「茜、今日も一緒に寝るでしょ?」
「うんっ!」
今日は茜の家に真弓が泊まりに来ていた。
鈴原茜と菊池真弓は、幼稚園の時からの仲だ。茜は現在小学六年生で、真弓はそれより一つ上。
家が隣同士でもあるので、お互いによく泊まりにくる。
今日も大した理由もなく、真弓が鈴原家に泊まりにきていたのだった。
時刻は十一時を過ぎており、あとは寝るだけ。
茜は歯を磨き終え、自室で真弓を待っていた。
「お待たー」
「真弓ちゃん遅いよ〜。って、顔赤くない?」
「分かる?実はさっき、ちょっとだけお酒飲ませてもらったの」
「やっぱり。全く、お父さんってば…」
茜の父親は大の酒好きで、娘の友達が遊びに来るとビールやらを勧めたがるのだ。
「気持ち悪くない?平気?」
「余裕余裕。ま、それはともかく…こんなの見つけちゃった」
真弓は服の中から一枚のディスクを取り出した。
「DVD…だよね。何の?」
「見てのお楽しみ。お昼に茜のお父さんの部屋で見つけたんだけどね」
今日は日曜日なので、真弓は朝から鈴原家にいたのだ。
ちなみにお互いに宿題を済ましたりもしていたので、ずっと一緒にいたわけではない。
「ふーん?」
茜はテレビをつけ、DVDをプレイヤーにセットしてから布団に潜る。
真弓は茜のベットに腰掛けけた。
キュルルル…と音がなり、DVDが再生される。
茜が聞いたことのない会社のロゴの後、本編らしきものが始まった。
「電車?」
どう見ても、それは電車の中。画面には吊革に掴まっている女子学生が映し出されていた。
「ドラマなの?なら今からじゃなくても…」
「しっ!あと十秒ぐらいで分かるから、よーく見ててみ」
そう言われて、茜はじぃっと画面を注視する。
「えっ!ちょっと真弓ちゃん、これ!?」
「うん、エッチなやつだよ。私はさっき全部見たけど」
二人がそんな事を言っている間に、女子学生のスカートがめくり上げられていく。
「やだ、早く止めてよ!何のつもり!?」
茜は頭を敷き布団に埋めたが、真弓は両手で彼女を引き起こし、テレビに向けさせようとする。
「いいじゃん、減るものじゃないし〜。私なんか、お昼にこれ見ながら―」
「ストップ!ストップ!」
どうしたというのだろうか?真弓はさばさばとした性格だが、大っぴらにこんな話をする人間ではない。
茜は真弓に何か言おうと顔を向け、そこで事態の原因が分かった。
「真弓ちゃん、すっごいお酒臭い…」
外から見ただけではあまり分からなかったが、かなり酔っているようだ。
茜は急いで布団を飛び出し、DVDとテレビの電源を切った。
「もう寝よう。真弓ちゃん、ちょっとおかしくなってるよ」
「おかしくなんかないよー。茜だって興味あるでしょ?」
「な、ないよっ…こんなのでエッチな気分になるなんて、全然想像もつかないもん!」
茜の顔が真っ赤になる。
「いいから寝るよ!ほら、布団入って!」
「え〜」
その後も過激な発言を続ける真弓をなんとかなだめ、茜は数十分後になってやっと眠りにつくことができた。

____________

「ぉ…おはよう」
朝起きると、私はちょっと緊張しながら真弓ちゃんに声をかけた。
それはもちろん、昨日のことがあるから。
「おはよ。やだねー。今日からまた学校だ」
…あれ?全然普通だ。
もしかして真弓ちゃん、酔ってた時のこと、覚えてない?
「茜、どうしたの?私の顔になんかついてる?」
「ううん!何でもない。寝坊しちゃったし、早く着替えよう」
よかった…昨日あんな話したから、気まずくなっちゃわないかと思って心配だったんだ。
忘れてるなら、別に思い出させなくってもいいよね。
起きるのが遅かったので、私たちは急いで着替えた。
私は市立の小学校に通ってるから、ブレザーの制服に膝下までの長めのスカート。
中一の真弓ちゃんはセーラー服に、膝よりちょっと上までのスカート。
背はほとんど変わらないけど、それだけで真弓ちゃんが少し年上に見える(年上なんだけど)。
「いってきまーす!」
「いってらっしゃい。真弓ちゃんもまた来てね」
「はい。それじゃあ」
とにかく時間がなかったので、私たちは朝食もばーっと済ませて家を出た。
近くの駅までは歩きで、そこから学校までは一時間ぐらい。
ちなみに真弓ちゃんの学校は私のとこよりちょっと遠い。
駅のホームに着くとちょうど電車がきていたので、慌てて飛び込む。


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