『 さくらんぼ 』      4p


「さっ・・・・幸子・・・・な・・なんでここに居るんだ・・・」


俺がアパートに戻ってきたら、あいつがアパートの入り口に立っていて血の気が引いた

バイトから帰ってきた夜11時
いったいいつからここに居たんだ?
いや、それよりどうやってここを調べたんだ?
俺は絶対連れて来た事なんてなかったのに・・・・

聞いてみたかったが、恐怖で口が上手い具合に動かなかった
真っ青な顔をして、髪の毛が乱れた幸子は、幽霊のように気持ち悪かった

「ター君・・・・なんで、連絡くれないの?怒ってるの?」


やめろ・・・近寄るな・・・マジきもいぜ・・・・


俺の心臓が高鳴る
やばい。この状況は大変面倒臭い事になる。やばい。やばい。
なんとか逃げなければ・・・・

俺は咄嗟によくある嘘をついた

「携帯水に落としてダメにしちゃってさ、バックアップとかしてなくてさ、メモリー全部消えちゃったんだよ。
 だから連絡とれなくてさ困っていたんだ・・・・」

「そ・・、そうなの。怒ってるとかじゃないの?」

「あぁ、怒ってないよ。また連絡するからさ、番号教えてよ。今覚えるから」

「いつ?いつ連絡してくれるの?」

「あ・・・明日するよ。今夜はもう遅いし・・・俺も疲れたから・・・もう休みたいんだけど・・・」

「そっ、そうね。ごめんね。ター君疲れてるわよね。じゃぁ番号言うね。明日連絡頂戴ね」

「おう、明日な」

幸子は090で始まる数字を言った
しかし、その数字を覚える気の無い俺は聞き流していた
連絡なんて本気でとるつもりは無い
とりあえず、この状況から逃げたかっただけだ

無理矢理幸子を追い返し、幸子が完全に見えなくなるまで俺は彼女を見送った
いや、本当は見送りなんかじゃないんだ
部屋の場所を確認されるのが嫌だったんだ

幸子が消えるのを待って逃げるように部屋に戻った
部屋に入った俺は熊みたいにウロウロ動き回ってあせった
何か対策を考えないと!
そうだ・・・・彼女が出来たって事にすればいいか!!
シンジに頼んであいつの彼女を借りるか!そうだな、そうしよう。
それで、幸子には俺から手を引いてもらおう


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