無人島一本勝負「アダムVSイヴ」その1
>339氏
母を蘇らせるべく、諸般の事情で一人イズミの元、弟子入りテストを受けるエド。
過酷ながらも無人島での生活に慣れて来た18日目、異変は起こった。
「うっし!!でかい魚ゲット!!」
お手製の銛で川魚を捕る事に慣れて来たのか、最近は見つけた魚を逃す事も少なくなった。
この島でも有数のフィッシュポイントの滝つぼで、朝飯をゲットするのが最近の俺の日課だ。
早速、ゲットした魚を串に刺し焼き始める。
「さてと・・・ぼちぼち奴が来る頃なんだが・・・」
仮面の男。これまでの無人島生活でさんざん煮え湯を飲まされた相手だ。
猟場を奪い合い、飯を奪い合い、寝床を奪い合う。
この島での生活は、奴との闘争の生活でもあった。
ここ最近では、簡単に負ける事は無くなった。なんだかんだで俺もケンカのコツが分ってきたからかな。
「・・・魚も焼けて来たし、さっさと移動するK
ズドン!!ガンッ!!!ギャウン!!!!
「な!!なんだ!!」
突然響いた、爆発音。鈍い音。男の悲鳴。俺はとっさに音の発生元に走った。
「な!!なんだ!!」
突然響いた、爆発音。鈍い音。男の悲鳴。俺はとっさに音の発生元に走った。
そこにあったのは・・・
全身黒焦げで、後頭部にたんこぶを大量に作った、仮面の男らしき残骸(生きてます)。
足下には
「私の兄さんに(妙に強調)災いなすものへ天誅を」
と地面に練成陣と一緒に書かれたメッセージが・・・
俺は悟った。そして・・・
「い、いやーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっっ!!!!」
辛くても、気楽でそれなりに楽しかった無人島生活が、奴の襲来で終わった事を悟った・・・
島での生活で身に付けたのか、妙に早く立ち直った俺は、黒焦げの男を介抱するべく水辺へ引きずっていく事にした。
どうでもいいが、重いなこいつ。運べる俺も俺だが・・・それだけ鍛えられたって事かな。
水辺につくと取りあえず、こいつの顔に水をぶっかける。
「フオッ!!」
「・・・気が付いたか?」
仮面の男はきょとんとして俺の顔を見ている。
なんつーか、こんな目にあっても仮面を外さないのはある意味偉いと感心する。(結構頑丈だなこいつ・・・)
「ココハ一体・・・ソウダ!!女ノ子ガ!!!」
「・・・やっぱり・・・きてんのか・・・」
もしかしたらが、確信に変わる。・・・ああ、力が抜ける。
「!!知ッテイルノカ!!ッ痛!!」
「大人しくしなよ。頭しこたま殴られてるし、全身黒焦げだから。これでも食って寝てな」
せっかくの川魚だったが、これからの事で飯がのどを通らないんじゃ仕方がない・・・
「・・・スマナイ。」
謝るのは俺の方だな。たぶん・・・ていうか、絶対。俺の所為でのトバッチリだろうし・・・
それを岩山の上から眺める一人の少女・・・
「ふふふ、見つけたよ兄さん。僕に黙って、錬金術習いに行くなんて酷いじゃないか・・・」
口元に浮かべる笑みが、艶やかなれど禍々しい。
「お仕置きだよ・・・取って置きのね・・・」
そう言って地面に手を置くと、身体が地面に吸い込まれる様に消えていった・・・
それを岩山の上から眺める一人の少女・・・
「ふふふ、見つけたよ兄さん。僕に黙って、錬金術習いに行くなんて酷いじゃないか・・・」
口元に浮かべる笑みが、艶やかなれど禍々しい。
「お仕置きだよ・・・取って置きのね・・・」
そう言って地面に手を置くと、身体が地面に吸い込まれる様に消えていった・・・
「おおう!!寒気が・・・」
嫌な予感を感じさせる禍々しい悪寒をびんびんに感じながら、俺は森の中を疾走していた。
彼奴のセンサーは異常な程敏感だ。俺はかくれんぼで彼奴に勝った事がない。
つーか、何一つ勝った事がない。身長も彼奴の方が上だ・・・
錬金術でも負けた。彼奴は独自の理論で母さんの復活への道を見つけてしまった。
俺は、そんな情けない現状を覆すべく、錬金術の修行に出た訳だが・・・
(と言うのは言い訳で、本当は妹の凄まじい求愛(というには生易しい程の偏愛)にほとほと疲れ果て、挙げ句の果てに片思い?だった幼馴染みの女の子にまで妹に手込めにされた為、家を飛び出した。その際に途方にくれ、思いつきで錬金術の修行と言う事で体裁をとろうと・・・
う・・・ホントの事言わなくてもいいじゃないか・・・
でも、酷いと思わないか?いくら俺が好きだからって、実の兄貴だぞ?
毎日一緒に風呂に入ろうとしたり、学校でも隣の席を無理矢理略奪しようとするし。
登下校中もベタベタくっ付いてくるし、牛乳だって口移しで無理矢理のませようと・・・
ゴスッ
「おう!!」
ぶつぶつ言ってたせいで、木にぶつかっちまった・・・
ゴスッ
「おう!!」
ぶつぶつ言ってたせいで、木にぶつかっちまった・・・
「クスクス・・・兄さん・・・大丈夫?」
その時だった。全身が粟立つあの通った声・・・
「ひ、アアアアアア、、、アウアウフオッ・・・」
「・・・久し振りだね。寂しかったよ・・・」
「アルフォンス・・・」
そこにはなぜか軍服に身を包んだ、俺の妹。アルフォンスがいた。
・・・正直、泣きたいと思った。
なんと言うか・・・
「・・・アルフォンス・・・だよな?」
「ふふふ、そうだよ。兄さん」
・・・その割りには、ヤケにデカい身長(160代後半)。でかい胸。出っ張った腰・・・
世間で言うナイスバディになっている・・・って、おれより年下なのに?
「人体練成研究の副産物なんだけど・・・どうかな、兄さん・・・」
「いや、まあ・・・いいんじゃないか?・・・よくわかんねえけど」
「ホント!!うれしい!!!」
ぎゅう
「ぐえっ!!!」
があ!!苦しッ!!!こいつの馬鹿力で絞められたら、ろっ骨逝っちまう!!!
「おじづげ〜〜〜〜ギブギブ!!」タップタップパンパン
「フ〜ン・・・兄さんの匂い・・・久し振り・・・」
「あうううう、取りあえず放してくれ〜〜〜」
「・・・だめだよ兄さん。これはお仕置きなんだから・・・」ムニュグリグリ
「ぶっ!!い、息がっ・・・ちっそく・・・」
恍惚とした顔で、俺をおもちゃにするアル。
・・・だから、逢いたくなかったんだ・・・
「とにかく、落ち着いてくれアル!!一体なんのようなんだ!!!」
「何の用だはないでしょ。突然いなくなって・・・探したんだよ・・・」
「うっ!!」
「探すのに、どれだけ頑張ったか知らないでしょ・・・軍の支援を受ける為に国花錬金術師にまでなって、やっと探したのに・・・酷いよ」
軍服はそう言う意味か・・・。アルに苦労掛けちまったな。
アルの潤んだ視線が突き刺さる。・・・心配掛けた事には変わりないか・・・
「・・・すまねえ・・・アル・・・」
って、
「軍って、10歳で仕官できんのか?」
「・・・てへっ♪」
「・・・騙ったなアルフォンス・・・」
「だって〜、兄さんに結構上手く巻かれて〜、私一人の力じゃ到底捜せないし〜、なんか、軍のスカウトの人も勝手に勘違いしてくれたから〜、せっかくだから利用しちゃえって感じで〜」
おいおい・・・
「それに、すこしでも早く逢いたかったんだもん・・・兄さんの馬鹿・・・」
うっ・・・その眼は・・・そんな潤んだ眼で兄貴を見るな・・・
にじり寄るな・・・抱き着くな・・・顔を寄せるな〜〜〜〜!!!
「んっ」
口付け・・・俺のファーストキスが・・・
「兄さん・・・二人きりだね・・・」
・・・あ・・・やばい・・・
ここで、俺は気付いた。逃げ場がない。ここは無人島。まわりは海。
アルの過激な愛情から、かろうじて逃げて来たおかげで逃げる事では誰にも負けない俺だが、今回ばかりはやばい。
・・・どうする・・・このままでは俺の貞操はもちろん、アルの貞操まで汚しちまう・・・
「あ〜、アル・・・せっかくだが・・・」
「いわないで!!」
・・・いかん。条件反射で黙ってしまった。
「兄さんが言いたい事はわかってる・・・でも、これだけは言わせて・・・」
「兄さん大好き・・・骨まで愛してる・・・」
「・・・なんだよ。骨って・・・」
「「・・・」」
「あれ?漫画だと、ここで『アルフォンス!!俺もだ!!内臓まで愛してる』って、熱い包容が・・・」
「何の漫画読んでんだよ!!ああ!!やっぱ嫌だ!!!うわ〜〜〜〜〜ん!!!!」
「ああ!!兄さん!!!待ってェ〜〜〜〜!!!!」
あれからどれぐらいたっただろう・・・
残り12日間。アルとの地獄の追いかけっこが始まった。
朝の一件で仲良くなった仮面の男メイスンと共同戦線を張り、再三に渡るアルの錬金術トラップ、略奪、夜這いに対抗し、師匠が島に迎えに来る頃には無人島はクレーターだらけになり、いつの間にかアルフォンスもいなくなっていた。
「やっと30日だな・・・」
メイスンはとっくに仮面を外している。なんでも、肉屋の店員らしい・・・
なんてマッチョな肉屋店員。いろんな意味で肉好きだな師匠・・・
「これで終わりとなると、寂しいもんだな・・・」
「うん・・・」
・・・あれ程の修羅場をくぐり抜けたんだ・・・きっとテストは合格さ・・・
水平線の向こうから、一隻のボートがやってくる・・・
これで俺のテストも終了だ。苦しくも楽しかった無人島生活もこれで終わり・・・
・・・グスッ・・・無事でよかった・・・本当に・・・
「おっきたぞ・・・って」
メイスンが顔を引きつらせる・・・なんだ・・・
「お〜〜〜い、エドワードさ〜〜〜ん♪」
軍服姿でオールを振り回している女性が見える・・・
「ま、ましゃか・・・」
「エド、お客さんだ・・・軍から国家錬金術師のアルフォンスさんがお前を訪ねてk
『イヤァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!』
ザポ〜〜〜〜ン!!シュババババババッババババアアアァァァァァァッァァァ!!!!!
俺は泳いだ・・・それはもうシャチの様に・・・
「・・・なんだ?どう言う事だ?」
妙に冷静なイズミの疑問に、メイスンは苦りきった笑いを見せるだけだった。
→真理遭遇編