大江戸愛絵巻図(続編) +桃ノ花ビラ+ p7

 「あぁ、おぬしのこの厚い唇・・・ひさしぶりだ・・・あぁ、かわいくて仕方が無い」

 「私も・・・私も杉田様の唇にずっと触れたかったのでございます・・あぁ・・・」

 食いつくように、二人、唇を重ね合わせ
 お互いの舌を、絡まるくらいに絡みつかせた
 
 そして、唇が離れた後、代官は首筋へ舌を這わせた

 蛇のように舌を尖らせて、越後屋を味見するようにゆっくりゆっくり舌を這わせた

 「あ・・・あぁ・・・杉田さ・・・・ま・・・ダメです・・・・人が来たら・・・」

 その声を無視するように、代官は舌を下へ下へと這わせた
 やがて、その舌は襟元まで這い
 代官は、両手で越後屋の胸襟をつかむと、思い切り左右へひっぱった
 
 ほの暗い灯りの中に、越後屋の女性のような少し脹らんだ胸があらわれた
 代官は、その胸を揉みあげるように両手で掴み
 乳首に吸い付いた

 「あっ・・・はぁっ・・・はぁっ・・・いけません・・・こんな所でっ・・・ああっ・・・」

 越後屋の荒い息遣いが、橋の下から聞こえてくる
 人が近くを通っている雰囲気は無いが、いつ橋を利用する人間が現れるかわからない
 よもや、この橋の下で男と男が絡み合っているとは思いも寄らないだろう

 代官は、この状況を楽しむかのように、一向に止める気配は無かった
 余裕の代官とは対照的に、越後屋の心中は穏やかではなかった
 
 もし、誰かに見つかったら!
 男と交わってる事が見つかったら!
 商売をして顔を知られてる自分には致命傷だ
 今後の商売の行く末にも関わってくるんじゃないだろうか・・・

 越後屋は、再度お願いをした

 「ダメです・・・誰かに見つかったらどうするんですか・・・外では嫌です・・・・」

 自分の胸元で、赤ん坊のように乳首を吸う男を抱きながら
 越後屋は静かに優しく声をかけた

 そして、その赤ん坊は顔を見上げてこう言った

 「止めろだと・・?誰に向かってそう言ってるんだ?」

 顔を上げた代官の目付きは、するどかった
 冷酷で、冷たい、なんの感情も無いような男の目付きだった
 先ほどの、熱い告白が嘘のような冷淡な顔つきになっていた







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