小さな子供が兄にされるように手を引かれながら、私は白石くんに連れて行かれた。
いつの間にか、私は模試会場から少し離れた公園にいた。
「はい。これ飲んで、少し落ち着いて」
そう言われて渡されたのはココアだった。
白石くんがココアを飲むとも思えなかったので、私はありがたくココアをいただくことにした。
「学校、戻りなよ」
多分もう学校では今日の模試の答え合わせが始まっているはずだ。
「別に答え合わせなんていつでもできるし」
彼は、私との間に微妙な距離を開けて座った。
「俺は自分の気持ちに正直に動くって、決めたから」
そう言い切った白石くんはすごく清々しい顔をしていた。
「・・・どう言う意味?」
私の問いに、白石くんは曖昧に微笑むだけだった。
「ズルい。いつでも余裕しゃくしゃくです、って顔して」
私が声を荒げても、彼は笑みを絶やさない。
「学校帰って。私のことはほっといて」
「だったら、そんな危うい表情をするな」
「え・・・?」
彼の手が伸ばされて、私の頬に触れた。
大きくて、温かい手だった。
「昨日、何時間寝た? まぶた腫れてる」
答える声が、少し震えた。
「関係・・・ないじゃない」
「関係ある」
「・・・どうして?」
白石くんは驚いたように目を見張り、それから少しだけ頬を染めて、私から視線をそらした。
「好きな子の様子が変なのに、無視して自分のこと優先するなんて、俺にはできない」
ぶっきらぼうな言い方だったからなのか、あまりにも想像しようがなかった言葉を言われたからなのか、彼が言ったことを理解するのに、少し時間がかかった。