「はぁ、はぁ……、んくっ……」
「かわいいわね、ヒロミ。」
ボクの心を強く捉えて離さない、深い藍色の瞳が妖しい光を放っている。
「我慢しなくても良いのよ、怖くないから」
「でも……、はぁ……、きゃふんっ!」
それまで、頼んでも触ってくれなかった秘裂を、突然なぞりあげられた。
すでに恥ずかしい粘液で濡れていたボクのぷっくりとした恥丘が、ぬるりとハルカさんの指を押し返す。
ハルカさんはボクの目を瞬きもせずに見据え、愛液で濡れた指をワザと見せつけるように舐めとって見せた。
……ボクはハルカさんに食べられてる……
そんな錯覚を覚えた。
「そうよ、もっともっと、そのかわいい声で鳴きなさい、ヒロミ」
"経験"しないまま、女になったボクは胸や性器以外に、こんなにも感じる場所があるなんて、想像もしていなかった。
男でいたときと比べると、まさに全身が性感帯という体になっていた。
服を着て食事をしたり、リモート端末でアーカイブにアクセスしている時は、特にどうということはないのに、
ハルカさんに抱きすくめられただけで、性感帯のスイッチを入れられたように、どうしようもなく感じ始めてしまう。
「…ハ…ハルカさん。はぁ……ん、も、もう許して……」
「お姉さま、と呼びなさい。て、何度も言っているでしょ?ダメよ。あなたがイクまでやめてあげない」
「そ……んな、やぁ……!」
イジワルなセリフとは裏腹に、そろそろ限界と見切ったハルカさんは、まだ発育途上のボクの乳房の頂点を甘噛みした。
「うぁん!あぅ……」
その一撃で、ボクは今日何度目かわからない絶頂に押し上げられ、気絶してしまった。
「んふん。ホントにかわいいわね」
ハルカは、腕の中で寝息を立て始めたヒロミの髪を撫でながら言った。
装置に入ってから約3ヶ月後、ボクの体は性転換を終えて装置から取り出され、隣にある薄暗い部屋のベッドに寝かされていた。
目が覚めたとき、周りには誰もいなくて、身動きすらできなかった。
体全体がまだ焼けるように熱く、暗く落とされた照明が、ボクをどうしようもない恐怖に突き落とし、いつの間にか声を上げて泣いていた。
「どうしたの!ヒロミ、怖い夢でも見た?」
ハルカさんは血相を変えて部屋へ飛び込んできた。
わんわん泣き始めたボクをぎゅっと抱きしめながら、背中をさすってなだめてくれた。
思い出すと今でも恥ずかしいけど、性転換したばかりの体は、脳と体の神経とがバランスをうまく取れない状態になっていて、
精神的にもとっても不安定になるのだそうだ。
だから、転換直後のパートナーはとても重要で大変な重労働だ。
最初の一日のほとんどを、ボクは泣きじゃくりながら過ごした。
ハルカさんに抱かれてうつらうつらし始めたボクは、寝かしつけるために照明を落とされただけで目を覚まし、泣き叫んでハルカさんを困らせた。
2日目は、口の中がざわざわして水を飲むことすら嫌がって、いくらなだめすかしても食事をとろうとしなかった。
痺れを切らしたハルカさんに、頭から流動食をぶちまけられた。
3日目は、ほんの些細なことでも無性に苛立って、あたりかまわず手近な物を投げつけたり、暴れたりした。
ハルカさんは体中にアザや引っかき傷を作りながらも、ボクをなだめようと必死になってなだめてくれた。
4日目は何とか落ち着いたけど、今度はハルカさんに甘えていないと物足りなくて、朝からまとわりついて離れず、
結局あきらめたハルカさんと一日中、べたべたしながら過ごした。
そうしてようやく9日目に、ハルカさんが部屋を留守にしても、ひとりで過ごせるようになった。
精神的にも落ち着いたなと思ったハルカさんは、10日目の今日、ボクに"調教"を始めたのだった。
「気が付いた?ヒロミ。じゃ、第……何ラウンド目だったっけ?」
「ハル……、じゃなくて、お姉さま。もう勘弁して。これ以上続けられたら発狂しちゃいそう」
「そう、残念ね。んじゃ、いいもの見せたげる」
「ブックカード?ずいぶんアナクロだけど、妙に新しい……」
パスワードさえあれば、どこにでもある端末から、あらゆる情報が引き出せる船内では、本来こうしたメディアを、わざわざ使う必要が無い。
「"お子様"だったヒロミは知らないかもしれないけど、"オトナ"の私たちにはこういう娯楽情報誌があるのよ。使い方わかる?」
そういって差し出された、カードのフレキシブルディスプレィに表示されたヴィデオを見て、思わず声を上げてしまった。
「お、お姉さま、これはいったい……?」
それは6日前、性転換後に始めてシャワールームに入った時のものだ。
すべすべした肌にシャボンを塗りつける行為が気持ちよくて、小鳥が水浴びしているみたいに、
はしゃいでいる自分のあられもない姿が、リピート再生されている。
「"デビュー前のヒトコマ"、ってところかしらね。新しい"アリスの娘"には、船内のみんなが注目しているのよ」
「姉さま!!いつの間に!!」
「あら、こわい。いいじゃない、かわいいわよ。初々しくて」
ボクは真っ赤になってうつむいてしまった。
自分でもまだ見慣れていない上に、明らかに子供っぽい姿を船中の人間に見られているかと思うと、恥ずかしさがこみ上げてきて、
どうにもいたたまれなくなってしまう。
「私も出ているのよ。静止画だけど。ほら」
そこには見慣れない服を着たハルカが、細長い武器を携え、獲物を見据えるように、こちらを見つめる全身像が映し出されていた。
長い黒髪をなびかせ、切れ長の深い藍色の瞳に光を湛える凛とした姿に、ヒロミも目を奪われたが、どう見ても戦いにふさわしくないような服装に思えた。
「お姉さま、この服は何?」
「セーラー服。……変かな?」