屋敷の居間には大きな暖炉があった。 ツナには使い方が分からなかったので、獄寺が来るまでは、使われていなかったそれは、今、赤々と炎をあげ、部屋を温めている。 居間の中央に置かれたソファに座りながらツナは揺れる炎を見つめていた。 向かいのソファに獄寺が座る。 「まだお休みにならないんですか?」 時計はとうに零時を回っていた。 「獄寺君…」 「はい、何ですか、沢田さん」 ツナは炎から獄寺に視線を移し、一旦目を伏せ、少し迷いながら口を開いた。 「えっと…あのさ、獄寺君は、今、母さん達がどうしてるか知ってるんだよね?」 「…はい」 「母さん達は俺が此処に居る事…知らないよね、やっぱり」 「…はい。あなたが此処にいらっしゃるのを知ってるのは俺とリボーンさんだけです」 「そーだよね、隠れてるんだもんね」 「沢田さん」 「うん、分かってる、分かってるよ!でも…」 ツナは俯いた。 「手紙だけでも、出しちゃダメかな…母さんにだけでも…、元気だって事だけ」 「沢田さん…」 ツナは顔を上げて獄寺の顔を見た。 獄寺は、眉間にしわを寄せ、見ている方が辛くなりそうな苦しげな顔をしていた。 「獄寺く…?」 「沢田さん」 その声は苦渋に満ちていた。 灰色の髪が炎に照らされて、オレンジに染まっている。しかし髪が頬に落とす影は昏い。 ツナは夕焼けを連想した。不吉な予感がする。 「待って!獄寺君!」 獄寺が口を開こうとしたのを遮って叫ぶ。 「言いたくないのなら…」 「いいえ…、いいえ、聞いてください、10代目」 「獄寺君…」 「10代目がこちらに連れてこられた日に、10代目はボンゴレの自家用機でイタリア本部に向かったことになってます。」 「うん」 「その途中、飛行機が爆破されました」 「………え」 「海上で消息を絶ち……10代目の行方は不明、です」 「…………」 「そう、伝えられています」 ツナはポカンと口を開けたまま、喋ることも動くことも出来なかった。 力が抜けて、ずるずると体がソファをすべり落ちていく。 ツナはそのまま床にぺたりと座り込んだ。 「10代目!沢田さん!」 「俺…」 目の前の獄寺が、厚いガラスの向こうにいるように感じた。 「俺は、もう、死んでるのか…」 「沢田さん!すいません!すいません!でも…こうするしか…!」 獄寺の声を遠くに聞きながら、ツナは呆然とすることしか出来なかった。 |