「ロリパワー解析のため、お姉さんにはうちの研究所にきていただきます……が」
 
そこで初めて、蠍女はその顔立ちに不釣合いな表情を浮かべた。
口元を吊り上げた、子供らしからぬ笑みである。
 
「その前に、私の個人的な趣味に付き合ってもらいます」
 
その言葉と同時にロリホワイトの体が動き出す。
 
「わっ!?」
 
地面に崩れ落ちた時と同様、彼女自身の意思による行動ではない。
勝手に腕が持ち上がり、両手が頭の後ろで組まれる。
足は肩幅まで広げられ、立て膝の状態から動かせなくなった。
 
「いい格好ですね。ねぇ、どんな気分ですか?」
「…最悪に決まってるでしょ」
「手厳しいですね。身動きもとれないというのに、気丈なことです」
 
立て膝なので、今は蠍女の方が頭の位置が高い。
蠍女はロリホワイトの頭を撫で、人差し指で頬をつつく。
柔らかく張りのある肌の感触が指先に伝わり、蠍女は上機嫌そうに何度も頷いた。
 
「さすが、私が目をつけていただけありますね。
 そんなお姉さんが、これから私に泣いて許しを請うかと思うと……正直、ぞくぞくしてしまいます」
「可愛い顔しといて、意外と悪趣味なのね。連れてくならさっさと連れていけばいいのに」
 
不安を断ち切るように、ロリホワイトは強い口調で言い返す。
 
「まぁまぁ、そう怒らないで下さいよ。意外と楽しいかもしれませんよ?」
 
蠍女は屈みこみ、ロリホワイトへと手を伸ばしてきた。
後ずさろうにも体の自由は利かない。
ロリホワイトの体は、実際にはピクッと震える程度にしか動かなかった。
彼女は、自分の上半身に近づいてくる手をただ見つめることしかできない。
 
(何?また、針…?)
 
見た目は少女でも、相手はれっきとした怪人なのだ。
自分に苦痛を与えようとして当然である。
蠍女がその気になれば、ロリパワーの加護を受けていない彼女など一撃で昏倒してしまうだろう。
それどころか命すら危うい。
もしくは、別の種類の毒を射ち込まれるのだろうか?
悪い予感ばかりが脳内に渦巻き、さすがのロリホワイトも身を固くする。
 
「覚悟はいいですか?」
「……好きにすればいいでしょ」
「分かりました」
 
一瞬後の痛苦を想像し、ロリホワイトは歯を食いしばり、ぎゅっと目を瞑った。
怯えはしても屈するつもりはない
しかし。
彼女の体に与えられた刺激は、思いついたどの予想とも違うものだった。
 
「ぁふぅっ!?」
 
きつく閉じていたつもりの口から、呆気なく声が洩れた。
目を開けば、蠍女が自分の腋を指先でなぞっているのが見てとれた。
 
「やめっ、こらっ、何して……っく!」
「何、と言われましても」
 
滑らかな肌触りを楽しみつつ、ごく普通のことのように答える蠍女。
 
「いつだって格好よくっておすまし顔をした正義のヒロイン。
 そんな女の子達を捕らえてくすぐるのが、私の一番の趣味なんです」
「な、何言って……ぅふっ!!」
「いい反応ですね。そうやって不意をつかれて声が出ちゃうっていうのも好きですよ」
 
よくよく見れば、ロリホワイトの服装はやや露出度が高い。
腋やお腹・背中など、よりにもよって蠍女が好みそうな部位が完全に剥き出しである。
 
「こ、こんな事して何になるって言うのよ!笑ってるのが好きだったりゃぁあっ!?」
「あはは、まだ触ってるだけですよ?
 今からそんなんじゃ…これからどうなっちゃうんでしょうね?」
 



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