「あ、いや……」
あまりに恥ずかしい格好にさせられたうえに、自分でも触れたことの無い場所への異物感に、拒絶感を感じて体を強張らせた。
「力を入れないで。すぐに痛くなくなるから。ふふふ、後ろの初めては、わたしがいただいたわ」
「あまえさん、やっぱりそれが目的では……」
「もう、先生は黙っていてください。いいところなんですから」
ゆっくりとマッサージを加えながら、ハルカさんはうしろの穴を揉みほぐしている。
ボクは恥ずかしさと、経験の無い感覚でめまいがしてくる。
やがて指よりも少し太い異物感を感じたかと思うと、ずぶずぶと何かを入れられていく感覚が全身を刺激する。
「あ、あ、や、もうやめて。どこまで……」
柔軟性があるといっても、体の奥まで異物を入れられるのには、まだ不快感しか感じない。
「我慢して。別に口から出るまで突っ込んだりはしないわ。
これは長期間あなたを機械に入れておいても、機械の中が汚さないようにするためと、体の内側から光をあてるためのものなの。」
「光……?」
「そう、体のつくりを変えるためには全身を薬液に漬けて、特殊な光を当てるの。
でも外側からだけじゃ時間がかかって、あなたの体が持たないわ。
だから体の内側にも、このチューブを挿れて変化を促進するのよ。入る穴には全部入れるから覚悟してね」
ハルカさんはこの時、恐ろしいことも言ったけれど、僕の頭はそれをされるまで理解できなかった。
「先に口をふさいだ方がいいかもね。その前に……」
ハルカさんはボクを仰向けにひっくり返して、頭の後ろに手を回して少しだけ抱き起こした。
「アナルバージンよりも、ファーストキスが先の方が良かったかしら?乱暴でゴメンね」
そういうと何かを口に含んで、そっと顔を近づけた。
ハルカさんの潤みかけた深い藍色の瞳にボクの目は釘付けになる。
しばらく見詰め合った後、ハルカさんにつられてボクも目を閉じると、唇にそっと何かが触れた。
……やわらかい。
初めての感触に頭がますますぼうっとしてくる。
いま、ボクはハルカさんとキスしてるんだ。
男として最初で最後の女の人とのキス……。
やがてもっと強く押し付けられたかと思うと、今度は舌で口をこじ開けられて、何かを流し込まれた。
熱い液体が口の中から、喉の奥、胃にまで達するような感覚がした。気持ちいい……。
「ん、はぁ、はぁ……何を飲ませたの?」
「ん、まぁ気付けみたいなものよ。今度はホントに苦しいかもしれないけど我慢してね」
そういうと、表面はぶよぶよに見えるけど、ボクの腕ぐらいはある太いチューブを口の中に押し込まれた。
確かに苦しいけど、さっき口移しに飲まされた何かの感触を味わったせいか、それほどつらくは無い。
ハルカさんになら、どこに何を入れられても、耐えられるような気がする。
そうして、ハルカさんにされることなら、何でも平気になっていくんだろうか…?
「噛んではダメよ。つらい?」
少し涙が出ているからだろうか、ハルカさんはいたわるようにボクの背中をさすりながら、ゆっくりチューブを押し込んでいく。
口をふさがれているので、頭をゆっくり振ってだいじょうぶという意思表示をする。
「そう、もう少し我慢してね。もう少しでチューブからなら息ができるから……。先生、どうですか?」
「うむ、さすがワシの助手だけの事はある。これほどスムーズに挿管することはわしにもできまいて……。む、そこでストップじゃ」
「さあ、ゆっくりと息をして……そうそう。大丈夫?」
口からの異物感と、肛門からの異物感で串刺しにされているような感覚が、少し惨めな感じがして切ないけど、
ハルカさんの優しい声と愛撫がボクを落ち着かせてくれる。
ゆっくりとうなずくボクを見て、ハルカさんはまた何かを手に取った。
「今度はちょっとイタイかも……」
そういうと今度は下腹のほうに手を伸ばして、ボクのペニスをつまんだ。
あまりの突然の行為に今度こそボクは身を捩じらせて、抵抗しようとしたが、肩を医官に抑えられ、
腰はハルカさんに抑えこまれてしまって身動きできない。
というより、薬の作用と今までの行為が、既にもう僅かな抵抗すらできないほどに、体の自由を奪っていた。
「動かないで、まだムケてないのね……て、未経験だからそうよね。ま、勃たないから入れやすいけど……」
そういうとハルカさんはボクのモノを口に含み、舌を使って"ムイ"てしまった。
「んー!んんんーっ、ん……」
あまりの刺激に今度こそどこかおかしくなりそうな感覚が、ボクを蹂躙しかけたが、次に襲ってきた激痛が現実の世界に引き戻した。
「んぉーぉ!!んぉーっっ!!!!!」
口を塞がれていなかったら、部屋中に響く叫び声を出したに違いない。
「我慢して!これが一番重要なの。痛いのは挿れている間だけだから」
ハルカさんの、拷問のような責めがやむと、ちょっとした爽快感とともに、何か水音がしてあたりに匂いが立ち込めた。
「いけない、片側ピンチで止めとくの忘れてたわ……。粗相をして、しょうの無い子ね」
激痛は尿道に挿管されたためで、その管が膀胱にまで届いたために、溜まっていたものが垂れ流しになってしまったらしい。
でもそれはボクが悪いの?
「やれやれ、こっちまでおかしな気分になりそうじゃったわい。片側止めていなかったのは、ワザとじゃろが……。
まぁ放尿の爽快感が無かったら、この子は苦しいままだったじゃろうがの」
「へへへ、さすが年の功で……。先生は何でもお見通しなんですね」
「ついでに尿瓶も用意しとけば、GJだったが、床にぶちまけさせたのでプラスマイナスゼロじゃ」
「お漏らしする羞恥心を、教えてあげたんですよ。先生」
……そんなの教えて欲しくないよ、ハルカさん。
「さ、歩ける? こっちが装置よ。ゆっくりでいいからね。」
ボクはハルカさんを見つめた。
……サッキ、ぼくヲハダカニシタトキミタイニ、ダイテホシイ……。
「ダメよ、そんな目をしても。抱きかかえて欲しいんでしょ?でも自分で歩かないと駄目」
……いじわるナはるかサン……。
ぼくはうながされるままに、歩くしかなかった。
この部屋の大部分を占拠する大きな装置のそばまで、何とか二人に両脇を支えられて歩いた。
ほんの数メートルなのに、体に挿し込まれたチューブが揺れたり肉壁と摺れたりして、辛くて一歩進むたびに崩れ落ちそうになる。
開放されたハッチのようなものの中に浴槽のようなものが見えるけど、装置の縁をまたいで中に入ることができるだろうか?
「もう少しよ……。さぁ、良くがんばったわね。じゃ、この中に横になりましょうね」
ハルカさんは、ボクのおでこに軽くキスをしながら優しく抱き上げて、装置の中にぼくを横たえた。
……いじわるシタリ優シクシタリ、わざトぼくノ心ヲ翻弄シテルノ?……
「蓋を閉めると中は液体で満たされるけど、怖くないからね。目はなるべく閉じておいた方がいいわ。あ、これは単なる栓だから。」
ハルカさんはボクの鼻の穴に栓をし、耳の穴にはチューブを挿し込んで、その端は装置に接続した。
挿管されていたチューブの端もいつの間にか医官によって装置に接続されていた。
何かのセンサーも体に貼り付けられている。
「……聞こえる?音大きくないかな??」
耳に挿し込まれたチューブからハルカさんの声が聞こえてくる。
ボクが大丈夫という風ににっこり笑って頷くと、ハルカさんは装置のハッチを閉めた。
同時に生暖かい液体が流し込まれてきた。
体中の穴という穴に異物を詰め込まれ、真っ暗くて狭い装置に寝かされ、そのうえ得体の知れない液体がボクの体を嬲り始める。
どうしようもない恐怖感に襲われそうになったとき、頭の中でハルカさんの優しい囁く声がした。
……怖くないわよ、ヒロミ。大丈夫だから、落ち着いて。
液体の温度と比重はあなたに合わせてあるから、そのうち暑くも無く寒くも無い、無重力空間に漂っているような気分になるわ……
……あなたの体調はすべてモニターしているから、安心して、次に目覚めたときは、あなたはかわいい女の子に生まれ変わっているわ……
……誰もが独り占めしたくなる……
その後は聞き取れなった。
ハルカさんの声が、頭の中にこだましているうちに、ボクは深い眠りの中に落ちていった。
ハルカさんは男だったボクの時間の最後に、抗うことのできない運命を、意識と心の底に挿入したのだった。