Love Letter  05




「ええっ・・・!?」



 私の顔も、白石くんに負けず劣らず赤かったに違いない。



「白石くんが、私のこと・・・? 冗談でしょ」


  白石くんが冗談を言っているようにも見えなかったけど、私はそう聞かずにはいられなかった。


「冗談なわけないだろ」

「だって・・・」



 口ごもる私を、白石くんは面白そうに見る。




 形勢はあっという間に逆転した。

 恋愛事にはかなり疎い私が、彼に勝とうとすること自体が間違っているような気がする。



「だって私全然女の子らしくないし・・・」

「そう? そんなことないと思うけど?」

「・・・性格悪いし」

「素直で優しいと思うけどなぁ? この2,3ヶ月ずーっと見てきたから、知ってるよ、俺」





  困って口ごもると、白石くんは苦笑した。


「そんなに、断りたい?」

「そんな訳・・・」




  声を上げかけて、私は彼と目を合わせてしまった。







 白石くんは、真剣な顔をしていた。






 私も、本当の気持ちを話さなくちゃ。


 そう思わせるような、真剣な表情。







「でもまだよく、わからないから」

「何が?」

「白石くんは、いい人だと思うけど。2回も助けてくれたしね。でも、好きなのかは、よくわからない」


  私が言葉を選びながらゆっくり言うと、白石くんは苦笑した。


「まぁ・・・この前初めて話したばかりだしね」


  それから、彼は何やら思案した。



「じゃあ、好きにさせてやる!」

「はぁ?」



  顔を上げると、今度は白石くんは面白そうに笑っていた。


「いつか『好きです』って言わせてやる」


 冗談っぽく言っていたけど、多分本気。


「じゃあまずはお友達からどうですか?」


  クスクスと笑いながら、白石くんは言った。



「それなら。でも教えてくれる? どうして、私?」





 白石くんは笑って、話してくれた。

「前から知ってたんだよ。言ったけど葉山さん有名だしね。好きになるきっかけは・・・3ヶ月くらい前に保健室で会った時。覚えてない?」


「うーん。保健室にいる時の私って大体ふらふらだから。周りの人のこと気にする余裕ないんだよね」

  私は苦笑を返した。


「その時かなあ。何か気になるって思ったのは」



  穏やかな口調だった。





  よくわからないけど(結局どうして私なのか教えてくれなかったし)、私が彼に好意を持っていることは事実だ。




  私達は携帯の番号とアドレスを交換して、私は夕真くんに家まで送ってもらった。

「今日は、ごめんなさい。学校サボらせて」

「さっきも言ったでしょ? 答え合わせなんていつでもできるって」

「そうだけど」



  何と言っていいのかわからなくて、私は黙って彼を見上げた。


「そんな顔されると、キスしたくなる」


  一瞬白石くんの目が細められた。




「そんな顔って・・・普通の顔だもんっ・・・!」


 白石くんは面白そうに笑った。

 絶対、からかわれている。



「・・・里佳ちゃんって、呼んでいい?」

「え? いいけど・・・」



  そう言って彼を見上げると、身長が私よりかなり高いことを、改めて知った。


「白石くんって、背何cm?」

「背? 184cmくらいかな? どうして?」

「普段あまり見上げるってことがないから」

「確かに背、高いもんなー里佳ちゃん」




  少し頬を染めて、名前を呼ばれると、恥ずかしい。






 
そんな私に気付いたのだろう、彼は楽しそうに私を見た。


「里佳ちゃんも、名前で呼んで?」


  それは何かすごく照れる。




「ゆ・・・夕真くん・・・」




「あーやっぱキスしたい。里佳ちゃん、可愛すぎ」




 白石くん改め夕真くんは、楽しそうに言う。


  それから、その言葉に反射的に身構えた私を見て、苦笑する。


「今はしないよ? ファーストキスはいずれいただくけど、今はやめとく。まだ『お友達』だしね」




  その言葉に、私も苦笑を返した。






  だってよくわからないんだもの。


  今まで誰かを好きになったことはない。


  気になる人がいなかったわけではないけど、それは憧れなのか恋愛感情が伴うのか、よくわからない。


  好きって、何?







「ここでいいよ」


 家まで後少しと言う路地で、私はそう言った。


「家まで送るよ」

「ここでいいの。家まで言ったらお兄ちゃんとかお母さんにつかまるから」



 特に、お兄ちゃんに何か言われそうで、あまり家の前まで来てほしくなかった。





  そんな私の気持ちを敏感に察したのだろうか、夕真くんはわかった、と言ってくれた。



「じゃあまた、学校でね」

  バイバイ、と手を振って、別れた。





  何か・・・怒涛の1日だった・・・。



 白石くん・・・夕真くんに突然告白されたり・・・。


 実は結構家が近いこともわかった。



 模試の成績が返って来たら、きっと怒られるんだろうなぁ。




  そんなことを考えながら、私は家に帰った。






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