ツナの頭は一瞬真っ白になった。 そして、次に幾つかの事柄が点滅していく。 ほんの少しの違和感を感じていた。その正体がだんだんと浮かび上がってくる。 「沢田さん」 獄寺は立ち尽くしたツナの手から、そっと携帯電話を取った。 そうだ、あの時、自分が死んだ事になっていると聞いた時、あまりの事に、そこまで気が回らなかったが しかし、ひっかかってはいたのだ。 ツナは恐る恐る口を開いた。 ひょっとして、まさか、そんな 「獄寺君、海に落ちた飛行機は」 「はい」 「飛行機を、操縦、してたのは…………」 ツナはひどく喉が乾いてるのを感じた。 「獄寺く、ん、きみ、なの?」 獄寺が頷いて、ツナは眩暈がした。 「そんな…それじゃあ、君は…君まで……」 「もし、俺が生きていて姿を消したら」 ツナの声が震えているのに反して、獄寺の声は静かだった。 「奴らはきっと、俺の行き先から貴方を見つけようとするでしょう。ですから」 まっすぐにツナを見つめる緑色の瞳。 「これしか、貴方の傍にいる方法はありませんでした」 「ああ…ああ…君は、君は何てことを……っ!」 ツナはガタガタと震えだした。事の重大さがツナを打ちのめし、心臓をしめつける。 獄寺から今までの生活や夢を奪ってしまった事を、ずっとツナは気に病んでいた。 だが、それどころではなかったのだ。 俺は、俺は、 獄 寺 君 を 殺 し て し ま っ た 。 「うわあああああああああーっ!!」 恐慌状態におちいって、ツナは叫んだ。 「じゅ、10代目!」 獄寺が慌ててツナの肩を掴む。 「いやあっ!」 獄寺の腕を乱暴に振り払う。 ああ、何て、何てことだ。俺が、「ボンゴレ10代目」が獄寺隼人を殺してしまった。 そんな事、絶対に嫌だったのに。ずっと恐れていたのに。俺は君を傷つけたくないのに。 幸せであって欲しいのに。 どうして君はそんな事をするの? どうして君と俺はかみあわないの? どうして君は俺の部下なの? どうして俺は10代目なの? どうして、どうして、どうして、どうして。 ぐちゃぐちゃな頭で駆け出した。行き先なんて知らない。 獄寺が呼んでいたが、聞かずに走った。 ただ、逃げたかった。 |