そして。二人にテクニックを見せ付けられると、当然千尋も競争心を煽られる。
千尋は「失礼しまーす」とことわり、奈菜の靴下を手際よく脱がせた。
「千尋ちゃん?」
マッサージ中で振り向く事はできないが、素足が外気に晒された事は分かる。
「足をやってあげようと思って。やっぱり靴下穿いたままじゃやりにくいですからね」
千尋は奈菜の左足を抱え込むようにすると、まずは土踏まずのあたりをぎゅっと押した。
すると奈菜の体を痺れのような感覚が貫き、彼女は思わず声を詰まらせた。
「ちょっ…もう少し、優しく……」
「あ、すいません!」
千尋は圧力を緩め、刺激する場所を足の裏全体に広げる。
少しすると手慣れてきたようで、両手でそれぞれ片足ずつマッサージするようになった。
腿やふくらはぎも充分に効き目があったが、足の裏は第二の心臓と呼ばれるだけのことはある。
そこだけに集中してマッサージすると、それまで以上に効果があるようだ。
つぼを押す度にピクッと反応する足の指先が、それを物語っている。
千尋は足の側面やくるぶし、指の付け根まで余す所なく指圧した。
(何ていうか、もう天国…)
三人の後輩に全身をマッサージされ、奈菜は夢心地になっていた。
そして再び「今は誰のが一番気持ちいいですか?」と問い掛けられる。
奈菜は
「うーん…ぁふ……みんな気持ちいいよ…」
と正直に答えたが、三人はそれでは満足しなかった。
「ちゃんと教えて下さいよー」
「私ですよね?」
「正直にお願いします〜」
三人は奈菜の体そのものに聞くかのように、さらに技巧の限りを尽くす。
「そんな事言われても…ひゃうっ!…んんっ……ふぅ〜…」
選びかねている態度に痺れを切らし、裕香は別の手段に訴えた。
「はぁ……んっ!?くく…ふっ…きゃはっ!」
智恵と千尋はいきなり笑い声を上げた奈菜に驚いたが、すぐにその原因に気付いた。
裕香が奈菜の尻をマッサージしていた手を離し、今度は人指し指だけを立てて
脇腹をちょんちょんと突っついていたのだ。
「私のが一番でしたよね、先輩?」
「ふっ…くふ……だから、みんな、上手だって…はぅっ!」
裕香は問い詰めつつ、奈菜の反応を楽しむ。
右の脇腹を軽くつつくと、奈菜の体は指から逃れるようにくの字に曲がった。
そこを待ち構えていた左手が襲い、逆の脇腹をつつく。
続いて両手の人指し指を左右の脇腹にくっつけ、細かく振動させる。
「こら、やめ…あっ!ひゃうっ…駄目だって…あははっ!」
「裕香、ずるいよ〜。無理矢理言わせようだなんて」
千尋が言うと、裕香は
「全然ずるくないよ。私はマッサージしてるだけだもん」
としたり顔で返した。


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