アダムvsイヴ 真理遭遇編
>339氏

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イズミの元、修行を始めたエド。再三に渡るアルの冷やかしにもめげず、着々と実力を付けていった。
そして半年後。修行を終えたエドは、リゼンプールに戻り人体練成の研究に入った。

「・・・できた。後は実行するだけ・・・」
羊皮紙に描いた俺の最高傑作。
大人一人分の人体練成構築式・・・長かった。
なぜか、妨害しようとするアルに対抗して、隠れ家まで作って完成させたこの構築式。
構築に必要な元素も集めた。アルも軍部の仕事で夕方になるまで帰ってこない・・・
チャンスは今しか無い・・・
俺は、両手を構築式に添えた。・・・どきどきする。もうすぐ母さんに会える・・・もうすぐ・・・




「アル様、エドが例の隠れ家に行ったみたいです」
ウィンリィの連絡が入ったのは午前11時・・・予定では今日で準備が整うはずだ。
恐らく、僕が帰る前に片を着けようって腹なんだろうが・・・
まったく・・・
「僕の気も知らないで・・・兄さんの分からずや・・・」
「どうしました?少佐・・・?」
コンビを組むロス少尉が声を掛けて来た。・・・声に出てたか。うかつだ。
「なんでもない。目標は?」
「はい・・・3ブロック前を右折。旧鉱山跡に向かう様です」
「・・・情報は本当の様だね。後は僕がやる。少尉は帰っていいよ。邪魔だから・・・」
「はっ・・・御武運を・・・」
・・・さっさと終わらせなきゃ・・・
僕は任務・・・連続強盗殺人犯グループの検挙または壊滅のため、閉鎖して間も無い炭坑跡へ向かった・・・




「ここは・・・」
気絶していたらしい俺は、なぜかなにもない空間に居た。
なにもない真っ白な空間。自分が漂っている錯角を覚える。不思議なところ・・・
頭がクラクラする・・・なにがあったんだっけ・・・あっ!!
「リバウンド・・・失敗したんだっけか・・・」
練成の失敗。何かが足りなかった・・・身体を分解されて・・・俺は・・・
・・・光に取り込まれた・・・くそっ!!俺じゃダメなのか!!

『よお、身の程知らずの馬鹿野郎・・・』

頭に響くような声・・・
「誰だ!!」
『こっちだ。』
声のする方向を見るするとそこには・・・

俺の良く知っている「アルフォンス」の姿があった。




任務終了後。返り血を拭う暇も無く、僕はリヴァプールへ急ぐ。
練成で強化したオートバイに乗りながら、腕時計で時間を確認。
まだ、正午・・・急げば30分で着く・・・
お守り代わりに持たせた懐中時計はちゃんと持っていてくれただろうか・・・
アレさえあれば、もしかしたら無事で居てくれるかも知れない・・・
ガォォォォオォオォォオォーーーーーーーーーーーン!!!
明らかに尋常じゃ無いうなり声を発するオートバイ。時速も結構出ているんだろう・・・
市街地を抜けると、あとは田園地帯だ・・・そこからは更に強化して時間を稼ぐ!!
オートバイは使い物になら無くなるだろうけど・・・兄さんの為ならしょうがないか・・・
「・・・反省文だけじゃ足りないかな・・・」
僕はもはや原形を止めて無い、官給品のオートバイに乗りながらそう思った。




アルフォンス?なぜ・・・っていうか、子供の姿?
「誰だ?アルフォンスなのか?」
それを聞いたアルフォンス?が、ニヤッと笑う。
『はっ!!お前、あの女の知り合いか!!なんともあの女とは縁があるようだな・・・』
甲高い声で叫ぶ様に笑うアルフォンスの姿をしたあいつ。頭が痛い。
「アルフォンスじゃ無いのか?・・・なんだ、お前は・・・」
『聞きたいか?くくく・・・教えてやろう・・・』
あいつがニヤついた顔でこちらを見る。・・・はっきり言って不快だ・・・
『俺は真理。あるいは世界。あるいは宇宙。あるいは神。あるいは全。あるいは一。』
すっと俺を指差す。
『そしてお前でもある』
バキンッ!!!!
背後で、でかい金属音がした。見ると馬鹿デカい悪趣味な扉。中からは・・・

黒い靄に眼球がめり込んでいる様な、理解不能な生命?体!!!

「ひっ・・・うわぁぁああぁぁぁぁああーーーーーーー!!!」
『うるさいな。お前が求めたものだろう?あの女は自分から入っていったぞ・・・』
全身を引きずり込む様に絡まる黒い触手。全身を冷や汗で濡らした俺は、ただ叫ぶ事しか出来なかった。




ズドン!!
隠れ家に着き、降りた途端に爆発したオートバイ。
モクモクと黒煙を上げ炎上しているが、それどころでは無い。
僕は兄さんの隠れ家・・・田園の一角にある廃屋の地下室に向かった。
蜘蛛の巣だらけの天井に比べ、床にはホコリの海を横切る様に歩いた跡が残っている。
恐らく、地下室へ向かっているんだろう・・・
(詰めが甘いね。兄さん)
大人ぶりながらも、抜けてるところがある兄さん。
こんな放っとけないところがまた良いんだよね〜〜。
「って、そんな事言ってる場合じゃ無いね・・・」
足跡を辿って、地下室へ急ぐ。間に合って、兄さん・・・




「・・・」
なんだ、この感覚。頭に全てが流れ込み、身体を粉々にされて・・・そして・・・
「母さん・・・」
母さんが居た。すぐそこに・・・
『どうだった?』
「・・・変な感覚だ・・・頭が痛い・・・でも、分った。これが師匠の言っていた真理。
 すべてを定義するもの・・・これがあれば!!」
母さんが蘇る!!!俺の構築式が完成する!!
「おい!!もう一度見せてくれ!!お願いだ!!!」
その声に答える様に、真理が立ち上がる。
『だめだね。これだけの通行料じゃ、ここまでだ』
嘲るような声。ニヤついたアルフォンスの顔が、俺をまた不快にさせる。
「通行料?」
『ああ・・・等価交換だろ?錬金術師・・・』
顔を近付け、ニヤリと歪んだ笑顔を見せる・・・その時、身体が歪み始めた・・・




『はっ!!今日は珍しいな。客がこんなにやってくるとは・・・久し振りだ』
幼い自分の姿で僕を見るあいつ。足下には身体半分を分解されつつある兄さんが居た。
よかった。まだ、術式は完了していなかった様だ・・・
「ここに対価を用意した。等価交換だ。兄さんの身体を返してもらおう」
あいつと会話をする暇は無い。さっさと用件を済ませて、兄さんをここから出さないと・・・
懐より赤い石を取り出す。錬金術師の能力を飛躍的に伸ばす、代価の肩代わりをする能力を持つ石。
『ほう・・・賢者の石か・・・でも、出来損ないのようだな・・・』
「・・・それでも、半身の代わりぐらいにはなるだろう。さっさと元に戻せ・・・」
ニヤつくあいつに、僕は苛つきを抑えられない。僕ってあんな顔ができたんだな・・・
顎に手を当てながら、あいつは兄さんの左半身を撫でる。
『くっくっくっ・・・残念だったな。これだけの対価では身体は頭と体幹のみしか戻らない。
 お前の兄貴の右足と右腕は貰ったぜ・・・』
「!!!」
『じゃあな、久し振りに会えて楽しかったぜ。兄弟』
そういうと、あいつは消えていった・・・懐かしい白い部屋も、徐々に消えていく。
僕は全身に油汗をかきながら、大きく溜め息を着いた。
まあ、命だけは助かったみたいだ・・・はあ。疲れた。
まったく、世話の焼ける兄さんだ・・・




痛い!!痛い!!!足と腕が痛い!!!!
焼ける様な腕と足の痛み。とっさに左手で探るが・・・
「ない?なんで???」
「真理の奴に持っていかれたんだよ。兄さん」
な?アルフォンス?なんでここに。
「まったく・・・あれ程、兄さんには荷が思いって言ったのに・・・」
腰のポシェットから、麻酔薬なのか注射器を取り出し、切断部分に薬を注射する。
しだいに痛みが引いて来た。頭が徐々に動いてくる・・・
「お前が助けてくれたのか?」
「そうだよ・・・感謝してよ。官給品のバイク大破させて飛んで来たんだから・・・」
帰ったら減給ものだよ・・・と、アルはぶつぶつ言っていた。
そうか、またアルに助けられちまったか・・・情けない。

あの強烈な存在感の真理。俺が考えていた以上の代物だった。
世界を制する対価。人体練成を成功させるにはこれが必要か・・・
探し出せるんだろうか・・・俺に・・・

でも、あの真理の姿は・・・
「アル。聞きたい事がある」
アルは顔をこっちにむけ、やわらかく微笑む。
「真理の姿の事だね。そうだよ。あれは僕の身体だよ」
ガーゼと包帯で患部の止血をしながら答える。
「僕も真理に辿り着いたんだよ。そして身体を持ってかれた。
 まあ、練成できてた母さんの器に入り込んだおかげで死にはしなかったけどね」
保険として、エスケープ先を構築式に組んどいて良かったよ。と笑いながら言った。
・・・そんな事笑って言えるところがつくづく・・・って
「か、母さんは!?俺が練成した・・・!!!」
「失敗だよ。兄さん。人ですら無い肉塊だった」
くっ・・・やっぱり・・・だめだったか・・・
「人体構造の構築が甘かったね。あれじゃあ、人間の肉はできても人の形を成さない。
 修行が足りなかったね。兄さん」
「・・・」
「でも、ホント無事で良かった・・・もうやめてよ?
 僕だっているんだから、一人で危険な事は・・・」
「すまねえ。反省してるよ」
ホント、今回は堪えた・・・俺には知識も技術も、なにもかもが足りない。
俺はまだ、アルフォンスには届かない・・・それを痛感した。

・・・麻酔の所為か、とても眠い。
「アル。すこし寝る。悪戯スンナよ」
「ええ〜〜!!ケチ〜〜〜〜!!!」
俺を励まそうとしているのか、おどけた雰囲気で返すアル。
返答として微笑みを返し、俺は眼を閉じた・・・


→エルリック兄妹物語 ロイ子遭遇編







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