「何が、”どうしたの”なんだ?」

僕は振り向きざまに持っていたラーメンをいれた袋を柚花に投げつけた。

「なぁ。何が”どうしたの”なんだよ。」

柚花はびっくりした顔で立ち止まっている。

走った後の酸素が足りないような、そんな息遣いだけ、聞こえる。


交通人が何だと言う顔でこっちを見ている。

せいぜい、橋の上で喧嘩する仲の良いカップルだとでも思っているんだろう。


ラーメンが、コロコロと転がって、ポチャンと川に落ちた。

ポシャンという音が聞こえたのを確認すると、

「どうして。」

と柚花が震えた声で言った。

「何が。」

僕が気の無い返事をすると、柚花の顔が泣きそうにゆがんだ。

「どうして。」と子供のように繰り返す。



「お前、」

そこでいったん言葉を切った。

柚花の目は、大粒の涙を流すまいと耐えている。

「ふざけるなよ。」

一歩、一歩。柚花に近づく。

僕の雰囲気がおかしいと気づいたのか、近づく度に柚花は一歩下がる。

「さっきから。」

また、一歩。そして近づく度に離れていく。

「何がしたいんだ。」

大きく一歩を踏み出した。

柚花の目に、悲しみの色が写っている気がした。

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