の取り扱い方をよく心得ていると思う。恥ずかしい部分を暴かれる度に身体の芯からじゅくじゅくと欲望を溢れさせていることを知っているから、こうして煽るのだ。そして私はまんまと彼の手のひらの上で転がされ、こうして身も心も彼で塗り潰されていく。彼が居なくては私が生きられないように、私がずっと彼を求め続けるように。

「……そろそろ達したいだろう?」

先程の吸引で熱く充血した突起が、彼の舌で磨き擦るようにくりくりと弄ばれて、もう限界だと身体の奥が悲鳴をあげている。恥じらいなど捨ててこのまま彼に何もかもをさらけ出して、彼の注ぐ甘く官能的な快楽に身を委ねてしまいたい。もう一度、ちゅう、と一気に吸い尽くされ、背中は弓なりに大きく仰け反ってしまう。声にならない悲鳴と共に、一度目の絶頂が私を飲み込んだ。

「……愛おしいな」
「あんなにされたら……身体がどうにかなってしまいそうです……」

下腹部にはまだピリピリと心地良い絶頂の余韻が残っていた。荒ぶった呼吸と心拍を整える私の髪を、彼の長い指が愛でるように梳いている。

「愛する者に自分を刻みつけたいと思うのは自然な感情だろう?」
「確かに……そうかもしれませんね」

彼の言い分にも一理ある。ならば私だって、彼に自分を刻みつけることを許してくれるだろうか。

「私ばっかり、気持ち良くなっちゃだめです……」

今度は私が彼の腕を引っ張ると、意外にも素直に私の導くまま台の上に腰掛けてくれた。少し脚を開いてもらって、その股の間に自分の身体を入れる。施術台は椅子よりも高さがあるから、膝立ちするとちょうどいい高さに彼の腰がくる。彼の顔が何となく赤くなっているように見えるのは浴室の熱気のせいか、それともこれから起こることに期待してなのか。

「ダオスさんも、いっぱい気持ち良くなってくださいね……?」

口だけを使って探るように、彼の腰を覆うタオルをゆっくりと外す。その向こうには、うっとりするほど欲を溜め込み大きく膨張した男の証がそそり勃っていた。男性経験は数えるほどしかないけれど、それでもこんなに立派なモノを私は他に見たことがない。先端は透明な露でしっとりと濡れていて、乱れた私を見てこんなにも興奮してくれたのかと思うとますます愛おしくなる。たっぷりの唾液を絡ませて根本からぺろりと舐め上げると、ぴくりと震える可愛らしさも堪らない。

「ふふ……苦くてクセになりそうです……」

溢れた先走りを舌先でちろちろと丹念に舐め取っていると、太ももがぴくぴくと僅かに震えている。男性は女性と違って声を出すことをかなり恥ずかしがるけれど、彼の場合は特にその傾向が強いと思う。こういうときにも王様のプライドがあるのだろうか。身体の反応をよく観察していれば、感じていることなんて一目瞭然なのに。

歯を当てないように気を付けながら、舌と唇を使って今度は横から愛撫する。ぷくっと浮き出た血管の凹凸に合わせて舌先を這わせ、時に吸い付けば彼の背中も微かにしなっている。いっぱい気持ち良くなってほしいから、食む場所を変えながら何度も口で奉仕する。

「……顎が痛かろう?少し休憩してもよいのだぞ……」

いいえ、と首を横に振った私の髪の間を、彼の指が優しく梳かしてくれた。正直なところ多少の痛みはあるけれど、彼が気持ち良くなってくれるならそれくらい平気だった。それに、こうして奉仕されている間でも私を気遣ってくれる優しさが嬉しくて、ますます彼に快感を注ぎたくなる。

男性が口淫で一番快楽を感じるのは、怒張の先端とそのくびれ部分らしい。それはどうやら彼も例外ではないようで、口をすぼめてくびれ部分まで咥え込んだ後、じゅぽ、といやらしい音を立てて思い切り吸い上げると彼の口からくぐもった喘ぎが漏れた。頑張って堪らえようとして堪え切れていない姿が可愛くてもう一度吸い上げてみたら、腰まで震わせているのだから堪らない。根元まで咥えてみれば、むくむくとはち切れんばかりに膨らみが大きくなっていく。そろそろ限界のようだ。

「……出すときは教えてくださいね?」

彼が一気に駆け上がれるように、速度をつけて全体を口で吸い上げては咥え込む。見上げてみれば、いつもは凛々しい眼差しをたたえたアイスブルーの瞳は快楽に蕩けて潤み、額には透明な汗が浮かんでいる。誰もが恐れる魔王のこんな雄の姿を知っている者は、このアセリアにおいて私だけでいい。

「くッ……!」

口の中で灼熱の怒張が、ブルブルと震え上がる。実は今回、浴室という環境を利用していつかやってみたかったことを実行に移そうと考えていた。それは紳士諸君の密やかな憧れでもあるというから、彼の反応が今から楽しみだ。急いで口から抜いたそれを自分の顔に向け、ギュッと瞼を閉じる。刹那、顔の至るところに熱が散り、それはとろりと肌を伝っていった。

「……ッ!?」

案の定、自分の吐いた精が私の顔を白く彩っていることに気付いた彼は驚きのあまり目を見開いている。

「……んふ……苦くて……とっても濃い味……」

顔にかかった白濁を指に絡ませ、時間をかけて舌でねっとり舐め取って、そして飲み込んで見せる。その姿にも興奮してくれたのか、一度は力を放ち切った彼自身がまたぴくりと反応しているのが愛おしい。熱くて、しつこく舌にまとわりつくような苦味が口いっぱいに広がっていく。むせ返るような雄の味に頭がくらくらするけれど、これも彼の一部なのかと思うと、不思議と幸せな気持ちになる。

「ああ、もう……我慢できぬッ……」

彼の手が私の手首を掴み、待ち切れないと言わんばかりの強引さで私の身体は再び施術台に乗せられる。彼が普段見せる優雅で余裕綽々とした姿などどこへやら、瞳にはくっきりと色欲を浮かべて、まるで飢えた獣のように私を見下ろしていた。下腹部を再び這う彼の指が、焦らされすぎてすっかり濡れそぼった私の中にゆっくりと侵入してくる。彼の長い指は私の中を慣らしながら、奥にある気持ちいいところを的確に触れてくる。

「こんなに濡らして……お前は淫乱だな」
「ふふっ、そんなに勃ち上がらせて……お互い様でしょう?」

互いが互いを激しく求め合っている。私たちの間にこれ以上の確認なんて要らなかった。彼がどこからか取り出した小さな四角い袋の端を咥えて歯で噛み切ると、中から伸縮性のある薄い被せものが姿を現す。近頃アセリアで普及し出した新しい避妊具は薬と違って身体に負担がかからず、女性に優しいと評判だ。いつの間にかそれを装着し終えた彼の怒張が私のびしょ濡れの秘部にあてがわれる。

「……痛くないか?」
「大丈夫……とっても大きく、て……あっつ、い……」

狭く窮屈だろう肉壁を掻き分けて、彼がゆっくりと私の奥に入ってくる。お腹の中が膨らみでいっぱいになる苦しさ以上に、愛する人とひとつに繋がる悦びで身も心も満たされていく。

「……ここが好きだろう?」
「あぁッ、ぁんッ、そこ、だめぇ!」

私の弱点など彼にはとうに暴かれている。一旦根本まで飲み込ませた後、彼のくびれがちょうど気持ちいいところを刺激できるように腰を掴まれてトントンと位置を微調整されれば、蕩けそうな快感が立て続けに身体を駆け巡る。

「あ、あ、そんな、奥に、当たった、らッ」
「当たったら、何だッ?」

徐々に早さを増す律動が、ふたりの興奮の昂ぶりを示していた。猛烈な熱を纏った彼の肉槍が、子宮の入り口を何度も何度も貫いて、今にも串刺しにされてしまいそうだ。くちゅくちゅと淫靡な水音を響かせて、湿り気を帯びた皮膚と皮膚が淫らに擦れ合い、極上の快楽が私たちにもたらされている。今にも飛びそうな意識を必死で掴むように、彼の手を取り指と指を絡ませる。彼の指先も、火傷しそうなほどに熱かった。

「あぅ、もうだめッ……一緒にイく……」
ッ……!」

圧倒的な質量を伴って腹の奥を一突きにされ、頭の中が真っ白に染まっていく。灼熱の膨張も、私の中でぶるぶると小刻みに震えていた。

----------

肌に浮かぶ雫は蒸し風呂の蒸気か、それとも汗か。一連の前後運動を終え、身体は甘い疲労感に包まれていた。絶頂の余韻が抜け切れず、思うように動けない。そんな私を、ダオスさんが穏やかな笑みを浮かべて上から見下ろしている。すっかり呼吸も元通りに戻っていて、さすが体術使いとして鍛えられているだけはある。

「……そういえば、私、ダオスさんが髪を結ってるの初めて見ました」

普段は髪に隠れて見えない彼のうなじを、ようやく少し動かせるようになった指先で触れてみる。もう何度も身体を重ねてきた仲なのに、まだまだ彼には私の知らない部分がたくさんある。私だけが見ることのできる姿、もっともっと、見せてほしい。

「とてもお似合いですよ」
「そうか。……それなら」

ふいに身体を起こされて、彼の長い腕が私の濡れた髪を後ろで束ねた。

「……同じだな」
「……お揃い、ですね」

ふふ、と自然に笑みが溢れる。まるで子どものように笑い合って、仔馬の尻尾のようになった毛先が揃って楽しそうにゆらゆらと揺れた。せっかくお揃いになったのだ。それ、解かないでくださいね、とお願いのキスを彼の頬に落としてみる。

「……お前も、な」

愛しい人に自分を刻みつけたい、それは自然な感情だ。彼と同じシルエットを描く、耳の後ろに結われた髪に指を滑らせて、彼が口づけを落した。

「さ、あまり長湯してはのぼせてしまいます。あがったらお茶にしましょうね」


---END---


Good!(お気に召されたら是非…!)

Page Top

PCpዾyǗlgĂ܂}WŔ܂z 萔O~ył񂫁z Yahoo yV NTT-X Store

z[y[W ̃NWbgJ[h COiq ӂ邳Ɣ[ COsیI COze