「泣いたら、かわいい顔が台無しだよ」
登場の仕方もセリフも、如何にも編集長らしいクサい演出だ、とスタッフたちも思った。
しかし、宇宙線焼けで浅黒い肌の少年と、透き通る様な真っ白い肌の美少女の組み合わせは、完璧に絵になっていた。
「タケル、ワタシね……」
タケルは口ごもるシルヴィの肩をそっと引き寄せて、唇を重ねた。
「ん、ん…………」
(キスがこんなに感じるなんて……)
少しずつ落ち着きを取り戻したシルヴィは、薄目を開いてタケルを見る。
「……はぁ。タケル…、痛いわ。」
「ごめん、その、緊張してしまって」
「セリフが棒読みだったもんね。ふふ」
「へへ……。でも声までは録らないそうだよ」
タケルは、そっとシルビィの腰に手を回した。
びくん!思わず腰が引ける。
「ごめん、痛かった??」
「ううん、そうじゃなくて……」
(感じちゃった、なんて言えるわけ無いじゃない……)
「ねぇ、もう一度キスして」
「え、でも、その、次は……」
「……ダメ?」
上目遣いで、拗ねるように問う。
シルヴィは女になって初めて、自分のために武器を使った。
「……はぁ、んん……」
不器用だけど濃厚なキス。
ぎこちないけど心地よい愛撫。
(ただ抱かれてキスするだけで、こんなに気持ちいいなんて……)
シルヴィは、自分の何かが変わっていくような予感を覚えた。
タケルはシルヴィの腰に手をまわし、ゆっくりと芝生の上に横たえる。
「やだ、恥ずかしい……」
こんなにも近くで、はっきりと自分の裸体をタケルに晒すことに、恥ずかしさが増していく。
真白な肌を、瞳のように紅色に染め、女性の特徴を両手で隠す。
「キレイだよ、シルヴィ。もっと良く見せて」
タケルは折れそうなほど細いシルヴィの両手首を掴んで、頭の上へと押しやった。
(乱暴なタケル。でも無理も無いわ。まだまだ女の体に興味津々の年頃なんだから。私だって最初は……)
「いいよ、タケル。好きなようにして……」
シルビィは体の力を抜いた。
「え?う、うん、その……、さわってもいいかな?」
顔を赤くしながら問うタケルに、シルヴィは答える代わりに、にっこりと微笑み、彼の手を自分の胸に当てた。
ぎこちない愛撫ではあったが、タケルに触れられる喜びをシルヴィは全身で感じていた。
「ねぇ、タケルも服を脱いでよ。」
「う、うん」
タケルはあっという間に、服をすべて脱ぎ捨ると、シルヴィに覆いかぶさるように手をついて、向き合った。
「やさしくしてね」
「……、う、うん」
しかしタケルは、まだリードがないと、その次ができない様子だった。
問うようにシルヴィを見つめる。
「愛してるわ、タケル」
自然にでた言葉だったが、口に出して始めてその言葉の意味を悟った。
(そうだ、これが愛するってことなんだわ。プリンが好きだったり、ウサギが好きだったり、
ホントはやさしいお姉さまが好きだったり、そういうのとは違う、この感情。
だから、タケルの瞳を見ることが、タケルとキスをすることが、タケルに触れられることが、こんなにも気持ちいいんだわ)
「ボ、ボクも……だよ、シルヴィ」
と、戸惑い気味にタケルが応える。
「ふふ、いいの、タケルにはまだわからないかもしれない。でもいいの。……ほら、興味あるでしょ?」
セリフの最後は伽の時、戸惑う相手への常套句。
シルヴィは大胆に足を開いてタケルを誘った。
くちゅくちゅ……、という恥ずかしい音がシルヴィにも聞こえてくる。
タケルはシルヴィの股間に顔を埋め、秘唇を指で広げて舌を遣っていた。
「きゅんっ!うんんん」
女裂の頂部、紅色の豆粒に歯を立てられ、シルヴィの体が弓なりになる。
「はぁ、はぁ……。あまり強く噛まないで、おかしくなっちゃう」
「ごめん、ボク、その、あまり慣れていなくて……」
「…………」
「どうしたの?」
「ううん、ごめんね。タケルだけのワタシじゃなくて……」
「うん、でも今はボクだけものだよね?銀髪の妖精」
「……。ワタシはタケルに独占されていたいだけの女の子よ…。来て」
(タケルと"シテ"いる写真が娯楽誌に載るのは、本当は嫌。だけど、きっとタケルもその雑誌を手に入れる。
そして何度も今この時のことを思い出してくれるに違いない。
そしたら、今度もう一度タケルと会えたとき、もっと私がして欲しいように、私を愛してくれるかも……)