男はB4に乗り込んだ
本皮のシートに体を沈めると優しくキーを差込みエンジンをかけた
水平対抗エンジンの心地よい振動が男の下半身に響く
「・・アッ・・」
一瞬男は小さく声を出してしまった
なんだか妙な感触がしたのだった
それは、性的な衝動といってもいい
な・・・なんだ・・俺・・・
自分でもよくわからない奇妙な体験に男の鼓動が早くなった
いつもなら、乗り込むと同時にギアをロウに入れる男なのだが
今日はいつまでたっても入れない
不思議に思ったB4が声をかけた
「ご主人様・・?どうされたのですか?お体の具合でも悪いのですか?」
B4に声をかけられてハッと我に戻る男
「いや・・・なんでも無い。ごめんね。さぁ!行こうか!」
男は何事もなかったかのように、ミッションのギアをロウに入れた
そしてようやく走り始めた
今日のドライブは山林コースを走るつもりだ
薄く色づき始めた山々を見つつ、紅葉ドライブと洒落こもうか!
男はB4に語りかけながらアクセルを踏んだ
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山間の紅葉は思ったより進んでなかった
「今年は暑かったからなぁ〜。紅葉はもう少し後の方だろうな」
それでも男はB4とドライブに出かける事が嬉しく、紅葉なんてどうだっていい。という感じだった
「そうですね、紅葉したらまた来ましょう。お供しますよ」
B4も明るく答える
「ふ・・・お前だけだな・・ずっと俺についていてくれるのは・・・」
男はハンドルをぐっと握ると、深いカーブにを大きく左にきった
「そういえば・・・ほら、この間乗せた女性は誰ですか?
今時のお嬢さんて感じで・・・ミニスカートがとてもかわいらしかったですね」
B4の言うのは2週間程前、夜に助手席に乗せた女性の事だった
男の助手席に女性はめったに乗らない
というか、乗ったのを見た事がない
時々、男の友人である男性が乗るくらいでほとんど男以外を乗せた事がない車なのである
「あぁ、あの女ね・・・」男は遠くを見つめる目で言葉を続けた
「あれね、出会い系で知り合った子なんだよ。お前出会い系って知ってる?
他人と知り合いになりた人間が登録する場所なのよ?
で、気があえば遊びにいったりするのよ。あの時の女はそういう風にして出会った女なの」
男は今流れてるCDの曲を飛ばして、次の曲に変えた
次の曲は「ラブマシーン」そうモー娘が好きな男だった
「それで、今その子とはどうなんですか?」
B4は、あまり聞かないご主人様の恋話を聞きたくって仕方なかった
男は今年で34歳、もう年齢的に結婚してもいい歳なのだ
あまり恋人の影が見えない男なので、B4なりに日々心配しているのだった
それで、2週間前に乗った女性の事が気になって仕方ないのだ
しかし、この何気ない問いかけがこれから起こる禁断の密の味に繋がるとは・・
B4も男も知るよしもなかった
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