della Tempesta




獄寺は弾かれたように顔を上げた。
揺れる緑の瞳を、ツナは一心に見つめた。
やがて、また獄寺の目が伏せられる。

「ダメです…」
「どうしてっ!?」
ツナは思わず叫んだ。

獄寺の手は今もツナの手を握っている。ツナはぎゅっと握り返して、両手で包んだ。

「獄寺君…、俺のこと、好きだよね?」

「……」

「俺も…俺も君が好き。獄寺君が好きなんだ!」

「10代目」

「ねえ、何でダメなの?もうボスとか右腕とか、ボンゴレとか関係ないじゃんか!
俺が君を好きなだけじゃダメなの?ねえ獄寺君、どうして?」

「10代目、俺は…」

辛そうに言いよどむ獄寺に、鼻の奥がツキンと痛む。
泣きたくなくて、ツナは唇を噛んだ。

「……やっぱり、10代目じゃない俺はいらないの…?」

「違います!」

叫んで、獄寺はツナを抱きしめた。
「ご…」

「好きです!大好きです!貴方自身を愛してます!愛してるんです!」

「獄寺君…!」

「俺も君が好きだよ…!」
獄寺の背中に手を廻し、ツナも獄寺を抱きしめ返した。
しかし、獄寺はすぐに身を離し、ツナの腕をそっと解いた。

「10代目…俺は、10代目にそんな風に言ってもらえる男じゃないんです」

獄寺は苦しげに言った。笑おうとして失敗した表情だった。

「俺にそんな資格ありません」
「何言ってるの、獄寺君?そんな事ないよ、君は…」
「違うんです!聞いてください10代目!」
「獄寺君?」

「この場所……、あの屋敷、ここに10代目を連れてくることを提案したのは、俺です」

「え!?」

「貴方を……生死不明にして、外界から一切隔離する計画を提案したのも……俺、なんです」

「…………獄寺君」

「貴方を一人ぼっちにして、苦しめたのは俺だ……」
「獄寺君」
「なのに、俺は、貴方の孤独に付け込むような真似をしたんです。最低です…!」
「獄寺君、待って」
「貴方に愛される資格なんかない……!」
「獄寺君ってば!」
ツナは俯いてしまった獄寺の顔を両手で挟んで、しっかりと目を合わせた。
「獄寺君は、それが俺の命を守るために、いい方法だって思ったんだろ?」
「それは…」
「それに、いくら君が提案したって、リボーンはそれが有効だって思わなきゃ実行しないよ、
最終的な責任はアイツにあるよ。君が思い悩むことなんて何も無いよ!」
「でも…」
ツナは小さく微笑んだ。
「ずっと、その事で、悩んでたんだ…」
「10代目…」
「獄寺君、俺のこと、いっぱい考えてくれて、思ってくれてありがとう」
「じゅうだいめ……」
「付け込まれたりなんかしない」
「え…」
「俺、ずっと前から、君が好きだったよ」
「じゅ…」
「ずっと傍にいてくれて、ありがとう」

涙の零れたまなじりにそっと唇を寄せた。



「大好きだよ、獄寺君」


 
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