(そんなの、分かるわけ……)
美奈は目を見開いて二人を凝視することしかできない。
「有紀ちゃん、理解しろっても無理だよ。美奈ちゃんはふつーな子なんだからさ」
桃子は有紀から体を離すと、美奈に笑いかける。
「あたし達は似たもの同士なの。
 こっちは『女の子が』大好きでー、有紀ちゃんは『女の子をいじめるのが』大好きだから、ちょっと違うけど」
「まぁ大体そんな感じかな?
 桃子ちゃんも最初はいじめるつもりだったんだけど、色々あって意気投合しちゃってて」
ねー、と笑いあう二人。
この場に下着姿の美奈がいなければ、ただの仲良しな二人組みにしか見えなかっただろう。
「――で」
桃子は笑いを鎮めて、口調をあらたまったものへと変えた。
「ズバリ、この子どうするの?」
「足の裏をくすぐられるのが大好きな変態にしちゃおうかなぁ、と」
「はぁー。今回もまたマニアックな方向だね」
そう言いながらじっと足の裏を見つめてやると、視線を嫌がるように指がきゅっと縮こまった。
「も、桃子ちゃん……お願い、やめて…」
近づいてくる桃子に助けを請う美奈。
飄々とした彼女なら、もしかしたら気まぐれで見逃してくれないとも限らないのでは…
しかし、そんな僅かな期待も桃子と視線が交わった瞬間に消え去った。
(興奮、してるっ…!)
目を見ただけでそれが伝わってきた。
女の子が大好きというのは伊達ではないらしい。
美奈の傍らに立つと、桃子はその頭を優しく撫でる。
「ごめんねー。美奈ちゃんみたいな可愛い子が相手じゃ我慢できないや。
 せめて気持ちよくしてあげるから、許してね?」
桃子は悪戯っぽく笑うと、身を屈めて美奈の唇を奪った。
「えっ?」
あまりに自然な動作だった為に、一瞬、何をされたのか理解できなかった。
桃子は硬直する美奈の肩に手をかけ、続けて唇をべろりと舐めあげる。
そして舌は顎、首筋、鎖骨と順に滑り降りていく。
「っ…や、やだっ……!」
独特の生暖かくざらついた感触に肌が粟立つ。
「あたしね、舐めるの大好きなんだ。全身しゃぶり尽くして――」
「やめい」
有紀が呆れた顔で桃子の後頭部をはたく。
「私の話聞いてた?」
「いーじゃん、いきなり足だけでイける訳ないって」
「んー、やっぱそうかなぁ?じゃあ上半身はあたしがやるから、そっちは下お願い」
名残惜しげな桃子を押しのけ、有紀は美奈の胸と腋の境目に指先を当てた。
そして、揺さぶるようにして微妙な刺激を与える。
「っく…!ん、ひゃふっ……」
先程足の裏に与えられたくすぐったさよりは遥かにマシだが、それでも美奈の体はプルプルと震えている。
「こちょこちょは足じゃないの?」
「ここだと気持ちいいのとくすぐったいのが両方くるから、最初にはピッタリなわけ。さっきも腋で感じてたし。
 ね、美奈ちゃん?」
指先を肌に軽く食い込ませると、美奈の体は内心の動揺を表すようにビクッと跳ねた。


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