della Tempesta




「ん…」
「そのまま、腰、降ろしてください」
「ああ…」
ずぶずぶと柔らかな肉の中に熱いものが埋め込まれる。
壁をこするヌルっとした感覚に、甘い痺れがツナの全身に広がっていく。
「あああ…あ……ああ…はあ……」か細く恍惚の声をあげながら、ゆっくりと全てを飲み込んで、ツナは深く息を吐いた。
「あ…ぜんぶ、はいったよ…」
「お上手です、10代目」
「あっ!」
ツナの腰に添えられていた獄寺の手が、腰から尾てい骨、双丘へとゆっくり這わされる。
ワンピースの裾に隠れて、繋がった部分は見えないが、手を動かせば布がかすかに動いて、
その中を想像させて、逆に獄寺を煽った。
しっとりと汗ばんで手に馴染む肌の感触を撫でて味わいながら、獄寺は自分の上で荒い息を吐くツナを見上げた。
紅潮した頬、しどけなく開いた唇、琥珀色の瞳は快楽に溶けて、
しかし少し不安そうな光が混じっていて、どこかあどけなくも見えた。
「ごくでらくん…」
舌ったらずに呼ばれて、獄寺の腰骨がぞくぞくと震える。
乱暴に動きたくなるのを堪えて、ツナの腰を掴むと、ゆっくり揺らした。
「ああん!」
「動いてください、10代目」
「んん…」
うっすらと涙の滲んだ瞳が、獄寺を見る。
獄寺がにっこりと微笑むと、ツナは恥かしそうに俯いた。
獄寺の胸に手を置いて、ゆっくりとツナが動き始める。
「あ…んっ…んっ…」
「沢田さん…」
「はあ、あ、あ、獄寺く…」
繋がった場所から、じゅぷ、じゅぷと卑猥な音がたつ。
「あ…ふ、は、はっ……」
段々と腰の動きが速くなってきた頃、ツナの体がびくっと震えた。
「あっ!ああ……」
体を支えていたツナの腕がぷるぷると震えて、力が抜けたようにへなへなと崩れた。
そのまま獄寺の上にぺたりと覆いかぶさる。
「10代目」
「…もうダメ……力はいんない…」
ひくひくとツナの中が痙攣しているのを感じる。
「ゴメン…気持ち…よ、よすぎて…」
恥かしそうな申し訳なさそうな声に、獄寺の自制は吹き飛んだ。
腰をぐっと掴むと、強く突き上げる。
「あっ!ああ!!あんっ!」
「いいんですよ、10代目…!」
「あああっ!あああーっ!」
「もっと、よくなってくださいっ……!」
えぐる様に擦りあげて、かき混ぜる。
「ひあっ!あううう!あああっ!獄……!ああああっ!」
中の痙攣は激しくなって、獄寺に絡みつき締め付けるように蠢く。
「ああっ!き、きもち…いいよう……ごくれらく…ぅん…あふあっ…」
「10代目……!」
獄寺はツナの背に手を回し、強く抱きしめると、喘ぐ唇を口づけて塞いだ。
「ん…む…っ…」
舌を絡ませ、互いの咥内を弄りながら、絡み合った体を反転させる。
衝撃に、入り口がきゅっと収縮して、獄寺を強く抱きしめた。
「う…」
「ああ…」
限界が近いのを感じて、獄寺はツナの脚を大きく広げた。
ギリギリまで引き抜いて、奥深くまで、楔を穿つ。
「ああああああーーーっ!」
ツナの体が仰け反って、がくがくと震えた。
「10代目っ!」
「ああー!ああああああーーーっ!!」
一番感じる部分を責め立てて、荒々しく追い上げれば、汗を振り乱して身悶える。
あられもないツナの媚態に獄寺の動きも、激しくなっていく。
「ーーーーーーーーーーーーーーっ!」
声にならない声をあげて、ツナの体が弛緩した。
「じゅ、だい、め………!」
獄寺も達して、ひくつく中に、全て放った。



「…よく考えたら、なんでこんなとこで…」
心地よい気だるさが残る体を、ぴったりと獄寺に寄せて寝っころがっていたツナがポツリと呟いた。
段々、冷静さを取り戻してきた頭で考えるに
「ちょっと歩けば、部屋の中じゃん…」
庭のど真ん中で、何をやってるのか。
しかも近くに茂みも木も何も無い。人が来たら丸見えだ。
いや絶対来ないって解ってるからしたんだけど。並盛の沢田家の庭とかだったら、絶対しなかったけど。

「だって10代目が、俺を押し倒して迫ってこられたので、俺としては拒む訳には…!」
「へ、変な事言うな!べ、別に、そういうつもりじゃ…!き、君だって台所とかお風呂場とか…!」
「だって、エプロン姿の10代目も、泡まみれの10代目も魅力的だから仕方ありません!」
「そーゆー事言ってんじゃなーい!」
以前から、獄寺のツナへの賞賛は、ストレート過ぎるというか、変に全力投球で
恋人同士になってからも、調子は変わらないが、内容は当然変わってくるので、
時々、あけすけ過ぎてツナは困る。
無闇に照れる時もあるくせに!
「まあ、いいじゃないですか」
真っ赤になってあわあわするツナを、獄寺は抱き寄せて、額に口づけた。
「こーゆーのも、開放的で。ほら、星が見えますよー10代目ー」
「うー」
もごもごと口もりながら、獄寺の指差す方を見た。そこにあったのは満天の星空だ。

「うわあ…」
ここがどこかはツナには未だに知らされていないが、人里離れた山奥には間違いない。
都会では見れない美しい星々に、ツナは感嘆の声をあげた。

「あの明るい星が琴座のベガで、その右下のあれが鷲座のアルタイル。
そっから左にいって、白鳥座のデネブ、がいわゆる夏の大三角形ですね」
「ベガ…って織姫だっけ?」
「そうッス!アルタイルが彦星です。だからあの間の辺りの、淡い光の帯が天の川です」
「へー天の川って初めて見た」
「街中じゃ見れませんからね」
「七夕祭りとかは、どこでもやってるのにね」

そう言って、ツナは以前の七夕大会のことを思い出した。

「ふふ」
「どうしました?」
「ん、中学の時のさ、七夕大会の事、思い出して。獄寺君と一緒にかくし芸やったっけ」
「そうでしたね、10代目の着流し姿は凛々しくも色っぽかったです!」
「そ、そんなんだったけ!?」
「チラチラ見える白い太腿が眩しくて、ナイフを投げる手元が狂いそうで…」
「もう二度とやんないよ!」
「じゅ、じゅーだいめー」
「次、機会があったら、もっと平和で安全なのにしようよ…。けど、あんなに苦労したのにさ!変な賞品でさ!」
「あ、あの寝袋、持っきてますよ」
「ええええ!?」
「畳むと、すっげー小さくなるんです。携帯に便利ですよ」
「そ、そうなんだ…」
「俺の宝物です。貴方と一緒に勝ち取ったものですから」
「獄寺君…」

誇らしげに言う獄寺に、ツナの胸がきゅっと痺れた。
それは獄寺を愛しく思うときめきであったが、それだけではない痛みが混じっていた。

「ごめんね…」
「え?」
「君の夢を叶えられなくて、ごめん」
「10代目…」

“10代目の右腕になりたい”とずっと願っていた獄寺隼人。
彼の願いを叶えたいと、いつしか思うようになっていた。

「叶えてあげる、なんて思うの、ずーずーしいけど」
「10代目」
「でも、ごめん……」

そう言って、ツナは獄寺の肩に額を押し当てた。
「君は俺のために、いっぱい、してくれてるのに、俺は君に何もしてあげられない…」
「沢田さん…」

獄寺はそっとツナを抱きしめた。
慈しむように髪を撫でると、柔らかく肩を掴んで、身を起こした。
二人、座って向かい合うような格好になる。
獄寺はツナの両手を取ると、しっかりと握りしめた。


「10代目、沢田さん、沢田綱吉さん」
「獄寺君…」

「俺は貴方に、たくさんのものを頂いてます。貴方に出会うまで、俺は自分の命にだって、意味を持てなかった。
貴方が俺に与えてくれたんです、俺の生きる理由を、俺という人間の意味を。
貴方が教えてくれたんです、世界はこんなに美しいって。
貴方がいれば、全てが輝いて見えるんです」

「獄寺君…」

「貴方が俺にくださったのは、世界の全てです」

うっすらと潤んだ琥珀色の大きな瞳を、翡翠の瞳が見つめた。

壮大な告白にツナは絶句した。
「君って…、君って……」

「あのですね、沢田さん」
「うん…」
「俺の夢は、別に、右腕になることじゃあないです」
「え…」
「右腕になりたかったのは、沢田さんが10代目だからであって…、えーとつまり」
獄寺は一端言葉を区切って続けた。

「俺の夢は、俺が心から信頼して素晴らしいと思う人の傍で、その人からも信頼されて生きることです」

真摯な表情で獄寺は告げた。

「だから、叶いました」


ふっと獄寺は柔らかく微笑んだ。
握った手を持ち上げて、口付ける。

「叶えて、くださいますよね?」


「かなえるよ!!」

叫ぶように宣言して、ツナは獄寺の手を握り返した。
握りしめた手を引いて、自分の心臓に強く押し当てる。
「絶対離さない」
「沢田さん」

獄寺の唇がツナの目元に降りて、溢れだした涙をぬぐった。
「愛してます」
「獄寺くん…」
「愛してます…」
「うん、うん、俺も君を愛してるよ……」





暫くして、ツナの涙が止まった頃、獄寺はふと思い出したように尋ねた。

「そういえば、沢田さんの願い事は何だったんです?」
「へ?」
「13の俺は気付けませんでしたけど…ボンゴレのボスになりたいって、貴方が願うはずないって、今なら分かります」
「獄寺君…」
「何だったんですか?」

さて、何だっけ?と記憶を探って、ツナは青くなった。
あの時、短冊に書いた願いは、当時憧れていたクラスメイトと結婚したい、というある意味無邪気なものだった。
しかし、残念ながら、その名は獄寺隼人ではない。

だって、あの時、獄寺君、やっとちょっと怖くなくなって、友達っぽくなったかなーってくらいの時だったし!
今好きなのは獄寺君だし!……って言ってもダメだよな…

適当な願いを言えばいいのだろうが、そこまで考えが回らないで、ツナは焦った。

違うよ、俺、別に気が多いわけじゃないよ!人生色々あったんだよ!
いやそうじゃなくて、好きな人はいつでもその時は1人だけだよー!えーとえーと、あ、そうだ!!

「す、好きな人と結婚できますように…って」

よし、嘘はついてない!セーフ!セーフ俺!

ツナはホッと胸を撫で下ろした。
誤魔化せた安堵で一杯だったツナは、別に深い考えもなく、こう続けた。

「叶うかなあ?」

「っ!」

それを聞いた獄寺の顔がみるみる赤くなる。

「じゅ、10代目」
「ん?え、どうしたの?」
「それはっ…!お、俺が叶えても、よろしいんですか!?」
「あ……」

自分の台詞の言い回しが、どう取れるかという事にツナは、やっと気付いた。
これは、まるで…。
ツナの頬も赤く染まる。ああでも

「…もう叶ってるようなものかなー」
「えっ!」
「こういう風に一緒に暮らすことなんじゃないかな」

結婚するってのは。

「それに、さっきの獄寺君の台詞、プロポーズみたいだったよ」

まあそしたら、獄寺君の普段のものいいが、ほとんどそうなんだけど。

「だ、ダメです!」
獄寺が焦ったように叫んだ。
「そ、それはちゃんと、別の台詞を考えてます!」
「え」
「あ、いや、その……」
「…言ってくれるの?」
獄寺はさっきより更に赤くなって俯いた。
「あの、いえ、俺、まだ貴方にそんな事言える程の男じゃないんで…その…もうちょっと、
もうちょっと待ってください……」
「いいよ!」
ツナは花のような笑顔で、獄寺に抱きついた。
「待ってる。おれの獄寺くん」
「じゅーだいめ…」

獄寺はツナの左手を取ると、素早く自分の小指に嵌めていたシルバーリングを外して、
ツナの薬指に嵌めた。

「あ…」

「その時まで…」

「ありがと…嬉しい」




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