あの頃の僕は、世界中のことが全て間違っているように見えた。

世界中の全てのものが、僕を嫌っているように見え、

そして僕の言うこと、すること、したいこと全てが、間違っているように見えた。


だから僕は、いつもバカみたいに笑っているクラスの皆が嫌いだった。

生徒の暴力を恐れて、びくびくしながら生活している先生も、嫌いだった。

そして、それが当たり前のように、僕は柚花が1番嫌いだった。




僕の見ている限り、柚花はいつもニコニコしていた。

なんていうんだろう、クラスには必ず1人は居る、ムードメーカーってやつ。

柚花は本当にもう、絵に描いたようなムードメーカーで、柚花のまわりには常にたくさんの人が居た。


今も、4,5人で柚花を取り囲んで話をしている。

その中心で柚花は、ニコニコと話を聞いていた。

そんな柚花が、僕は大嫌いだった。


柚花は、綺麗だった。外見とかじゃなくて、もう、そこに居るだけで、綺麗だった。

僕は、綺麗な人は嫌いだ。

だから、当たり前のように柚花のことが嫌いだった。

柚花も、きっと僕のことが嫌いだと、思う。





でも、それは突然訪れた。

僕のくじ引きの引き方が悪かったのか、柚花のくじ引きの運が悪かったのか。

月に1度しかない席替えで、僕は柚花の後ろの席になってしまった。




「よろしく。」

微笑みながら柚花が差し出した手を、僕は無視しながら、次の授業の教科書を机の中からとり出した。

俯いていたので、柚花の表情を見ることは出来なかった。




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