「っ…この…!」
玲奈が手に力を込めてぐっと引き下ろすと、二人は掴んだままの裾に引っ張られて倒れ込んだ。
「いたっ!」 「きゃうん!」
ごちん、という漫画的な音が鳴る。
二人は玲奈の両足の間で額をぶつけてしまったのだ。
それに一瞬遅れて、頭にスカートがかかる。
「遥ちゃん、ごめんね〜」
「ううん、大丈夫。夏美ちゃんも痛くなかった?」
玲奈のスカートを払い、二人は互いに相手を気遣う。
会話から察するに、おだんご頭の方は夏美、ロングヘアーの方が遥のようだ。
(美保ちゃん、真奈ちゃん、夏美ちゃん、遥ちゃん…か)
玲奈はこの時になって、やっと四人全員の名前を知った。
三つ編み・ショート・お団子・ロングと、一度認識すればわりと覚えやすい。
ちなみに彼女自身はシンプルなおかっぱ頭だ。
「ちょっと。謝るならまず私にでしょ?」
玲奈の言い分はもっともだったが、夏美はぷーっと頬を膨らませて言い返した。
「班長が急に引っ張るのがいけないんだもん!」
「そんなの理屈に―」
反論もさせず、夏美は再び玲奈のスカートに潜り込んだ。
「こら、夏美ちゃん!何のつもり…っ!な、や、エッチぃ!」
夏美は玲奈の両足に腕をまわし、彼女のお尻に顔を埋める。
「あったか〜い」
と、スカートの中からくぐもった声が聞こえる。
「夏美ちゃん、どんな感じ?」
「えっとね。ふわふわでやわらかいよー」
夏美は下着に包まれた玲奈のお尻に頬ずりした。
「駄目だったら!離れてよ…」
玲奈はスカートの上から夏美の頭を押すが、背中側にひっついた彼女をはがすことができない。
悪戦苦闘している玲奈に美保が声をかける。
「班長、夏美ちゃんは一回くっついたら離れないよ〜。うちの先生だってムリだったんだから」
夏美は先日、担任の若い女性教師にも同じ悪戯をしていたのだ。
その時もやはり、夏美が満足して自分からやめるのを待つしかなかった。
「班長、先生より全然すべすべ〜。赤ちゃんみたい」
夏美の手のひらが、玲奈の細い足を無遠慮に撫でる。
太股のあたりにかかる髪の毛とあいまって、それは玲奈に軽いくすぐったさを与えた。
「は…んっ!ホントにやめて、くすぐったいってば…」
玲奈はこそばゆい感覚に体をくねらせ、その足は内股ぎみになる。
そんな様子を見ながら、周りの三人はきゃらきゃらと笑う。
「夏美ちゃん、そこだー!」
「効いてる効いてる〜」
「もっとやったら転んじゃうかも」
そんな声援をうけ、夏美の手の動きが速くなる。
「きゃ…ぅ……ぁはっ…!」
ふとお尻に熱い吐息を感じ、玲奈の膝がぴくっと震えた。
そして次の瞬間、玲奈の体の正面側…その両足の付け根に、夏美の指先がほんの少しだけ食い込んだ。
「ふぁっ!?」
玲奈は鼻から抜けるような息を洩らし、床にぺたっと尻餅をついてしまう。
(今、夏美ちゃんの指…)
顔が熱くなる。
しかし、四人は玲奈に呆然とする時間すら与えなかった。
まずは夏美が後ろから玲奈の肩を引き、仰向けに寝っころがらせる。
そして四人で手足を掴み、持ち上げてしまう。
「危なっ…あ、服引きずらないでよぉっ!っていうか、降ろしなさい!」
もがこうにも、掴まれた手首足首で体をぶらさげられた状態だ。
いくら学年が三つ離れていようと、これでは身を揺することしかできない。
四人は先ほど敷いておいたマットの上に玲奈を運び、ゆっくりと降ろした。


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