日ごとに科学は進歩し、あらゆる物質に対しての理解が深められている。 それは勿論、生物の構造や遺伝子についても例外ではない。 そして生まれた新たな技術はまず、昔なら軍事、現代では延命と娯楽へと最大限に活用される。 つまり― 「こんな物が発明されるのも当たり前ってことかな」 と、私は台詞を締めくくった。 窓の無い雑然とした室内にいるのは、自分一人。 「とは言っても、今こんなの作れるのはこの篠塚三咲ちゃんぐらいだよねー。さすがは天才」 一度は止めたものの、独り言は完全に癖になってしまっている。 やはり片親しかいない上に、その父があまり帰ってこないのがいけないのだろうか。 それはさておき、ついに完成したのだ。 目の前の作業台に置かれた完成品を見ると、ついつい笑みが浮かぶ。 いやぁ、また雑誌の取材が来ちゃうなぁ。 私は現在14才。 技術者である父の影響で、土曜日の夜などには自宅内のこのラボに篭もりっきりになったりする。 自慢じゃあないけど学会でも色々と活躍していて、業界では 「天才美(←ここ重要)少女」なんて呼ばれていたりもする。 あんまり服装には気を使っていないし(今も白衣の中はシャツに短パンだしね)、 髪も適当に頭の後ろで束ねてるだけだけれど…そこは素材の良さということで。 まぁ、いつもは普通の優良女子中学生なんだけどね。 「さて。完成したことだし、早速試してみよっかな」 私は白衣を脱ぎ、台の上の『それ』を掴んで部屋を飛びだした。 廊下を抜け、階段を上がり、自分の部屋へと入る。 「春菜ちゃん、ど〜こ?」 呼びかけると、本棚の陰から一匹の猫が姿を見せた。 春菜とは、私がこの前拾ってきた雑種らしき子猫である。 胴体と同じぐらい長い尻尾がチャームポイント。 「いたいた。今日は面白いもの持ってきたんだよ」 私は春菜を抱き寄せ、右手に持った銃を見せた。 銃っていっても、普通のじゃない。 どっちかって言うと、形は何とかレンジャーとかに出てくるオモチャに近いかな。 しかし、私の作った物がそんながらくたな訳がない。 これは名付けて、『擬人化ピストル』。今考えたんだけど。 これで撃った動物は、なんと人間へと姿を変える(はず)のだ! もちろんただ人間になるだけじゃなくって、元々の特徴もある程度は残るようになっている。 仕組みは説明すると長くなるからやめとくけど、早い話が… これで春菜を撃てばラブリーな猫耳少女のできあがり、ということ。 うんうん、我ながら素敵な発明をしてしまった。 今から何百年か前…そう、例えば年号が昭和とか平成の頃だったら こんなのは漫画の中でしかありえなかったのだろう。 「はい、それじゃあちょっと離れて」 私は春菜を床に下ろし、銃を構えた。 春菜はこれが何なのか不思議なのか、大きな瞳で銃口を見つめている。 「痛くないからねー…」 失敗なんかそうそうしないけど、やっぱり発明品のテストの時が一番緊張する。 私は照準を合わせ、ゆっくりと引き金を引いた。 パシュ、と軽い音が鳴り、春菜が床に崩れ落ちる。銃から発射された針が刺さったのだ。 そして数秒後にはその身に変化が生まれる。 体長がぐんぐんと伸びていき、見る見るうちに毛が消えていく。 「成功、だね」 一分後には、私の目の前に一人の少女が横たわっていた。 私よりもほんの少し小さい…十から十二才ってとこかな? 頭からは猫の耳が、お尻の上からは尻尾が生えている。 あとは完全に裸で、全身を覆っていた体毛もなくなっている。あ、髪はロングなんだ。