「ええっ・・・!?」
私の顔も、白石くんに負けず劣らず赤かったに違いない。
「白石くんが、私のこと・・・? 冗談でしょ」
白石くんが冗談を言っているようにも見えなかったけど、私はそう聞かずにはいられなかった。
「冗談なわけないだろ」
「だって・・・」
口ごもる私を、白石くんは面白そうに見る。
形勢はあっという間に逆転した。
恋愛事にはかなり疎い私が、彼に勝とうとすること自体が間違っているような気がする。
「だって私全然女の子らしくないし・・・」
「そう? そんなことないと思うけど?」
「・・・性格悪いし」
「素直で優しいと思うけどなぁ? この2,3ヶ月ずーっと見てきたから、知ってるよ、俺」
困って口ごもると、白石くんは苦笑した。
「そんなに、断りたい?」
「そんな訳・・・」
声を上げかけて、私は彼と目を合わせてしまった。
白石くんは、真剣な顔をしていた。
私も、本当の気持ちを話さなくちゃ。
そう思わせるような、真剣な表情。
「でもまだよく、わからないから」
「何が?」
「白石くんは、いい人だと思うけど。2回も助けてくれたしね。でも、好きなのかは、よくわからない」
私が言葉を選びながらゆっくり言うと、白石くんは苦笑した。
「まぁ・・・この前初めて話したばかりだしね」
それから、彼は何やら思案した。
「じゃあ、好きにさせてやる!」
「はぁ?」
顔を上げると、今度は白石くんは面白そうに笑っていた。
「いつか『好きです』って言わせてやる」
冗談っぽく言っていたけど、多分本気。
「じゃあまずはお友達からどうですか?」
クスクスと笑いながら、白石くんは言った。
「それなら。でも教えてくれる? どうして、私?」
白石くんは笑って、話してくれた。
「前から知ってたんだよ。言ったけど葉山さん有名だしね。好きになるきっかけは・・・3ヶ月くらい前に保健室で会った時。覚えてない?」
「うーん。保健室にいる時の私って大体ふらふらだから。周りの人のこと気にする余裕ないんだよね」
私は苦笑を返した。
「その時かなあ。何か気になるって思ったのは」
穏やかな口調だった。
よくわからないけど(結局どうして私なのか教えてくれなかったし)、私が彼に好意を持っていることは事実だ。
私達は携帯の番号とアドレスを交換して、私は夕真くんに家まで送ってもらった。
「今日は、ごめんなさい。学校サボらせて」
「さっきも言ったでしょ? 答え合わせなんていつでもできるって」
「そうだけど」
何と言っていいのかわからなくて、私は黙って彼を見上げた。
「そんな顔されると、キスしたくなる」
一瞬白石くんの目が細められた。
「そんな顔って・・・普通の顔だもんっ・・・!」
白石くんは面白そうに笑った。
絶対、からかわれている。
「・・・里佳ちゃんって、呼んでいい?」
「え? いいけど・・・」
そう言って彼を見上げると、身長が私よりかなり高いことを、改めて知った。
「白石くんって、背何cm?」
「背? 184cmくらいかな? どうして?」
「普段あまり見上げるってことがないから」
「確かに背、高いもんなー里佳ちゃん」
少し頬を染めて、名前を呼ばれると、恥ずかしい。
そんな私に気付いたのだろう、彼は楽しそうに私を見た。
「里佳ちゃんも、名前で呼んで?」
それは何かすごく照れる。
「ゆ・・・夕真くん・・・」
「あーやっぱキスしたい。里佳ちゃん、可愛すぎ」
白石くん改め夕真くんは、楽しそうに言う。
それから、その言葉に反射的に身構えた私を見て、苦笑する。
「今はしないよ? ファーストキスはいずれいただくけど、今はやめとく。まだ『お友達』だしね」
その言葉に、私も苦笑を返した。
だってよくわからないんだもの。
今まで誰かを好きになったことはない。
気になる人がいなかったわけではないけど、それは憧れなのか恋愛感情が伴うのか、よくわからない。
好きって、何?
「ここでいいよ」
家まで後少しと言う路地で、私はそう言った。
「家まで送るよ」
「ここでいいの。家まで言ったらお兄ちゃんとかお母さんにつかまるから」
特に、お兄ちゃんに何か言われそうで、あまり家の前まで来てほしくなかった。
そんな私の気持ちを敏感に察したのだろうか、夕真くんはわかった、と言ってくれた。
「じゃあまた、学校でね」
バイバイ、と手を振って、別れた。
何か・・・怒涛の1日だった・・・。
白石くん・・・夕真くんに突然告白されたり・・・。
実は結構家が近いこともわかった。
模試の成績が返って来たら、きっと怒られるんだろうなぁ。
そんなことを考えながら、私は家に帰った。
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