della Tempesta




「寒くないですか?」
獄寺がまた尋ねた。
「う、うん」
ツナは何とか声に出して答えた。
「良かった」
獄寺がホッと安堵の息をつくのが聞こえた。
「うん…」
最初のパニックから落ち着いて、ツナもそっと息を吐いた。
「ありがとう獄寺君、温かいよ…」
強張った体から力を抜いて、背中を獄寺にもたれかける。
少し獄寺の体が震えたように感じた。

そのまま暫く、二人は黙って、火がはぜるのを見つめていた。
「ねえ獄寺君…」
ツナは首をひねって、後ろの獄寺の顔を見上げた。
「ん?」
獄寺はしっかりと目を閉じていた。
「獄寺君、寝てるの?」
「いえ、起きてますよ」
「眠いの?」
「いいえ全然。第一、沢田さんを放って寝たりできませんよ」
「…何で目つむってんの?」
「いえそれは…」
「なに?」
「ええと……その、見ないように…です」
ごにょごにょと呟いて、獄寺の顔が赤くなっていく。
ツナも獄寺の意図に気付いて赤くなった。
「ばっ……!」

この状況でまだそんな事気にするかなあ!

…獄寺君なら、あるのか…。

ツナはそっとため息をついた。

「あ、そーだ」
ツナは一つ案を思いついた。
「獄寺君、ちょっと腕ゆるめて」
「え?はい。…?ちょっ?何するんですか!?」
膝の上でもぞもぞと動き出したツナに獄寺は慌てた。
「んー、体勢変えようと思って」
「ええ!?」
「向かい合わせになった方が温かいよ、きっと。……えと、隠れるし」
「ダ、ダメです!」
「何で?それに、俺、獄寺君の顔見て話したいし」
「いや、その、それは嬉しいですけど…わ、ちょ!ま、う、動かないで!」
「獄寺君?どしたの?………っ!?」

ツナの太腿の辺りに、熱く固い感触が当たっている。
「あ……」
「す、すいません!!」

獄寺は、ばっとツナから離れると、背を向けた。
「すいません!すいません!申し訳ありません!俺…」
「獄寺君…」
「本当に、そんなつもりじゃなかったんです!本当に10代目を温めて差し上げたかっただけなんです!」
「獄寺君」
「それなのに、俺…俺…本当に情けないです…」
「……分ってるよ、獄寺君は、俺のためにっていつも考えてくれてる」
ツナは獄寺の傍に近寄ると、そっと背中を抱きしめた。
「じゅ…!」
「俺、ちゃんと分ってるから。そんな風に気に病まないで」
「…10代目」
「それに…その、別に、俺、…そんな、やじゃないよ…」
「え?」
「わざとじゃないんだし…ていうか、こ、こんな状況で、全然何とも思われないのも、
それはそれで淋しいとゆーか……俺、そんなにダメかなあって思うってゆーか…
―――う、うわ、な、何言っちゃってんだろ、おれー!」
「10代目……」
「ゴメン!今のナシ!ナシ!忘れてーっ!」

ツナは耳まで真っ赤になって、両手で顔を覆った。

恥ずかしい。
これじゃまるで誘ってるみたいだ…。

「10代目」
両手首をやんわりとつかまれて、そっと顔から離される。
至近距離に獄寺の顔があった。

「貴方は素敵です」
「な、何言ってんの」
「俺はいつだって、貴方の魅力に振り回されています」
そう言って、獄寺はツナの右手の甲にうやうやしく口づけた。
「貴方が欲しくて」
唇を手に触れさせたまま、獄寺は熱っぽく囁いた。
「気が狂いそうな、バカな男なんです、俺は」
苦しそうに眉間にしわを寄せた顔は、それでも美しくて、ツナは息が出来なくなる。

「……うう」

振り回されてるのは俺の方だ。
そんな風にキスされて、どうやって正気でいたらいいんだよ?

「だ、だったら」
ツナは大きく息を吸い込んだ。

「君のものにしちゃえばいい…」




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