Love Letter  07




「菜々ー」

「なぁに、里佳ちゃん?」

 近くにできたカフェで、ケーキセットを頼んでから私は菜々に話しかけた。


「明日、一緒に帰れない」


 そう言うと、菜々はくりっとした瞳を私に向けた。

「どうして?」

 小学校の時からほとんど毎日登下校をともにしている私達は、何かあって一緒に行動できない時はその理由もはっきり話すのが習慣だった。
 だから私は事情を話した。

「ふーん。初デートだね」

「デートじゃないものっ!」

「いや、デートでしょ? 少なくとも白石くんはデートと言う位置付けで考えてると思うよ」

 菜々はいやに冷静だ。


「それにしても、果歩ちゃんだけじゃなくて他にもお姉さんがいるのね。白石くんってソフトなイメージ強いのはそのせいかしら?」

「さぁ?」

「もう、里佳ちゃん。つれない・・・。好きなんじゃないの?」

 菜々はじっと私を見つめた。

「だから言ってるじゃないーわからないって」

 菜々が何か言おうとした時、ケーキと紅茶が運ばれてきた。

「おいしそうっ!」



 しばらくは目の前のケーキに夢中になった私達だった。





 次の日、私達は地元に近い駅前のショッピングモールで、お姉さんへの誕生日プレゼントを選んだ。

「どんな方なの?」

「大学3年生、そろそろ就活しなきゃって感じになってきた。果歩に似ているかもしれない」

「まぁ・・・姉妹だからね。可愛い感じ? カッコいい感じ?」


 夕真くんは天を仰いで、考え込んだ。


「可愛い感じではないと思う」

「そっか。予算は?」

「上限は3000円かな」

「うーん」




 私達はショッピングモールの一角にある雑貨屋さんに来ていた。


 シンプルでスタイリッシュな小物が沢山あって、選ぶのに困る。


 でもここなら、どんな人にでも合いそうなものがあるような気がする。


 私もたまにふらりと立ち寄っては、雑貨を買って帰ったりする。



「置き時計とかは? あ、これとか」

 ¥2,650と書かれた置き時計。

 それから同じメーカーのもので、¥1,500と書かれた写真立てもあった。


 何か自分がほしくなってしまう。




「・・・これ、知歩持ってる」


 しばらく考え込んだ後、夕真くんは口を開いた。

「え? どれ?」

「この、写真立て」

 そう言いながら、夕真くんはグリーンとイエローを基調にした写真立てを指差した。

「じゃあお揃いで買おうかな。予算内だし」

 夕真くんは決断が早いらしい。あっと言う間に決めて、時計をレジに持って行った。



  プレゼント用に包装してもらっている間、とりとめのない話をした。

「でも、お姉さんもここに立ち寄ることあるのかな? 私、たまに来るんだけど」

「えっと・・・『Harb' Drop』か。今度知歩に聞いてみるよ」

 そう言った時、白石くんがふっと目を細めた。

「うわー噂をすれば」

「え?」

「知歩がいる」

 私は慌てて、白石くんの視線を追った。



 そこで商品を見ていたのは、確かに果歩ちゃんにそっくりな女の人だった。



 果歩ちゃんが所謂パステルカラーと言われるような、柔らかなピンクとかオレンジのイメージなら、その人はパステルブルーのイメージだった。



 纏う雰囲気は柔らか。それから、パステルブルーの爽やかなイメージ。


「知歩に気付かれないで店出られるといいんだけど・・・」

「それは・・・辛いと思うよ。夕真くん目立ってるもの・・・背も高いし、こう言う雑貨屋さんに男の人がいるのって結構珍しいし」



 ひそひそと声を潜める夕真くんにつられて、私も小声になる。



「何不穏な雰囲気漂わせちゃってるのかなー?」


 突然後ろから声をかけられて、私達は文字通り飛び上がった。


「知歩!」

「やほー。こんな所で何してんのかなー夕真」


 あはは、と豪快に笑うと、知歩さんは私に目を止めた。


「はじめましてー。夕真の姉の白石知歩です。いつも夕真が迷惑かけてすみません」

「あ、葉山里佳です。私こそ、白石くんには色々お世話になってます」


 私もぺこりと頭を下げる。



「可愛いー。こんな妹ほしかったわー。ところで夕真、デート?」



 知歩さんは結構はっきりものを言うらしい。


「知歩には関係ないだろ」


 白石くんはぐいぐいと知歩さんを追いやろうとする。


「お姉さまに向かって態度が随分ねぇ」

「彼女が困ってるだろ!」



 知歩さんは私を見て微笑んだ。


「夕真と同じ学校よね? 果歩を知ってるのかしら?」


「あ・・・はい。いつもお世話になってます」



 知歩さんは大きく頷いて、私に微笑みかけた。


「今度夕真がいない時に、家に遊びに来てね。じゃあ邪魔者は消えるわねー」

 ひらひらと手を振りながら、知歩さんはお店を出て行った。

 何だか、嵐のようだった。





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