『 さくらんぼ 』 2p
今夜は冷たい態度をとったから多分明日には連絡を入れてくるだろう
ここ3ヶ月の間でわかった幸子の行動パターンだ
翌日には携帯に連絡を入れてきて
「ごめんね。昨日は何か怒らせちゃったのかな?ごめんね」と、ひたすら謝る
幸子のそういう所がウザくてたまらない
けど、俺は
「いいよ。もう怒ってないよ」と、少しだけ優しく言う
すると幸子は安心して「よかった。じゃ今度○○買ってあげるね」と俺のご機嫌をとるんだ
俺は物が狙いで幸子に優しくする
その代償として、幸子の性欲を満たしてやるんだ
綺麗だとか、素敵だとか、心にも無い嘘を言ってね
本当は幸子は全然綺麗じゃないし、素敵でもない
よくある中年の小太りの体型で、若い子と違っていて太っていても皮膚にしまりが無い
だらぁっと垂れるブヨブヨ肉の下腹
張りの無い垂れた乳
乾燥して指先が吸い付かない乾いた肌
俺の真下で、よがる顔の目元はたくさんの小じわが目立つ
そんな幸子だ
いくら俺が多少の熟女好みであるとはいっても、本気で付き合うならもう少しマシな熟女を選ぶ
幸子はあくまでも金づるだ
少しも気持ちなんて入ってない
もう少し色々貢いで欲しかったけど、適当に欲しい物は買ってもらったし、この辺で終わりにしよう
俺もロレックスだとか車だとか、そういうホスト並の高級な物は買ってもらってないから
こうして、バッサリと関係を断ち切っても何も良心がとがめる事は無い
幸子が俺に入り込みすぎて面倒な事になる前に終わらせるのが一番だ
「じゃあな幸子。次に夢中になれる若い男捜せよ」
俺はそう言って携帯の電源を切った
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『お客様がおかけになった番号は・・・・・・・』
ター君と連絡がとれない
今日ずっと電話してるのに、全然繋がらない
わざと?それとも偶然?
わからない。こんな事初めてだ
「ちょっと!休憩いつまでもしてないで早くレジ入ってね!」
うるさい主任が休憩室の向こうから怒鳴っていった
まったく、ちょっと5分オーバーしたからって怒鳴らなくてもいいじゃない
そんなんだから、お前は皆に嫌われてるんだよ
眉間のシワなんだよあれ?醜くって仕方ないね
あんたなんて、もう何年も男の肌を見てないんだろ?
私なんて、若い男の子と色々やってるのよ。ふん、あんたなんかと違うんだから
主任に言われてしぶしぶ腰をあげたけど、最後にもう一度だけター君の番号を押して見る
『おかけになった番号は・・・・・』
あぁ、まただ・・・・
私は携帯を制服のポケットに収めてレジに向かった
「菓子98円。牛乳198円・・・・・」
商品のバーコードを機械に向けて私は値段を声に出す
精算を終えて、目の前から客がいなくなってふっと思った
もしかして!私が働いている所の姿を見られたのかも?!
そうだ、そうに違いない
それで、私が嘘言ってるのがばれちゃって怒ってるんだわ
所帯じみたおばさんに見られたくなくって、働いてないって言ったし
昼間は、習い事をしてるって言ったし・・・・あぁ・・・そうよ、きっとそうだ。見られたんだ
だったら、その事を素直に謝ったら許してくれるかしら?
ああ、でもター君に「そんな所帯じみたおばさんとは嫌いだ」とか言われたらどうしよう
そうだよね。私ってばいい恰好したくって色々とおごったりとかプレゼントしてたんだもん
そのせいで、家賃の支払いとか、光熱費の支払いとか・・・色々出来なくなっちゃりしてるなんて・・
そんな恰好悪い私が本当の姿だなんて、今更言えないわ!!
あぁ、でも、どうしよう
きっと怒ってるんだわ
どうしよう?どうやって償えばいいのかしら?
「・・・・っさん!!何してるの?!お客さん待ってらっしゃるのよ!」
また、あの主任に怒鳴られて、はっと我に返った
目の前にあからさまに不機嫌そうな顔をした客がいた
「すいません。いらっしゃいませ。」
私は、レジ台の上のカゴを手前に引き寄せてまた商品のバーコードを機械に向けた
「豆腐98円。食パン178円・・・・」
私の目の前の客は、見たところ40代後半か50代前半
あてたままなんの手入れもしてないパーマヘア
所々見れる白髪
雑に塗ったファンデーションに、やたら細い眉に赤い唇
シミの浮き出た手
私は違う。こんなそこら辺のおばさんと一緒にしてほしくない
だって、私には若い恋人がいるのよ
彼は私を愛してくれてる。私を誉めてくれる
私は違う。こんな客みたいなおばさんなんかじゃない
「ありがとうございます。合計で2583円になります」
私は買物カゴにスーパーの袋を入れて客の前に差し出した
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