『 さくらんぼ 』 3p
「そういや、お前、あのおばさんとどうなったの?」
悪友のシンジが俺に聞いた
「あぁ、別れたよ」
「なんだよーいい金づるだったじゃん。あ、もしかしてフラレタ?」
「なわけねーだろ。俺がふったの。確かにいい金づるだったけどマジ入ってきてキモイんだよ」
「んだよ。そんなの適当にあしらとっきゃいいのによー。結構金持ってそうなマダムだったんだろ?」
「あぁ、そう見えたけどな。でもな、本当は普通ーのおばさんじゃねーのかなぁ?って思うんだよ
本当に金持ちマダムならもっと自分を磨いていてもいいのにさ
なんか微妙〜に、所帯臭いんだよな。持ってるブランドバッグも形が古いしさ、服だってそんな高級に見えないしさ、爪も短いし・・・。
なんか嘘臭かったんだよ」
「じゃあ、若い男の子に好かれたくって無理してるおばさんってわけ・・か」
「だろ。出会い系に電話してくる主婦なんて皆そんなもんだろ」
「そーかもなー。あーでも惜しいな。俺にくれればよかったのに〜」
「出会い系でも覗いて見れば?いるかもよ」
「かもねー。でも、やっぱ俺オバンはダメだわ。萎えるわ。お前みたいな才能ねーわ」
「ぷっ!才能って何だよそれ?!」
「才能だよ!おばん相手にSEX出来るのって才能よ!」
「わははは!そうか才能か!ははははは!!」
そうやってシンジと笑っていたのが、幸子と連絡を切った3日後だった
この翌日、幸子がやってくるとは思いもよらなかった
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“ 笑顔咲ク 君と抱き合ってたい
もし遠い未来を 予想するものなら
愛し合う2人 いつの時も
隣どおし あなたとわたし さくらんぼ ”
ター君が好きだった『さくらんぼ』の曲
CDラジカセにセットして、何度も聞いた
最近の若い子の曲はむずかしいけど、カラオケで歌ったらター君は喜んでくれるかな?って思って
何度も、何度も聞いて練習をした
ちょっと難しい部分もあるけど、でも一応歌えるようになったんだよ
ター君、私の『さくらんぼ』聞いて欲しかったのに・・・・
もう、会えないの?嫌いになったの?
あなたの隣に私は居られないの?
また1人ぼっちで、レトルトのカレーを食べていたら玄関が開いた
夫が帰って来た
いつもより、かなり早い帰宅にびっくりした
「おかえり・・・何?今日なんでこんな早いの?」
「・・・ちょっと話がある」
心臓がドクッっと大きく鳴った
「家賃2ヶ月未納だって不動産屋から連絡があったんぞ。いったいどういう事だ?」
ドクッドクッドクッ
心臓が大きく早く動いてるのがわかる
な・・・何よその事か・・・てっきりター君との事かと思っちゃった
滞納ねぇ・・・・そんなの知ってるわよ・・・だって家賃分ター君につぎ込んでるんだもん
私も未納の連絡受けてたわよ・・・・でも、無いものしょうがないもん・・・
来月払えばいいんでしょ・・・て電話切って・・・・結局翌月も払えなくって・・・
もうすぐ今月の支払日だけど・・・今月分ももう無いんだもん・・・
その内なんとかしようって思っていたのに・・・・
私じゃダメだから、不動産屋ったら夫の会社にまで連絡したのね。ちくしょう!!
そう言いたかったけど、そんな事はとても言えない
いくら愛情の無い夫でも、出会い系で不倫してるを知られるのはマズイ
だって、もし離婚になったら私が分が悪いじゃない
慰謝料でも請求されたら冗談じゃないわ。そんなお金無いもの
「ごめん・・・ちょっと実家にお金貸したの・・・。今月に返してくれる予定だから何とかなるとから・・」
「娘に借金する程何につかったんだ?幸子の実家の事なんだからな、そっちで解決してくれよ。
いいか、絶対今月返してもらって返済しろよ!会社に2度とあんな電話かかってこないようにしろ!
誰か聞いてたらどうするんだ?俺の信用がた落ちだろ!」
普段、無口な夫が口を開いたと思ったらこんなセリフだ
ハラワタが煮えくりかえる程、ムカツイタが黙って夫の罵声をやり過ごした
その後、夫は延々と私を責めたてた
「ついでだから言っとくけどな・・・」の「ついで」を何度も繰り返した
久しぶりにしゃべった「ついで」なのか?
もう、夫とか支払いだとかどうだっていい
それより、私はター君に会いたいの
“ 愛し合う2人 いつの時も
隣どおし あなたとわたし さくらんぼ ”
私の頭の中で『さくらんぼ』が何度もリフレインしていた
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