地面がむき出しになった、閑散とした荒れ地。そこに二つの人影があった。
一人は頭にバンダナ巻いたがっしりとした体格の男。
アーミーパンツにシャツ、そしてベスト風のジャケットを羽織っている。
もう一人は対照的に華奢な体つきの少女。
こちらも頭にバンダナを巻いており、茶系のぴったりとしたシャツに白いスカートを合わせていた。
二人は互いに距離をはかり、ゆっくりと間合いを詰めている。
格闘技の最高峰ともいわれているKOF。その一回戦第三試合の終盤であった。
三対三のチームバトルだが、既に四人は倒れ、開催者関係の者によって移動させられている。
つまりこの場に残っているのは二人――
怒チームのラルフと女子高生チームのまりんだけだ。
「さすがだね。前情報以上だよ」
ふと、まりんが口を開いた。
気軽な口調と表情であったが、その瞳には微塵の油断も隙も無い。
「それは…こっちの台詞だろ。女子高生三人にこうも追い込まれるとは思わなかった」
ラルフは苦笑いを浮かべた。
麻宮アテナ、四条雛子。
この二人の戦闘力については、これまでの大会を通じてある程度は知っていたが…
(まさか、クラークとレオナの二人と互角とはな)
そして、目の前のまりん。
初参戦のこの少女については殆ど情報がなく、ラルフは初戦にして苦戦させられていた。
見れば服のところどころは破れ、血が滲んでいる。
一方、無傷のまりんも内心では舌を巻いていた。
密着戦を挑む気にはなれないが、ラルフは中・遠距離からの牽制ではひるみすらしない。
自分のペースではあるのだが、まりんは少々攻めあぐねていた。
(ま、それでも7・3であたしが勝ってるのは間違いないけど)
まりんは駆け引きに付き合うのをやめ、後ろに大きく飛びずさった。
続いて数本の小さなナイフを投擲する。
「ちっ!」
ラルフは地面を転がってそれを避けた。
「やっぱり近づく気にはなれないや。このままジリジリいかせてもらうよ」
立ち上がると同時に突っ込んできたラルフを飛び越え、さらに空中で加速して距離を離すまりん。
「ったく、またかよ…」
先ほどからこのような展開だった。
ラルフが近づけばまりんが逃げ、安全圏から投げナイフや刃付きのヨーヨーやらの暗器で攻撃する。
いくらラルフといえども、こうも徹底的に逃げにまわられると手の出しようがなかった。
そんな状況が数分続き、ラルフの服が土だらけになった頃。
まりんは自らの体に異変が生じているのに気づいた。
(あ…ちょっとトイレ行きたくなってきたかも)
団体戦なので、今回のKOFは一試合ごとの時間が長い。
まりんの戦い方のせいもあり、試合開始からはかなりの時間が経過していた。


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