走った。走った。

暗闇から逃れるために、走った。

まばゆく光る街の明かりの隙間の暗い部分を、避けながら走った。

世界が止まって見えるぐらい速い。





凄く、悔しかった。

家が燃えてしまっても、良いとか。

死んでしまっても、良いとか。

闇に包まれてしまうのが、怖いとか。

今握っている1万円札とか。

走っている事とか。

全部、悔しい。





冷たい空気を肺に吸い込んだ。

吸い込んだ息が、暖かい二酸化炭素になって僕の口から出て行く。

何度か繰り返していると、気が楽になった。


1万円札をポケットに入れると、ベルトが締まっていないことにやっと気づいた。

ベルトを締め終わると、今度は靴のかかとを踏みつけているのに気づいた。

靴をちゃんと履きなおすと、今度は自分の着ている服が薄いことに気づいた。

「寒い。」

と、今更思った。

僕が風邪引いても、心配してくれる人は居ないので、そのまま歩くことにした。

街のネオンが、僕を照らしていた。



近くにあったコンビニに入ると、予想以上にお腹が減っている気がして、カップラーメンを5,6個カゴに入れた。

お金をたくさん使いたい気分だったけれど、他にほしいものが無かったので、僕はそのままレジに向った。

「いらっしゃいませ。」

コンビニは、嫌いだ。音が溢れてるから。


溢れる音。

カップラーメンがレジを通る、音。

まわりの客のにぎやかな、音。

カップラーメンを袋に入れる、音。

…吐き気がする。



ポケットの中の1万円札を店員に差し出した。

レジを開いているうちに、僕はカップラーメンの袋を掴むと、そのまま走った。

お金なんか…要らない。


振り返ると、店員がキョトンとした顔をしていた。けれど僕はかまわず走り続けた。


あの店員は、今日はたくさん儲けたな、なんて思ってるに違いない。

(世の中は所詮、こんなもんだ。)

と、そう感じずには居られなかった。


back next

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!